はっちゃんZのブログ小説

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送霊師奇譚

この物語は特殊能力を持つ男子大学生と女子高校生が主人公となっています。この二人は現実のこの世界へ影響を及ぼしている異なる波長の世界に生きる生物(霊魂、悪霊、悪魔など)と戦って解決していきます。

内容的には悲しく切ない場面が多い物語となっています。
時に霊魂の存在を信じていない警視庁迷宮事件係(通称038(おみや)課)の二人の刑事とタッグを組んだり、またある事情からこの刑事二人に知られない様に行動して事件を解決していきます。この物語の主人公は、小生の他の作品である『武闘派なのに、実は超能力探偵の物語』の「妖?行方不明者を探せ」の章に出てきた二人です。

主な登場人物
桐生遼真(きりゅう りょうま)
桐生一族で桐生 翔の従兄弟。20歳。都内有名私立大学3年生。身長178センチ、体重70キロ。淡いダークグレイの眼鏡を掛けており、鼻筋の通った顔で人を惹きつける切れ長の眼で金色の輪郭の暗褐色の瞳を持つ青年。両親が狐派の人間で多くの異能を持つ。霊を霊界へ送る力(金環力)を持つ。

桐生真美(きりゅう まみ)
桐生一族で17歳、都内有名私立女子高校2年生。身長163センチ、長い黒髪をシュシュでまとめている。普段はややブルーがかったレンズの眼鏡をかけており、丸顔に真っ黒の長い髪、やや厚めで真っ赤な唇が目立つ。猫のような丸い眼を持ち銀色の輪郭の深い暗赤色の瞳を持つ女性。両親が狐派の人間で多くの異能を持つ。霊を自縛させる力(銀環力)を持つ。

新宿桐生探偵事務所 
桐生翔:所長、遼真の兄貴分、桐生一族の次期頭首候補。
    ※私の他作品『武闘派なのに、実は超能力探偵の物語』の主人公。
館林百合:翔の許嫁、館林一族のお姫様、現在は探偵事務所事務員。

警視庁38課(迷宮事件係、通称038(おみや)課)刑事 
宮尾徳蔵警部:翔と仲の良い都倉警部と同期でたまに一緒に酒を飲んでいる。
小橋光晴刑事:格闘のプロのプロレスラーさえも失神させた経歴を持つ。

尚、この小説は「小説家になろう ミッドナイトノベル」https://syosetu.com/site/about/ でも同じ作者名にて掲載しています。

話の大筋に全く変更はありませんが、18歳未満が閲覧できないため、こちらとは性描写部分を変えています。

<もくじ>

第1章:記憶喪失の男

1.新生活

2.おみや課刑事登場

3.男との対話

4.捜査開始

5.霊を見る力。記憶を見る力。

6.304号室の二人

7.記憶の世界へ1

8.記憶の世界へ2

9.記憶の世界へ3

10.姉妹との戦い1

11.姉妹との戦い2

12.姉弟との戦い3

第2章:いつまでも美しい女

1.多摩湖変死体事件

2.竜神様のプレゼント

3.霊査1 物に宿る記憶

4.霊査2 須田範宣氏の証言

5.美女の慈善家

6.捜査1 須田氏の人生

7.捜査2 現場と竜神様

8.霊査3 多摩湖周辺

9.美真野家の秘密1

10.美真野家の秘密2

11.捜査3

12.捜査4

13.魔法陣、悪魔、地獄、天使、天界について

14.潜入、そして藤原との戦い

15.魔女の悲しみ、神父の罪

16.真の敵との戦い1

17.真の敵との戦い2

第3章:みいつけた

1.公園にて

2.乳児誘拐事件発生

3.子育て

4.捜査1

5.捜査2

6.霊査1 石碑の声

7.霊査2 柄島真弥・茉優の物語

8.霊査3 柄島一馬・和馬の物語

9.霊査4 中島茉緒・美緒の物語

10.和馬と美緒の道行き

11.事件の顛末

第4章:迷い里からの誘い

1.無差別殺人事件、悲惨な事故の発生

2.迷い里伝説

3.霊査1 6月26日事件犯人木村の場合

4.霊査2 7月25日事件犯人浜口の場合

5.霊査3 8月23日運転手天山氏の場合1

6.霊査4 天山 聡氏の場合2

7.霊査5 天山 聡氏の場合3

8.迷い里、道切村へ侵入

9.迷い里、道切村での戦い1

10.迷い里、道切村での戦い2

11.迷い里、道切村での戦い3

第5章:真美を救え

1.事件発生

2.遼真、出発する。

3.萩原マリコの物語

4.遼真、真美を発見

5.白猿(びゃくえん)との戦い

6.怨霊、猿野花(さのか)の物語

7.十字路の悪霊(埋められた呪詛)

8.すみれ、決別の涙、そして

9.遼真の後悔

第6章:母と共に

1.遼真と母

2.怪事の始まり

3.深き淵に潜むモノ

4.襲撃

5.遼真覚醒、そして母は

第7章:私の中の誰か

1.遼真の背中へ

2.多摩湖の桜吹雪

3.真美の友人の悩み

4.舞華の悪夢

5.臓器の記憶

6.舞華の笑顔

7.霊査1(木村瑠海の悲しみ1)

8.霊査2(木村瑠海の悲しみ2)

9.霊査3(木村瑠海の悲しみ3)

10.捜査1(友人恵理那)

11.捜査2(上田の情報)

12.捜査3(ハングレ組織、狂次の情報)

13.霧派桐生紅凛と黒狼の登場

14.霧派始動

15.レッドシャーク団との戦い1

16.レッドシャーク団との戦い2

17.レッドシャーク団との戦い3、そして瑠海の鎮魂

第8章:占い死

1.テロ

2.選挙演説

3.捜査1(シシトー教団)

4.捜査2(宍戸家情報)

5.霊査1(旧宍戸家の居間)

6.霊査2(旧宍戸家夫婦、鷲と鈴女の部屋)

7.霊査3(旧宍戸家鷹の部屋)

8.捜査3(東アジア平和会)

9.捜査4(シシトー神の館へ潜入)

10.捜査5(令和獅子党1)

11.霊査4(令和獅子党2)

12.霊査5(怪死の現場)

13.シシトー神教団と令和獅子党の躍進

14.霊査6(古代日本の歴史)

15.淫獣1

16.淫獣2

17.シシトー神との対話

18.シシトー神との戦い

19.御社の創建

第9章.魔族の蠢動

1.入学

2.

3.

4.

5.

6.

7.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『武闘派!』なのに、実は超能力探偵の物語

あらすじ

桐生 翔(きりゅうしょう)は新宿の片隅で私立探偵業を営む。困った人を助けたいと思う正義感あふれる若い探偵が、この小さな探偵社を訪れるクライアントから持ち込まれるさまざまな依頼を真摯に解決していく。

ある日突然超能力(テレポーテーション)に目覚めるが、本人もその能力をあまり信用しておらず発現頻度も曖昧で使い方もよくわかっていないまま物語は進んでいく。

翔の高い格闘技術と最新探偵道具を使い事件の核心を掴み解決していく姿と恋人百合とのラブラブな場面を楽しんで欲しい探偵小説。 

尚、この小説は「小説家になろう ミッドナイトノベル」https://syosetu.com/site/about/ でも同じ作者名にて掲載しています。

そちらでは話の大筋は全く変わりませんが、18歳未満は閲覧が不可能なためこちらとは性描写の内容を変えています。

 

~もくじ~

1.絶体絶命のはずなのに?      

2.翔、帰還?! 

3.京(狂)一郎、見参!       

4.『葉山館林研究所』到着 

5.いつ出るの?超能力!                      

6.葉山館林邸1

7.葉山館林邸2                          

8.テロ教団から都民を救え!1

9.テロ教団から都民を救え!2     

10.テロ教団から都民を救え!3

11.「目黒館林研究所」完成       

12.臓器売買組織を壊滅せよ

13.ストーカー事件を解決せよ!1 

14.ストーカー事件を解決せよ!2

15.ストーカー事件を解決せよ!3 

16.ストーカー事件を解決せよ!4

17.百合との出会い1                     

18.百合との出会い2

19.百合との出会い3           

20.百合との出会い4

21.幼い兄妹を救え1                           

22.幼い兄妹を救え2

23.幼い兄妹を救え3          

24.幼い兄妹を救え4

25.幼い兄妹を救え5       

26.翔とミーアと百合1

27.翔とミーアと百合2                      

28.局アナ盗撮事件を解明せよ1

29.局アナ盗撮事件を解明せよ2  

30.局アナ盗撮事件を解明せよ3

31.局アナ盗撮事件を解明せよ4  

32.局アナ盗撮事件を解明せよ5

33.未知の物質は?        

34.桐生事務所ビル改築

35.オレオレ詐欺団を壊滅せよ1      

36.オレオレ詐欺団を壊滅せよ2

37.オレオレ詐欺団を壊滅せよ3     

38.オレオレ詐欺団を壊滅せよ4

39.オレオレ詐欺団を壊滅せよ5  

40.お化けアパートの怪1

41.お化けアパートの怪2             

42.お化けアパートの怪3

43.お化けアパートの怪4             

44.お化けアパートの怪5 

45.お化けアパートの怪6     

46.初めてのくちづけ

47.百合、実家で相談する     

48.翔、久々に実家へ帰る1

49.翔、久々に実家へ帰る2    

50.百合、初めて桐生家へ

51.翔、初めて葉山館林家へ1   

52.翔、初めて葉山館林家へ2

53.翔、初めて葉山館林家へ3   

54.翔、初めて葉山館林家へ4

55.新宿探偵事務所スタート1   

56.新宿探偵事務所スタート2

57.新宿探偵事務所スタート3    

58.新宿探偵事務所スタート4

59.逆恨み1            

60.逆恨み2

61.逆恨み3               

62.消された記憶1

63.消された記憶2           

64.消された記憶3

65.怪しいクライアント      

66.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ1

67.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ2 

68.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ3

69.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ4  

70.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ5

71.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ6  

72.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ7

73.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ8  

74.痴漢冤罪ビジネスの闇を照らせ9

75.遺族の恨みは晴れるのか1     

76.遺族の恨みは晴れるのか2

77.遺族の恨みは晴れるのか3             

78.遺族の恨みは晴れるのか4

79.遺族の恨みは晴れるのか5             

80.遺族の恨みは晴れるのか6

81.遺族の恨みは晴れるのか7              

82.遺族の恨みは晴れるのか8

83.遺族の恨みは晴れるのか9             

84.遺族の恨みは晴れるのか10

85.遺族の恨みは晴れるのか11           

86.遺族の恨みは晴れるのか12

87.遺族の恨みは晴れるのか13           

88.遺族の恨みは晴れるのか14

89.遺族の恨みは晴れるのか15            

90.遺族の恨みは晴れるのか16

91.遺族の恨みは晴れるのか17    

外伝1

92.特訓1 (浅間別荘編1)          

93.特訓2(浅間別荘編2)                   

94.特訓3(浅間別荘編3)       

95.特訓4(浅間別荘編4)   

96.特訓5(浅間別荘編5)                       

97.特訓6(浅間別荘編6) 

98.特訓7(浅間別荘編7)                       

99.特訓8(葉山編1)        

100.特訓9(葉山編2)                      

101.特訓10(葉山編3)                   

102.特訓11(葉山編4)                    

103.妖?行方不明者を探せ1       

104.妖?行方不明者を探せ2             

105.妖?行方不明者を探せ3          

106.妖?行方不明者を探せ4            

107.妖?行方不明者を探せ5            

108.妖?行方不明者を探せ6            

109.妖?行方不明者を探せ7  

110.妖?行方不明者を探せ8             

111.妖?行方不明者を探せ9       

112.妖?行方不明者を探せ10           

113.妖?行方不明者を探せ11 

114.首都を防衛せよ1                     

115.首都を防衛せよ2       

116.首都を防衛せよ3                     

117.首都を防衛せよ4      

118.首都を防衛せよ5                      

119.首都を防衛せよ6   

120.首都を防衛せよ7                      

121.首都を防衛せよ8   

122.首都を防衛せよ9                      

123.都を防衛せよ10     

124.首都を防衛せよ11

125. 学園を守れ1        

126.学園を守れ2

127. 学園を守れ3        

128.学園を守れ4

129. 学園を守れ5        

130.学園を守れ6

131.新たな旅立ち‐龍鱗一族の誕生‐

 

『武闘派!』なのに、実は超能力探偵の物語<外伝1>

百合との婚約編 

<この物語の位置>

 この物語は「遺族の恨みは晴れるのか事件」と「特訓」の章との間に位置する物語で時間軸的には両章の物語の3年前に位置します。恋人の百合との関係が深くなり今後にも繋がる部分ですので外伝として作成しました。

ただ料理に関しての記述は「特訓」部分と重なる部分もあるため「特訓」部分の編集を実施予定です。その部分はご容赦下さい。

 

百合との婚約1

百合との婚約2

百合との婚約3

百合との婚約4

百合との婚約5

百合との婚約6

 

さざなみにゆられて-北海道編-

小説期間:2000年平成12年4月1日~

あらすじ:

さざなみにゆられて-山陰編-の続編です。

山陰地方で生まれた美波は写真集で見た富良野などの北海道の雄大な風景に憧れ、

自分のことを全く知らない人の街で一人で暮らしてみたいと北海道の大学を受験。

小樽商科大学に無事合格し義父の影響で銀行員を目差す。

両親は米子市にいたが、2000年に義父の勤務する銀行の合併に伴い、

偶然札幌市へ異動となる。

北の都『札幌』を中心に各季節ごとに趣きを変える北海道内の自然や観光名所を含めて

慎一、静香、美波、雄樹、夏姫の生活が始まる。

悲しい事件は起りません。おだやかに時間が過ぎていくだけです。

※20年も経つと観光場所や食べ物も変わっているため、整合性を合わせるためにお店や食べ物は最近のものに変えています。ご容赦下さい。

 

尚、この小説は「小説家になろう ミッドナイトノベル」https://syosetu.com/site/about/ でも同じ作者名にて掲載しています。

話の大筋に全く変更はありませんが、18歳未満が閲覧できないため、こちらとは性描写部分を変えています。

 

登場人物

日下慎一 現在41歳、1999年静香と再婚。山陰支店では預金課で勤務している。

     2000年4月より関西中央銀行と札幌振興銀行が合併し「六花銀行」となる。

     2000年に北海道札幌市へ再度融資課員(支店長代理)として異動。

日下静香 現在39歳、17年前に夫と死別し娘(美波)を一人で育てた。

                  1999年5月に日下慎一と再婚。現在妊娠中。

日下美波 現在19歳、鳥取県米子東高から北海道小樽商科大学へ入学し青春を満喫中。

日下雄樹 2000年夏に生まれる男の子。

日下夏姫 2000年夏に生まれる女の子。

 

もくじ

1.札幌へ              

2.初めての胎動

3.美波の戸惑い           

4.慎一の自覚と不安

5.初出勤             

6.二人でコーヒー

7.美波の誕生日           

8.YOSAKOIソーラン祭り

9.美波、学生生活スタート       

10.独立への一歩

11.母の再婚と強がり娘       

12.サークル

13.ゲレンデ            

14.雪のイベント

15.誕生              

16.子供たちのお披露目

17.お宮参りと育児への参加              

18.銀杏の下で

19.シシャモ祭りとラムジンギスカン    

20.お食い初め

21.美波の憂鬱                                        

22.流氷観光1

23.流氷観光2           

24.流氷観光3

25.桃の節句                                           

26.静香始動            

27.支笏湖とオコタンペ湖1                   

28.支笏湖とオコタンペ湖2     

29.端午の節句                                        

30.美瑛と富良野1         

31.美瑛と富良野2                                  

32.すながわスウィーツロード1   

33.すながわスウィーツロード2            

34.美波、YOSAKOIへ出場1

35.美波、YOSAKOIへ出場2   

36.子供達の誕生日

37.函館港まつりへ1-地球岬-        

38.函館港まつり2-森駅-

39.函館港まつり3-ホテルにて-     

40.函館港まつり4-花火大会-

41.函館港まつり5-ホテルの朝食-   

42.ねぶた祭り1-青森へ移動-

43.ねぶた祭り2-青森観光1-          

44.ねぶた祭り3-青森観光2-

45.ねぶた祭り4-祭り本番-       

46.青森から函館へ-竜飛海底駅-

47.函館観光1                     

48.函館観光2

49.函館観光3-恵山岬-         

50.洞爺観光-有珠山・昭和新山-

51.洞爺から札幌-昭和新山牧場-     

52.偶然の再会-望羊中山-

53.美波の恋?           

54.ドライブへの誘い

55.彼とドライブ1-小樽から帯広へ-    

56.彼とドライブ2-幸福駅-

57.彼とドライブ3-然別湖・東雲湖-  

58.秋桜祭り

59.七五三参り            

60.旭山動物園1

61.旭山動物園2                      

62.クリスマス

63.層雲峡氷瀑祭り                                 

64. 支笏湖氷濤まつり 

65.雪遊びとさっぽろ雪まつり    

66.平岡公園梅まつ

67.童話村たきのうえ芝桜まつり   

68.美波内定のお祝い

69.友人と内定のお祝い       

70.旭川にて1-三浦綾子記念文学館-

71.旭川にて2-初めての彼の部屋

72.旭川にて3-彼からのお祝い-

73.梅雨の晴れ間、定山渓へ1

74.梅雨の晴れ間、定山渓へ2

75.北竜ひまわりの里

76.子供達の習い事とえこりん村

77.道央旅行1(襟裳岬・広尾・大樹・忠類)

78.道央旅行2(トマムリゾートで夕食・雲海テラス)

79.道央旅行3(ファームでランチピクニック)

80.道央旅行4(ミナミナビーチと夕食)

81.道央旅行5(朝食とラフティング、ヤギの郵便屋さん)

82.転勤の打診

83.美波の初恋の終わり

84.秋の道東旅行1(丘珠空港から阿寒湖へ)

85.秋の道東旅行2(阿寒湖湖畔にて)

86.秋の道東旅行3(摩周湖と屈斜路湖にて)

87.秋の道東旅行4(屈斜路湖湖畔から知床へ)

88.秋の道東旅行5(知床第一ホテルにて)

89.

90.

 

 

 

 

 

 

 

 

さざなみにゆられて-山陰編ー

*あらすじ*

山陰地方の町、米子市で小料理屋「さざなみ」を営む静香・美波親子と

関西生まれの銀行マンの慎一とのふれあいを描く。

山陰地方の豊かな四季の中で三人三様の心の傷が癒される時間を描く。

読者の対象年齢は20歳以上に設定しています。

*登場人物*

後藤静香 小料理屋「さざなみ」の店主。

                  地の食材を美味しく食べさせてくれる店。

     店ではいつも弓浜絣を着ておりおだやかな笑顔の女性。

                  娘と二人暮らし。

後藤美波 静香の娘。高校一年生。明るく人懐こいところがある。

日下慎一 春に米子へ新規開拓を目的に赴任してきた独身の銀行マン。

 

尚、この小説は「小説家になろう ミッドナイトノベル」https://syosetu.com/site/about/ でも同じ作者名にて掲載しています。

話の大筋に全く変更はありませんが、18歳未満が閲覧できないため、こちらとは性描写部分を変えています。

 

*改訂について*

内容は数年単位で徐々に見直しを行っています。

目次の後に(改)となっているものは見直して内容を若干変えています。 

~もくじ~

1.赴任(改)      

2.「さざなみ」初来店 (改)

3.秀峰大山へ(改)   

4.静香のまなざし、美波のまなざし(改)

5.面影(改)             

6.追憶1(改)

7.追憶2(改)            

8.美波の秘密

9.がいな祭りと境港         

10.がいな大花火大会

11.美波、秋の県大会新人選へ出場  

12.帰途の二人

13.とまどい            

14.師走、三人で

15.帰省、遠い記憶         

16.初詣

17.移り変わる記憶         

18.桜街道

19.二人で出雲へ          

20.母の再婚

21.彼との距離           

22.浴衣1

22.浴衣2             

24.突然の辞令

25.それぞれの思い         

26.いつもの音

27.美波のがまん          

28.慎一の約束、静香の願い

29.異動の朝            

30.湯呑

31.壊れた携帯           

32.霧と痛みの世界

33.間違い電話           

34.幸恵の疑問

35.静香親子、神戸へ        

36.春の息吹

37.再赴任             

38.再び『さざなみ』へ

39.美波の受験           

40.美波の言葉

41.旅立ちの日           

42.広すぎる家

43.最初の夜            

44.相性

45.新婚旅行、娘と1        

46.新婚旅行、娘と2   

47.業界再編への動き、そして

1.入学(第9章:魔族の蠢動)

目黒にある遼真の生家である神社の敷地内へ
新たに北星皇子神社を創建してから1週間経ち、
遼真がシシトー神よりその力の一部を授かった翌日の金曜日。
境内を彩る桜の木から花びらが春の風にのって社務所の窓から舞い込んでくる。
この春、真美は無事高校を卒業し、晴れて遼真の通う大学へ入学した。
入学した学部は遼真と一緒の「歴史学部」だった。
入学式には京都から真美の父真也や母美桜そして妹里桜が上京して来て
大学生となった姿を見て大いに喜んでいる。
父親の真也に至っては久々に見た娘の大きくなった姿に涙ぐんでいる。
真美の高校時代の友人も一緒の様で集まってみんなで写真を撮っている。
真美の両親も妹も遼真にとっては幼い頃から知っている人達で懐かしかった。
遼真は運転手に徹して真美一家を送り迎えしている。
入学式に出席しているスーツ姿の真美は驚くくらい大人っぽくなっていた。
その夜は、家政婦のウメさんの作ったお祝い料理に舌鼓を打った。
真美一家は客間に泊まり、翌日土曜日は朝早くから東京見物に出発した。
予約していた東京タワーとスカイツリーに昇り、浅草の浅草寺にお参りし、
お昼は里桜が初めてだと言う『月島名物のもんじゃ焼き』を堪能し、
その後みんなで皇居内を歩いて、真美の両親は娘が元気であることに安心し、
遼真へ真美のことを強くお願いして東京駅から新幹線乗って帰って行った。
真美は久しぶりに家族に会い、別れるとなると寂しくなったのか
新幹線のプラットホーム上で
席に座った家族の姿が見えなくなるまでいつまでも手を振って涙ぐんでいる。

翌週の月曜日から真美はオリエンテーションの期間で忙しく通っている。
同じ新入生には学部は異なるが、高校時代の友人の一人で工藤真奈美がいる。
真奈美は「文学部」へ入学していて、将来は学校の先生を目指している。
彼女の一番下の妹瑠海は心臓移植をした後、
一時期悪夢に悩まされていた様だが今では日毎に良くなっていて真美は安心した。
(第7章:私の中の誰かを参照)
二人は一年生の基礎講座は同じ物が多かったので一緒に受ける事にしている。
同級生は男女共にやや大人しいファッションの人が多く、
キャンパスですれ違う上級生もあまり奇抜なファッションの人はいなかった。
さすが都内でも有数のお坊ちゃまお嬢様学校と呼ばれているだけはあった。

そんな時、真奈美から真美へ『新入生歓迎コンパ』へのお誘いがあった。
新入生で特に女子は会費も不要でお得との話だった。
昨年まではこのようなイベントは無かったそうだが今年から始まったと言われ、
クラスの男子から『上級生からみんなに声を掛けておいでと言われた』と
女子へも声が掛けられて多くの人が出席するらしい。
女子高出身の真奈美は少し怖いけど興味があるようで、
かといって一人で出るほどの勇気もないからと真美を誘ってきた。
今週は遼真が長期出張でいなくて暇だったし、
真美は同級生の男子には全く興味も無かったが、
女子校育ちでお嬢様の真奈美を一人で行かせるのも心配だし、
多くの同級生の女子とも仲良くなれるならいいなと思い一緒に出ることにした。

「遼真様、今頃どうされているかしら・・・。私も行きたかったなあ・・・」
ある夜、テレビを見ながら独り言を呟いていると家政婦のウメさんが、
「真美ちゃん、遼真様は遊びに行ってる訳じゃないからね。
 それに新入生はオリエンテーションがあるから一緒に行けないでしょ?」
「わかってます。わかってますけど・・・」
「それに先週の日曜日に二人きりで出掛けたんじゃなかったかい?
 あんなに朝早くから夜遅くまで外出してきたじゃないか」
「うん、そう・・・すごく楽しかったし嬉しかったわ」
「なら、今週くらいは我慢しなきゃね」
「はーい、でもやっと一緒に大学へ行けると思ってたのに・・・」
「まあその気持ちもわかるけどねえ。
 でもあなたはいまそれどころじゃないんじゃないの?」
「なんで?・・・あっ、そうでした・・・」
「最近、朝の鍛錬に力が入っていない気がするのは気のせいかね?」
「・・・ごめんなさい。確かにその通りでした」
「まあ、真美ちゃんが自分の気持ちに素直なところは

 遼真様も気に入ってるからいいけど、
 喉元過ぎれば何とやらですぐに安心しちゃうところがあるのは少しねえ?」
「あ、はい、その通りでした。ごめんなさい」
「まあ、真美ちゃんのそういうところも気に入ってるみたいだけどね」
「そう?やったね」
「そう、真美ちゃんを、いつまでも目の離せない『妹』としてね」
「!・・・えっ?『妹』?・・・そうなんですか?」
「そう、真美ちゃんが常々嫌だと思ってる様な『妹』ね・・・」
「あーん、ヤダー、もう私は大学生になったのに・・・」
「そういう単純なことですぐに安心するから、いつまでも妹なのよ」
「・・・」
「遼真様は察しの悪い所はあるけどとても優しくて大きな人。
 両親も兄弟も居ない遼真様にとって
 真美ちゃんは唯一の妹みたいな存在なのだろうねえ」
「私にとっても遼真様はいつも優しくて強い兄みたいなものだったわよ」
「このまま行くとそれ以上にはなれないねえ」
「・・・そうだよね?ウメさん、どうしたらいい?」
「さあね。遼真様の心はよくわからない。
 ただ真美ちゃんを本当に大切に思ってることだけは確かだね」
「私が頼りないからいつもそう思われてるのかしら・・・」
「そうじゃないと思うけど、どうしても真美ちゃんを守りたいみたいね」
「それはすごく嬉しいんだけど・・・信用されてないのかなぁとも感じるの」
「うーん、信用していないとは思わないけど、
 一族で遼真様ほど幼い頃から強い力を発揮してきた男はそういないよ。
 遼真様にとっては誰であっても自分が守る対象なのかもしれないね。」
「そうなのかな・・・遼真様にとっては誰でも同じなのかな・・・」
「真美ちゃんは生まれた時から傍に遼真様が居て兄妹の様に育ってきてるから
 色々な感覚も心も通じ合う所もあったと思うの。
 そのために二人が戦う時に駆使する術も
 単に二人の通じ合い易い術が発現しただけかもしれないとも考えることがあるわ」
「そんな・・・」
「最近、一族でも色々な力が出て来ている者が増えてきていると聞いてるの。
 真美ちゃんと同じ力を持つ者も生まれたと聞いたわ。まだ力は弱いけどね。
 我が一族は晴明様の血筋だから様々な術を持つ者が生まれやすいの。
 その時代、その時代で一番相性の良い術者同士が組んで敵と戦ってきたのよ。
 最近は手伝ってないけど夢見術の夢花ちゃんと同じ力は真美ちゃんには無いよね?
 色々なもしがあるけど、
 仮に夢花ちゃんが昔からの真美ちゃんと同じ場所に居たとしても
 彼女は今までの遼真様と真美ちゃんの様に一緒に戦えないと思うわ。
 そして今後は敵の力によって戦い方も色々と変えないといけないかもしれない。
 それを考えると遼真様の『霊滅』以上の強い術が無いうちは
 あなたの様な『自縛印』の出来る術者が必要でしょうね」
「この前、遼真様はシシトー神さまから新たな力を授かったわ。
 今はまだまだらしいけど最高レベルまで練度を上げれば、
 霊体であれ肉体であれ同時に縛り上げ切り刻むことができる力と聞いたわ」
「真美ちゃんには酷な話かもしれないけれど、
 そうなれば将来的には自縛印は不要になるという事よ。
 ただ霊にも痛みを味あわせたくない遼真様が、
 その肉体も霊体も切り刻む様な術を使うかどうかは疑問だけどね。
 このまま行けば遼真様は、次期頭領に決まると私は見ているわ。
 現在の所は真美ちゃんとの術の相性が良いから一緒にいるけど、
 今後、真美ちゃんの術よりもっと相性の良い術の人間が出て来るかもしれない、
 もし将来に遼真様に新しい力が発現してきたとしたら今のままではいないし、
 一族としてはより最適な術を持つ相方を探し出してつけることになるわ。
 真美ちゃんも大変な人を好きになっちゃったね」
「せっかく竜神様から新しい力が目覚めつつあると聞かされたのに・・・。
 私では遼真様の役に立てない場合もあるの・・・そうよね・・・」
「あれほどの力を持っても毎日の様に辛い修行をしながら
 関東の霊的礎を点検して、定期的に補修している姿を見ていると
 あれ以上頭領に相応しい人間はいないと思うし、
 今後も遼真様を絶対に守らなければ東京や関東地方いや、

 この国の霊的平穏は無いわね」
「そう、遼真様はこの国に絶対に居なくてはいけない人、
 なのに自分を大切にしないで自分が傷ついても周りの人を助けるのです」
「強い力を持つことは強い責任を持つと考えているのでしょうね」
「だからこそ、一緒に居る私が遼真様を守らないといけないのに出来てないの。
 はあ・・・いつまで経っても後ろ姿しか見えない・・・」
「一族としても力はずっと継いでいかないといけないけど難しいわねえ。
 いくら強くてもこの前の様に神様相手では普通は勝てないしねえ。
 昔から強かった人もたくさんいたけれど生き残っている人は少ないね。
 だからこそ跡継ぎを早く多く作るのがいいのだけれどそううまく行かないしねえ」
「ねえウメさん、それはそうと頭領の凄いお力の話は聞いていますが、
 奥様の朋絵様はどのようなお力をお持ちなのでしょうか?」
「さあ・・・それははっきりとは知らないけれど、
 そのお力は真美ちゃんと遼真様の様な組み合わせではないかしらねえ」
「えっ?私と遼真様と同じ様な組合わせ?」
「うん、はっきりとは知らないけれど、
 確か頭領も遼真様と同じ様に霊を滅する力があると昔からお聞きしてるわよ。
 よくはわからないけど確か朋絵様は、
 霊体をある一定の空間に閉じ込める力があるとお聞きしたことがあるよ」
その時、偶然禰宜の智朗さんが顔を出して
「そうだよ。確か頭領は『炎滅』と言って
『霊体を浄化した炎で燃やしてしまう力』とお聞きしているよ。
 ああ、それと思い出した。
 遼真様の父親の龍司さんは、『握滅』と言って、
 『霊体を狭い空間に閉じ込めて一点に収縮させて潰す』とお聞きしたことがあるよ」
「『炎滅』に『握滅』・・・すごいお力ですね・・・
 遼真様の『霊滅』はそれとは違って霊体を少しずつ分解していきますね。
 そんなんだ・・・朋絵様は霊体を空間に固定する力、
 八重様は霊糸で霊体から攻撃を防いだり霊体を固定し動けなくさせる力か・・・」
「そうみたいだね。
 確か遼真様のお母さんから私が小さい時に話してくれたことがあったな。
 『遼真は心の優しい子だから霊にも痛みを与えたくないらしいわ』
 と笑っていたことを思い出したよ。
 それを聞いた時、私はどんな者にも優しい遼真様らしいなと感じたよ」
「そうそう、その光景は私も遼真様と一緒に戦った者から聞いたよ。
 何とその力は6歳の時にお母さんと一緒に戦った時に初めて出た力のようだね。
 それと、でも確か5歳の時、そうそう・・・
 真美ちゃんが誘拐された事件ではそれとは異なる力を使えたって聞いたよ」
その事件の時、意識を失っていた真美にその力を見た記憶は無かった。
幼かった真美が覚えているのは、その事件の後に両親から、
真美の為に遼真が魔人となり一族の者に殺される可能性があったと聞いた事だけだった。

88.秋の道東旅行5(知床第一ホテルにて)

知床第一ホテルは「心も体も癒される知床5感」として宿泊されるお客様に、

5のおもてなしを用意している。

ホテルの公式ホームページでは最初に紹介されている。

1,食事:バイキング、和食会席を用意

2.自然:世界遺産知床の自然

3.人:シリエトクの人々(知床の達人)による観光案内

4.湯:全国で初めての天然翡翠石の大浴場

5.静:滞在シーンに合わせた部屋の用意

 

このホテルは、何度か宿泊している同僚に紹介されて予約したのだが、

聞いていた通り歴史のある暖かく趣のあるホテルでほっとして部屋に入った。

予約した10階の部屋は輸入家具が配置されておりシックでエレガントな雰囲気であった。

そしてその窓からの景色は、オホーツクの蒼い海と足元に知床の大自然が広がっている。

今夜の夕食は、部屋食でゆっくりと食べようと考えているため、時間にはゆとりがあった。

子供達は疲れていないため元気一杯で部屋中を走り回っている。

早速子供達を「子供の楽園アクアランド“ソンテ”」へ連れて行った。

このプールは、天候を気にせず、好きなだけ遊べる室内施設で「ソンテ」とはロシア語で太陽を意味するらしい。壁には大きな太陽の絵と青い海、知床に生きるシャチやクリオネなども描かれている。

プールの深さが最大1mなので子供達にはちょうど良かった。

プールに設置しているすべり台やアスレチックなどの遊具が一杯で、多くの宿泊客が遊んでいる。

今回の旅行、2回目のプール体験で子供達の表情もわくわくしていて安心した。

今日はずっと車での移動だったので子供達には暇だったらしく、

すぐさまチューブ型すべり台に並び、下のプールで待っている父へ滑って来る。

夏姫は、『お父さん、一緒に滑ろう』と手を繋いでくるので、

二人で一緒に夏姫を足の間に挟んで滑ると雄樹は、『僕も僕も』と言ってくる。

何度も子供達とすべり台を往復して、今度は回転すべり台へと移動して滑る。

次はアスレチックがあるため、鉄棒にぶら下がったりして遊んだ。

静香と美波は、ゆっくりと大好きな大浴場へ行っている。

 

女性大浴場“ローシャ”

“ローシャ”はロシア語で森を意味し、緑の植栽とともにさまざまな湯が設置されており、床材に美しい翡翠を使用し、広々としたパウダールームも完備されている。天然石の翡翠そのものが大浴場の床壁に張りつめられており、翡翠はリラクゼーション効果や「心の開放」の意味を持つらしい。

その他、露天風呂、展望風呂、寝湯、うたせ湯、ジャグジー、お子様用のぬるめの浴槽、サウナなどその日の疲れ具合によってさまざまな浴槽が用意されている。

 

ある程度、子供達も遊んで堪能してきたので、部屋へ戻ると静香と美波は戻って来ている。

大浴場の前にはエステコーナーもあるようで、夕食後もう一一度大浴場へ行くつもりらしい。

そんなこんなで遊んでいると時間は瞬く間に過ぎて行く。

そのうち、夕食時間がやって来た。

今夜は『部屋食』を予約しているのだった。

このホテルが、バイキング日本一に輝いた実績は知っているが、

旅の最終夜という事もあり、

その日本一のバイキングは朝食で堪能するとして今日の夕食は部屋食にした。

その方が夫婦もアルコールなども十分に頼めるし、

他人を気にする事も無く気兼ねなく子供達にゆっくりと食べさせたかったからだった。

まぁ本音は最後の夜くらい畳の上でゆっくりと飲みたかったのだった。

仲居さんがきて、和室の座卓の上に豪華な夕食が並べられていく。

子供達用に大人分一食を予約している。

二人とも大人と同じものを充分に食べることができるから安心だった。

慎一と静香が並んで、向かいに美波と夏姫が座っている。

雄樹は、夏姫と母親の間のお誕生席に座っている。

 

今夜の部屋食のメニューは、

「北海道味覚を満喫できる贅沢なコース」を予約している。

テーブルに続々と料理が並べられていく。

子供達は、行儀良く背筋を伸ばして座布団に座ってじっとしている。

子供達の前にも大人と同じ様に箸や取り皿や器が並べられている。

仲居さんから『あらあら、お二人ともとってもお利巧ですね』と言われている。

食前酒 ハスカップ

先付 鮭の飯寿司

   北海道のお正月に欠かせない滋味と言われている。

   飯ずしは、魚介類を塩とご飯で発酵させた北海道の郷土料理で、本州でもなれ鮨

   などで知られているが、北海道では漬ける際に麹と野菜も使い、食べる際には

   一緒に漬けたご飯も食べる。使われる魚は、鮭のほかにもほっけやサンマなど

   地域や家庭によって様々で、北海道では、年の暮れに向けて各家庭で漬け込み、

   できたものを正月のごちそうとして食べてきたらしい。

   これは居酒屋での定番物であればいつもツマミとっして頼んでいる。

造り 鮭・帆立・殻付き牡蠣・牡丹海老

   新鮮な鮭や貝の身がピカピカに光っており歯ごたえもあり甘くて美味しかった。

   特に身が太く腹に卵を持ったボタン海老は、卵のプチプチとした感触に濃厚な味

   噌の甘みが混然一体となり、お酒で流し込むのが勿体ないくらいの逸品だった。

揚物 かすべホッペの竜田揚げ

   かすべは東北北海道でしか見た事は無いが、本来は淡白な味のかすべに濃い味付

   けがされ、軟骨がコリコリとした歯ごたえて酒のつまみには最適だった。

焼物 鮫鰈味噌焼き

   肉厚の鮫鰈の身が特製味噌の香りに包まれ、香ばしくふんわりと焼かれている。

   本来は淡白な肉質だが、脂の乗った肉の甘みが味噌で引き出されている。

蒸物 フカヒレ入り茶碗蒸し

   優しい出汁にプルプルのフカヒレのアクセントが絶妙だった。

   新鮮な刺身に揚物煮物ときて次にと言う場所でほっとする箸休めの逸品だった。

   これは子供達が大好きで静香の物は最初の一口以外は全て食べられたため、

   慎一の茶碗蒸しを夫婦で半分ずつ食べた。

茹物 毛蟹塩茹で

   一匹が丸ごと皿に盛られている。部屋の灯りに照らされて光っている真っ白い身

   とトロリとして濃厚で美味しそうな黄色い蟹味噌が輝いている。

   これは食べるまでの作業は、時間がかかるが慎重に身を外して皿に盛って行く。

   雄樹や夏姫が足やハサミをそっと触っては、『トゲトゲして痛い』と恐る恐る

   見ている。しかし、その甘い身を一口食べた途端に『美味しいー早く、早く』と

   せがまれる。

鍋物 道産牛のすき焼き(一人鍋)

   綺麗に刺しの入った道産牛を贅沢に使った一人鍋で一緒の野菜や茸も新鮮だった。

   焼き立ての熱々の肉を新鮮な卵に潜らせて食べると一日の疲れが吹っ飛ぶくらい

   美味しかった。

   口に入った肉が噛む必要も無いくらいだが、その肉厚の存在感も十分だった。

   この牛肉も最初の大きな一切れ以外は雄樹に食べられてしまった。

御飯 帆立と雲丹の釜飯

   たっぷりの帆立と雲丹を贅沢に使った釜飯である。

   美味しい道産米に帆立の甘い風味と雲丹の甘さが移りその二つのハーモニーが味

   わえる。これも子供達が大好きでモリモリと食べていく。

吸物 潮汁

   地元産の分厚い昆布が存分に使われ、その身から出た深い旨みと地元魚のアラか

   ら出る旨みが合わさったの上品な味わいで、非常に贅沢な出汁が絶品である。

漬物と果物 各二種盛り

 

子供達は、早々に食べて果物を食べると部屋の隅に置いているオモチャで遊びテレビを見始めた。

美波も十分に食べたのか夕食も終えて、雄樹と夏姫の近くで一緒に遊んでいる。

 

夫婦は無心に遊ぶ子供達の姿を見ながらゆっくりとお酒を飲んでいる。

窓からは知床の暖かい街の灯りとオホーツク海の海が見えている。

やがていい心持ちになって来る。充分にお酒を飲んで堪能したので、

部屋の管内電話から夕食の片付けの連絡を仲居さんへ伝える。

 

「じゃあ、夏姫に雄樹、お父さんとお風呂へ行こうか」

「うん、わかった」

「はーい、大きなお風呂かなぁ」

「とっても大きなお風呂だったわよ」

「色々な種類のお風呂やサウナとかもあったわよ」

「へぇ、サウナ?」

「お父さん、僕、サウナに入ってみたい」

「夏ちゃんも入りたい」

「わかったよ。みんなで入ろう。でも熱かったらすぐに言ってね」

「うん」

「美波、私達ももう一度軽く入って、エステでもしましょうか?」

「そうね。あんなに良いお湯だったのだから総仕上げね。美しくならなければね」

「夏ちゃんも美しくなりたい」

「夏ちゃんは、まだ早いかな?

 でもお姉ちゃんがもっと可愛くなるように後で夏ちゃんにもしてあげる」

「うん、じゃあ夏ちゃんはお父さんとお風呂へ行ってくるね」

「お父さん、夏ちゃん、早く行こうよ」

「わかった、わかった。じゃあ二人ともスリッパを履いて」

「うん、ダッシュ

「コラコラ、前をよく見て行くんだぞ」

「はーい。外で待ってるから早く来てね」

「お父さん、抱っこして」

「夏姫は甘えんぼさんやね。いいよ。さぁ行こうか」

「はーい、じゃあ、お母さん、お姉さん、先に行くね」

「はい、行ってらっしゃい」

「お父さん、遅いよ。早く早く。あぁ夏ちゃん、ずるい」

「ふふふ、いいでしょ」

「僕は抱っこも良いけど今は歩きたいな」

「わかった、わかった。さぁ行くぞ。お父さんの手を持って」

 

男性大浴場”モーレ”は、”モーレ”は、ロシア語で海を意味している。美人の湯に身をゆだねながら、知床ブルーと称される真っ青な海、夕暮れに染まるオホーツク海を堪能できる。風呂の種類も含めて女性大浴場と同じである。

実はこのホテルには貸切家族風呂がある。

その数は2つ用意されており、露天風呂と同じ源泉の湯で家族だけで、プライベートな癒しのひとときを楽しめるようになっている。

慎一は子供達の身体を軽く洗い、三人で色々なお風呂に入っては出てを繰り返した。

露天風呂では、札幌では見えないくらいの星空が広がっている。

真っ黒な夜のオホーツク海には、イカ釣り漁船の灯りが瞬いている。

函館の浴室付きの部屋へ泊まった時、ふと浴室から見えた光景を思い出した。

「雄樹に夏姫、見てごらん。お星さまがすごく見えるよ」

「ほんとー、お父さん、あの明るい星はなぁに?」

「どれどれ」

「あんな下の方にもお星さんがあるわ。キラキラ輝いてるわ」

「あれは、イカを釣ってるお舟さんの光だよ」

「そうなの・・・お空のお星様が映っているのかと思ったのに」

「うーん、夏姫の言う通りかもね」

「へぇ、お星さんがねえ。綺麗だね」

「うん」

二人は漁船を浮かべ灯りの瞬くオホーツク海をじっと見ている。

そして最後にサウナに入る。

子供達も最初のうちは興味津々で大人しくしていたが、

しばらくするとのぼせ始め「熱い熱い」と言い始めた。

仕方なしに大浴場を出て、東館地下1階に向かう。

ここにはゲームプラザが設置されており、

景品ゲーム、音楽ゲームなど、バラエティ豊かなゲームが用意されている。

プラザに近づくと可愛い音楽が聞こえ始め、抱っこしている二人の瞳が輝き始める。

「僕はまたワニのゲームがあればしたいなぁ」

「今度は私も一緒にしたい」

「わかった。交代でしようね」

「うん」

ゲームコーナーは結構な広さで多くの宿泊客が子供と一緒に遊んでいる。

三人は、ちょうど空いた先ずはワニワニパニックへ向かう。

子供がトンカチを持ってゲームが始まる。

途端に顔を出してくるワニ達に二人の歓声が重なる。

「お父さんも手伝ってよ」

「わかったよ。じゃあ最高点を目指すぞ」

「うん」

「そうね、私も頑張る」

顔を出してくるワニの頭を握った手で叩いていく。

三人がワニの顔がドンドンと叩かれて当日の最高点を叩き出した。

「やったー、今までの最高点だね」

「今度は私がトンカチを持つの。雄ちゃんも手伝ってね」

「わかった。はい、交代だよ」

「二人とも交代ができてえらいね」

「だって私達仲良しだもんね」

「ねぇ」

「じゃあ、始まるよ。準備はいいか?」

「準備オーケー」

「うん、いつでもオッケーよ」

そこからは三人でキャアキャア言いながらワニの頭を叩いていく。

そんなことをしている間に静香と美波がゲームプラザへ顔を出した。

「お母さん、来て来て、最高点が出たよ」

「お母さん、見て見て、たくさん点が取れたわ」

二人は顔をエステでピカピカにして澄まして近づいて来る。

「あれ?お母さんの美波姉ちゃん、何かいつもと違うわ。綺麗」

「ありがとう、ちょっとね。美人の湯だから夏ちゃんも可愛いわ」

「そうそう今、ワニさんゲームしてるところ」

「すごいんだよ。二人とも最高点で景品が出たよ」

「二人ともすごいね。景品貰えて良かったわね」

その他、クレーンゲームをして家族で一杯に遊んで、

部屋へ帰りに西館1階売店ジェレボのお土産コーナーに向かった。

職場のみんなや友人へのお土産を試食しながら選んで部屋へ持って帰った。

19.御社の創建(第8章:占い死)

ある日、遼真は部屋で頭領と連絡を取り合って今後のことについて相談を始めた。
それは数時間に及んだ。
後片付けや宿題を終えた真美が部屋から出て来て居間に顔を出す。
遼真がテレビのニュースや番組を何気に見ながらコーヒーを飲んでいる。
「そうだ、真美、師匠から連絡があって、
 急な話だけど明日に桐生一族の各派の頭領がここへ来るからね」
「へえ、頭領が?すごく急ですね」
「あの後、頭領がシシトー神様と話し合った結果、
 今度この神社の神域の北側に御社を建てることになったんだって」
「御社ですか?・・・」
「シシトー神様の御社だよ。

 今度、我が一族の護り神の一柱として入って貰うことになった。
 シシトー神様も遠い過去に知り合いの神様も居られる様で乗り気みたいだよ」
「へえ、それはありがたいことですね。あれほどのお力の神様なら安心ですね」
遼真は心なしか少し元気のなくなっている真美に気がついた。
「真美、今日は疲れただろう?先にお風呂に入ったら?」
「いいえ、最初は遼真様にお願いします」
「わかったよ。ありがとう。じゃあ先に貰うね」
「遼真様こそ、お疲れでしょうから熱い湯でゆっくりと疲れを取って下さいね」
「うん、でも残念ながら昔から僕はカラスの行水だからね。ゆっくりとは無理だな」
「そういえば小さい時からそうでしたね」
「そうだな。あの頃真美に『私が数を数える終わるまで出たら駄目』と言われて
 しばらくしたらいつものぼせて目が回りそうになったのを思い出したよ。
 真美ったら数を途中で間違えるんだもの・・・」
「ははは、そうでしたね。
 遼真様、最後の方には急に静かになってましたものね
 実は数えるのわざと間違える時もあったんですよ。」
「えっ?そうなの?・・・でも何か懐かしいなあ」
「そうですね・・・
 遼真様はいつも早く出よう出ようとしていましたからね。
 今でもたまに熱いお風呂に入った時、その時の事を思い出すことあるんですよ」
「へえ、そうなんだ。
 ほんのちょっと前の様な気がするなあ。
 じゃあ、入ってくるね。たぶんいつもの様に早く出るよ」
遼真は少し表情が明るくなった真美に安心して立ち上がった。
遼真が居なくなって、部屋にはテレビの音が流れている。
ソファに座り見るともなくテレビを見ている真美の脳裏には
幼い頃から遼真の隣にずっと付き従ってきた自分の姿が浮かんでいる。
「遼真様とあの頃に戻れたらいいのに・・・」と真美が呟いた。

翌日は朝から桐生一族各派の頭領など多くの者が集まり、
神域の中心と北極星を結んだ線状に御社の候補地を見つけ清掃をして地鎮した。
シシトー神様の御神体が住まわれる場所は、
丹波篠山と同様に大きな岩を組み合わせて石の社を作り、
その前に鳥居を建ててお詣りできることとした。
御祭神の御名ついては、シシトー神様から
『我をこの世に再び目覚めさせた北星親王の名としたい、
この国の政を願った皇子の魂をこの国の政の中枢のこの都市で眠らせたい』と告げられ
その皇子の名前を取り”北星親王神社”と決めた。
それが決まってからは急ピッチで創建準備が始まり、創建の日が訪れた。
この日は、シシトー教団の幹部が集まり創建の儀式が行われ無事終わった。
その時からこの神社には、

国民の心を安らかにしたいと願う政治家や政治家志望の者がお詣りするようになり、徐々に政界・経済界の人間に知られるようになる。

『北星親王神社』創建後に、教団を含めて色々と変わった。
桐生一族と館林一族は、
日本国鎮護神の一柱として新しくシシトー神を祭神として組み入れ、
両一族が祀り上げることとなり、それに伴い教団や選挙への協力を約束した。
鈴女は今まで兄の鷹の力で行っていた占いを、
直接シシトー神より多くの神気をその身へ封入され本物の巫女となり、
心身共に新しく生まれ変わり、館を訪れる多くの人々の悩みを聞き指針を与えた。
そして人の運命へ非常に影響を与える『生死の未来』は一切見ないと宣言した。
鷲は教団や政党の事務局長を兼任しながら
前橋館林家の経営する文武学園のIT部門の教師として就職し、
桐生館林一族のコンピュータ部門の専門家としても所属することとなった。
多くの神気のおかげで不眠不休に近い状態でも教団政党の為に活動できていた鷹は、
その身へそれまで降りていた多くの神気を神社内の石室内へ移動させた。
ただ教団信者で心が傷ついた者へのシシトー神の神気の一粒は、
今まで通りそのまま彼彼女達の魂に溶け込み傷を癒しながら勇気を与えている。
兄の鷹は教団が安定したことに安心して教団代表を降りて、
次回選挙から若き国会議員として出馬する方向へ決まった。
それと共に令和獅子党党首の木村千種を妻とした。
シシトー神は大層喜び木村千種へある不思議なプレゼントを与えた。

その不思議なプレゼントは、
木村千種の身体を何も汚れていなかった昔の時代へと戻すことだった。
シシトー神は千種の心の奥に沈むいくら拭っても消えない痣を知っていた。
実はアイドル時代に
『自分を売るために、スポンサーに身体を売れ』とマネージャーに説得されていた。
ずっと断っていたが、ある日『撮影の仕事だ』と言われてホテルの部屋へ送られた。
その部屋の中に居たスポンサー会社の社長がニヤニヤと笑い近寄って来る。
必死で大声を上げても無駄で逃げようとしても逃げられず抵抗しても頬を張られ、
野獣の様に襲われて無残にも無理矢理処女を散らされたのだった。
それ以降、それを拒むと今度はヤクザが出て来て家族を傷つけると脅され、
仕方なく多くの男に抱かれて千種の心は傷つき血を流していったのだった。
シシトー神は千種の心のその消えない痛みをずっと癒していた。
しかしその心に刻み込まれた痛みと悲しみは消えることが無かった。
どんな時でも何かの拍子にその光景が浮かんでは千種の胸を痛くするのだった。
『私は汚れた女、多くの汚い男のはけ口になった女』と心が叫んでいた。
シシトー神は彼女の心を元の状態に戻すことを考え神様だけが出来ることを実践した。
それがこのたびの『不思議なプレゼント』だった。
それを知らされて千種も鷹もドキドキしながら挙式後初夜を迎えた。
新しく生まれ変わった身体は、
触れられた時に感じていた快感の度合いも今までと違っていた。
今まで触れられるとすぐにじわっと子宮辺りが熱くなってきていたが、
今は胸や肌を触れられるとゾクゾクと快感が背筋を這い上って来るのだった。
秘所は以前と違い若干濡れにくく、入口も硬く奥まで指も入らない位狭くなっている。
鷹がそっと指を奥へ進めるとそれ以上は進めない構造に触れることができた。
千種はその時に少し痛みを感じた様でつい怖くなったのか足を閉じてしまう。
頬を染め恥じらいながら口づけをじっと受けている。
千種はこの世で一番愛する鷹に初めての自分を与えることの出来る喜びに震えていた。
鷹は千種へ優しく丁寧に愛撫を加えながら初々しい反応に愛しさを感じた。
千種は初夜の破瓜の痛みに耐えながら深い喜びに涙を流し新妻となった。
千種の脳裏からは過去の薄汚い男に無理矢理犯された記憶は既に消えていた。

ある日、遼真と真美が並んで祈りを捧げているとシシトー神より声が掛かった。
「遼真、いつもいつも民草を守りご苦労である。
 汝の身に我の力の一部を揮える様にしたいのだが良いか?
 この力の一端は、先にあの霧派の紅凛と黒狼にも伝えた。
 彼らは彼らの身体の持つ特性で必要な形で発揮できると思う」
「それは大変ありがたいことでございますが、私でよろしいのですか?」
「毎日がんばっている汝に少しでも力になれればなと思っておった。
 汝は『霊糸』と言う母親の力がその身に宿っているのは知っているな?」
「はい、母が私の身に残した唯一の力でございます」
「その霊糸に我の力を加えようと考えているのだがどうだ?。
 もちろん今まで通り霊体に対して霊糸のまま使用も出来る。
 我の様に物質化した者には霊糸を鞭や鋼にも変えることが出来るのだがどうだ?」
「そんなことが可能なら是非ともお願いします。ありがとうございます。」
「だが、先に言っておくぞ。
 遼真、汝には我の様にまだその力を自由自在に揮うことはできないと思う。
 神の力は非常に強いため、人の身ではその力を長い時間使うことはできない。
 人たる身で長い時間その力を揮えば、汝の魂の器が壊れてしまうのだ。
 お前の魂の器が壊れてしまえばもうお前がお前で無くなってしまうからのう。
 しっかりと技と心を鍛える修行をして少しずつその力に慣れると良いぞ」
「はい、肝に銘じます。
 人を守るためこの力を揮える様に身体と心を強く鍛えます。ありがとうございます」
「わかった。ではその場で静かに待って居れよ」
遼真はその場で瞼を閉じて両手を胸の前で合わせた。
北星皇子神社の奥から白い光が遼真へと注がれる。
その白い光は遼真の身体へ滲み込むように入って行った。
遼真の眼は本来は切れ長で暗褐色の瞳の虹彩に金色の輪郭を持っているが、
その虹彩の金色の輪郭に銀色の輪が巻き付き金と銀の縞模様となったのだが
もちろん遼真にはわからなかった。
「シシトー神様、ありがとうございます」

「さて、真美、本当はお前にも我の力の一部を分けたいのだが・・・」
「私にも是非ともお願い致します。私は力をもっと強くしたいのです」
「そうだろうなとは思う。汝の願いは我も強く感じることができる。
 だがな・・・実は非常に言いにくいことなのだが、
 我の力を与えようとしても汝の身が受け入れないのじゃ」
「えっ?受け入れないのですか?」
「そうじゃ、どう言ったらいいかのう・・・
 汝の魂と言おうか身体と言おうか血脈と言おうか、
 その身体の中にある器にはすでに何らかの力が潜んでおってのう。
 だから我の力を入れようとしても弾かれてしまうのじゃ。
 真美は自ら修行してその力の覚醒を待つしかないと我は思う」
「そんな力が?・・・どうしたら私のその力は覚醒するのでしょうか?」
「それはわしと異なる世界の力であるが故に、我が教えてやることはできない」
「・・・私は今・・・今こそ欲しかったのに・・・
 いつも守られてばかりで・・・どこまで私は・・・駄目な・・・」
真美の手が白くなるほど強く握り絞められ俯いた両目に涙が溢れてくる。
遼真が慰める様に真美の肩に手を置いた。
「真美、慌てることはないよ。いつか覚醒するなら大丈夫だよ。
 僕は真美のことを信じてるし待っているから・・・」
「い、今すぐじゃないならそんな力は要りません」
と遼真の手を振り払って走って戻って行った。
「・・・真美・・・どうしたの・・・」
「ショックだった様だな。しかし我も嘘は言えぬからな。
 そうそう最後に言うつもりだったのだが、
 真美の覚醒をさせる方法は龍族が知っていると思うから聞いてみよ。
 どうやら真美はその関係の力を持っていると我には見える」
「龍族ですか?それなら心当たりがあります。
 シシトー神様ありがとうございます。早速真美に伝えますね」
「若い娘の涙は堪えるのう。その心根がわかるが故にのう。遼真、頼んだぞ」
「はい、わかりました。ありがとうございました」
遼真はシシトー神へお礼を言うと急いで家へと帰って行った。
「うまく竜神と話をするのじゃぞ真美。楽しみにしておるぞ」
とシシトー神が走って行く遼真の背中へ独り言を呟いた。

泣きながら部屋に戻った真美は布団に潜って声を上げて泣いた。
自分でも驚くくらいの涙が出て抱きしめている枕を濡らしていく。
シシトー神様から新しい力を授かった遼真様の笑顔を見るのは嬉しかった。
幼い頃から自分をいつも守ってくれた遼真様の隣に並びたいと思っていた。
しかしこのたびの戦いでも再び自らの力の弱さに打ちのめされた。
『神様相手であの遼真様であっても勝てなかったのだから仕方ない』

と周りから言われたが、
真美は遼真の隣にパートナーとして共に並び立つ姿を夢見ていた。
その力はこの身体の中にあっていつか覚醒すると言われても真美は今こそ欲しかった。
このたびは人間に優しい良い神様であったから助かっただけで、
もし魔神ならば遼真は簡単に殺されていたことを理解していた。
今後、いや、もしかしたら明日にも同じことが起こるかもしれないと思うと
己の未熟な力が恨めしく、それがために遼真を失うかもと考えるとその恐怖に震えた。
真美の脳裏に、自分が白猿に攫われた時の事がまざまざと浮かんでいる。
それは自分のために遼真が魔人になり一族に殺される可能性のあった事件だった。
(第5章:真美を救えを参照)

遼真は真美の落ち着くのを待って、部屋に籠る真美へテレパシーで話しかけた。
真美は泣くと遼真の前では少し幼くなるのは昔からの癖だった。
「クスンクスン、りょう・・・まさまー」
「真美、大丈夫かい?」
「グスン、遼真様、ごめんなさい。
 私、シシトー神様を怒らせちゃったかも・・・」
「ううん、心配ないよ。

 シシトー神様は優しいから真美のこと心配してたよ」
「そうなの?私、でも私ひどいこと言ったのよ」
「大丈夫だよ真美。実は良い話をシシトー神様から聞いたよ。
 真美の力の覚醒については竜神様が知ってるって言ってたよ」
竜神様・・・と言うとあの多摩湖の?」
「そうだよ。今度の休みの日、晴れみたいだから
 僕と一緒に久しぶりに竜神様に合いに行こうよ」
「うん、じゃあ今度も以前みたいに遼真様の後ろに乗っていいですか?
 そうそう、その日は真美が精一杯お弁当作りますからね。
 また竜神様と一緒にお昼ご飯を食べましょうね。楽しみだなあ」
「いいよ。竜神様も楽しみにしてると思うよ。
 真美は竜神様のお気に入りだからね。僕は美味しいお酒を準備しておくよ」
「はい、遼真様にもシシトー神様にもご心配かけましたがもう真美は大丈夫です」

18.シシトー神との戦い(第8章:占い死)

彼女の身体が鷹の身体へ変わり、
身に纏う黒い霧が鞭の様になり二人へ向かってくる。
二人がその鞭を避けると
二人の身体のあった空間の後ろにあった太い枝が鋭く切り飛ばされた。
「ほう、なかなか素早い動きだな。ではこれは」
今度は黒い鞭が二本に分かれてスピードが増して二人へ向かって行く。
遼真は金弧丸を抜いて向かってきた一本を捌いた。
「くっ」
音速で飛んでくる鞭を避け切れなかった真美は、
何とか小刀の銀狐丸で受けるが、
間に合わず真美の頬が切れ、頬から顎へ細い血の筋が流れた。
「真美、大丈夫か」
「遼真様、すみません。あまりに攻撃が早いもので・・・」
「真美、こうなれば・・・頼む」
「わかりました。自縛印」
と真美が両手の印をシシトー神へ向かって放つ。
シシトー神の周りに逆三角形の白い光が浮かび上がった。
「ほう、これは我を呪縛するものかな?
 神の我を呪縛できるかどうか試してみるか?」
「ううう、遼真様、以前の囁き女とは比べ物にならないくらい強い圧です」
苦しそうな真美の額から汗が滴り落ちる。
「いくぞ娘・・・ふん」
シシトー神が軽く片手を振って身の回りの白い陣を振り払う。
『ドーン』
「うっ、あー・・・」
自縛印が破られたため、術者の真美が大きく後ろへ飛ばされてしまう。

遼真は倒れた真美の元へ急いで走ると、
まっすぐシシトー神の前に立ち塞がり真美を後ろへ庇った。
真美も必死で立ち上がろうとしているがまだふらついている。
「次、行くぞ」
シシトー神から再び音速で黒い鞭が伸びて襲ってくる。
遼真は母と共に水虎との戦いの時の事を思い出した。
遼真は金弧丸と自らの身体から出した母の技『霊糸』で迎え撃った。
3本に増えた黒い鞭に対して同じ本数の霊糸3本を出した。
だが、シシトー神の鞭には抗えず切られていく。
「ほう、お前にはそんな技もあるのだな。だがまだ力が弱いな」
「遼真様、私はどうすれば・・・」
「真美、僕の後ろに居て僕の身体に気を送って」
「はい、わかりました」
真美がフラフラしながらも
遼真の背中へ身を寄せると両手を当てて自らの気を遼真へ流していく。
真美の力が入り遼真の出す霊糸の数が大幅に増えていく。
各々の霊糸が撚り合わさり太くなり今度はシシトー神の鞭を切っていく。
「ほう、なかなか強くなったではないか。ではこれはどうだ」
見る間に黒い鞭の数が増えて黒い風の様になってくる。
それに合わせて遼真も霊糸を増やして対抗したが、さすがに対応出来なくなってきた。
「汝、強い力を持つ若者よ。
 なぜ我がシシトーと呼ばれるかを教えよう。
 我は、“戦いの神”、“怯え惑ふ心を勇気の光で満たす神”。
 『シシ』は『四肢』『獣』の意味。
 『トー』は、『十・無限』と『カタナ』の意味である。
 今は鞭であるがこれが全てカタナへと変わるのだ。
 そのすべてを受け止めることができるかな?
 その10本の1本がまた10本へと増えていくのだ」
「?!10本?・・・それが10本に?」
シシトー神の振るう黒い鞭が一瞬で銀色の風へ変わった。
遼真は守りに専念するため二人の身体の周りを繭の様に霊糸で固めた。
昔、母が水虎から遼真を守った時の様に・・・
凄まじい銀色の風が二人を襲った。
『このままでは真美が無数の鋼の刀で串刺しになってしまう』
遼真は咄嗟にシシトー神に背を向けて後ろに居る真美を抱きしめて庇った。
「真美、何とか君だけは守るから・・・」
「?!、遼真様!逃げて!私はいいですから!」
二人に銀色の風が突き刺さるその瞬間、二人の周りに紅と黒の風が渦巻いた。
『『『『キーン』』』』
鋼と変わった刀は4本の苦無に受け止められていた。
抱き合った遼真と真美の全面に霧派の|紅凛《あかり》と|黒狼《くろう》が立っていた。
「ギリギリ間に合った。遼真君、真美ちゃん、大丈夫だった?」
「・・・(心配そうに二人を見る黒狼)」
「紅凛さんに黒狼さん・・・なぜ・・・」
「京都の頭首からの至急の依頼だよ。二人が危ないって・・・」
「ありがとうございます。助かりました」
「ほう、応援が来たのかな?
 どれどれ、今度はどんな・・・
 うん?・・・
 そなたらはもしかして我と同じ古き血筋の者ではないのか?
 まだ我と同じ時代の古き血筋の者がこの世にいたとは驚いたぞ」
シシトー神の周りで渦巻いていた銀色の風が一瞬で消える。
シシトー神は不思議そうに4人を見つめている。
「シシトー神様、同じ血筋と言うならこの子達だってそうだよ。
 ウチらとは違ってすごく薄まっているかもしれないけどね」
「・・・そうだったのか。
 あまり最初から敵意がないので我も戸惑っていたのだが・・・」
遼真が真美を抱きしめたまま
「シシトー神様、私たちには最初から敵意はありません。
 この世の事は任せて下さいとお願いに上がっているのですから」
紅凛が傅いてシシトー神へ伝える。
「そうなのです。
 この世に不要な輩の命を絶つのは我々がしています」
「・・・(傅いて頷いている黒狼)」
「そういえばそういう噂を聞いた事があったな。
 そなた達だったのか・・・
 では、彼もそうなのか?
 そんな風には・・・」
「いえ、彼らは悪霊や妖怪などを相手にこの世のために戦っているのです」
「そうか・・・それは悪い事をしたな。
 我に敵対する者と思っていたものでなあ。
 娘、さきほどは大人げなかったな、大丈夫か?」
シシトー神が微笑み、その掌から白い光が真美の身体へと当てられる。
見る見る真美の頬の傷が癒され元の滑々の肌へと戻っていく。
「シシトー神様、ありがとうございます。もうどこも痛くありません」
「うむ、それなら良い。まあ許せよ」
「いえ、私が術を使ったせいで気分を害されたのなら申し訳ありませんでした」
「いえ、真美へ指示したのは私ですから、シシトー神様、お許しください」
「良い良い。なかなかの力であった。神以外なら効こうな。
 このたびはここまでとしよう。
 我は汝達の様な者を知り嬉しく思う。
 この我の好きな国、日本のためにその身を捧げて欲しい。
 では今度は教団で会おうぞ。またな」
と笑った鷹の姿はふっとその場から消えた。
それまでずっと抱き合ったままだった遼真と真美は、
紅凛に『いつまでもお熱いね』と言われ、真っ赤になって急いで離れた。

翌朝、秘書の高山はゴミの回収車が来た時に、
ゴミ山の底で生ゴミの悪臭に塗れた死体で発見され大騒ぎとなった。
当然警察は、辺りに聞き込みを行い、監視カメラを調べたが、
カメラには高山一人がフラフラと歩いてゴミの中に入って行く姿だけが映っていた。
検死の結果『中大脳動脈破裂による脳出血』が死因であった。
その日のニュースは、
モズの早贄の様な姿で発見され『自殺』した博愛民主党代表の永源議員と
その秘書の高山が生ゴミ塗れで『脳出血』で死んだ二人は大いに世間を賑わせた。
それと同時に
愛人の上で腹上死した武藤前政調会長の起こした過去のスキャンダルなども噴出し、
日本国内にある隣国の関係企業からの闇献金問題、
隣国政治家と裏で勝手に交わした約束文書のコピー、
隣国美女とのハニートラップ画像、事務所でのマネートラップ画像、
など多くの暴露情報がマスコミ以外からいつの間にかネット上へ流出し、
将来に我が国を隣国へ売り飛ばそうとする会話まで流れるに至り、
野党第一党の博愛民主党は世間への謝罪に追われて大いに混乱した。
それまで与党批判だけで左翼政党のスキャンダルを隠蔽して擁護してきたマスコミも
昔からなるべく国民を反日方向へ誘導する様な隣国からの指示を聞くことが難しくなった。
この噴出した数多くのスキャンダルで博愛民主党議員は選挙で勝てないと騒ぎ始めた。
元々週刊誌ネタを国会で与党批判に使って時間潰しにをしていただけの政党だったため、
国民へ完全に反日政党であることがわかり次回の選挙では大敗は確実とされた。
そうなると政治家とは腰が軽いもので『君子豹変す』として、
多くの博愛民主党の所属議員は、
沈みゆく船から逃げ出す鼠の様に我先に他政党へと鞍替えに走った。
政治家は落選すれば只の人になり
現在持っている利権からのお零れが無くなってしまうからだった。
マスコミへのパフォーマンスに明け暮れ、真剣に政治を考えていない議員は焦った。

そんな世間の喧騒とは離れた場所。
ホテルの部屋のカーテンの隙間からベッドへ朝の太陽の光が入る。
大きなベッドで浴衣を着て眠っている木村千種がふと目を覚ました。
隣には鷹が居て腕枕をしてくれていて千種の顔をじっと見ている。
「あれっ?鷹様?・・・ここは?・・・どこですか?
私は確か永源代表と野党の打ち合わせに
昨夜出席した筈なのに夢だったのかしら?」
「君は政党活動に熱心だから夢でも見たのかもね。いつもありがとう」
「いいえ、そんなまだまだです。それはそうと私、昨夜鷹様と・・・」
「ううん、君は疲れていたのか腕枕をしたらすぐに眠ったよ。
だから僕はずっと可愛い君の寝顔を見ていたんだ」
「ずっと?・・・あーん、恥ずかしい。私の顔を?・・・」
千種は恥ずかしさで頬を赤くしながらも
期待に満ちた瞳を揺らしながら鷹の大きな胸へと顔を埋めていく。
「鷹様、もし良かったらですが・・・昨夜の続き・・・いいですか?」
「いいよ。千種の可愛い寝顔を見ていたらこんなになったよ」
「・・・まあ・・・こんなに・・・嬉しい。鷹様愛しています・・・」
もはや令和獅子党党首の木村千種の記憶からは永源と会った記憶は消えていた。

遼真は狐派頭首の祖父と相談して宮尾警部と小橋光晴刑事へ
最終報告として、
このたびの「東アジア平和会」のメンバーの行方を、
会の活動そのものが反日のスパイ活動に従事していた事、
会が覚せい剤や臓器売買などの犯罪に関与していた事などから
犯人は証拠隠滅を狙った国際犯罪組織の可能性が高い事、
メンバー全員が相模湾の深海魚の餌になったことを正直に知らせた。
死体が相模湾の底ではダイバーを使っての捜索も不可能だし、
これ以上の証拠(と言っても遼真の霊視では証拠にはならないため)もないため、
宮尾警部達の捜査はここまでとなった。
すっきりとしない結果となったためお詫びに
宮尾警部と小橋光晴刑事二人を遼真の家で真美の手作りの夕食でもてなした。

『真美風大鶏排(ダージーパイ)』
 ご存知台湾の名物料理。顔ほどの大きさで厚さ1センチのグローブの様な肉厚、
中はジュウシー外はカリカリの食感。衣に片栗粉以外に白玉も使っている。
味は塩胡椒、ニンニク醤油、カレー味で3つの大皿に山の様に盛られている。
『五目チャーハン』
 チャーシュー、大海老、ニンジン、グリンピース、卵の山盛りチャーハン。
『ジャンボ蒸し餃子』
 フカヒレと豚肉とキャベツの一口では齧れないほどの大きさの餃子。
『卵とトマトのフワフワ中華スープ』
 細葱を浮かした春雨と卵とトマトの優しい味のフワフワ中華スープ。
胡麻団子とフルーツ杏仁豆腐』

いつもの様に真美の『どうぞ召し上がれ』の声で
小橋刑事はすぐさまタージ―パイを掴み、
皿にチャーハンを山盛りに取り分けガツガツと食べ始め、
宮尾警部はビールを飲みながら味わいゆっくりと食べている。

17.シシトー神との対話(第8章:占い死)

「誰じゃ」
彼女は痙攣する高山を投げ出して遼真と真美の潜む闇へと目を向けた。
二人はホテルから出て来た秘書の高山に
何か嫌な気配が付いていたので追って来たのだった。
「その視線、今まで何度となく覚えがあるぞ。汝であったのか?」
「はい、私は桐生遼真と申します。
 あなたを宍戸 鷹さんと呼べばいいのか
 シシトー神様とお呼びすればいいのかわかりませんが、
 やっとあなたに直接お会いすることが出来ました」
「わしを会いたかったのか?
 教団に来ればいつでも会ってやったのにのう」
「色々と調べる時間が必要だったので今となりました」
「ほう、我に会って何をしたかったのだ?」
「あなたへ聞きたい事があったのです」
「ふーん、汝は我に何を聞きたいのだ?」
「あなたはなぜこれほど多くの人間を殺してきたのですか?」
「ああ、そんなことか。
 そいつらは生きていてもこの国の民草のためにならないし
 それ以上に醜悪でこの国には不要な人間だったからだ」
「あなたは殺した彼ら彼女らの何を知り殺したのですか?」
「そんなものは心を読めば奴らの過去の所業も心根も全てわかる。
 本当に醜悪で見ているだけでこの身が穢れそうだったぞ。
 ふむ・・・見たところ、
 お前とその娘の心根はまっすぐで優しくこの国に必要な人間だとわかるぞ
 うーん、この国のため民草のために日夜働いているのだな。褒めてつかわす」
「ありがとうございます。お願いです。何とか人を殺すのをやめて頂けませんか?」
「太古から眠っていた我に知識を与えた皇子だけでなく、
 非常に優しく優秀な皇子の子孫の鷹の知識から見ても奴らは不要と思うぞ。
 我も皇子や鷹の人間への優しい心根を理解しているつもりだ。
 確かに昔と異なり現在はとても便利で我が顕現した当初は驚いたものだったが、
 色々と知るにつれ、いつの時代も弱い民草は虐げられ傷つけられておる。
 わしへ帰依してきた娘どもはどんなに傷つき悲しい思いを知っているのか?
 今日の日を生きるのさえ苦痛を感じる心をお前は知っているのか?
 お前はあの娘たちが単に楽しみで占いだけに来てると思っていたのか?」
「そ、それは・・・」
「お前は苦しみ抜いて自らの命を断とうとする者の心がわかるか?
 少し前だったが、若い娘、いや若い男もそうだったが、
 友という者達から恥ずかしい写真を撮られ世間に広げると言われ
 言う事を聞けばしないと言われてどんな言いつけも聞いていたが、
 最後にはとうとうその願いも聞き入れられず世間へ広げられ、
 その恥ずかしさのあまり自らの命を絶った者、
 皆から笑われながら無慈悲に殴られ蹴られて、
 無残にも命を断たれた者の気持ちをわかるか?」
「そんな・・・」
「だからわしはその者の思いを聞き届け、その者達の命を絶った者の命を絶った。
 一つの命に一つの命は当然の代償であろう?
 本当は命を絶たれた者達の苦しみを十分に味合わせてとも思ったが、
 存外に人間の身は脆い物でなあ。すぐに死におったわ」
「それでは困るのです。
 この世には警察というものがあってその様な悪い者を捕まえております」
「確かにそういう警察という組織はあるようだな?
 しかしその組織の者達は本当の事を調べることもせずに、
 今まで何人の民草が殺されてきているのだ?
 何人殺しても責任能力が無いとか、少年法などがあって
 子供とはいえ恐ろしい殺人鬼を野放しにしておるではないか?
 何人殺しても精神病だと言えば殺されなくて済んでいるではないか?
 殺された者の今際に感じた苦しみや悲しみはそのままでいいのか?
 そして大切な人を突然殺された者は、
 心がどんなに傷ついても仕返しをしたくてもできなくてそのままでいいのか?
 生きている殺した人間を守って、
 殺された人間やその人間を愛していた人間の心を蔑ろにしている様な
 そんな組織にこの国や民草の心が守れるのか?」
「それはそうですが、
 我々人間はあなたの様な神ではありませんから真実もすぐにはわからないです。
 しかし人間には悔い改める、反省する心がありますから」
「悔い改める、反省する心・・・我も当初はそう思っていた。
 そしてその者達の過去の行いや心根を探った。
 何と驚いたことにそやつらは『反省という意味』がわからないのだ。
 何を反省するかがわからないという普通では信じられない考えの輩なのだぞ」
「まさか・・・」
「もちろん、表立っては犯罪者になりたくないからその場では殊勝な態度でいるが、
 その時に奴らが考えていることは、
 『とりあえず謝っておけば許してくれる』としか考えていないのだぞ。
 掛け替えのない人の命を絶った行為の意味もわからぬ輩ばかりなのだぞ。
 そしてテレビでは何やら訳のわからないことを言ってる輩の言葉通り
 自分に殺人をさせたのは社会だから自分には罪が無いと思ってるのだぞ」
「だからそれを彼らに悟らせる場所として刑務所があるのです」
「そうらしいな。でも奴らが本当に悟れるのか?
 “反省”の言葉の意味、“なぜ人の命は大切なのか”など
 学校というものでそれを教えているが、それならなぜこんな事が起こる?
 彼らは殆どの者が皇子の時代の民草の様に

 あまり言葉も知らない者達ばかりなのだよ。
 だからこそ他人の命を絶った者は自らの命で償い命の意味を覚えるしかないのだよ」
「そんな、馬鹿な・・・」
「この国の政をしておる勉強している筈の政治家はどうだね?」
「・・・」
「答えられまい。
 確かに国を思う立派な人間のいることは知っている。

 ほんの少しだけだがな。
 だがそれだけではこの日本の政は動かせない。
 だからこそ足を引っ張る輩は不要なのじゃ。
 ところで・・・この死んだ男の雇い主は今、何をしてると思う?」
「何をしてるのですか?」
「我に帰依した可哀そうな娘の服を剥いて裸にして犯そうとしておるわ。
 それも卑劣にも薬を飲ませて意識を無くさせてのう、
 その輩の魂は醜悪でまるで糞みたいな匂いをさせておるわ」
「ならすぐ行かないと・・・」
「心配せずとも我が今さっき殺した。モズの餌の様にしてやったわ」
「そんな・・・彼は犯罪者として裁かれなければいけないのです」
「それをするためには、どうするのだ?
 かの娘に無理矢理犯されたから告発しろと言うのか?
 有る事無い事を書き連ねて世間へ嘘も誠もばら撒くマスコミの餌食だのう。
 それはあまりに可哀そうだとは思わないか?
 かの娘はやっと今になって、
 過去に深く傷つけられた心と身体が癒えて来ているのだ。
 再び世間の目、暴力的な視線に晒されると今度はその心は壊れるだろうな。
 あの糞男は金と政治家と言う権力で
 今まで数えきれないくらい女を犯してはその心を殺してきた。
 ここで死んでいる使い走りの男も似た様なことをしてきた。
 そんな野に棲む獣よりも醜悪な輩に何の価値がある?
 そんな輩を殺すのに何の遠慮が要るのだ?
 今まで皇子や鷹の優しい心根に絆されて、
 我は我の魂の一部を分けて傷ついた人間の心へ滲み込ませて癒した。
 苦しい嫌な記憶は、心の奥に仕舞い込み二度と出て来ない様に封印した。
 その結果、その者達は明日へ未来へ目を向けることができる様になったのだ。
 それこそが人間本来の心だと思うし輝きだと我は思う。
 そんなこの世を良くしようとする人間へ仇為す者は許さない。
 他にも様々なこの世に不要な者には死んで貰った。
 ある者は暴力を、ある者は地位を、ある者は金を使って、
 ある者は独りよがりの嫉妬で、ある者は他人を騙そうと
 己の欲望に任せて弱き者を虐げ殺していく輩ばかりだったから死んで貰った。
 そういう輩は、他人の悲しみや痛みがわからない者達ばかりで、
 人間として必要な心の一部が欠けている者達ばかりであったよ。
 この前殺した者などは、わざわざ他国から来てこの日本の闇に潜み、
 民草の身体や心を薬で縛り、薬漬けにした女を他国へ売って、
 あげくにそいつらは内臓をも売っている様な奴らだったから、
 苦しみ悲しみ死んでいった民草の声を聴き、彼らの代わりにその罪を償わせた。
 奴らには我が身体を手繰りお互いでお互いの心臓を徐々に抉り取る様にさせ、
 迫りくる自らの死に怯え、血の涙を流させ痛みに狂わせて殺してやったわ。
 我により結構世の中も良くなってきている筈だがなあ」
「そんな風に殺された人達にも家庭や親しい人はいたのですから・・・」
「それはそうだろう。
 だが、そんな輩と仲の良い者など似た者同士だろ?
 殺した奴らと同じで他の良い人間に害を為す輩と変わらない者だ。
 己が他人の命で稼いだお金で暮らしていること知っているのだからな」
「あなたのおっしゃることは良くわかりましたが、
 人間の世は人間の手にお任せ願えませんか?
 我々もあなたほどでは無いですが、
 この世から悪い人間は排除できますから・・・」
「それでは遅すぎる、断ると言えばどうする?
 まさか神である我を殺すなどと思っておるまいなあ。
 うん?・・・そうか・・・
 そなたたちにそんな力があるかどうか試してみようか・・・」
「?!真美、注意して!」
「はい、遼真様」

16.淫獣2(第8章:占い死)

秘書の高山が部屋を出て行った後、
永源はそっとベッドに横たわる木村千種の襟元の匂いを吸い込んだ。
仄かに漂う高そうな香水の香りが永源の鼻腔を擽る。
千種がスヤスヤと寝息を立ててあどけない表情で眠っている。
その大きな胸は規則正しく上下している。

このあどけない表情の女がその時にどのように変わるのか・・・
どのような表情で抵抗して泣くのか・・・
抵抗を諦めて感じ始めた時はどんな表情になるのか・・・

永源はそれを想像するだけで、
もう若い時の様に鼻息は荒くなり股間がいきり立った。
実際はそれほどでもないのだが、
ズボンやパンツを破るかもしれないほどの勢いだと本人は感じた。
永源はどの女であれ初めての女を頂く時には最高に興奮した。
特にこの令和獅子党の木村千種は今まで知っている女の中でも極上の女だった。
この女を自分の女に出来れば令和獅子党も自分の物にできると考えた。

永源は背広を急いで脱いで、もどかし気にネクタイを外す。
ワイシャツのボタンも飛ばす勢いで脱いでいく。
パンツ1枚になってベッドに横たわる千種へと近づいていく。
千種の艶めく柔らかいロングヘヤ―がベッドに広がっている。
永源は芋虫の様な短い太い指で
千種の来ているセンスの良いスーツのボタンが外されていく。
大きく胸の盛り上がった白いブラウスが灯りに照らされる。
細い腰から続く小さいヒップを覆うスカートの留め金が外される。
薄いストッキングにベージュのガードルを穿いた形の良い下半身が照らされる。
永源は興奮気味に今度はブラウスのボタンを外す。
真っ白いブラウスの下からは、
滑々で雪の様な肌と高級感のあるブラを大きく盛り上げる胸が晒された。
鼻息荒く今度はガードルをそっと脱がしていく。
大きなベッドの上には無防備に胸と秘所だけを
小さな白い布地で隠されたビーナスの様な裸身が横たわっている。

その時、横たわっている千種の目がそっと開かれた。
薬の効きがいつもよりずっと早く目覚めた千種に永源はぎょっとした。
千種は静かに半身を起こしてじっと永源を見つめている。
「そこの男、この娘に何をするつもりだ」
「お前はなぜ目を覚ましたのだ?そんなに早く起きない筈なのに」
「確かにこの女はまだ眠っている。もう一度聞く。我に答えよ」
「何を言ってる。お前を今からわしの物にするのさ」
永源が野獣の様な表情で臭い息を吐きながら千種に襲い掛かった。
千種が襲い掛かった永源の方に向かって片方の掌を広げる。
「うっ、何だ?・・・くそっ、身体が動かない」
「汝はこの女を傷つけようとしたのだな?」
「うるさい。お前をわしのものにして今度こそこの国の与党になるのだ」
「この女は、今まで身も心も多くの男達によって傷つけられてきた。
 いつも死に場所を求めていた様な可哀そうな女なのじゃ。
 やっとこの娘がこの世に生きる意味を見出すまで
 今は我がこの娘の血を流す心の傷を止めているのじゃ」
「うるさい、お前はわしのものになるのだ。
 そしてわしは総理大臣になりこの国の理を変えあの国に組み込むのだ」
「そのような世迷言をこの国の民草が認める訳が無かろう」
「???何を言ってる?
 お前は令和獅子党の木村千種ではないのか?」
「我はこの娘でもあり、この娘ではない」
「何を訳のわからないことを・・・とにかくお前をわしの物にする」
「汝の醜さは今まで我が殺してきた人間と全く同じじゃな。
 本当に醜い。我が居た時代の人間と変わらなくくらい醜い。
 こんな醜さではこの国の民草が悲しもうなあ。
 こんな人間が政を行うことは、
 我に帰依する女達の悲しみが癒えることはないな。
 我もこの世に出て色々と調べたが、この世は誠に醜い。
 この世は力無き者は毎日苦しみ死んでいくだけの世の中だな」
「お前は、誰だ。

 わしにこんなことをして無事に済むと思っているのか」
「まだわからないのか?
 お前は馬鹿なのか?
 我の名は『シシトー』じゃ。
 お前も我が教団のことは知っておろう」
「『シシトー』・・・神・・・?・・・本当に居たのか?・・・」
「やっと馬鹿のお前もわかったようだな」
「シシトー神様、私をお許し下さい」
「・・・本心では無いな。だがお前は人としてあまりに醜悪過ぎる」
「私は今までこの国の国民のために毎日頑張って来たのです」
「それは嘘であることは我にはわかっている。
 もうお前の様な醜悪な人間が生きている事はこの世のためにならない」
「・・・ワ~助け・・・『言葉が出ない』・・・・」

永源は、脂汗を流しながらギシギシと関節の音を立て窓際へ歩いていく。

『いやだ、止めてくれ。何をしたいんだ・・・』

そして大きな窓の取っ手を持って開けようとした。

『わしの身体を勝手に動かさないでくれ』

飛び降り自殺防止用の留め金が付いていて大きく開くことは出来なかった。

『バキッ』

その留め金は壊れて絨毯の上へ落ちた。

『わしはまだ死にたくないのだ。馬鹿にした奴らを見返すのだ』

開けられた窓から豪華な広い寝室へ冷たい空気が入り込んでくる。

『この国の支配者に成れると約束を貰っているのに嫌だ。死にたくない』

永源は、嫌々しながら綺麗に靴を揃えて議員バッジを外し靴の中へ入れる。
そして、タラタラ脂汗を流しながら窓からその身を空中へ躍らせた。

『グサッ』
『ぐあっ』

永源はホテルの敷地内にある樹木の太い枝に心臓を貫かせて死んでいた。
その枝は昨日、急な強い風で太い枝が折れたままになっていたとホテルは証言した。
永源議員は女性と部屋で会っていたとのホテルマンの証言はあったが、
一緒にいた女性の顔も覚えて居らず、監視カメラにも顔が映っていなかった。

永源の秘書高山はホテルの近くにあるいつものクラブに向かっていた。
「先生、今頃あの女を抱いてるんだろうなあ。
 木村千種か・・・もう昔の話だけど俺はファンだったんだよなあ。
 今日も抱っこしたけどいい匂いしたよなあ。
 今でも綺麗でオーラがあったよなあ。俺も抱きてえなあ」
ふと見るとネオンで煌びやかビルとビルの間の暗い路地を見ると若い女が立っている。
その女は綺麗でスタイルも良く高山をじっと見ている。
高山はなぜかその女の笑顔に惹かれた。
ふらふらと近寄っていく。
「お前、立ちんぼか?いくらだ?」
「あんたは好みだから1万円で良いよ」
高山は『こんなモデルと言われてもおかしくない綺麗な女を安く抱けるなんて』と驚いた。
女は高山の蟹の様な大きな顔を抱きしめると
口元を『好きよ』と形づくってキスをしてきた。
高山はやや冷たいがその形の良い唇と口の中を動き回る舌に翻弄された。
初めてキスをした時の様なあまりの気持ち良さに溺れた。
やがて女は耳元で囁いた。
「こんなところでなく別のところで良い事しましょうよ」
女と高山はその薄暗い路地の奥へと抱き合ったまま歩いていく。
女は後ろを見ることもなく普通に高山とキスをしながら後ろ向きに歩いていく。
やがてビルの裏側へとやってきた。
そこは翌日の燃えるゴミの日のために多くのゴミが集まっている。
高山は女に誘われる様にゴミの上へと倒れ込んで行く。
女は深い口づけをしたままその身体はゴミの奥へと潜っていく。
高山は陶然とした表情でゴミの山の中へと入り込んだ。
女の身体と高山の身体は黒い糸らしきもので繋がっている。

『プツン』
高山の耳に脳内の血管が切れる音が聞こえた。

『グアッ』
高山の口から呻き声が漏れて顔の半分が引き攣り半身が痙攣を起こし始めた。

15.淫獣1(第8章:占い死)

クモ助から情報が送られてきた。
ある時、木村千種党首から鷹へ博愛民主党永源代表の事で相談事が寄せられた。
最近、博愛民主党の永源代表が、食事の誘いなど色々と千種へ秋波を送って来ている。
情報収集のためもあり仕方なしに何度か付き合っているうちに、
最近ではホテルの部屋を予約しているとか言い出している。
最初は党首の千種だけだったが、次々に令和獅子党議員へ声を掛け始めている。
世界の潮流でもある様に日本の政治家は女性の数が少なく世界から批判されている。
博愛民主党代表の永源としては、女性の政治家の数を増やすために女世議員ばかりの令和獅子党を吸収しようと考えているのだろうと思っていたが、どうやらそれだけでなく己だけの下部組織として令和獅子党の党首を始めとして若い女性議員や議員の卵達の身体を狙っている雰囲気があるのだった。

その頃、最大野党博愛民主党代表の部屋で皮張りの立派な椅子に座り、
マホガニーの大きな机の上に短い足を精一杯延ばして乗せ、
ガマガエルの様な醜い身体を踏ん反り返らせて永源は葉巻を吸っていた。
目の上のタンコブだった同期でライバルの武藤議員に死んでもらって
自ら待望の博愛民主党代表へとなった永源代表は得意満面だった。
裏の情報では、どうやら愛人の上で腹上死をして、
あろうことかそれを糞蠅の様なゴシップ専用の三流記者に嗅ぎつけられて、
口止め料を含めてニュース差し止めに党として裏金を相当に使ったようだ。
政権与党なら怒鳴り上げて組織を使って脅し上げてしまえば済むのだが、
与党を批判する野党の立場で与党と同じことをすれば、
今どきはその糞蠅記者が自爆覚悟で世間へ暴露され、
そいつが世間から英雄として認識されてしまい、
結局は野党としての立場が無くなり、大幅に国民から支持を失うので仕方なかった。
現在の永源は、左翼マスコミに新しい野党の顔としておだて上げられ、
公約通り各街にある博愛民主党事務所前に「目安箱ポスト」を設置し、
どんな小さな国民の声も国の政策へ提言していくと発言し、
『現代の水戸黄門』に続き『ネクス暴れん坊将軍』と呼ばれた。
その目安箱に宗教二世・三世問題から新興宗教への監視強化や課税化が投稿され、
最大野党として「新興宗教の監視強化」を与党へ提言していくこととなった。

永源はこのたびのシシトー神の館での占いを後悔していた。
知り合いの政治家にその神託の正確さを聞いて興味津々で占いをして貰い、
面白半分で色々と占って貰ったらそれが結構正確で驚いたものだった。
その後、彼らが政治団体を立ち上げると聞いて、
政治団体が成功した後の議員の吸収と政治資金や票田を考えて特別会員となった。
最初は、神託通りに武藤が亡くなって自分は代表になれたが、
よく考えたらシシトー神の館の神託だけで、彼らの神が武藤に何かしたわけでもない。
にも関わらず思わず大切な政治資金の一部を渡してしまったことを後悔していた。
寄進として領収書は貰って無いので永源が大金を渡した証拠は無かったし、
教団の方からもキリが無いので寄進の記録はしていないと言われている。

永源は今夜も令和獅子党の党首とは会食を予定している。
野党間の宗教政策の調整と打ち合わせで宗教法人としての立場を聞くと言う名目である。
永源はそろそろ元アイドルだったこの女を自分の物にしてしまおうと考えていた。
ちょうど中学時代に好きだった女の子と良く似ており、
気が強そうな表情とスーツを持ち上げる程の巨乳が彼の好みだった。
永源は昔から良く権力に物を言わせてクラブの女などを愛人にしてきている。
いくら誘っても嫌がる場合には卑怯にも睡眠薬などの薬を使って犯した。
彼女たちは犯されたら諦めて金を貰って彼のモノになった。
そして飽きたら余分に金を渡して、別れる事を嫌がれば全裸写真をばら撒くぞと脅した。
彼にとってその女達とは全てが違う女が令和獅子党の木村党首だった。
元アイドルだけあって磨き抜かれた肌にいつまでも可愛い顔、
細いながらもしなやかで肉感的な身体、普段は芯の強そうな目つきだが、
何かの拍子に見せるその儚げな眼つき、表情、仕草は彼の嗜虐性を刺激した。
『あの女を思うまま凌辱して俺の物にしたい』とどす黒い欲望の炎を燃え上がらせた。

永源の妻は、永源が秘書をやっていた議員の一人娘で、
選挙事務所の責任者からは『姫』と呼ばれて贅沢の限りを尽くしている。
どんなに永源が必死でがんばって博愛民主党内で偉くなっても
「あなたの力で議員になった訳ではないわ。
 所詮低学歴で見映えも悪くただ順従だけだったのあなたには無理だったわ。
 父はそんなあなたに憐れみを掛け、
 一人娘である私には一切逆らわないと考えてあなたを婿にしたのよ。
 亡くなった私の父があなたを議員にしたようなものだから感謝しなさい」
「この地盤に必要なのは私の血筋。別にあなたでなくても良かった。
 あなたの価値は単なる種でしかないことを知りなさい。
 お父様と私のおかげで議員になれたのだからよく肝に命じなさい」
と女王様然として永源を馬鹿にして一切褒めることも無かった。
仕える先生からの指示ではあったが、
永源は常日頃憧れていたお嬢様だと舞い上がって結婚した。
しかし結婚後の生活と言えば、見た目とは裏腹に男遊びに慣れた女で
結婚後もその関係は切れる事無く、常に馬鹿にされ抑えつけられ、
誰との子供ともわからないが息子と娘が出来てしまえば夫婦の会話も無くなった。
子供達も父親を父親とも思わず馬鹿にしており相手にされていなかった。
妻は一人息子を溺愛し父から続く議員のこの地盤を継がせることや
一人娘を有力な政治家へ嫁がせることしか考えていなかった。
永源も外で愛人を作り遊んだが既に荒んだ心はより深く黒く荒んで行った。

今晩の夕食は博愛民主党と仲の良い野党の代表者が集まって
今後の選挙について話し合いをするという名目で
都内のホテルの会議室付き貴賓室が用意されている。
実は、その日に来る野党の代表者は令和獅子党の木村党首一人だけで
その時にみんなが都合がつかなかったという事にして
永源は二人だけで夕食を食べようと考えているのだった。
もちろんいつもの様に最初に出される高級ワインには睡眠薬が入っている。
その睡眠薬は常用量なら服用して10分後くらいで意識を失う程の強力な物である。
永源の秘書の高山はスマートにホテルから届けられた料理を並べていく。
徐々にワインや料理に入る睡眠薬の量が増えていく予定だった。

やがて予定時間が近づいてきて木村が部屋を訪れる。
「こんにちは、本日お招きいただきありがとうございます。」
「おお、木村さん、今日はありがとうございます。いつもながら美しいですね」
「過分なお言葉をありがとうございます」
「今日は後の人が若干遅れると聞いていますので
 先にワインでも飲んで料理を食べてしまいましょう」
「いえ、私は新人ですから皆様先輩の先生方をお待ちします」
「大丈夫です。みんなは仲間みたいなものだから何も思いません。
 まあそんなに硬くならず先ずはワインでも飲んでください」
「今日の打ち合わせはどうされますか?」
「ええ、政治家の打ち合わせは料理を食べながらというのが普通ですから
 まあどうぞどうぞ、しばらくしていれば皆さんが来られると思います」
 おい高山、木村先生へお注ぎしなさい」
高山がニヤニヤしながら木村のワイングラスへ真っ赤なワインを注いでくる。
「木村さん、これは30年物のビンテージワインでして、私の好きなワインです。
 ぜひともご賞味下さい。さあ乾杯」
「私はまだ若輩者ですからワインはあまりわからないのです。
 はい、ではお言葉に甘えまして・・・」

ワインを飲み豪華な料理を食べていくうちに木村は意識を失った。
料理の並べられた食卓へ俯せに眠っている。
その手からワイングラスが絨毯が敷き詰められた床へと落ちる。
「先生、もう寝ましたぜ」
「高山、わかってるな?いつもの様に奥の部屋へ運んでおけ。
 そしてお前はもう部屋から出て行け」
「はい、わかりましたよ。
 しかし、この女、さすがは元アイドル、良い女ですね。
 私も一度はこんな良い女と経験したいものですよ。
 先生は本当に羨ましい」
「お前には十分にお金を渡しているだろ?
 お前は水商売の女とやってればいいんだ。
 わしもこんな元アイドルでこんなに綺麗な女は初めてだ。
 わしがもし飽きたらお前にもさせてやるからな、楽しみにしておけ」
「へい、期待せずに待ってます」
「さあ、早く奥の部屋へ運べ。見ておくから変な事はするなよ」
「はいはい、本当にケチなんだからせめて匂いでも嗅ぎたいのに」
「駄目だ。早く連れていけ」
秘書の高山が眠っている木村を横に抱き上げると奥の寝室へ運んでいく。
その後をついていく永源は、ニタニタとネクタイを外しながら
獲物を見つけた猛獣の様な表情で舌なめずりをしている。
木村は可愛いあどけない表情で眠っている。
やがて秘書の高山が横抱きした木村の小柄な体をベッドへ横たえる。
「高山、早く出て行け。きちんと鍵をしていけよ」
「わかりましたよ。シャワーも浴びないのですか?」
「その方が生身を味わえるし、シャワーは終わった後で入ればいい」
「へいへい、もうお邪魔しませんよ。では失礼します」
と高山は寝室のドアを閉めるとしばらく寝室のドアに耳を付けて聞いていたが、
何も聞こえてこないため、舌打ちして名残惜しそうに部屋を出て行った。

14.霊査6(古代日本の歴史)(第8章:占い死)

祖父の狐派頭首との情報交換の中で
古代の日本の歴史と宍戸家の過去についての情報が明らかになった。
日本書記や古事記には記載されていないが、
丹波篠山地方や交流のあった地方の風土記や歴史書の中から明らかになった。
宍戸家は、元々古代からこの丹波篠山地域を支配する豪族の本家であり、
この一族は、この地の神『シシトー神』を信奉していると記されている。
その一族は、古くは日本書記にも出てくる『土蜘蛛一族』と呼ばれ、
関西地方でも大きな勢力で戦闘力も強く大和政権へ恭順しない勢力として、
政権内で非常に恐れられており、
政権にとって卑しい神を信奉する一族として憎まれ『土蜘蛛』と蔑称された。
宍戸家はこの『土蜘蛛一族』と深い関係があった。

ここからは夢見術を使う女子中学生である夢花の母親の夢代が、
一族の者から強力な護りを受けながら、
強力な結界の張られた宍戸家本家の墓に強く残る念に潜った情報である。
この地の豪族の長である宍戸一族へ迎え入れられた若き親王の名前は『北星親王』。
彼は『次の帝』の声も高く多くの貴族からの人気も高かった。
常に都やその周辺を見回り朝早くから夜まで働く民に声を掛け励まして
民に困ったことがあればそれを聞き取り何とかしようとそれに応えた。
彼は民の帝への尊敬を高めるべく多くの民の幸福のために日夜政務に勤しんだ。
民を始め宮中の多くの女性が恋焦がれ彼との逢瀬を夢見て噂しあった。
帝も優しく真面目な彼を信頼し重要で高い官位を与え経験を積ませた。
その帝には正妻よりも深く愛する若い側室がいた。
その側室の部屋が北の間にあったため、『|七星《ななほし》の君』と呼ばれた。
偶然、『北星親王』は皇居の庭でこの世の物とも思えぬ色彩の揚羽蝶を見つけた。
その揚羽蝶がフワフワと羽搏き彼の目の前を横切る。
彼はその揚羽蝶に惹き込まれついついその後を追いかけてしまう。
その日は酷く暑い日で御簾を少し開けて涼んでいた『|七星《ななほし》の君』。
その前を『北星親王』が通りがかり彼女の可憐な姿を見てしまう。
当時高貴なる女性はその姿を夫以外の人間に見せることはしなかったため、
姿を見られた『|七星《ななほし》の君』は大層に慌てて御簾を上げようとしたが
慌てたため、御簾そのものを地面に落としてしまう。
『北星親王』は、慌てて顔を扇で隠す『|七星《ななほし》の君』へ近づき、
彼女の方を見ない様にしながら、にこやかにそっとその御簾を元に戻してその場を離れた。
彼は『|七星《ななほし》の君』が帝の側室であるとも知らずその美しさに驚いた。
運の悪い事にその場を帝の正妻の『向日葵の君』の従者が見てしまう。
すぐに従者から『向日葵の君』へ伝えられ、最近とんと顔を見せぬ帝を悲しみ、
帝の寵愛を一身に受ける『|七星《ななほし》の君』を憎んだ。
『向日葵の君』は、『北星親王』を常に嫌っている弟の『物見親王』へこの事を伝える。
『物見親王』は次の権力の座に付こうと考えていたから『北星親王』が邪魔だった。
やがて宮中で
「北星親王と七星の君が、深い仲のようだ」
「北星親王は、七星の君だけでなく帝の地位も奪い取るつもりらしい」
と噂され始め、七星の君とは別の側室から帝の耳に入った。
帝は、その噂を聞いてショックを受けて強く七星の君に問い詰めた。
彼女は暑い折につい御簾を落として北星親王に顔を見られた事を白状した。
ちょうどその時、七星の君が懐妊した時期で帝は誰が父親なのかを疑った。
帝はすぐに北星親王を呼び出し、七星の君のことで強く非難した。
寝耳に水の北星親王は驚き釈明をしようにも、
非難される理由も帝が愛する七星の君が誰かもわからなかった。
北星親王が、一瞬言い淀んだ瞬間を帝は『誠の事』と判断した。
それからは北星親王は謀反の罪で官位も剥奪され蟄居を命じられ、
やがて妻や子供は殺され一族郎党も全て行方がわからなくなり、
風の噂では七星の君も行方知らずとなっているようだ。
従者一人だけで丹波篠山の宍戸家の支配地への流罪を命じられた。

丹波篠山で幽閉された北星親王は、宍戸一族の娘を妻としたが、
帝へは『誤解である旨』『無実である旨』『七星の君の顔も知らない事』
を何度も必死で手紙を送ったが疑心暗鬼に染まっている帝は信じなかった。
それも墨汁に自らの血を滴らせて自らの強い思いを込め送ったが一切返信は無かった。
やがて全国的に数年に渡る凶作が起こり、
国中に疫病が流行り始めると帝は天の意思として退位して次の帝へ変わった。
それから長い時が過ぎ、都において北星新王のことは忘れ去られていった。
その頃から北星親王は、宍戸一族の神であるシシトー神に祈り始めた。
『我が身をもう一度この国の政治の只中に置かせてほしい』
『新しい帝としてこの国を支配させてほしい』
『私をこの様にしたこの国そして帝を許しはしない』
そしてある夜北星親王は失意と悲しみの中で
シシトー神の象徴である北極星に祈りを捧げながら
シシトー神の墓石の前で自らの心臓を抉り取り、
小さな石の箱に流れた血で真っ赤に染まった心臓を収めたまま事切れていた。
その夜は都では夏にも関わらず急に強い寒気が降り雪が降った。
都の貴族や民は驚きながらも白い息を吐き空を見上げる。
北極星から撃ち放たれた様に見える真っ赤な流れ星が丹波篠山の地の方向へ流れた。
それを見た全ての人間が理由なく身体に震えが走りその星に『凶兆』を感じた。
その時を境に国や都の中に奇病が流行り始め、
北星親王を陥れた上皇や政敵のすべてが、
突然胸が痛くなって死んだり、半身が痺れて動けなくなり死んでいった。
陰陽師にも頼んだが、あまりにその祟りが強く祓う事も出来なかった。
いつまでもその奇病が止むことがないため、
宍戸家ではシシトー神へ祈りを捧げた結果、
奇病の原因が北星親王の深い悲しみと怒りであることが告げられた。
それ以降、宍戸家では北星親王の深い悲しみと怒りを抑えるために
定期的に罪人や新鮮な獣の心臓が墓前に供えられるようになった。
現在、鷹がマンションの上に祠を作りその墓前で石の箱を備え付けている。
遼真はきっと定期的に心臓が備えられているのだろうと考えた。

さてここで出てくる『土蜘蛛一族』に関してであるが、
日本書記や古事記の神話と言われる時代以前から生きている一族である。
ある研究者の話では
神話時代の日本の国は中国大陸の東海海上に2つの大きな島として分かれていた。
それら二つの島は、
現在の日本の本州のフォッサマグナの位置で左右に分かれた島と考えられている。
地図上の東側の大きな島は、
現在のフォッサマグナより北側の本州部分が繋がった形であり、
その島の伸びる方向は現在と殆ど変わらないが、
現在より緯度は低く南の海上にあってとても暖かかった。
そしてこの時代の北海道はまだ日高山脈の元となる島が出来たばかりだった。
次にもう一つの西側の島は、九州部分を北にして南北に立っており、
その大きさは九州、四国、中国地方及び関西地方が一つの島となっており、
当時は現在の関門海峡も瀬戸内海も無くそれらは太い川の様なもので、
邪馬台国と言われた国はこの島に存在したと言われている。

またそれよりももっと古い時代の日本は現在よりも多くの島で構成されており、
中国大陸の東海海上にて東西に散らばり移動していたと言う話は、
「鳴き砂」と呼ばれる砂の研究からも類推できる。
この砂は主に白亜紀ジュラ紀第三紀の地層を背景に持つ砂浜に形成される。
白亜紀の代表的な場所は、日本海側では「鳥取県青谷浜」、
太平洋側ではジュラ紀の「宮城県牡鹿半島」、第三紀も同じく同県宮戸島の砂浜で
これらは内湾性の砂浜であり、その砂の主な構成鉱物は石英や長石である。
この砂は日本海特有の常時吹き付ける強い風の影響で出来ると言われていて、
砂粒が強い北風による波に何度も洗われ、その角が取れ表面がツルツルに磨かれ
その砂浜を踏めば”キュッキュッ”と泣く様に鳴る特殊な砂である。
その分布を調べた研究家の論文からは、その生成過程から考えて、
現在の日本の日本海からしか発見できない砂である筈なのに、
不思議な事にその砂浜が現在の西日本の太平洋側からも発見されているだった。
そこからフォッサマグナやプレートの方向を考えて、
現在「鳴き砂」の太平洋側であった場所は、
当時は日本海側で常時北風に洗われていた場所に存在したのではないかと考えられた。

また明治時代から現在まで邪馬台国の場所の論争の元となっている
魏志倭人伝”の記述(距離と方向の違い)についても
西側の島がこの形の島ならば”魏志倭人伝”の記述通りの方向と距離で
関西地方にある邪馬台国へと到着するとある研究者は話している。
また九州のある地名で昔から東西南北が他の場所と異なる場所があり、
それは90度時計回りに回せば東西南北が正常化するところからも類推できる。
この現在とは異なる立地ゆえに戦乱に乱れる中国大陸の大国魏の遠交近攻の戦略(遠くの国と親しく外交し、近くの国を両者で挟み撃ちにして攻め、領土にしようとする外交・軍事戦略)により西側の島にある邪馬台国への魏からの友好の要望があり金印が贈られたわけである。その金印は魏から邪馬台国へ贈る移動中に他部族との戦闘が起こり紛失していたが、その後、江戸時代となり九州にある志賀島で作業中の農夫が見つけた。

実はアマテラスの支配する『高天原』と言われる土地は、
神話や中国大陸内などではなく東側の島の現在で言えば関東地方にあった。
これは関東地方の貝塚や遺跡及び香取神宮鹿島神宮の御祭神を見れば
その歴史の古さや出雲神話に出てくる神様であることからも明らかである。
古代より東側の島の関東地域に大きな勢力を張るアマテラス一族としては、
当時、邪馬台国のヒミコが率いる連合国の本拠地である、
西側の島の南側へ攻め入り統一しようとしたが出雲族の邪魔もありうまく行かなかった。
そんな時、原因はわからないが、突然地震が起き大地が大きく動き始めた。
地球規模で見ると太平洋プレートやフィリピンプレートが大きく動き始め、
何と高天原のある東側の島は北上し始め、西側の島が反時計回りに回り始め、
現在のフォッサマグナの形成された部分へ衝突した。
その衝撃で東西の島の海岸部だった部分や海底は盛り上がり高い山脈となり、
とうとう東西二つの島は繋がり現在の日本国の様な形となった。

自ら反時計回りに移動し東側の島の東岸とぶつかった衝撃を
直接被った近畿地方で栄えていた邪馬台国やその周辺の連合国は、
多くの人間が死に疫病も流行り気候も変わり飢饉が起こり
せっかく纏まったはずの邪馬台国連合内は千地に乱れた。
しかし寿命を終えて亡くなったヒミコに後に
新女王としてついたトヨの時代になってやっと連合国にも落ち着きを見せ始めた。
ただ人々は疲弊しており生きていくのに精一杯の日々だった。
そこで高天原の長アマテラスは、
多くの船を作り当時発展していた近海航海技術を利用し、千島海流を利用し、
当時あまり大きな勢力の無い九州の地“高千穂”へ孫のニニギを降臨させた。
ニニギ軍は時間を掛けてその地の小さな勢力を平定し支配地を大きくし、
常にアマテラスから支援を受け、やがてニニギの息子のジンムの時代となる。
元の邪馬台国のあった場所は、またもや群雄割拠の地となり、
邪馬台国はもう小国家としてトヨの血脈を維持しているだけの国となっていた。
九州地方ではもう南部のハヤトを除きジンムの敵対勢力はいなくなり、
勢力として十分に大きくなったと判断したジンム軍は東征を開始した。
ジンム軍は北九州より山口県へ上陸し
瀬戸内海側の街道を進み各地を平定し更に勢力を大きくしていった。
しかし現在の関西地方手前に来た時、その進行は止まった。
この地は『土蜘蛛一族』の支配下であり、多くの兵力もあり、
ジンム軍への抵抗も強く勝つことも出来ず、挙句に将軍までもが討たれてしまう。
『太陽に向かって戦ったから負けたのだから今度は太陽を背にして戦う』として
ジンム側は軍の多くを現在の紀伊半島側へ移動させその地から太陽を背に行軍させ、
紀伊半島の旧邪馬台国勢力や反土蜘蛛の勢力と手を結びながら再度戦いを挑んだ。
両軍ともに被害者も多く、なかなか決着が着かなかった。
そんな時、古代より土蜘蛛一族と戦いを続けていた山陰地方の強大な出雲族へ、
アマテラスが軍神と言われるタケミカズチを派遣しアマテラスへ恭順を示させ、
出雲族の一部の勢力を使い土蜘蛛一族の支配する関西地方へ攻めてさせた。
東西から挟み撃ちを受けた土蜘蛛一族は戦力を裂かれ各地で敗走し、
最後は父祖の地である丹波篠山で徹底抗戦をして立て籠もった。
その後、ジンムより『土蜘蛛一族』へ土地支配を条件として
アマテラス・ジンムへの恭順を示す様に言われ従う事となった。
長い戦いの末ジンムは、この近畿地方にやっと大和政権を樹立した。
しかしまだまだ各地には強い豪族が乱立しており、その力も拮抗しており、
いつ支配をめぐる戦いが起こるかわからない状況であった。
また中国大陸も魏など覇権を争う動乱の最中で、
朝鮮半島の支配など覇権を考える魏などの国は日本へ支援を要請してきた。
ジンム即ち大和政権は、現在の日本が小さな一族の集まりで
個々の力では対抗できないことを理解し、国全体としての力を強くするため、
各地の豪族に元々の支配地域の支配権を与えながら、
連合国の首長として、大和政権が国交や様々な決定権を持ち、
合議制という名目で絶対的権力者のいないようなあやふやな体制で政権を維持し、
九州地方、中国地方、関西地方を始めとした広い地域をゆるく支配した。
一応政権を安定させた大和政権側も他の部族も
国としての弱みを見せる事となるこれ以上の戦いは理が無いと考えた。

87.秋の道東旅行4(屈斜路湖湖畔から知床へ)

温泉から静香と美波が部屋に戻って来て早速「レストランルーペーニュ」へ向かう。
このレストランは、天井高約10mの開放感あるダイナミックな空間でガラス張り窓からはライトに照らされた大きな池と深い緑の森が見えている。
食事は和洋中の料理が揃っているブッフェ形式で室内中央にはライブキッチンがあり、
シェフのすばらしい手元の動きや出来て行く料理を目の前で楽しむことができた。
案内された窓際の席から、いつもの様に子供二人を連れて料理の方へ向かう。
ここで宿泊客が列を作っている料理は、「ローストビーフ」と「溶けたチーズ乗せ」だった。
大きな絶妙な焼き加減の塊肉のローストビーフをシェフが目の前で切り分けてくれる。
目の前にあるお好みの食材に高温で溶かしたあつあつのゴーダチーズを注いでいる。
雄樹も夏姫も好きな物を選んでいく。
火傷をしても困るので湯気の出ている物は慎一が取って並べて行く。
雄樹は、「ローストビーフのミニ盛」「北海道産鶏の棒棒鶏」「エゾシカ挽肉のスパイシーカレー」「鮭とコーンのバター―チャーハン」「北海道産ベーコンとアスパラガスのピザ」を小皿に盛り、
夏姫は、「自家製フランスパンとジャガイモの溶かしチーズのミニ盛」「北海道産牛乳トウキビのピザ」「タンドリーチキン弟子屈ジャガイモのチップを添えて」「北海道産にこだわった焼売」「野菜サラダ」を小皿に盛ってトレーに載せてゆっくりと慎重に歩いて席へ戻って行く。
すでにテーブルには幼児用の席と静香が二人の大好きなリンゴジュースをセットしている。
慎一は、「ローストビーフ・ピリッと北海道産山ワサビ添え」「自家製フランスパンとジャガイモの溶かしチーズ」「タンドリーチキン弟子屈ジャガイモのチップを添えて」「海老と玉子のチリソース煮」「刺身お作り(甘えび、サーモン、アブラカレイ)」「カレイのフリット」「ホタテの塩辛」を小皿に盛りトレーに載せて戻った。
美波は、二人分の「ローストビーフ・ピリッと北海道産山ワサビ添え」「自家製フランスパンとジャガイモの溶かしチーズ」「ボロニアソーセージと弟子屈クレソンのハニーマスタード」「インゲンとカシューナッツの冷菜」「サーモンのプロバンス風」「蟹焼売」「花咲蟹の鉄砲汁」「弟子屈の椎茸・ししとうの天ぷら」「四川麻婆豆腐」「野菜とビーンズのサラダ」を小皿に盛りトレーに載せて戻った。
慎一と静香は頼んでいたビールと美波はレモンスカッシュで雄樹と夏姫も一緒に乾杯した。
慎一と静香がビールをグイッと飲んで同時に『アー・・・美味しい』と言うと
子供達も笑いながらその真似をして『アー・・・美味しい』と言っている。
美波は弟妹のそれを聞いて『二人とも大人になったらお酒飲みになるかも』と大笑いしている。
どの料理も本当に美味しくて、気がついたら軽く大ジョッキが空いていることに気がついた。
今度は水割りを頼んで料理をドンドン平らげて行った。
粗方ビュッフェの料理を平らげる頃、
今度は静香と美波が交代で子供達を連れて行き、デザートを取りに行っている。
ビュッフェのデザートコーナーには色々と美味しい物が揃っている。
コーナーへ行きパッと目に入って来るのは、
クーベルチュールショコラ
これはベルギー産クーベルチュールチョコレートを使用したムースに、照明の光が反射している艶やかなグラサージュをかけ、高級感のある外観に仕上げた濃厚な味わいのチョコレートケーキ。
パンナコッタ
とろっと濃厚な味わいとなめらかな口どけが魅力のイタリアを代表するデザートのひとつである。
生クリームの濃厚な味わいとツルッとした舌触りがおいしい。
その他、真っ白のレアチーズケーキ、柚子ゼリー、ソフトクリーム。
フルーツとしては切り分けられたパイナップル、キウイ、オレンジが盛られている。
静香や美波そして子供達は、目を輝かせながら、パフェ用食器へソフトクリームを入れて
その周りに彩り良くフルーツを盛り付けてフルーツパフェにしている。
雄樹は口の周りを真っ白にして頬ばっているし、夏姫は美波を見習いながらお淑やかに食べている。

家族全員で部屋の戻り、慎一はテレビを見ながらゆっくりとしている。
静香と美波は窓際の椅子に座って、
お茶を飲みながら秋の明るい大きな月に照らされた屈斜路湖湖面を見て笑って話している。
子供達は家から持ってきたおもちゃをベッドの上に出して遊んでいる。
しばらくするとおもちゃを持った夏姫が膝に座って凭れておもちゃで遊んでいる。
雄樹もそれを見て、慎一の隣にくっ付いてきておもちゃで遊んで話しかけてくる。
ふと東館にゲームコーナーのあることがホテルの案内に載っていたので行くことにした。
子供二人を抱っこして色々とお話しながら歩いて行く。
おもちゃコーナー独特の楽しそうなミュージックが流れて来る。
ここには大人も楽しめる体験型ゲーム機もたくさんあり子供用のおもちゃゲーム機もあった。
アニメ主人公の車に乗ったり、ワニワニパニックゲーム、太鼓の達人ゲームなどに挑戦させた。
プリキュアの車には夏姫が、アンパンマンには雄樹が乗っている。
その後、ワニワニパニックゲームは雄樹が大いに気に入り、
太鼓の達人ゲームは夏姫や静香や美波も気に入ったみたいでキャアキャア騒いでいる。
最高得点を出して満足した雄樹と好きな歌のリズムをうまく叩けた夏姫は満足している。
部屋に戻ると雄樹がどのベッドで寝るのか全てのベッドに順番に寝転んでいる。
夏姫は『私は美波姉ちゃんと一緒に寝る』と言って美波へ抱き付いている。
そして雄樹は『僕は一人でこのベッドで寝る』と言っている。
しばらくすると雄樹は寂しくなったのか『僕が寝るまではここに居て』と母にお願いしている。
その夜は子供達も硫黄山で歩いたり砂湯や楽しいゲームなどで疲れたのか早めに寝ついた。

翌朝は子供達の目覚めと共に早めに起きて、
予約していたホテル1階の「レストラン ルーペーニュ」へ向かう。
ここで朝食用バスケットを受け取り、レイクサイドガーデンへ向かう。
そのレイクサイドガーデンは、その名の通り
目の前が朝靄に沈む屈斜路湖畔に面しており、ときおり爽やかな風が吹いてくる。
朝食バスケットの内容は、
◆北あかりのポタージュ          
◆北海道産卵のスクランブルエッグ 
◆十勝の森放牧育ち どろぶたボロニアソーセージ 
◆北海道産厚切りベーコンのグリル
◆白糠酪恵舎モンヴィーゾのシーザーサラダ
◆べつかいのヨーグルト屋さん
◆フルーツの盛り合わせガーデン風
◆べつかい牛乳パン・摩周そば粉のフィセル と種類も多くとても豪勢な内容だった。
家族全員、北海道の豊かな自然の中で新鮮で美味しい空気と料理に舌鼓を打った。
屈斜路湖摩周湖と同様に朝はうっすらと霧に包まれている。
その湖面の霧へ太陽の光が湖面を射すと
湖面に漂う霧は大きく動き始め深い青色の湖面が顔を出し始める。

この場所では、グランピング宿泊テントもあり夕食も取ることが出来るようだ。
その他、テントサウナという珍しい施設もありキャンプ感覚で楽しむことが出来るらしい。
またここでの夕食プランの内容は例としては、以下である。
◆ポーク(豚)ジンギスカン 
◆豚バラの串焼き 
◆ひな鶏の串焼き
◆道産帆立・イカ 
◆ウィンナー 
◆手作り芋団子 
◆地場産焼き野菜
◆焼きおにぎり
その他のホテルイベントとしては夏の期間限定で「屈斜路湖夕涼み遊覧クルーズ」もあって、
長い間ホテルに滞在しても楽しむことが出来そうだった。

雄大屈斜路湖畔の自然の中での朝食と言うオシャレな時間を満喫してホテルを出発する。
今日の予定は、いよいよこのたびの最終目的地である知床半島へ向かう事である。
途中に見る場所はあってもそこで時間を使うと知床半島での観光があまりできなくなるため
午前中は必然的に車中の時間が増えてしまう事になるが、子供達用に持ってきたテレビ番組や映画のDVDを車内ビデオに流しながら移動することとしている。
パイロット国道を北上し、昨日に訪れた美幌峠を越えて美幌国道で美幌町方面へ向かう。
途中右折し249号線へ入り大空町へ向かい道なりに走ると334号線知床国道へ突き当たる。
右折しただひたすら道なりに走るとこじんまりとした小清水町が見えてくる。
そこから小清水町を越えて清里町が見えてくると最初の休憩地である斜里町は目の前である。

「道の駅 しゃり」の駐車場に車を停めてトイレ休憩をする。
この道の駅は、JR知床斜里駅から徒歩5分の場所にあり訪れる観光客も多い。
道の駅の中にはレストランや喫茶軽食の店もあったが、今夜もホテルバイキングだし、まだ昼には早いのでジュースを買った。
ジュースを飲みながら駅内を歩くと
なぜか「ねぷた山車」が展示されている。
この色彩鮮やかな山車は毎年7月に行われる「しれとこ斜里ねぷた」の山車らしい。
以前青森県弘前市へ桜の花桟敷を見に行った時に観光館があって見た記憶が蘇った。
不思議に思いこの地と弘前市の関係をネットで調べて見ると、
知床の斜里町青森県弘前市の"ねぷた"の関係が見つかった。
今から200年以上も前のことで、1807年、オホーツク海沿岸でのロシア軍艦による砲撃や略奪に対して、幕府が津軽藩を北方警備に当たらせたことが発端だったようだ。
北方警備を命じられた藩士100人にとっては、知床の冬は予想以上に過酷だった。
赴任当時は秋の季節、漁場に建てられた粗末な小屋で暮らし、赴任時に持参した米と味噌で食いつないだ。季節的にもう山菜はなく、売り物として扱われる川魚を捕ることや、アイヌからの支援を受けることさえも禁じられていた。その上、急な出発命令だったため、着の身着のままだった藩士たちは厳しい寒さ、栄養不足と飢えで次々と倒れ、春を迎える頃には、わずか28人になっていたらしい。この惨たらしい事件は、藩士の引き揚げ後、藩は民心に動揺が広がるとして関係者を口止めにし、事件の記録を“封印”した。この惨たらしい事件に関して、斜里町には死亡者名簿が残されていましたが、具体的なことは分からずに、本事件は永遠に闇に葬られるはずでした。
しかし、1954年、「他見無用」と書かれた藩士の日記が、東京・神田の古書店で見つかったことで、事態は一変する。そして翌年に斜里町史にも掲載され、ようやくこの事件は明るみになった。
その後、地元の郷土史研究家らによる慰霊碑建立の機運なども盛り上がっていき、弘前市との交流のあった「津軽藩士殉難慰霊碑を守る会」の名誉会長・日置順正氏の尽力から、現在ある知床博物館の裏道を上がった町民公園に、1973年に「津軽藩士殉難慰霊の碑」が建立された。
その後、斜里町は、慰霊碑を建立して以来、毎年町民の手で慰霊祭を行っていたことが縁で1983年に青森県弘前市と「友好都市」となり、両市の交流が盛んとなり、当時亡くなった藩士たちの霊を慰めるために、「知床ねぷた」は2日間にわたり開催され商店街を中心に知床の夏を彩る最大のお祭り「しれとこ夏まつり」として開催されている。

少し館内を行くと何と大きな水槽に「クリオネ」が展示されている。
これには雄樹も夏姫は走って行き水槽に額を付けて「可愛い」と喜んでいる。
ふとピアノの音が流れていることに気がつくと観光客らしき人が弾いている。
ここでは「ストリートピアノ」が設置されていて、誰でも弾けるようだった。
実は札幌市南区にあるコープさっぽろにも同様な「ストリートピアノ」が置かれている。
家族で買い物に行った時に腕に覚えのある人がピアノを弾かせているのを聴いている。

しばらく休憩して334号線知床国道を東へ向かい次の目的地の知床峠を目指す。
知床国道の左側は一面オホーツク海で蒼い海が広がっている。
やがてこじんまりとしたウトロの街が見えてくる。
今夜宿泊予定の知床第一ホテルの場所を確認しつつ道なりに進んでいく。
港湾内には明日の朝に乗る予定の知床半島観光船の姿が見える。
遠音別村を越えて知床横断道路を進んでいく。
左折「知床五胡」の看板を越えてただひたすら走る。
道の両側は、紅葉がどんどん深くなり、風の吹き渡る空には雲一つない青空が広がっている。
ふと気づくと両側の色づく木々が徐々に低くなり空が一面に広がる場所「知床峠」に到着した。

知床峠は、斜里町ウトロと羅臼町を結ぶ国道334号の峠で、知床八景の1つにも選ばれている。全長27kmの曲がりくねった峠道、知床横断道路の最頂部にあたる標高738mにあるビュースポットです。
真正面に羅臼岳、眼下には深緑の大樹海、天気が良ければ、遠く根室海峡とそこに浮かぶ北方領土の一つである国後島を望む大パノラマを楽しめる。ただ、この一帯は気候の変化が激しく雪崩や崖崩れなどの可能性もあるため、降雪により北海道内の国道で唯一通行止めになることがある。また、知床横断道路は11月初旬~4月下旬は通行不能となるため、日本一開通期間が短い国道と言われている。

知床峠展望台には広い駐車場があり既に数台駐車されている。
展望台に設置されている知床峠の石碑の前で観光客が写真を撮っている。
子供達も久しぶりに外に出れて嬉しいのかそこじゅう走って行っては色々と見ている。
やや冷たい風が吹く中で紅葉に彩られた雄大羅臼岳や天頂岳が見える。
今日は幸運にも快晴のため、ネット情報通り、
うっすらと北方領土国後島が深い蒼い根室海峡の向こうに浮かんでいた。
改めてその距離の近さを目にした時、
終戦時のソ連による一方的条約破棄による現在も続く不当占拠を思い出し忸怩たる思いが蘇った。
その思いを振り切って気分を切り替えて家族と知床第一ホテルへ向かった。

知床第一ホテルは、1970年に設立され、1990年にお料理を一番美味しい状態でご提供し、お客様の好みに応じて利用できるバイキングスタイルのお食事を採用した。この方式をホテル業界で真っ先に採用したことから注目を集め人気を博した。そしてバイキング日本一の称号を獲得したホテルである。
広い駐車場に車を停め、ロビーに向かう。
広く開放的なロビーで華やかなカーペットで彩られている。全面ガラス張りのラウンジで、青いオホーツク海や知床の大自然を一望できる。フロントでチェックインして予約している至然館の和洋室の鍵を受け取った。

13.シシトー神教団と令和獅子党の躍進(第8章:占い死)

徐々に『シシトー神の館』の噂が一般人の口の端に上り始め
最初は興味本位の人も多かったが、一度面会して占って貰うと感激し、
それがSNSなどに囁かれ始めると深い悩みを持つ多くの人々から、
『もっとシシトー神の館を増やして欲しい』との願いが多く寄せられた。
その願いを受けて『シシトー神の館』側としては、
何とか深い悩みに身を焦がしている人たちを救うべく、
元々置かれていた『シシトー神教団』と同じ場所へ小部屋で『シシトー神の館』を開店した。
場所は東京を本館として、札幌、仙台、名古屋、大阪、神戸、広島、福岡に開かれた。
その場所には『シシトー神教団』と『令和獅子党』の本部や支部が置かれている。

ここで問題は、神様のご神託を聴ける姫巫女は一人しかいないため、
各館へ毎日の様に姫巫女を移動させるのは無理があった。
そこで全国の多くの悩みを聞くために、占い方式を『リモート』とすることになった。
予約順に全国各地の『シシトー神の館』にある占い部屋のリモート画面で
天座に座り踊る姫巫女と向き合い悩みを相談し解決していった。
人間と思えないほどの長い時間、
人の幸せのために占いをしていく姫巫女。
その神懸かりとも思える行動に感銘を受け、それがSNSへ配信される。
そのたびに『シシトー神の館』への予約は急激に増えて、
占いを終わるたびに『シシトー神教団』へ入信する人が増えていく。

最初、渋谷駅前に『シシトー神の館』に開いた当初は、
若い人が中心で関東圏からの客だけだったものが、
今となってはいつの間にか口コミで全国へ広がり始め
多くに人から館を増やす要望が増え続け、
それに応えるとなおさら予約は増える一方だった。
そんな中でも、
姫巫女は寝る間も惜しんで精力的な占いにて全国の人々の悩みに向き合った。
その真摯な姿勢に占い客も感激し更に教団信者は増えていく。

クモ助と天丸から情報では、
占いのリモートの装置に関しては、
IT企業でプログラマーをしていた事務長の鷲が作成したもので、
鈴女以外が話す声も鈴女の声に変えられ、踊りも何種類もあり、
表情も数パターンあって姫巫女の顔は差し替えられたものだった。
非常に細かい画像処理をしているため普通は気がつかなかった。
このことを知っているのは、宍戸家の兄弟だけである。

実はリモート占いを実質的に実施しているのは鷹だった。
館が出来てずっと現在まで鷹が占い客本人の個人情報を読み取り、
それを文書として姫巫女の鈴女に伝え、
鈴女の口から神託としてまたは占い結果として客へ進むべき方向を伝えた。
すると占い客は、誰も知らない自分の秘密を語られ驚き、
自らが内心望む方向を指し示して貰ったおかげで物事をスムーズに進めることができた。
鷹はなぜかリモート画面の映る人物の悩みや個人情報でさえも知ることが出来た。
その理由がわからなかったが、彼の行動からある程度読み取れた。
それは鷹が定期的に政党支部を回る時にシシトー神の館の占い部屋を訪れ、
必ず占い客や支部長の部屋の壁に描かれているシシトー神の象徴『北極星』へ、
祈りながら両手でそっと大切に長い間触っていることから、
もしかしたらその時にあの黒い影の粒子を宿らせているのかもしれないと考えた。
こういう霊力の道は、何らかの方法で最初に一度強い霊力で通じさせると
その後はどんな遠距離であってもどんな場所からでも作用させることができた。
鷹の身体から伸びる霊力の道が、常に繋がっている状態となっている。
その霊力の道の原因となるものは、あの黒い物質であり、
支部が非常に地脈の濃い場所に立っていることから
それを動かすためのエネルギーとなるものは、地脈ではないかと遼真は推察した。

じわじわと勢力を伸ばした『令和獅子党』は、
とうとう衆院参院選共に3名ずつ当選者を出し政党要件を満たした。
特にこの政党の候補者全員が女性で、年齢も政治家の中では若かった。
日本は先進国の中でも女性議員の数が少なく批判されていたことも時流に乗れた。
その上、彼女たちは元アイドル歌手や元モデルばかりで見映えも良く、
元々の知名度もあるが、それ以上に彼女たちは、
政治や経済について大学や大学院へ再び入り直し高学歴となり、
学問の裏付けを持って立候補したため非常に人気が出た。

ここで政党要件の説明だが、
政党として認めるための条件で以下がある。
(1)現職の国会議員が5人以上所属している、
(2)前回の衆議院議員総選挙か、前回か前々回の参議院議員通常選挙のいずれかで、得票率が全国(選挙区か比例代表のいずれか)で2%以上ある、のいずれかを満たす必要がある。
そして政党になれば、以下4要件が可能となる。
(1)政党交付金の交付対象となる。
(2)政治献金は、企業や団体から政治献金を最大年間1億円受け取ることが可能、個人献金の受取上限額を年間2000万円まで可能となる。
(3)衆院選公認候補は政見放送を利用でき、参院選公認候補は、スタジオ録画や持ち込みビデオも可能。その他にビラ(11万枚)や政党パンフレットを無制限に配付でき選挙カーの台数も増やすことができた。
(4)政党は衆院選小選挙区の候補者を比例代表でも重複立候補させることができる。

『令和獅子党』には、“十の約束”というものがある。
これは政党としてのマニュフェストである。
一.日本の国土を守る
  首都移転。地震など災害から国土を守る。外国勢力による侵略から国土を守る。
  日本国軍の創設。防衛装備の拡充。有事及び離島へのロボット兵及びAI兵器の配備。
  離島国営化及び保全整備による消滅回避。専守防衛から先鋭的専守防衛への転換。
二.日本人の命を守る
  防衛力の強化。官民一体となった防衛技術の開発及び輸出の推進。
  災害に強い街の構築推進。スパイ防止法制定。国会議員の国籍公開。
  外事警察及び国内警察力の強化。AIによる悪意のSNSへの監視。
  裁判及び法律の凡例主義からの脱却。外国人犯罪者の国籍と氏名の公表。
三.日本人の社会生活を守る
  センターシティ構想の実現。消費税減税。企業の内部留保及び宗教法人への課税。
  国内企業の海外資産への課税。高校までの授業料や学校給食の無償化。
  少子化の脱却。在日外国人への日本生活への教育指導。凶悪犯罪への厳罰化。
  社会のシステム維持に必要な犯罪者の位置情報監視による管理。
四.日本人の心を育て守る
  宗教庁の新設。日本人として誇りの持てる国史教育の確立。
  LGBTQ?など多様性社会の推奨。国民全員参加での宗教による人権侵害の防止。
  ロボット及びAIによるケアへの対応。虐めへの公的通報制度設置。
  家庭内・職場内・社会的ハラスメントの厳罰化。ハラスメント監視員の設置。
五.日本人の健康を増進し守る
  未成年及び高齢者医療の無償化。先進医療の開発。違法薬剤犯罪の厳格化。
  科学技術の発展により食料自給率超50%の達成。生活保護等貧困家庭への現物支給。
  在日外国人及び法人への医療制度運用の見直し及び厳格化と期間別保険料の徴収。
六.日本人の教育を育成し守る
  高校生まで公立校の教育費無償化。学校教師資格の定期的査定による厳格化。
  学校教師への生徒からの投票制度の導入による教育環境の改革。
  国費による科学技術発展のための人材育成。自由民主主義思想の徹底。
  高校卒業までのSNS禁止。近隣諸国条項の廃止。日本国史へ神話時代の復活。
  外国語翻訳機又は統一アプリの無償配布。国費による海外留学制度の推進。
七.日本の資源を開発し守り活用する
  日本の国土及びその周辺に眠る天然資源の開発と活用。エネルギー問題の解決。
  低炭素社会用技術開発の推進。核融合発電の推進。
八.日本の経済を大きくし国民の利益を守る
  日本政府の特別会計及び一般会計の一本化。国民への投資の推奨。
  財務省の解体(再出庁と歳入庁に分解)。科学技術の発展へ注力。
  公営以外のギャンブルの禁止。国際的知的財産権保護推進。
  国民全員参加による労働市場の拡充及び国力にあった賃金上昇。
九.日本の空を守る
  宇宙空間デブリの回収と再使用。商用衛星の防御。攻撃型衛星の打ち上げ。
  近隣外国勢力からの気球及び人工衛星によるスパイ行動及び攻撃からの防御。
十.マイナンバー制度の拡充
  個人の戸籍・健康情報・免許証・資産等の一括管理による税金の明瞭化。
  量子AIによる全ての国民個人情報の管理。
  スマホ等使用機器とマイナンバーの連動登録による違法行為の阻止。
これら“十の約束”の大きな表題は、令和獅子党の立ち上げの時に
黒い十房の鬣を持つ獅子の顔の絵柄を党旗とした理由と共に説明されている。
このたびの選挙で令和獅子党は、国民から政党として認められ、
今度の選挙以降は比例区での立候補も可能となった。
つまり姫巫女であろうが鷹であろうが、
立候補が可能になり当選も可能になったのだった。

宍戸 鷹は定期的に政党支部や支店へ顔を出しているが、
支部長から毎日の様に相談と称する鷹への面談希望が多かった。
10支部支部長は、現在の国会議員が6名、次期選挙立候補予定者が4名で
徐々にたくさんの優秀で真面目な人材が集まってきている。
政治に変な野望を持った人間や邪な考えを持った人間が入って来ても
すぐに身体を壊していつの間にか辞めて行っている。
シシトー教団信者である彼女たちは、
最初は不幸な逃れられない事情に迷いそして傷つき、
深い悩みを持ちながら『シシトー神の館』を訪れた。
その結果、現在己に降りかかっている不幸は無くなり
彼女たちの悩みは解消され前向きに自らの道を見つけ、
辛い過去にあったことを忘れたかのように明るく歩み始めている。
彼女たちは、教団の教え通り可能な限り北天に座する極星である“北極星”へ深く祈る。
現在問題となっている寄進についてだが、
教団からはシシトー神へ祈ることを勧められるだけで寄進に関する話は一切出ない。
ただ信者たちは自ら進んでシシトー神へ感謝を捧げそのお礼として
本人が決めた現在の生活を壊さない程度の無理をしない寄進をするだけだった。
その寄進を受ける場所も、教団内の祈りを捧げる部屋の隅にポツンと
シシトー神の象徴が彫られたポストの様な大きな金属の箱が置かれているだけで
寄進を入れる箱の傍には誰もついておらず、寄進したことは神様しかわからなかった。

彼女たちを深い絶望の淵から救ってくれたのはシシトー神様であること、
シシトー神様のご神託を姫巫女がお伝え頂いていることは理解しながらも、
彼女たちの深く傷ついて立ち直った自らの心が、理由はわからないながら、
本能的にシシトー神様と共に鷹の存在を感じている様だった。
シシトー神の神託を届ける姫巫女の鈴女としても、
神の巫女である自分よりも兄の鷹へ注目が集まり、
支部長から多くの面談の依頼のあることを悪くは思っていない様だった。

彼女たちと鷹との会話からわかったことは、
今まで彼女たちに纏わり付き、
彼女たちの心を地獄の底に叩き込んできた
少年法で守られた虐めを行う殺人者、
恫喝の暴力ヤクザ、
DVでギャンブル狂のヒモ男、
セクハラ変態プロデューサー、
外国人へ売春斡旋する社長などの最低で糞な男達は、
シシトー神の神託通り、
抗争による死亡や交通事故や突然死や急性の血管疾患による入院など
彼女たちを苦しめる者は次々と彼女たちの目の前から消えて行った。
その後の継続的な彼女たちへの鷹からの様々な導きや応援が、
傷ついた彼女たちの心を癒し、
彼女たちの見たことも無かった将来の夢を見せた。
それらは彼女たちに自信を持たせ、この国の政治や経済などの現状を憂い、
そして自ら変えようと決意させ、最後には国政選挙へ打って出る勇気を持たせた。
彼女たちは今後の事でわからないこと、
不安なことがあれば全て代表の鷹へ相談した。
鷹がいつ寝ているのかわからないが、
24時間いつでも彼女たちの相談に乗ることができた。
不安で塗りつぶされた彼女たちの瞳が鷹の笑顔を見ると和らぎ落ちつき始める。

ある代議士からの肉体関係への誘いがしつこくて断っても諦めない事案があった。
最後には逆切れしてヤクザを使うと脅しが掛かってくる事態となり
警察にそのことで相談しても、
警察からはその代議士と仲が良いのかやんわりと断られ、
その代議士の意向に沿う様な力を感じたので鷹に相談してみると
シシトー神様からのご神託で『心配しなくていい』と言われたと告げられる。
しばらくすると、ご神託の通り、
その代議士は高速道路を移動中に大事故を起こし重傷を負い政界を引退した。
事故の原因は、運転手がまだ若いにも関わらず突然脳卒中を起こしたことだった。
また別の事案では、
過去に撮影したグラビアから変な中傷記事を出すぞと脅されたとのことだったが、
なぜかその記者はその翌日に急に行方不明になり現在も見つかっていない。
このように彼女たちの政治家として不利なスキャンダルは事前に全て消えて行った。
彼女たちはシシトー神様に自らが選ばれ守られていることを意識している。

遼真はこれらの情報を知るにつれて、
彼女たちからは辛い過去の記憶に痛みが全く感じられないことに疑問を抱いた。
人間は辛い過去があればその痛みを時折思い出すことが普通なのである。
母親の鶴は、夫の位牌へ毎日の様に声を掛けているが、
長い間、夫から自分や子供達が家庭内暴力を受けていたことが、
全く記憶から無くなっているのか、夢の中の出来事の様に認識されている。
この傾向は、他の信者も同様であった。
暴走族から酷い暴行を受けた姫巫女の鈴女にしても時折悪夢にうなされてはいるが、
お守りをじっと握っているとすぐに幸せそうな顔つきに変わっている。