はっちゃんZのブログ小説

スマホの方は『PC版』『横』の方が読みやすいです。ブログトップから掲載されています作品のもくじの章の青文字をクリックすればそこへ飛びます。

95.特訓4(浅間別荘編4)

この一帯は山間部のせいか朝が遅い。

二人が眠りから覚めてもまだ暗い。

やがていつもより弱く揺れるような光が差し込んできた。

カーテンを開けると

富士山が昇る朝日に照らされ、

山中湖湖面に反射し

その光が窓から差し込んできている。

 

二人はいつものロードワークに出た。

別荘から「母の白滝」「河口浅間神社」をルートとして

翔は2周走り、百合は1周で朝食の準備に別荘へ戻っていった。

別荘に戻って庭でいつもの鍛錬を行っていると

百合から朝食の声がかかった。

鍛錬でびっしょりとかいた汗をシャワーで流し食卓へついた。

食後の美味しいお茶を飲みながらゆっくりとして特訓の時間に入った。

 

特訓と言っても二人で考えてもなかなかアイデアが思いつかなかった。

別荘の庭で目標の木の隣付近をじっと見つめて『跳ぼう』としても何も起こらない。

座禅を組んで精神統一をして半眼で目標をじっと見つめていても何も起こらない。

過去の跳んだ時と同じ状況を意識しても何も起こらない。

それならと息が上がるまで動いて試しても何も起こらない。

滝から飛び降りる事も考えたが、仮に失敗した場合は生きていないし

百合が絶対に反対するので諦めた。

 

じっと見ていた百合から

「あまり無理しても仕方ないから、気分転換に以前の様に河口湖を散策しない?」

と声がかかった。

焦っても仕方ないのでとりあえず午後は散策に向かった。

 

相変わらず河口湖湖畔では、多くの観光客が歩いている。

百合は翔と手をつなぎながら色々と見て回った。

以前の婚約旅行の時を思い出して二人とも嬉しかった。

以前借りたレンタサイクル店で再度借りて、

さっそく二人で湖畔を1周することにした。

 

相変わらず自然が保護されているのだろう

湖水面からはコイ、フナなどの多くの魚影が映っている。

今回も湖の中にある富士五湖で唯一の島「うの島」がよく見える。

湖面を渡る風にそよぐ百合の長い髪と翔へ向けられる笑顔が輝いている。

  

 

その後、少し遠出をして「中ノ倉峠展望地」へ行くことにしている。

中ノ倉峠展望地は、山梨県道709号沿いにある登山口から徒歩30分ほどの場所で、本栖湖の全景と富士山の姿が堪能できる絶景スポットだった。設置されている展望デッキには30人が並べるほどの面積で、今日は快晴だったため千円札と同じ逆さ富士が眼前に広がっていた。

次に富士山世界遺産センターへ行った。

この施設は富士スバルライン沿いにあり、富士山の魅力などについて楽しみながら学べる体験型展示観光施設だった。館内中央には、富士山を1,000分の1スケールで表現した巨大オブジェ「冨嶽三六〇」があり、照明や音響演出によって四季の移り変わりが再現されていた。この地でなければ見る事のできない富士山の顔を全ての人に見せていた。現実の展示空間とデジタルの融合によるすばらしい体験だった。

(つづく)