はっちゃんZのブログ小説

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97.特訓6(浅間別荘編6)

反対側の崖へ跳んだ二人は恐る恐る足元を見て、

お互い顔を見つめて、

抱き合った姿勢のまま

しばらく反対側の滝つぼの崖の上に佇んでいた。

「翔さん?もしかしてこれがテレポーテーション?」

「うん、そうみたい」

「熊ってこんな近くにいたのね。

 すごく怖くて、

 頭が真っ白になって身体が動かなかったわ」

「うん。

 百合が危ないと思って必死になったら出来ちゃった」

「翔さん、助けてくれてありがとう」

「百合に何かあったら嫌だから」

「とにかく二人とも無事で良かった」

二人はじっと見詰め合ってキスをして相手の身体を再確認した。

 

「翔さん、私も一緒に移動したけど」

「怖かった?」

「いいえ。翔さんに抱きしめられていたから怖くなかった」

「二回連続で出来たのはこれで二回目だ」

「それで、身体はどんな感じなの?」

「実は立っても居られないくらい身体中がだるいんだ」

「それは大変、しばらくここで休んでましょう」

「うん」

「翔さん、はい、どうぞ」

「うん、ありがとう」

と翔は百合のひざまくらに甘えた。

 

形の良い膝を枕にして休憩していたら、

身体中のだるさが少しずつ良くなってきている。

百合が翔の髪や肩をずっと撫でている。

やっと立てるようになってそっと起きた。

流れ落ちる水の支流は太くて向こう岸に渡ることは出来なかった。

それに滝壺に落ちた熊がいつ上がってくるかわからなかった。

 

翔は百合を後ろからそっと抱きしめながら、

今度は、別荘への分かれ道を見つめた。

あの時と同じような感覚が身体に蘇ってくる。

次の瞬間、

二人は別荘への分かれ道に立っていた。

「翔さん、すごい・・・でも身体は大丈夫?」

「少しだるいけど大丈夫。じゃあ別荘へ戻ろう」

「そうね。よく考えたら朝ご飯がまだだったわね」

「お腹すいたよ。よろしくね」

「はーい、あなたはシャワーを浴びて疲れを取ってね」

 

翔はシャワーで軽く汗を流し、

朝ご飯を食べてコーヒーを飲んでゆっくりとした。

後はこの能力を自由自在に使えるようにするだけだった。

しかし、この能力は体力を根こそぎ奪うため、

それほど頻繁に使えるようになるかどうかはわからなかった。

二回発動させると手足が十分に動かせなくなるのだった。

このままでは戦いに使えない事は確かだった。

(つづく)