はっちゃんZのブログ小説

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20.母の再婚

28日朝に出発し昼過ぎには着いていた。

家で甥っ子と遊んだ。やがて甥っ子も疲れて昼寝を始めた。

そこから母親と妹の3人で話し合いが始まった。

父は明日に来るらしい。

一番反対すると思っていた慎一が再婚を認める発言をすると

母と妹は意外な顔をして驚いている。

そして母親はすごくうれしそうに

『ありがとうね。ありがとう』と泣いている。

母がそのあと父へ電話をしていたようだ。

翌日10時に父親が玄関に入ってきた。

母が迎えに行っている。

慎一と妹は居間で父を待った。

 

父が部屋へ入ってきた。

子供の時はあんなに大きかった身体が今は小さく細くなっている。

顔もげっそりと痩せて昔のふくよかな顔ではなくなっている。

真っ黒だった髪の毛も真っ白になっている。

顔色もどことなく冴えない。

 

「久しぶりですね、みんな元気にしてるみたいで安心しました。

 今さらやけど、あの時は本当にすまな」

「まあまあお父さん、先ずは座って座って、そこにどうぞ」

慎一は父親の言葉を遮るように上座の座布団へすすめた。

父親は驚いた様子で遠慮しながら座った。

「お父さん、お母さんから聞いたよ。

 僕らはまた家族になったんやからもういいやん。

 帰ってきてお母さんと楽しく暮らしたら?」

「ええのんか?こんなわしでも・・・」

「お母さんがいいんならいいんちゃう?なあ、お母さん」

「うんうん、慎一、幸恵、ありがとう、ありがとう」

「ありがとう、こんな男でも父親や、ゆうてくれて」

「昔は昔、昔のこと今頃言っても始まらんやろ、

 今はお酒も飲んでないねんやから、もういいやん。

 お父さん、お母さん孝行したげてや」

「お前らが許してくれるんやったら、

 精一杯がんばってお母さんを幸せにする」

「許すも許さんも、僕らはもう大人で独立しているから。

 ただお母さんに良くしてやって」

「わかった。ありがとう。ありがとう」

父は現在のアパートを引き払ってこちらへ引越予定となり

母がすぐさま準備に入った。

慎一は同級生に会って、吹っ切れたようにお酒を飲んで楽しいひとときを過ごした。

瞬く間に連休は終わり、仕事が始まる2日前5月4日に米子へ戻った。

 

米子からの移動の間に美波ちゃんから『いつ帰るの?』コールがあった。

『今、帰ってる』コールを返した。

マンションに帰ると今晩の家庭教師の準備に入った。

いつものように数学と物理などの問題集を解きながら過ごした。

ただ最近大会が近いせいか、テニスに力が入っていて、

勉強中でも眠気に襲われるようで夜も早く寝るようになっている。

現在、予選が始まっており、土曜日毎にどこかで試合があるようだ。

新人でも強いペアが多かったが、新人ではない今は上級生も出ており、

非常に強い相手ばかりだからがんばると燃えているようだ。

晩ご飯を食べて、美波ちゃんがお風呂に入り2階へ上がっていく。

 

慎一は静香と一緒にお茶を飲みながら、母と父の再婚について話した。

久しぶりに見た父の様子と印象、

母の父を見る表情、

夫婦のことは夫婦でしかわからないと言うことは本当だったと、

父が家に戻ってくることで妹夫婦はどうするかの話し合い中だとも、

静香さんが自分のことのように喜んで聞いている。

慎一が以前感じた『二人がずっと一緒にいたような』錯覚の時間が

まだ続いている気がしていた。

『この人は本当に初めて会った女性なのか?』とも感じている。

どこか懐かしく、なぜか心が暖かくなり落ち着く女性だった。

経験したこともないような感覚で戸惑っている反面それにひたっている。

これが『相性』というものなのかもしれないとも感じた。

(つづく)