はっちゃんZのブログ

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『武闘派!』なのに、実は超能力探偵の物語

あらすじ

桐生 翔(きりゅう しょう)は新宿の片隅で私立探偵業を営む。ある日突然超能力(テレポーテーション)を授かるが、本人も半信半疑の上発現頻度も曖昧で使い方もよくわかっていないまま物語は進んでいく。正義感にあふれる若い探偵が、小さな探偵社に訪れるクライアントからさまざまな依頼をこなしながら多くの人とふれあい、高い格闘技術で事件を解決していき、笑える場面が多い恋愛小説。 

~もくじ~

1.絶体絶命のはずなのに?       2.翔、帰還?! 

3.京(凶)一郎、見参!        4.『葉山館林研究所』到着 

5.いつ出るの?超能力!                       6.葉山館林邸1

7.葉山館林邸2                           8.テロ教団から都民を救え!1

9.テロ教団から都民を救え!2     10.テロ教団から都民を救え!3

11.「目黒館林研究所」完成        12.臓器売買組織を壊滅せよ

13.ストーカー事件を解決せよ!1  14.ストーカー事件を解決せよ!2

15.ストーカー事件を解決せよ!3  16.ストーカー事件を解決せよ!4

17.百合との出会い1                     18.百合との出会い2

19.百合との出会い3           20.百合との出会い4

21.幼い兄妹を救え1                           22.幼い兄妹を救え2

23.幼い兄妹を救え3           24.幼い兄妹を救え4

25.幼い兄妹を救え5        25.翔とミーアと百合1

27.翔とミーアと百合2                       28.局アナ盗撮事件を解明せよ1

29.局アナ盗撮事件を解明せよ2   30.局アナ盗撮事件を解明せよ3

31.局アナ盗撮事件を解明せよ4   32.局アナ盗撮事件を解明せよ5

33.未知の物質は?         34.桐生事務所ビル改築

35.オレオレ詐欺団を壊滅せよ1      36.オレオレ詐欺団を壊滅せよ2

37.オレオレ詐欺団を壊滅せよ3      38.オレオレ詐欺団を壊滅せよ4

39.オレオレ詐欺団を壊滅せよ5   40.お化けアパートの怪1

41.お化けアパートの怪2              42.お化けアパートの怪3

43.お化けアパートの怪4              44.お化けアパートの怪5 

45.お化けアパートの怪6      46.初めてのくちづけ

47.百合、実家で相談する      48.翔、久々に実家へ帰る1

49.翔、久々に実家へ帰る2     50.百合、初めて桐生家へ

51.翔、初めて葉山館林家へ1    52.翔、初めて葉山館林家へ2

53.翔、初めて葉山館林家へ3    54.翔、初めて葉山館林家へ4

55.新宿探偵事務所スタート1    56.新宿探偵事務所スタート2

57.新宿探偵事務所スタート3    58.新宿探偵事務所スタート4

59.逆恨み1            60.逆恨み2

61.逆恨み3               62.消された記憶1

63.消された記憶2            64.消された記憶3

65.怪しいクライアント       66.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ1

67.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ2  68.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ3

69.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ4  70.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ5

71.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ6  72.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ7

73.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ8  74.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ9

75.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ10  76.遺族の恨みは晴れるのか1

 

さざなみにゆられて-北海道編-

小説期間:2000年平成12年4月1日~

あらすじ:

美波は写真集で見た富良野などの北海道の雄大な風景に憧れ、

自分のことを全く知らない人の街で暮らしてみたいと北海道の大学を受験。

小樽商科大学に無事合格し義父の影響で銀行員を目差す。

両親は米子にいたが、2000年に義父の勤務する銀行の合併に伴い、

偶然札幌市へ異動となった。

北の都『札幌』を中心として、北海道内の自然や観光名所を含めて

慎一、静香、美波、雄樹、夏姫の生活が始まる。

悲しい事件は起りません。おだやかに時間が過ぎていくだけです。

 

登場人物

日下慎一 現在41歳、1999年静香と再婚。山陰支店では預金課で勤務している。

     2000年4月より関西中央銀行と札幌振興銀行が合併し「六花銀行」となる。

     2000年に北海道札幌市へ再度融資課員(支店長代理)として異動。

日下静香 現在39歳、17年前に夫と死別し娘(美波)を一人で育てた。

                  1999年5月に日下慎一と再婚。現在妊娠中。

日下美波 現在19歳、鳥取県米子東高から北海道小樽商科大学へ入学し青春を満喫中。

日下雄樹 2000年夏に生まれる男の子。

日下夏姫 2000年夏に生まれる女の子。

 

もくじ

1.札幌へ              2.初めての胎動

3.美波の戸惑い           4.慎一の自覚と不安

5.初出勤              6.二人でコーヒー

7.美波の誕生日           8.YOSAKOIソーラン祭り

9.美波、学生生活スタート        10.独立への一歩

11.母の再婚と強がり娘        12.サークル

13.ゲレンデ             14.雪のイベント

15.誕生               16.子供たちのお披露目

17.お宮参りと育児への参加              18.銀杏の下で

19.シシャモ祭りとラムジンギスカン     20.お食い初め

21.美波の憂鬱                                         22.流氷観光1

23.流氷観光2            24.桃の節句

25.静香始動             26.支笏湖とオコタンペ湖1

27.支笏湖とオコタンペ湖2      28.端午の節句

29.美瑛と富良野1          30.美瑛と富良野

31.すながわスウィーツロード1    32.すながわスウィーツロード2

33.

 

さざなみにゆられて-山陰編ー

*登場人物*

後藤静香 小料理屋「さざなみ」の店主。

                  地の食材を美味しく食べさせてくれる店。

     店ではいつも弓浜絣を着ておりおだやかな笑顔の女性。

                  娘と二人暮らし。

後藤美波 静香の娘。高校一年生。明るく人懐こいところがある。

日下慎一 春に米子へ新規開拓を目的に赴任してきた独身の銀行マン。 

*あらすじ*

山陰地方の町、米子市で小料理屋「さざなみ」を営む静香・美波親子と

関西生まれの銀行勤務の慎一とのふれあいを描く。(三人視線)

山陰地方の四季の中で三人三様の心の傷が癒される時間を描く。

~もくじ~

1.赴任                2.「さざなみ」初来店

3.秀峰大山へ             4.静香のまなざし、美波のまなざし

5.面影                6.追憶1

7.追憶2               8.美波の秘密

9.がいな祭りと境港         10.がいな大花火大会

11.美波、秋の県大会新人選へ出場  12.帰途の二人

13.とまどい            14.師走、三人で

15.帰省、遠い記憶         16.初詣

17.移り変わる記憶         18.桜街道

19.二人で出雲へ          20.母の再婚

21.彼との距離           22.浴衣1

22.浴衣2             24.突然の辞令

25.それぞれの思い         26.いつもの音

27.美波のがまん          28.慎一の約束、静香の願い

29.異動の朝            30.湯呑

31.壊れた携帯           32.霧と痛みの世界

33.間違い電話           34.幸恵の疑問

35.静香親子、神戸へ        36.春の息吹

37.再赴任             38.再び『さざなみ』へ

39.美波の受験           40.美波の言葉

41.旅立ちの日           42.広すぎる家

43.最初の夜            44.相性

45.新婚旅行、娘と1        46.新婚旅行、娘と2   

47.業界再編への動き、そして

68.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ3

大きな画面に化粧された『ユキ』の顔が真正面から映っている。

ユキの背景には、ぬいぐるみとか並んでおり自宅の部屋のような光景が映っている。

「ユキです。ご指名頂き今日はありがとうございます。

 今日、ユキは学校で少し悪い事をしました。

 あなたへご奉仕することで許して頂こうと思ってます。

 いいですか?お名前教えてください」

「・・・」

「お返事してくれないとあなたへご奉仕できません」

「は、はい、この店が初めてなもので・・・ごめんなさい。ケンイチといいます」

「ははは、かわいい。ケンイチさん、私の初恋の人と同じ名前だ。

 きっと素敵な男性なのだろうなあ。

 あなたの言うとおりにしますから何でも言ってね」

「は、はい、ユキちゃんは本当に女子高校生?」

「みんな、聞いてくるから見せるけど内緒よ、はい、これが在学証明書だよ」

画面には2017年4月1日発行のカードで、

高校名が黒く塗られて幼い顔つきの女子高生が写っている。

そういう話をしながら部屋の監視用カメラの位置を確認し、

見えないようにバッグからクモ助を仕込んだクモママとクモ大助を出動させ

小部屋の隅のゴミ箱の陰に待機させた。

 

ここまで来たら帰ってもいいのだが、

怪しまれてもいけないので最後まで付き合うこととした。

「ケンイチさん、私のこと、嫌い?

 何も話さなくなるから不安になっちゃう」

「ごめんなさい。あまりに可愛いから驚いて固まってた」

「ははは、ありがとう、そんなこと言われたの初めて。

 ねえ、ケンイチさん、ケンちゃんって言っていい?

 早く御奉仕したいから準備して貰っていい?」

「は、はい、わかりました」

「ははは、そんなにていねいに話されたら、

 ユキが恥ずかしくなっちゃう。

 ユキ、早くしようよとか、言ってよ」

「はい、では・・・ユキ、早くしようよ」

「はーい、ああ、男の人ってこんなになってるのね。こわーい」

「怖くないよ」

「そうそう、そんな風に話してもらうのが好き。

 わたし男の子のこと知らないの。これでいいのかなあ?」

 

その瞬間、コードの付いている箱に入れている局部に触られる感触が広がった。

箱の中には何もないはずだが、そっと局部を握っている感触が伝わってくる。

これは驚くべき技術だった。

「じゃあ、そっと動かすね。痛かったら言ってね。

 すごく硬くなってる。これでいい?気持ちいい?」

 局部を握られて上下に動かされている感触が伝わってくる。

「うん、気持ちいい」

「そう言ってくれるとうれしい。終わる時は言ってね」

「うん、・・・もう出る・・・」

「あら?ふふふ、かわいい。好き。

 もう少し時間あるからもう一度しちゃう?」

「ううん、もういいよ」

「そう、残念、もっとしていたかったのに。じゃあ、時間まで話さない?」

「ううん、もういいや。ありがとう」

「そう、じゃあ、また私を指名してね。ケンちゃん」

翔は、急いで支払いをして事務所に戻った。

(つづく)

26.支笏湖と三大秘湖のオコタンペ湖1

札幌の街なかの根雪もなくなりしばらくした4月の終わり、

風はまだ冷たいが暖かい日差しが窓から差し込んできている。

早いもので札幌へ来て、もう一年が経ったことに慎一は気がついた。

子供達も少しの風邪くらいのもので大きな病気もせずにすくすくと育っている。

久々に5月の連休を使って、ドライブをしようと考えた。

札幌の近くで子供達を遊ばせて、大人たちも満足する場所を探した。

ネットで調べていると何気にブログの「三大秘湖」という言葉を見つけた。

 

北海道三大秘湖・・・その神秘な響きに惹かれた。

「オコタンぺ湖」支笏湖近く

「東雲湖」然別湖近く

オンネトー湖」阿寒湖近く 

の三つの湖らしい。

写真では湖面がコバルトブルーやエメラルドグリーンに染まった湖が写っている。

 

今回は、まず千歳市支笏湖へ行き、帰り道に「オコタンぺ湖」へ行く事とした。

車に小さな家庭用テントとお弁当(離乳食も)とミルクやコーヒーなどを積んで出発した。

道央自動車道大谷地ICから千歳ICまで移動し、支笏湖通(16号)に入る。

高速道路から見る北海道の大地は、大きい平野部にポツンと山がそそり立っている。

北海道内を自家用車でドライブするのは今回が初めてだが、

仕事で移動している途中、本州とは異なるその風景を見て

不思議な感覚にとらわれたものだった。

札幌市からほんの1時間程度で支笏湖には到着する。

支笏湖温泉の看板の方へ向かうと真っ青な湖面を背景に小さな街並みが見えてくる。

まだ風も冷たいが白鳥型のペダルボートの多くが湖岸を遊泳している。

4人は青い湖面の左右にたたずむ、

樽前山・風不死山(左側)と恵庭岳(右側)を交互に見た。

どの山も特徴のある形をしており、やはり本州とは異なる大きさと形であった。

色々なお店が出ているが、名産品は支笏湖で養殖しているヒメマスの料理だった。

 

この湖は日本2番目に大きいカルデラ湖で「日本最北の不凍湖」と呼ばれている。

水中遊覧船出航のアナウンスがあり、湖上への遊覧が開始された。

この船は水面下2mの水中窓から透明度の高いコバルトブルーの世界が広がっている。

おだやかな砂地の波紋の上を泳ぐ多くの淡水魚の群れや

「柱状節理(ちゅうじょうせつり)」と呼ばれる

湖底から切り立った岩が崖のようになっている風景が広がっている。

アナウンスではカルデラ湖が出来上がる時、

マグマが急激に冷やされ収縮した際にできた地形で、

支笏湖における自然の造形美の一つらしい。

 

ミルクで子供達の喉の渇きを抑えての休憩後、

支笏湖東北岸に沿って北上し、恵庭岳を周回し突き当りを左折し支笏湖へ向かい、

キャンプ場のある「丸駒温泉」を目指した。

そこなら子供達を芝生に座らせて遊ばせながら、

安心して夫婦でコーヒーを飲めるからだった。

そこへ向かう道路の両側は、3から5メートルくらいの雪壁がずっと並んでいる。

札幌市内では4月になると雪壁は全くなくなっているが、

山中ではまだこのような状態であることを始めて知り、

安全を見て冬タイヤのままにしていて良かったと安堵した慎一であった。

地図上で見ると三大秘湖のひとつ『オコタンペ湖』はこの雪壁の向こうだった。

(つづく)

67.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ2

翔は早速、夕方を待って変装し監視メガネをかけて目的の店へ入った。

明るい店内で可愛い女子高校生の制服を着た写真が壁一面に貼られている。

世の中平和なのか、

まだ早い時間だというのに若い男から中高年くらいまでたくさん並んでいる。

待合の椅子の前の画面に料金や好みの女の子の出演する時間が掲載されている。

薄化粧のクライアントの娘の時間を調べると夕方から4回となっている。

その他、別料金さえ払えば会えるシステムだった。

 

この店の売りは

バーチャルリアリティで本物の女子高生を相手にできる』と謳っている。

キスもその他色々なこと(???)もできるらしい。

コース説明としては

①爆射コース:30分 2万円(延長は20分毎に半額分追加)

       本物の感触であなたを天国に!

       はにかむ女子高生をあなたは調教できるか?!

②お口コース:30分 1万円(延長は15分毎に半額分追加)

       本物の舌の感触であなたをノックアウト!

       まだ慣れていない女の子があなたをパクッ!

③ご奉仕コース:20分 8千円(延長は10分毎に半額分追加)

        何も知らない女子高生がおそるおそるあなたにご奉仕!

        あなたの注文通りに動きます!

 

翔は、とりあえず③ご奉仕コースを頼み、専用小部屋へ案内された。

部屋の中は大きな画面とソファとティッシュボックスが置かれ、

多くのコードに繋がれた小さな箱、ピンマイク、ヘッドフォンがあった。

部屋のスピーカーから声が流れてくる。

「いつもご来店頂きありがとうございます。

 本物の女子高生が慣れない指を使いあなたを天国に誘います。

 なお、女の子は恥ずかしがりなのであなたの顔が見えないようにしています。

 街で出会ってもあなたとはわかりませんので安心してください。

 先ずは、ヘッドフォンを付けてピンマイクを襟へお付け下さい。

 これからシステムを説明させていただきます。

 画面の女の子と話をしながら進んでいきます。

 女の子へ話しかけながら要望を伝えてください。

 そして女の子に奉仕して欲しい時には

 あなたのアソコを手元にあるコードのついた箱へ入れてベルトで固定してください。

 刺激が送られてくるので、女の子にどのようにして欲しいか話してください。

 あなたの希望通りに刺激が送られてきます。さあVRの世界へようこそ!」

(つづく)

25.静香始動

静香は子育ての傍らテレビや新聞で株式投資について勉強し始めた。

お遊び程度のちょうどいい金額の口座にあったことと

子育ての隙間時間で出来るもので稼げるものはないかと考えていた。

中小株の分類に入る会社で、株主優待の送られてくる会社を探し始めた。

夫の好きなコーヒーや子供用に使えるものを探して少しずつ勉強していった。

図書館に行って、『株式入門』『経済ニュースの読み方』『チャートの読み方』なども借りた。

 

財務諸表などの見方や単語の意味などは夫に具体的に聞いて確認していった。

ちょうど夫から『子育て中でもできる収入確保の手段を考えていた』

と言われて『夫婦は以心伝心ね』と笑い返した静香だった。

株式投資は、知らないなら知らないで何も困らないが

現在の社会構造から考えても絶対に必要なことだった。

株に対しては変な儲け意識を持たないように、

気に入った企業を応援して、結果として自分も楽しければと考えている。

多くのお客さんに支えられて長い間小料理屋を経営してきた静香には、

欲張り意識は希薄でほどほどの利益でバランスを念頭に応援する会社を検討している。

夫も『物は試し、がんばって』と笑っている。

 

静香は毎日の生活で意識しやすい食料品関連会社を中心に選定し購入した。

これらの会社からは、株主配当金と株主特典が送られてくるので楽しみだった。

基本的に売ることは考えていなかったので経営の安心のできる会社を選んだ。

 

また、これからの世の中の変化を見る上で何が大きく変るかを考えている。

夫と一緒になる前から携帯電話などの連絡手段がすごいスピードで変ってきているし、

パソコンも各家庭にまで普及し始めていることから考えて、

今後のインターネット関連銘柄がよさそうだった。

しかし、まだまだ新聞やテレビなどの媒体が社会の主なニュースソースで

本当にこのビジネスモデルが儲かるモデルなのか少し信頼が置けなかったが、

とりあえずマスコミで持て囃されているネット会社を二単元だけ買った。

しばらくすると偶然仕手化して買値の倍々ゲームとなり、

怖いくらいの勢いで上がっていく。

とりあえずラッキーにも倍になった時点で1単元は利確できた。

そしてあと一つをいつに利確しようかと考えているうちに元に戻ってしまった。

 

静香は冷静に株価を見ていたが、狂奔した人々の行動は怖いくらいだった。

素人が高値で掴めば、たちまち損失が発生し、

現物売買でない場合にはすぐさま資金がなくなる可能性も高かった。

これ以降、静香は短期勝負の銘柄は避けて、

中長期で利益を積み上げることのできる銘柄を選ぶようになった。

利益目標は、銀行定期より良ければそれでよしとした。

 

また外国為替も勉強して、非常に利率の高い外国通貨への投資も開始した。

中長期的で20%という信じられない利率の通貨があり、

その国の経済状況などを新聞やネットで調査して、

ある程度安定していたのでそちらも運用に入れて、多面的な運用を開始した。

それ以降は常に海外も含めた関連ニュースに注意するようになった。

年度末の企業も多く、年度決算予想が発表され誌上を賑わせている。

子供達もハイハイするようになり、つかまり立ちもし始めている。

二人は離乳食をたっぷりと食べるようになり、部屋の中や廊下などを動き回る。

静香はその目の回るような毎日に幸せをかみ締めている。

(つづく)

66.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ1

変な女性が出て行ったあと、しばらくすると蒼い顔をした女性が現れた。

事務所を見まわしてソファに座るがなかなか話そうとしない。

じっと待っていると、やがて意を決したように話し始めた。

【依頼内容】

依頼人氏名:愛野 信子様。

依頼人状況:夫が痴漢の濡れ衣を着せられて会社も辞めさせられそうで困っている。

      夫は家族を愛しており、仕事一筋人間なので間違いだと調査して欲しい。

      このままだと裁判で有罪にされてしまう。示談金は500万円。

      用意できない金額ではないが罪を認めたくない。

種類:痴漢の冤罪の証明

経過:帰宅途中の電車の中、目の前の女子高校生が見上げて小さな声を掛けてきた。

   よく聞こうと耳に手を当てて顔を寄せたら、その手を濡れた手でつかんできた。

   驚いて振りほどいたら痴漢にされた。周りの女子高校生の友人も証言している。

   警察の鑑定結果で主人の手に付いていた体液が証拠とされている。

   高校生が主人の手に擦り付けてきたと主張しても信用してもらえない。

 

クライアントが帰って、Ryokoに痴漢の冤罪関連の事件を検索させた。

すると驚いたことに非常に多くの電車での痴漢事件が出てくる。

冤罪被害者と思える投稿もネット上でそこここに見える。

被害者とされた女子高校生の氏名(佐渡千佳 さわたりちか)と学校名はクライアントから聞いているので検索する。

彼女は都内の名門私立女子高校に通っており、顔はLINE上から確認した。

 

学校の評判としては、お嬢様学校で良妻賢母を旨とした教育方針で有名だった。

しかし、ネット上では真贋が混ざった多くの情報で花盛りだった。

その中にJKビジネス関連の噂話も出ている。

新宿にもJKを売りとした店も多く、老若問わず男の需要が多いようだった。

RyokoにJKビジネス店での働く女の子の情報を検索したが、

該当する顔と名前はヒットしなかった。

ラインの写真から場所は割り出せたが、自宅や学校の近辺では

不審な点があれば警察にすぐに通報されやすいため相当に注意が必要だった。

十分な張り込みも出来ないので困っていた。

 

そんな中、事務所へ新しいクライアントが訪れた。

【依頼内容】

依頼人氏名:冴島 留美子様。

依頼人状況:母親(シングルマザー?)

種類:娘の素行調査

経過:ここ2ヶ月ほど娘の行動に不審な面がある。

   最近の傾向として高校2年生の娘(由紀菜)の持ち物が派手になっており、

   帰る時間も遅く、本人に聞いても何も答えない毎日だった。

   事件ではないので警察に相談できない。

   新宿あたりでよく遊んでいるので是非ともお願いしたい。

 

手元の写真を見ると、母親と並んだ明るく笑う女子高生が写っている。

早速、Ryokoに名前と顔を検索させると、ネット上で多くの写真がヒットした。

どうやら新宿のJKビジネスの店『VRホンジョ』でアルバイトしているようだ。

店の紹介では『ホンジョ』は、ほんものの女子高校生の略、

『VR』はバーチャルリアリティ(仮想現実)の略らしい。

クライアントの娘の学校も、偶然とはいえ痴漢の被害者とされた高校生と学校が同じであり、並行して調査することとなった。

(つづく)

24.桃の節句(初節句)

そろそろ夏姫の初節句(桃の日)が近づいてきている。

静香の実家から『雛人形』(七段飾り)が贈られてきた。

雛人形を飾るのに最適と言われる2月20日頃(雨水の日)に飾った。

子供達が珍しがって、せっかくの雛人形が大変なことになっても困るので、

雛祭り前日に七段飾りをしようと考えて、

先ずはお内裏様とお雛様だけを床の間に飾った。

3月3日はちょうど土曜日だったので、美波にも声を掛けている。

当日は、お節句会でお祝いするつもりだった。

 

桃の節句の由来は、平安時代から始まり、季節の節目に入りやすいと考えられていた災いをもたらす邪気を厄払いする行事から始まったとされている。

始まった当初は、3月3日だったわけではなく3月上旬の巳の日に行われた。野山で薬草を摘んで、体の穢れを祓って健康を祈願し厄除けをしたらしい。やがて紙人形で遊ぶ「ひいな遊び」と一緒となり、自分の身代わりで厄災を引き受けさせて人形を川へ流す「流し雛」になった。室町時代に入ると3月3日に行うことが定着し、その頃は紙人形ではなく、宮中では豪華な雛人形を飾って盛大にお祝いするようになりました。これらが宮中から武家、商家、家庭へ浸透して現在にいたるらしい。

 

節句会の日は前夜から美波が人形の飾り付けに張り切っている。

静香は、土曜の買い物リストを必死で考えている。

お祝いのメニューは、定番の

『デンブで可愛く色づけしたちらし寿司』

『はまぐりのお吸い物』

『縁起物の海老や鯛の塩焼き』を用意した。

子供達は離乳食が主なのであまり食べられないが大人達は喜んだ。

慎一はビデオ係で遊んでいる子供達

楽しそうに雛壇を飾り付ける美波

張り切って料理を盛り付ける静香を撮影した。

後日、日下の実家と後藤家へ送るためのものだった。

皆の輝く笑顔で晴れの日が始まった。

夏姫は祝われているのが自分と意識しているのか

皆で歌うひな祭りの歌に片言の相槌をうっている。

大樹は、目の前に広げられている色取り取りの料理に釘付けだった。

(つづく)

65.怪しいクライアント

ここで時間軸は現在に戻る。

『お化けアパートの怪事件』を解決した翌日は、銀行強盗一味逮捕のニュースが

テレビや新聞を飾った。しかしニュースには翔の情報は一切入っていない。

ただ川口組の残党は、警察以外の何者かが

敵として絡んでいることを知ったはずで注意が必要だった。

 

そんな時、翔の店『オールジョブ』へ若い女性が訪れた。

毛皮のコートに派手な化粧で大きなサングラスをかけて

大きな口でタバコをプカプカ吹かしながら、コーヒーを飲んでいる。

事務所の中を無遠慮にジロジロと見回している。

翔も百合もアスカも中年の変装をしているので正体がばれる心配はない。

 

「本日はどのようなことでしょうか」

「うーん、あのさ、ここの人はあんただけなの?」

「はい、とりあえずは私一人ですが」

「うーん、馬鹿だから難しいことわかんないんだけど、

 今、ニュースになってる事件なんだけど知ってる?」

「は?はい、ニュースは見ていますが」

「そんなことでなくて、えーい、もうこの写真見てくれる?」

写真にはあの事件の時に変装した翔が写っている。

 

百合が近くで話を聞きながらアスカに目配せをする。

アスカがパソコンでクモ助を出動させて、

このクライアントの毛皮に潜らせてGPS付き聞き耳タマゴを埋め込んだ。

「この人を探してくれない?」

「この人と言われても、お名前とかわからないと探しようがないのですが」

「よくわかんないんだけど、とにかく探してよ。何でも屋でしょ?」

「いえ、そんな雲を掴むようなご依頼は責任がもてませんので、

 申し訳ありませんが、お断りさせていただきます」

「えー、困るよ、私が叱られちゃう、どこも断られてるんだ」

「いやあ、本当に申し訳ありません。写真だけでは無理です」

「もう、まいったなあ、あんたの知り合いで人探しの上手い人紹介してよ」

「申し訳ありません、他へご依頼ください」

女はイライラした仕草で吸い口に口紅のついたタバコを灰皿でギュッともみ消した。

そして折れ曲がった吸殻をコーヒーカップへ放り込んで事務所を出て行った。

(つづく)

23.流氷観光2

先ずはこの旅一番の目的の『流氷観光』である。

ちょうど今、風の方向がちょうど陸地方向で流氷が沖合に来ているらしい。

二人は乗船券を購入し接岸している『流氷砕氷船ガリンコ号Ⅱ』に乗り込んだ。

乗船してすぐに二人の目に飛び込んできたのは

船舶前部に開かれて流氷を呼び込む空間に設置されている

船体の半分ほどの長さの巨大な二本の金属ドリルだった。

その鈍い光は流氷を今か今かと待っているように感じた。

やがて出航の船内アナウンスが流れ、より強くエンジン音が響き離岸した。

 

ゆったりとしたスピードで『オホーツクブルーの海』を進んでいく。

遥か遠くまで蒼い海面が広がっている。

風は強く波頭が船側を叩き、その振動が縦横に上下に船体を揺らす。

多くの観光客がデッキへ出て歓声を上げながら写真を撮っている。

白い帯が見え始めそこへ向かっていく。

流氷に鳥などの影が見える。

オジロワシとのアナウンスがあった。

近くの流氷に休んでいたゼニアザラシが、

ガリンコ号に驚いて海へ飛び込んでいる。

 

白く太い流氷の帯へ一直線に突入していく。

船の前面に設置されている2本のスクリューが回転し流氷を砕いて進んでいく。

船名そのままに『ガリガリッ』と

硬い氷を砕く音とその振動が身体へ伝わる。

目の前浮かぶ大きな流氷が大きなドリルで粉々に砕け散っていく。

その迫力たるや圧巻であった。

しかし、大きな氷に当たると船も大きく揺れるので船酔いに弱い人は注意すべきで

美波も芳賀さんもやはり酔ってしまった。

二人は暖かい船室へ戻り、窓から海と空を見て回復を待った。

船の揺れがなくなり氷を砕く音も一切なくなった。

船はもう港へ帰るのかと思っていたら湾内の海面上に浮く小さく薄い氷を砕き始めた。

『ハスの葉』のような形の氷が離れたり重なったりしながら海面に漂っている。

この形の氷が流氷の最初のできるもので

『これが成長してさきほどの大きな流氷に育っていく』

とアナウンスされて驚いた二人だった。

(つづく)

64.消された記憶3

百合は翔と会えない間、実は葉山館林邸に戻っていた。

そして、このたびの事件について、こと細かく話した。

祖父母はさすがに驚いた様子だったが、二人が無事だったことと

翔が無事 新宿事務所に引っ越したことを知り二人とも胸を撫で下ろした。

 

その夜、百合は祖母へ

『もしかしたら夢や勘違いかもしれませんが』と前置きして

事件の最中に幼い頃の記憶らしきものが蘇ったことを話した。

それを聞いた祖母は、

『しばらくここに待っているように』と言い置き、急いで祖父の元へ戻った。

しばらくして祖父の部屋へ来るように言われ部屋を訪れた。

 

祖父母は少し沈痛な顔つきで並んでいる。

「百合や、婆さんからお前の幼い頃の記憶が蘇った話を聞いた。

 翔君と付き合い始めたし、

 もしかしたら・・・そろそろか・・・と思っておった。

 確かにお前のその記憶は正しいと答えておこう。

 ただし、今はその理由を言えないし聞いて欲しくない。

 いずれお前に話す時がくると思うのでそれまで待って欲しい。

 これからもっと色々な記憶が蘇ってくるかもしれんが、

 我々一族全員がお前のためを思ってのことだったとわかって欲しい。

 決して悪意からではないことを・・・」

祖父母から頭を下げられるとこれ以上は聞けなかった。

 

「百合、お前に翔君とのことを伝えておこうと思う。

 翔君には翔君のご家族がいずれ伝えることとなろう。

 お前が思い出した『強く大きな眼の少年』は確かに翔君自身だった。

 そして、お前と翔君は許婚の間柄だった」

「えっ?許婚?」

「百合が驚くのも当たり前とは思う。過去に一度は切れた関係のはずだった」

「一度は切れた?」

「ああ、だが再び繋がったと言う事じゃな」

「百合は翔さんを見て、なぜか懐かしく思えたのはそのせいなのですね」

「そのようじゃ、わしにはそれが二人の運命かもしれないと感じておる」

「お爺様、お婆様、百合は翔さんのことが大好きです。

 ずっとずっと一緒にいたいと思っています。

 百合は翔さんのお嫁さんになってもいいですか?」

「ああ、翔君がそういう気持ちになれば、

 いずれお前にそう言うだろう。待っていなさい」

「はい、待ってます。百合は翔さんをとても愛しています。

 こんな気持ちは生まれて初めてのことです」

「そうか、わかったよ。その気持ちを大切にしなさい」

 

しばらくして、翔は突然実家へ呼び出されて百合とのことを聞かされた。

あまりの想像外のことに驚き、

そして混乱したが、

事務所で待っていた可愛い百合の笑顔を見るとすべて納得したのだった。

(つづく)

22.流氷観光1

家庭教師のアルバイトと

土日の友人とのたまの札幌でのショッピングやスイーツ探しや

実家に泊まった時は弟・妹と遊びながら毎日が過ぎていく。

高校受験生のため家庭教師の日数も1日増えて週3日となっている。

そして彼女のご両親から多目のアルバイト料を頂き臨時収入に大喜びした。

その収入で芳賀さんと初めて『流氷観光』に行った。

学生時代、あまり金は無いが時間は十分あるので、前日に実家に泊まり

札幌駅からバスで紋別市までの全行程6時間の雪道の長距離移動だった。

 

紋別バス停に着くと宿泊ホテルの紋別プリンスホテルまで歩いて移動した。

部屋に着くと窓からは雪の晴れ間に蒼いオホーツク海が広がっている。

このホテルは天然温泉が湧いている。

近隣に「天然温泉美人の湯 もんべつ温泉」があるくらいなので

二人は美人になろうとしっかりと浸かった。

泉質は、冷鉱泉アルカリ性低張性冷鉱泉)であり、

つるつるした湯当たりで、肌に優しくなめらかな感触の湯が特徴だった。

大型浴場にはその他バイブラ(気泡・超微細気泡)風呂、露天風呂、サウナルームも完備されており、温泉好きの二人はいつまでも満喫した。

『やはり北海道は温泉だ』という二人の持論が一致し、

今後も時間があれば温泉旅行をしようと約束しあった。

 

夜は和食レストランで海鮮料理に舌鼓を打った。

湯上りのビールは最高だった。

北海道はどこに行っても食材が豊富で美味しかった。

二人とも十分満足して部屋に戻るとテレビや本を見ながら過ごした。

翌朝はバイキング方式のモーニングを食べて出発した。

(つづく)

63.消された記憶2

その夜は百合の作った遅めの晩ご飯を食べてアパートへ帰った。

すでに警察の鑑識官の仕事も終わっている。

部屋の中は雑然としており、片付け終わったのはもう朝方だった。

少し仮眠を取っていると、百合からラインが入った。

『翔さん、疲れは取れましたか?』

『今日、アパートへ行っていいですか?』

昨日怖い事があったので百合は心細いのかもしれない。

翔は『もうこのアパートは引っ越すのでしばらく会えない』と伝えた。

もうこの危ないアパートへ百合を来させることは考えていなかった。

もし今回、相手が同じ方法を使った殺人鬼ならば

二人の命は今頃ミーアと一緒だったのかもしれなかったからだ。

そう考えると『どんなことがあっても百合を守る』と誓った言葉に賭けて、

このアパートは引き払う必要があった。

葉山館林家へ使用許可を貰っている新宿の探偵事務所の使用開始の連絡をし、

すぐさま引っ越すこととした。

百合から『わかりました。落ち着いたら連絡ください』と返答があった。

 

その日から引越が終わるまでは早かった。

新宿の事務所奥には自室とトレーニング室が併設されている。

荷物とは言っても、単身赴任と変らない程度の量なので一日もかからなかった。

引越業者は葉山不動産からの依頼の業者で驚くことに無料だった。

その夜は、百合が引越祝いの料理を作ってマンションで待っている。

 

「翔さん、無事引越ができておめでとう。精一杯作ったのでたっぷり召し上がれ」

「ああ、ありがとう」

「翔さん、実家に無理言って、私も合鍵貰いました。良かったですか?」

「ああ、もう貰ったのなら、駄目って言えないじゃん」

「ええっ?駄目って言います?もしそうなら・・・百合は悲しいです」

「言わないよ。ただし、危ない街だから注意してね。百合は可愛いから心配なんだ」

「はい、でも翔さんがいるから安心です」

「それが駄目、この前、危なかったよ」

「そうでした。でもあの時、百合は翔さんだけ見ていたし、ずっと安心していました」

「ありがとう。もっともっと、がんばるからね」

「はい、待ってます」

「???」

 

翔は久しぶりの百合の手料理に満足だった。

久しぶりに会って嬉しい百合がなかなか翔を帰そうとしなかったし、

翔も離れがたかったため、肩をくっつけて夜中までソファに座って、

テレビや本を読んで過ごした。

時々、二人はいつも間にいたミーアのことを

ふと思い出しては悲しい気持ちになった。

 

これからは卒業式を待つだけだが、

探偵業を始めるにあたり知識や準備が必要だった。

葉山不動産の紹介で探偵学校の塾へ短期入学をした。

ここでは尾行術および格闘術、クライアントの接客方法、報告書の作成方法など

探偵業のイロハを教えてもらった。

(つづく)

21.美波の憂鬱

最近、友人の香山さんがやたら美波へ意地悪をしてくるため気分がすぐれなかった。

美波が何か悪い事でもやっていれば謝ろうと理由を聞いてみても、

『別に』と答えるだけで理由がわからないままだった。

米子にいる時にも同じようなことを何度か経験していて慣れてはいるが

理由無くそのようにされることにただただ気持ちさを感じた。

授業内だけでなくサークルでも美波の居ないところでも同じようだった。

でも冬休みに香山さんが市内のマンションを引越すると聞いてほっとした美波だった。

 

冬休みになるとウインタースポーツ以外で彼女と顔を合わせることもないし、

できるだけ嫌な気持ちになることを避けられた。

そのうち彼女がサークルからも抜けると聞いて、不思議に思っていたが

家庭教師をしている中学生の進学準備に忙しくなり、

美波もかかりっきりとなって、あまり彼女のことは意識に上らなくなった。

特に家庭教師の中学生は、

いつでも携帯電話で聞いてくるので気が抜けなかった。

素直で勉強の良くできる女の子であり、

お姉さんとして色々と相談に乗りながらの関係が続いている。

家庭教師を始めて成績が順調に上がってきており、

模試結果から見ても受験日の体調に注意していれば

志望校には合格できると思っている。

 

しばらくして噂で香山さんが休学したと聞いた。

引っ越したばかりのマンションは早々に引き払われ、仙台の実家へ帰ったらしい。

授業も熱心で阿部さんとも楽しそうに付き合っていたので不思議だった。

実家の家業がうまくいかなくなり香山さんもお手伝いが必要となったらしい。

 

のちに芳賀さんから、香山さんの友人から聞いた話として

香山さんは阿部さんを都合の良い男性として利用していたこと

香山さんは1年生夏にはお見合いして婚約者がすでにいたこと

阿部さんがそれに非常にショックを受けてサークルを辞めたことを聞かされた。

その後、美波は彼とたまにキャンパスですれ違うも目も合わせなくなった。

しかし、美波が社会人になってから一番驚いたことは

当時、阿部さんが本当に好きだったのは、美波のことだったと聞いた時だった。

(つづく)