はっちゃんZのブログ小説

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16.淫獣2(第8章:占い死)

秘書の高山が部屋を出て行った後、
永源はそっとベッドに横たわる木村千種の襟元の匂いを吸い込んだ。
仄かに漂う高そうな香水の香りが永源の鼻腔を擽る。
千種がスヤスヤと寝息を立ててあどけない表情で眠っている。
その大きな胸は規則正しく上下している。

このあどけない表情の女がその時にどのように変わるのか・・・
どのような表情で抵抗して泣くのか・・・
抵抗を諦めて感じ始めた時はどんな表情になるのか・・・

永源はそれを想像するだけで、
もう若い時の様に鼻息は荒くなり股間がいきり立った。
実際はそれほどでもないのだが、
ズボンやパンツを破るかもしれないほどの勢いだと本人は感じた。
永源はどの女であれ初めての女を頂く時には最高に興奮した。
特にこの令和獅子党の木村千種は今まで知っている女の中でも極上の女だった。
この女を自分の女に出来れば令和獅子党も自分の物にできると考えた。

永源は背広を急いで脱いで、もどかし気にネクタイを外す。
ワイシャツのボタンも飛ばす勢いで脱いでいく。
パンツ1枚になってベッドに横たわる千種へと近づいていく。
千種の艶めく柔らかいロングヘヤ―がベッドに広がっている。
永源は芋虫の様な短い太い指で
千種の来ているセンスの良いスーツのボタンが外されていく。
大きく胸の盛り上がった白いブラウスが灯りに照らされる。
細い腰から続く小さいヒップを覆うスカートの留め金が外される。
薄いストッキングにベージュのガードルを穿いた形の良い下半身が照らされる。
永源は興奮気味に今度はブラウスのボタンを外す。
真っ白いブラウスの下からは、
滑々で雪の様な肌と高級感のあるブラを大きく盛り上げる胸が晒された。
鼻息荒く今度はガードルをそっと脱がしていく。
大きなベッドの上には無防備に胸と秘所だけを
小さな白い布地で隠されたビーナスの様な裸身が横たわっている。

その時、横たわっている千種の目がそっと開かれた。
薬の効きがいつもよりずっと早く目覚めた千種に永源はぎょっとした。
千種は静かに半身を起こしてじっと永源を見つめている。
「そこの男、この娘に何をするつもりだ」
「お前はなぜ目を覚ましたのだ?そんなに早く起きない筈なのに」
「確かにこの女はまだ眠っている。もう一度聞く。我に答えよ」
「何を言ってる。お前を今からわしの物にするのさ」
永源が野獣の様な表情で臭い息を吐きながら千種に襲い掛かった。
千種が襲い掛かった永源の方に向かって片方の掌を広げる。
「うっ、何だ?・・・くそっ、身体が動かない」
「汝はこの女を傷つけようとしたのだな?」
「うるさい。お前をわしのものにして今度こそこの国の与党になるのだ」
「この女は、今まで身も心も多くの男達によって傷つけられてきた。
 いつも死に場所を求めていた様な可哀そうな女なのじゃ。
 やっとこの娘がこの世に生きる意味を見出すまで
 今は我がこの娘の血を流す心の傷を止めているのじゃ」
「うるさい、お前はわしのものになるのだ。
 そしてわしは総理大臣になりこの国の理を変えあの国に組み込むのだ」
「そのような世迷言をこの国の民草が認める訳が無かろう」
「???何を言ってる?
 お前は令和獅子党の木村千種ではないのか?」
「我はこの娘でもあり、この娘ではない」
「何を訳のわからないことを・・・とにかくお前をわしの物にする」
「汝の醜さは今まで我が殺してきた人間と全く同じじゃな。
 本当に醜い。我が居た時代の人間と変わらなくくらい醜い。
 こんな醜さではこの国の民草が悲しもうなあ。
 こんな人間が政を行うことは、
 我に帰依する女達の悲しみが癒えることはないな。
 我もこの世に出て色々と調べたが、この世は誠に醜い。
 この世は力無き者は毎日苦しみ死んでいくだけの世の中だな」
「お前は、誰だ。

 わしにこんなことをして無事に済むと思っているのか」
「まだわからないのか?
 お前は馬鹿なのか?
 我の名は『シシトー』じゃ。
 お前も我が教団のことは知っておろう」
「『シシトー』・・・神・・・?・・・本当に居たのか?・・・」
「やっと馬鹿のお前もわかったようだな」
「シシトー神様、私をお許し下さい」
「・・・本心では無いな。だがお前は人としてあまりに醜悪過ぎる」
「私は今までこの国の国民のために毎日頑張って来たのです」
「それは嘘であることは我にはわかっている。
 もうお前の様な醜悪な人間が生きている事はこの世のためにならない」
「・・・ワ~助け・・・『言葉が出ない』・・・・」

永源は、脂汗を流しながらギシギシと関節の音を立て窓際へ歩いていく。

『いやだ、止めてくれ。何をしたいんだ・・・』

そして大きな窓の取っ手を持って開けようとした。

『わしの身体を勝手に動かさないでくれ』

飛び降り自殺防止用の留め金が付いていて大きく開くことは出来なかった。

『バキッ』

その留め金は壊れて絨毯の上へ落ちた。

『わしはまだ死にたくないのだ。馬鹿にした奴らを見返すのだ』

開けられた窓から豪華な広い寝室へ冷たい空気が入り込んでくる。

『この国の支配者に成れると約束を貰っているのに嫌だ。死にたくない』

永源は、嫌々しながら綺麗に靴を揃えて議員バッジを外し靴の中へ入れる。
そして、タラタラ脂汗を流しながら窓からその身を空中へ躍らせた。

『グサッ』
『ぐあっ』

永源はホテルの敷地内にある樹木の太い枝に心臓を貫かせて死んでいた。
その枝は昨日、急な強い風で太い枝が折れたままになっていたとホテルは証言した。
永源議員は女性と部屋で会っていたとのホテルマンの証言はあったが、
一緒にいた女性の顔も覚えて居らず、監視カメラにも顔が映っていなかった。

永源の秘書高山はホテルの近くにあるいつものクラブに向かっていた。
「先生、今頃あの女を抱いてるんだろうなあ。
 木村千種か・・・もう昔の話だけど俺はファンだったんだよなあ。
 今日も抱っこしたけどいい匂いしたよなあ。
 今でも綺麗でオーラがあったよなあ。俺も抱きてえなあ」
ふと見るとネオンで煌びやかビルとビルの間の暗い路地を見ると若い女が立っている。
その女は綺麗でスタイルも良く高山をじっと見ている。
高山はなぜかその女の笑顔に惹かれた。
ふらふらと近寄っていく。
「お前、立ちんぼか?いくらだ?」
「あんたは好みだから1万円で良いよ」
高山は『こんなモデルと言われてもおかしくない綺麗な女を安く抱けるなんて』と驚いた。
女は高山の蟹の様な大きな顔を抱きしめると
口元を『好きよ』と形づくってキスをしてきた。
高山はやや冷たいがその形の良い唇と口の中を動き回る舌に翻弄された。
初めてキスをした時の様なあまりの気持ち良さに溺れた。
やがて女は耳元で囁いた。
「こんなところでなく別のところで良い事しましょうよ」
女と高山はその薄暗い路地の奥へと抱き合ったまま歩いていく。
女は後ろを見ることもなく普通に高山とキスをしながら後ろ向きに歩いていく。
やがてビルの裏側へとやってきた。
そこは翌日の燃えるゴミの日のために多くのゴミが集まっている。
高山は女に誘われる様にゴミの上へと倒れ込んで行く。
女は深い口づけをしたままその身体はゴミの奥へと潜っていく。
高山は陶然とした表情でゴミの山の中へと入り込んだ。
女の身体と高山の身体は黒い糸らしきもので繋がっている。

『プツン』
高山の耳に脳内の血管が切れる音が聞こえた。

『グアッ』
高山の口から呻き声が漏れて顔の半分が引き攣り半身が痙攣を起こし始めた。