2016-01-01から1年間の記事一覧
翌朝、事務所へ出るとRyokoが検索結果を出していた。 やはり合成技術の該当者は、TSV(東京スーパーテレビ)の人間だった。 百合へ事件経過と状況証拠を伝え、 仮に山本アナから連絡が入った場合の答え方について打ち合わせた。 決して彼女に調査している…
家に戻り着替えてから米子市の繁華街の一角と聞いている角盤町へ行くこととした。 角盤町の路地には夕暮れに家路へと急ぐ人達に混じり、 もうだいぶアルコールが入った様子の数人もいる。 町の様子を見ながら少し細めの路地へ目を移した。 小さな看板で『さ…
翔には腑に落ちないことがあった。 先ず画像の精度の問題。 ①山本アナの裸体画像解析 着替え画像はキチンとピントがあっているが、 シャワー画像でバストトップにはピントが合っていない。 首や胸の部分を拡大してみるとやはり巧妙に修正又は差し替えられた…
「次は米子、米子」 慎一はひとつ背伸びをして手元にある人事異動通知書を見た。 人事異動通知書 京都支店融資部 日下 慎一 殿 関西中央銀行本店 人事部長 清水 英雄 貴殿を平成10年4月1日付で山陰支店への異動を命ずる。 以上 心の中の何かが記憶の蘇ること…
今、ネットではある情報が炎上している。 有名アナウンサー数人の全裸写真がネット上へ投稿されてしまったからだ。 一度、これが出てしまうと コピーのコピーが出回り始めどうしようもなくなってしまう。 最初の被害者になったのは、 TSV(東京スーパーテ…
2月も半ばを過ぎとなると暖かい陽射しの日が増えてくる。 慎一はその陽射しを受けながら徐々に活性化していく身体に気がついた。 頭蓋骨の線状骨折も接合し、肩の固定していたネジを外すと 身体は完全に元に戻りつつあることがわかった。 脳波測定からも異常…
夕食が終わりゆっくりとしていると 「翔、私はそろそろ帰るよ、もう遅いから館林さんをお送りしなさい。 そうそう、これはつまらないものですがご自宅の皆さんでお食べ下さい」 たくさんの野菜を百合用に詰めている。 「そんなにたくさんは、1人で住んでいま…
静香は、今週の土曜日に彼の実家に行くことを決め、妹の幸恵さんに伝えた。 『娘』と一緒に行くことを伝えると、 一瞬の間はあったが、幸恵さんは兄も記憶が戻ればいいなと大喜びだった。 土曜日は、米子駅で彼の大好きなできたての『ふろしき饅頭』を買い …
翔がミーアを飼い始めてから百合が翔の部屋へ来る回数が増えている。 そうなってくるとお互いが急速に親しみを増してくるもので、 百合のぎこちない笑顔が自然なものとなるまで時間はそれほどかからなかった。 元々百合は翔の強さを尊敬しているし、態度はぶ…
幸恵は以前から不思議に感じていることがあった。 兄の慎一が父親へある時から理解を示すようになったことに対してだった。 『夫婦の事は夫婦でしかわからない。子供にはわからない』 『お酒を飲んでいない父さんを知っているのはお母さんだけやから』 兄と…
「おまえ たれ ある」 趙が突然客室へ入ってきた。 翔は急いで彼女をベッドの後へ隠れさせると趙へ攻撃した。 それなりに中国拳法使うが、高齢で体力も続かなくなりフウフウ言い始めたので 後頭部へ手刀を落とし昏睡させた。 続いて秘書らしき男も入ってきた…
兄が実家に帰って来て、だんだんと話すようになると 幸恵は兄の枕元に壊れた携帯があったことを思い出した。 仕事上の事は全く心配する必要がないのでそのままにしようかと思ったし 兄に聞いても特に困っていないと言うばかりなのでそのままにしていた。 あ…
慎一は目を覚ました。 見覚えのない白い天井が目に映る。 心配そうに覘きこむ母親と妹の顔が見える。 隣にどこかで見たような顔色の悪い痩せた老人がいる。 話し掛けてきているがその内容はわからなかった。 医師が現れて、何か声を掛けてくる。 聞かれてい…
翔は都倉警部へ急いでこのたびの事件を連絡した。 実は公安も内偵を進めていたようですぐに連携が取れた。 すぐに新宿のアジトに急行したが、もぬけの殻だったらしい。 富士の別荘の部下からの定時連絡がなかったので異変に感づいたのかもしれない。 急いで…
静香は夜になって何度も電話をしたが 『お客様の携帯電話が圏外にいるか電源が入っていないので繋がりません』 のアナウンスが聞こえてくる。 メールを送っても返信はなかった。 もしかして彼の身に大変な事が起こったのかも? なぜか異音を発し二つに割れた…
『今日はちょっと眠いなあ、久しぶりの休みやから外でコーヒーでも飲むか』 と考えてマンション前の喫茶店へ向かった。 美波ちゃんや静香さんからのメールを読みながら部屋を出た。 エレベーターよりも、たまには歩こうと考えて階段へ向かった。 慎一はこの…
趙の別荘の近くに一度停車して、サイドカーに格納しているドローンで偵察した。 別荘の壁は表面上木製で、実際は芯部分にセメントが入っている。 中にいる趙の部下は5名で、子供の姿がどこにも見つからなかった。 嫌な予感がしてドローンを赤外線モードに変…
朝早く2階の客間で慎一は目覚めた。 台所からいつもの音が聞こえてくる。 下りていくと静香さんが忙しそうに二人分のお弁当を作っている。 「おはよう」 「あっ、おはようございます。今日は一日いい天気みたいです」 静香さんは慎一の方へ一瞬含羞(はにか)…
美波ちゃんが二階へ上がってしばらくして、静香さんが風呂から上がってきた。 いつのまにか美波ちゃんの部屋からの音も消えている。 「あれっ?美波がいたのだと思いましたが」 「うん、少し話しておやすみなさいって上がっていったよ」 「そう、最近相当に…
理恵子がシャワーを終えてスキンケアをしている。 しばらくすると電話が鳴った。 「はい、わかりました。もうすぐ伺います」 鏡台の椅子に座りながら子供の写真を見て泣いている。 おもむろに鏡台の引き出しから薬剤を出して含んだ。 そして部屋を出ていった…
夕食が終わり二人でゆっくりとお茶を飲んでいる。 静香さんが仏間に入っていき戻ってくる。 「慎一さん、美波が来る前だから二人の時の名前で呼びます。 京都に行ってもがんばって下さいね。 京都もこちら同様に苦労するところがあると聞きますので 無理をし…
静香さんが朝早くから来て、まだ残る荷物のまとめと部屋の掃除をしている。 30日昼前に引越業者が来て昼過ぎには搬出し終わった。 部屋は引っ越してくる前に戻って行く。 自分の思いは元には戻っていない。 ほんの1年半と短かった期間だが、 今までの転勤…
家に帰り1人になると静香の心は千々に乱れた。 彼の前では気が動転してボーとしてしまった。 彼は転勤族と覚悟はしていたものの実際に経験すると余りにも唐突過ぎた。 あと半年、あと1年あればと思う心もあるが きっといつであっても唐突に感じるものなのだ…
ある夜、10日ぶりに百合の横で眠る翔は夢を見た。 幼い少年と少女が手を取り合って話しかけてくる。 「ぼくたちのお母さんが苦しい思いをしているから助けて欲しいんだ。 お母さんは『大望楼』という料理屋さんで働いているんだ」 「お母さんが泣いているか…
お盆休みの前に京都支店の同期から 『突然家業を継ぐことになった』との連絡があった。 親父さんがこのお盆前に突然脳卒中で亡くなり、銀行を辞めるしかなかったそうだ。 会社の都合で非常に変則だが、8月末をもって銀行を辞職することとなった。 そいつは…
百合の部屋は、4LDKで1人の部屋には広すぎるらしいが、 娘の身を案じたご両親が是非にと購入したらしい。 ダイニングで座っていると百合が薬箱を持ってきて手際よく手当をしていく。 良く見ると泣いている・・・ ふと本人もそれに気がついて涙を手で拭…
「少し下で待っていてください。私も着替えますから」 しばらくして二階から着替えた静香さんが下りてきた。 長い髪はそのまま下ろされ、 「白地の網代模様の浴衣」に「辛子色の麻の葉模様の帯」が締められていた。 「いい柄だったので私も気に入ってお揃い…
百合がぐったりしたミーアを抱き上げた時、その周りを不審な集団に囲まれた。 翔が一瞬、百合の盾になって手足を広げた瞬間、 足元に影のように早いタックルが仕掛けられ、 ボディースラムの態勢にされ、 ジャンプして翔は背中から地面に叩き付けられた。 と…
今年度は昨年度の地道な努力が実り、順調に新規開拓ができている。 数字も前年同月比で130%以上の進捗で課員も張り切って仕事している。 赴任して来た当初の課員の雰囲気は『達成できなくて当然との意識』が 透けて見えるほどで、やる気にさせるのが大変…
大学で翔は『格闘技研究同好会』に所属していた。 この同好会は戦うわけではないが、闘いの歴史や暗器などの研究をしている同好会で、会員は何某かの格闘技の経験を持っている。 翔自身は『空手』の経験があるという事で入っている。 そんなところへ何と新入…