はっちゃんZのブログ小説

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27.翔とミーアと百合2

夕食が終わりゆっくりとしていると

「翔、私はそろそろ帰るよ、もう遅いから館林さんをお送りしなさい。

 そうそう、これはつまらないものですがご自宅の皆さんでお食べ下さい」

たくさんの野菜を百合用に詰めている。

「そんなにたくさんは、1人で住んでいますから」

「まあ、あなたのようなお嬢様がお1人ですか、それはいけません。

 翔、必ず館林さんをお守りするのですよ」

「いえ、そんなに大層なことではありませんから」

「いえ、大丈夫です。翔はこう見えても、

 まあまあできますから安心してください」

「もう、まだまだだと言ったり、そうじゃないと言ったり・・・

 確かにもう遅いから館林さん送るよ。今日はありがとう」

「お婆様、では私は帰ることとします。

 今日は大層に美味しいお料理をありがとうございました。」

「いえいえ、田舎料理ですから、気にしないで下さい。

 お口に合えばと思っています」

「すごく優しい味で美味しかったです。

 今度、機会があれば教えていただけませんか?」

「こんなので良かったら、いつでもお安い御用ですよ。

 次にお会いできる時を楽しみにしています」

「じゃあ、婆ちゃん、送ってくるよ」

「ああ、頼んだよ」

 

百合を電車で送りながら謝っていると、

「翔さんはあんな優しいお婆様に育てられたのですね」

「ああ、優しくて厳しい婆さんだよ。

 俺が6歳の時に両親が死んでからずっと育てて貰ってる。

 爺さんがこれまたすごい人でねえ。さすが夫婦だな」

「そうなんですか。翔さんのお爺様にも会ってみたいな」

「いや、偏屈な爺さんだからいいよ」

「こんなに強い翔さんを育てたお爺様なのでしょう?会いたいです」

「うーん、タイミングが合えばね。

 爺さんは女の子にはからっきし弱いから、きっと驚くだろうなあ」

「きっとですよ。約束ですからね。

 でも本当に美味しいご飯でした。

 ミーアも安心していたし私すごく楽しかった」

「そうだな。あの料理を食べると元気が出るよ。

 もちろん、百合のご飯が一番だけどね」

「そう言ってもらえるとうれしいです」

百合のマンションに着いたのでエントランスまで送ってアパートへ戻ってきた。

翔は、百合への婆さんの態度が気になった。

あの狸婆さんは何かを知っていると感じた。

(つづく)