はっちゃんZのブログ小説

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17.シシトー神との対話(第8章:占い死)

「誰じゃ」
彼女は痙攣する高山を投げ出して遼真と真美の潜む闇へと目を向けた。
二人はホテルから出て来た秘書の高山に
何か嫌な気配が付いていたので追って来たのだった。
「その視線、今まで何度となく覚えがあるぞ。汝であったのか?」
「はい、私は桐生遼真と申します。
 あなたを宍戸 鷹さんと呼べばいいのか
 シシトー神様とお呼びすればいいのかわかりませんが、
 やっとあなたに直接お会いすることが出来ました」
「わしを会いたかったのか?
 教団に来ればいつでも会ってやったのにのう」
「色々と調べる時間が必要だったので今となりました」
「ほう、我に会って何をしたかったのだ?」
「あなたへ聞きたい事があったのです」
「ふーん、汝は我に何を聞きたいのだ?」
「あなたはなぜこれほど多くの人間を殺してきたのですか?」
「ああ、そんなことか。
 そいつらは生きていてもこの国の民草のためにならないし
 それ以上に醜悪でこの国には不要な人間だったからだ」
「あなたは殺した彼ら彼女らの何を知り殺したのですか?」
「そんなものは心を読めば奴らの過去の所業も心根も全てわかる。
 本当に醜悪で見ているだけでこの身が穢れそうだったぞ。
 ふむ・・・見たところ、
 お前とその娘の心根はまっすぐで優しくこの国に必要な人間だとわかるぞ
 うーん、この国のため民草のために日夜働いているのだな。褒めてつかわす」
「ありがとうございます。お願いです。何とか人を殺すのをやめて頂けませんか?」
「太古から眠っていた我に知識を与えた皇子だけでなく、
 非常に優しく優秀な皇子の子孫の鷹の知識から見ても奴らは不要と思うぞ。
 我も皇子や鷹の人間への優しい心根を理解しているつもりだ。
 確かに昔と異なり現在はとても便利で我が顕現した当初は驚いたものだったが、
 色々と知るにつれ、いつの時代も弱い民草は虐げられ傷つけられておる。
 わしへ帰依してきた娘どもはどんなに傷つき悲しい思いを知っているのか?
 今日の日を生きるのさえ苦痛を感じる心をお前は知っているのか?
 お前はあの娘たちが単に楽しみで占いだけに来てると思っていたのか?」
「そ、それは・・・」
「お前は苦しみ抜いて自らの命を断とうとする者の心がわかるか?
 少し前だったが、若い娘、いや若い男もそうだったが、
 友という者達から恥ずかしい写真を撮られ世間に広げると言われ
 言う事を聞けばしないと言われてどんな言いつけも聞いていたが、
 最後にはとうとうその願いも聞き入れられず世間へ広げられ、
 その恥ずかしさのあまり自らの命を絶った者、
 皆から笑われながら無慈悲に殴られ蹴られて、
 無残にも命を断たれた者の気持ちをわかるか?」
「そんな・・・」
「だからわしはその者の思いを聞き届け、その者達の命を絶った者の命を絶った。
 一つの命に一つの命は当然の代償であろう?
 本当は命を絶たれた者達の苦しみを十分に味合わせてとも思ったが、
 存外に人間の身は脆い物でなあ。すぐに死におったわ」
「それでは困るのです。
 この世には警察というものがあってその様な悪い者を捕まえております」
「確かにそういう警察という組織はあるようだな?
 しかしその組織の者達は本当の事を調べることもせずに、
 今まで何人の民草が殺されてきているのだ?
 何人殺しても責任能力が無いとか、少年法などがあって
 子供とはいえ恐ろしい殺人鬼を野放しにしておるではないか?
 何人殺しても精神病だと言えば殺されなくて済んでいるではないか?
 殺された者の今際に感じた苦しみや悲しみはそのままでいいのか?
 そして大切な人を突然殺された者は、
 心がどんなに傷ついても仕返しをしたくてもできなくてそのままでいいのか?
 生きている殺した人間を守って、
 殺された人間やその人間を愛していた人間の心を蔑ろにしている様な
 そんな組織にこの国や民草の心が守れるのか?」
「それはそうですが、
 我々人間はあなたの様な神ではありませんから真実もすぐにはわからないです。
 しかし人間には悔い改める、反省する心がありますから」
「悔い改める、反省する心・・・我も当初はそう思っていた。
 そしてその者達の過去の行いや心根を探った。
 何と驚いたことにそやつらは『反省という意味』がわからないのだ。
 何を反省するかがわからないという普通では信じられない考えの輩なのだぞ」
「まさか・・・」
「もちろん、表立っては犯罪者になりたくないからその場では殊勝な態度でいるが、
 その時に奴らが考えていることは、
 『とりあえず謝っておけば許してくれる』としか考えていないのだぞ。
 掛け替えのない人の命を絶った行為の意味もわからぬ輩ばかりなのだぞ。
 そしてテレビでは何やら訳のわからないことを言ってる輩の言葉通り
 自分に殺人をさせたのは社会だから自分には罪が無いと思ってるのだぞ」
「だからそれを彼らに悟らせる場所として刑務所があるのです」
「そうらしいな。でも奴らが本当に悟れるのか?
 “反省”の言葉の意味、“なぜ人の命は大切なのか”など
 学校というものでそれを教えているが、それならなぜこんな事が起こる?
 彼らは殆どの者が皇子の時代の民草の様に

 あまり言葉も知らない者達ばかりなのだよ。
 だからこそ他人の命を絶った者は自らの命で償い命の意味を覚えるしかないのだよ」
「そんな、馬鹿な・・・」
「この国の政をしておる勉強している筈の政治家はどうだね?」
「・・・」
「答えられまい。
 確かに国を思う立派な人間のいることは知っている。

 ほんの少しだけだがな。
 だがそれだけではこの日本の政は動かせない。
 だからこそ足を引っ張る輩は不要なのじゃ。
 ところで・・・この死んだ男の雇い主は今、何をしてると思う?」
「何をしてるのですか?」
「我に帰依した可哀そうな娘の服を剥いて裸にして犯そうとしておるわ。
 それも卑劣にも薬を飲ませて意識を無くさせてのう、
 その輩の魂は醜悪でまるで糞みたいな匂いをさせておるわ」
「ならすぐ行かないと・・・」
「心配せずとも我が今さっき殺した。モズの餌の様にしてやったわ」
「そんな・・・彼は犯罪者として裁かれなければいけないのです」
「それをするためには、どうするのだ?
 かの娘に無理矢理犯されたから告発しろと言うのか?
 有る事無い事を書き連ねて世間へ嘘も誠もばら撒くマスコミの餌食だのう。
 それはあまりに可哀そうだとは思わないか?
 かの娘はやっと今になって、
 過去に深く傷つけられた心と身体が癒えて来ているのだ。
 再び世間の目、暴力的な視線に晒されると今度はその心は壊れるだろうな。
 あの糞男は金と政治家と言う権力で
 今まで数えきれないくらい女を犯してはその心を殺してきた。
 ここで死んでいる使い走りの男も似た様なことをしてきた。
 そんな野に棲む獣よりも醜悪な輩に何の価値がある?
 そんな輩を殺すのに何の遠慮が要るのだ?
 今まで皇子や鷹の優しい心根に絆されて、
 我は我の魂の一部を分けて傷ついた人間の心へ滲み込ませて癒した。
 苦しい嫌な記憶は、心の奥に仕舞い込み二度と出て来ない様に封印した。
 その結果、その者達は明日へ未来へ目を向けることができる様になったのだ。
 それこそが人間本来の心だと思うし輝きだと我は思う。
 そんなこの世を良くしようとする人間へ仇為す者は許さない。
 他にも様々なこの世に不要な者には死んで貰った。
 ある者は暴力を、ある者は地位を、ある者は金を使って、
 ある者は独りよがりの嫉妬で、ある者は他人を騙そうと
 己の欲望に任せて弱き者を虐げ殺していく輩ばかりだったから死んで貰った。
 そういう輩は、他人の悲しみや痛みがわからない者達ばかりで、
 人間として必要な心の一部が欠けている者達ばかりであったよ。
 この前殺した者などは、わざわざ他国から来てこの日本の闇に潜み、
 民草の身体や心を薬で縛り、薬漬けにした女を他国へ売って、
 あげくにそいつらは内臓をも売っている様な奴らだったから、
 苦しみ悲しみ死んでいった民草の声を聴き、彼らの代わりにその罪を償わせた。
 奴らには我が身体を手繰りお互いでお互いの心臓を徐々に抉り取る様にさせ、
 迫りくる自らの死に怯え、血の涙を流させ痛みに狂わせて殺してやったわ。
 我により結構世の中も良くなってきている筈だがなあ」
「そんな風に殺された人達にも家庭や親しい人はいたのですから・・・」
「それはそうだろう。
 だが、そんな輩と仲の良い者など似た者同士だろ?
 殺した奴らと同じで他の良い人間に害を為す輩と変わらない者だ。
 己が他人の命で稼いだお金で暮らしていること知っているのだからな」
「あなたのおっしゃることは良くわかりましたが、
 人間の世は人間の手にお任せ願えませんか?
 我々もあなたほどでは無いですが、
 この世から悪い人間は排除できますから・・・」
「それでは遅すぎる、断ると言えばどうする?
 まさか神である我を殺すなどと思っておるまいなあ。
 うん?・・・そうか・・・
 そなたたちにそんな力があるかどうか試してみようか・・・」
「?!真美、注意して!」
「はい、遼真様」