はっちゃんZのブログ小説

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88.遺族の恨みは晴れるのか14

京一郎の解析によるとこの男の後頭部の管は、脳の旧皮質へ連結されており、

薬剤は旧皮質の活動を選択的に高めるものだった。

旧皮質分野での個人的特性の高い素質を特化して強大化することにより

身体の筋肉及び骨格まで影響を及ぼせることがわかった。

ジャークと言う男は、人間性そのものが『ヘビ(爬虫類)』であった。

 

この薬剤はホルモン様物質で、「獣人化強化薬」であった。

体内に埋め込まれたポンプ状の機械から噴出するようにされており、

誰かが操作する手元のボタン一つで管を切ることができるようになっている。

薬剤投与が無くなればその人間は、効果は切れて元の姿に戻り死んでいく。

これらの解明と同時に「獣人化減弱薬」も開発された。

これを彼らに撃てば、その力を発揮することができない筈だった。

 

翔は青山の華田社長宅へ向かった。

翔の接近が敵に知られていることは、屋敷内から伝わってくる殺気でわかった。

翔はインターホンを押した。

「お前達、もう逃げられないぜ。国外脱出でもするつもりかい?

 お仲間の朴川専務には殺人罪で警察がマンションへ向かってるぜ」

『ブツン』とインターホンが切れて、正門が開かれた。

樹木の生い茂った屋敷内には灯りひとつ灯されていない。

庭の一角に一際深い小山のような大きな闇が凝固している。

その闇から常人ならば気絶しそうなくらい強い殺気が漂ってくる。

もうひとつ、樹木の太い枝に蹲る闇に気が付いたが殺気はなかった。

 

その庭の闇から突如殺気が消えた。

そろりと翔へ動いた。

呼吸するように自然な動きで翔は虚をつかれた。

身体の左側から風が吹いた。

翔は空手では一番固いと言われる十字防御で左を固めて受けた。

決して軽くはない翔の身体が一瞬で吹き飛ばされた。

前腕のプロテクターに亀裂が入るほどの衝撃だった。

 

野生動物のような体臭が流れてくる。

星明りの下では毛むくじゃらでわからない。

「ほう、受けることはできたのか。

 なかなかやるな。ヘビが負けたのもわかった。

 ただ俺には勝てないぞ。

 素直に俺達を脱出させたらどうなんだ?」

「残念ながらここは日本なんでね。

 外国人犯罪者が大手を振って脱出するのは許されないね」

「そうか、そうならばお前を倒して、

 この国の警察を壊滅させてから

 ゆっくりと脱出するとしよう。

 お前は知らないかもしれないが、

 昔からこの国日本の闇には我々の仲間が潜んでいる。

 彼らもそろそろ動き始めるだろう」

「その詳しい情報は、後でお前から聞くとしよう。そろそろ警察もここにくる」

「お前に後があればな」

(つづく)