はっちゃんZのブログ小説

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103.妖?行方不明者を探せ1

浅間別荘と葉山邸の特訓から新宿の事務所へ戻った二人は、

いつものようにソファに並んでテレビでニュースを見ている。

もう街は晩秋の装いで公園の木々の葉もちらほらと落ち始めている。

今日も都内で行方不明者の出ている事件が大きく報道されている。

そんな時、警視庁の飯塚警部から事務所へ来る途中との連絡が入った。

まもなく飯塚警部が事務所へ顔を出した。

「おっ、翔も百合さんもいつもいつも仲が良くて羨ましいね」

「ありがとうございます」

「実は本当に今困っててさあ。

 たくさんの事件を抱えてるのに捜査員が少なくてなあ。

 だから一向に捜査が進まない。

 少しお前に手伝って欲しいのだがなあ。今忙しいか?」

「忙しかったらここでゆっくりしていませんよ。

 もしかして連続行方不明の件ですか?」

「そうだ。調べても被害者の背景に共通点もないし、

 何か組織的な犯行とも思えないし、

 場所もバラバラに起こってるから関連がないとも思えるし・・・。

 ただ刑事の勘として何か起きてるような気がするんだ」

「わかりました。飯塚警部の勘を信じて動いてみます」

すぐに飯塚警部と警視庁へアスカを同行させ、

今まで刑事達が入手した情報も含めて行方不明事件情報を全てスキャンさせ、

データを事務所内の量子コンピューターのRyokoへ転送させた。

                                              

実際の話、日本国内では毎日のように行方不明者が発生しており、

非常に多くの身元不明の死体も出現している。

身元不明の死体に関しては

法医学者による検死がおいつかないため原因不明が圧倒的に多かった。

ただここ10日の間、

塾帰りの中高校生、

飲み屋帰りのサラリーマンの男性、

会社帰りの女性、

飲み屋勤務の女性などが連続的に行方不明になっている。

被害者の背景に共通点はなく、発生時間のみ同じで夜中だった。

翔は調査エリアを都内に絞り、Ryokoへ情報解析を指示する。

同時に目黒研究所内のスーパーコンピューターの優子と共同で

政府から許可されている経路にて警察のコンピューターへ侵入し、

都内の全ての監視カメラ映像の解析を開始した。

 

現在、一番信憑性の高い情報としては

世田谷区の千歳烏山駅近くで塾帰りの男子高校生の情報だった。

母親への留守電の声で

『今、塾が終わったからもうすぐかえ、ウワー、タス・ケ・・・』と入っていた。

その付近の同じ時間の監視カメラの映像を重点的に解析したが、

犯人らしき姿は映っていないし

被害者の姿も公園内の木々に隠れて見えなかった。

 

そこで最近の行方不明者の居なくなったであろう場所を

時系列にポイントしていくと

八王子、日野、立川、国立、国分寺武蔵小金井三鷹、吉祥寺、荻窪

中央本線沿いに東へ移動しながら発生していることが判明した。

最初の現場である八王子近辺を調査するも全く手がかりが見つからなかった。

ただ時間だけが過ぎて行った。

ある時、八王子の廃ビルの最上階の部屋で死体が発見された。

その死体は、暴力団関係者で最近行方不明者とされている人間だった。

廃ビルの取り壊し工事の依頼を受けて業者が下見をした時に見つけたのだった。

そのビルは郊外にあり長い間使用されていなかった。

死体の見つかった部屋は

窓ガラスも割れており雨風が入ってきている状況だった。

死体は白い紐状の物が足に巻かれ天井の梁から吊り下げられており、

その身体は白い糸状の物に巻かれ真っ白だった。

身体は体液が全て抜かれており、カラカラに干乾びてミイラ状になっていた。

傷は筒状の物を突き立てられたと思われる後頭部と腹部に穴が開いている。

その顔は目も口も大きく開かれ歪んでおり、恐怖を物語っていた。

 

都内には到るところで毎日のようにビル工事が行われており、

新しいマンションやビルが建っていくと同時に

古くなったマンションや商業ビルも点在して

そのまま放置されているケースも多い。

翔はRyokoや優子へ廃ビル中心の監視カメラ映像の再調査を指示した。

通常監視カメラは視線が地上に貼り付けられているため、

なかなか見つからなかったが何枚か怪しい影が見つかった。

警視庁も多くの行方不明を一連の事件とは意識しておらず報道も控えていた。

(つづく)