「ほう、その顔つき、やっと本気の力を出しそうだな。さぁ、きなさい」
「はい」
そこからは現在の翔が持つ最高のスピードと力で戦ったが、
とうとう爺さんには触ることもできなかった。
そして最後には又もや壁板へ叩きつけられた。
「よし、今日はここまで、翔君、なかなか鍛えてはいるがまだまだだ。
もっともっと精進しなさい」
「はい、ありがとうございました」
「翔君、ところで百合との付き合いだが・・・」
『ゴクッ』
「まあ百合との付き合いは許そう。
その代わりどんなことがあっても百合を守りなさい」
「はい、そのつもりです」
「君はなかなか筋がいい、我が一族に来てほしいくらいだが仕方ない。
今後は百合とちょくちょく顔を出して、わしの相手をしなさい」
「はい、わかりました」
爺さんと二人、道場で正座をして向かい合った。
「聞いておきたいことがある、今後の事じゃ、将来はどんな仕事に就きたい?」
「はい、今それを考えていまして、弱い人困っている人を助ける仕事を考えています」
「警察ではなさそうな感じじゃな?例えば私立探偵とか?」
「あっ、そういう仕事ってテレビの中だけと思っていました」
「いや、普通にあるぞ。ただ浮気調査とかばかりだがな」
「浮気調査とかは・・・うーん。嫌です」
「そういうと思った。それなら『何でも屋』のような感じでやればいいだろう。
浮気調査が嫌ならば断ればいい。
実は新宿にある持ちビルの二階の部屋が空いている。そこを使ってみないか?
事務所の奥にも広い部屋があるので寝泊り兼トレーニングルームとすればいい」
「はい、ですがそんな良い場所の部屋代はたぶん払えません」
「そうだな、月1万円でどうだ?
1階の不動産屋が管理しているからお金が出来次第、支払ってくれればいい。
実は変な人間には貸せないので困っていたところだった」
「1万円?すごく安いですね。助かります。これから資格とか取ります」
「探偵は普通自動車免許を持っていれば大丈夫。
後は開業申請を出すだけで良いはずじゃ」
「そんな簡単なものなのですか・・・驚きました」
「自分の食い扶持くらいは稼ぐのじゃぞ、これで君の仕事は決まった。
憂いがなくなれば後は鍛えるのみじゃ、がんばるのじゃ」
「はい、ありがとうございます」
「これからは君の正義を全うしなさい」
これで翔の大学卒業後の仕事は決まった。
(つづく)