はっちゃんZのブログ小説

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87.秋の道東旅行4(屈斜路湖湖畔から知床へ)

温泉から静香と美波が部屋に戻って来て早速「レストランルーペーニュ」へ向かう。
このレストランは、天井高約10mの開放感あるダイナミックな空間でガラス張り窓からはライトに照らされた大きな池と深い緑の森が見えている。
食事は和洋中の料理が揃っているブッフェ形式で室内中央にはライブキッチンがあり、
シェフのすばらしい手元の動きや出来て行く料理を目の前で楽しむことができた。
案内された窓際の席から、いつもの様に子供二人を連れて料理の方へ向かう。
ここで宿泊客が列を作っている料理は、「ローストビーフ」と「溶けたチーズ乗せ」だった。
大きな絶妙な焼き加減の塊肉のローストビーフをシェフが目の前で切り分けてくれる。
目の前にあるお好みの食材に高温で溶かしたあつあつのゴーダチーズを注いでいる。
雄樹も夏姫も好きな物を選んでいく。
火傷をしても困るので湯気の出ている物は慎一が取って並べて行く。
雄樹は、「ローストビーフのミニ盛」「北海道産鶏の棒棒鶏」「エゾシカ挽肉のスパイシーカレー」「鮭とコーンのバター―チャーハン」「北海道産ベーコンとアスパラガスのピザ」を小皿に盛り、
夏姫は、「自家製フランスパンとジャガイモの溶かしチーズのミニ盛」「北海道産牛乳トウキビのピザ」「タンドリーチキン弟子屈ジャガイモのチップを添えて」「北海道産にこだわった焼売」「野菜サラダ」を小皿に盛ってトレーに載せてゆっくりと慎重に歩いて席へ戻って行く。
すでにテーブルには幼児用の席と静香が二人の大好きなリンゴジュースをセットしている。
慎一は、「ローストビーフ・ピリッと北海道産山ワサビ添え」「自家製フランスパンとジャガイモの溶かしチーズ」「タンドリーチキン弟子屈ジャガイモのチップを添えて」「海老と玉子のチリソース煮」「刺身お作り(甘えび、サーモン、アブラカレイ)」「カレイのフリット」「ホタテの塩辛」を小皿に盛りトレーに載せて戻った。
美波は、二人分の「ローストビーフ・ピリッと北海道産山ワサビ添え」「自家製フランスパンとジャガイモの溶かしチーズ」「ボロニアソーセージと弟子屈クレソンのハニーマスタード」「インゲンとカシューナッツの冷菜」「サーモンのプロバンス風」「蟹焼売」「花咲蟹の鉄砲汁」「弟子屈の椎茸・ししとうの天ぷら」「四川麻婆豆腐」「野菜とビーンズのサラダ」を小皿に盛りトレーに載せて戻った。
慎一と静香は頼んでいたビールと美波はレモンスカッシュで雄樹と夏姫も一緒に乾杯した。
慎一と静香がビールをグイッと飲んで同時に『アー・・・美味しい』と言うと
子供達も笑いながらその真似をして『アー・・・美味しい』と言っている。
美波は弟妹のそれを聞いて『二人とも大人になったらお酒飲みになるかも』と大笑いしている。
どの料理も本当に美味しくて、気がついたら軽く大ジョッキが空いていることに気がついた。
今度は水割りを頼んで料理をドンドン平らげて行った。
粗方ビュッフェの料理を平らげる頃、
今度は静香と美波が交代で子供達を連れて行き、デザートを取りに行っている。
ビュッフェのデザートコーナーには色々と美味しい物が揃っている。
コーナーへ行きパッと目に入って来るのは、
クーベルチュールショコラ
これはベルギー産クーベルチュールチョコレートを使用したムースに、照明の光が反射している艶やかなグラサージュをかけ、高級感のある外観に仕上げた濃厚な味わいのチョコレートケーキ。
パンナコッタ
とろっと濃厚な味わいとなめらかな口どけが魅力のイタリアを代表するデザートのひとつである。
生クリームの濃厚な味わいとツルッとした舌触りがおいしい。
その他、真っ白のレアチーズケーキ、柚子ゼリー、ソフトクリーム。
フルーツとしては切り分けられたパイナップル、キウイ、オレンジが盛られている。
静香や美波そして子供達は、目を輝かせながら、パフェ用食器へソフトクリームを入れて
その周りに彩り良くフルーツを盛り付けてフルーツパフェにしている。
雄樹は口の周りを真っ白にして頬ばっているし、夏姫は美波を見習いながらお淑やかに食べている。

家族全員で部屋の戻り、慎一はテレビを見ながらゆっくりとしている。
静香と美波は窓際の椅子に座って、
お茶を飲みながら秋の明るい大きな月に照らされた屈斜路湖湖面を見て笑って話している。
子供達は家から持ってきたおもちゃをベッドの上に出して遊んでいる。
しばらくするとおもちゃを持った夏姫が膝に座って凭れておもちゃで遊んでいる。
雄樹もそれを見て、慎一の隣にくっ付いてきておもちゃで遊んで話しかけてくる。
ふと東館にゲームコーナーのあることがホテルの案内に載っていたので行くことにした。
子供二人を抱っこして色々とお話しながら歩いて行く。
おもちゃコーナー独特の楽しそうなミュージックが流れて来る。
ここには大人も楽しめる体験型ゲーム機もたくさんあり子供用のおもちゃゲーム機もあった。
アニメ主人公の車に乗ったり、ワニワニパニックゲーム、太鼓の達人ゲームなどに挑戦させた。
プリキュアの車には夏姫が、アンパンマンには雄樹が乗っている。
その後、ワニワニパニックゲームは雄樹が大いに気に入り、
太鼓の達人ゲームは夏姫や静香や美波も気に入ったみたいでキャアキャア騒いでいる。
最高得点を出して満足した雄樹と好きな歌のリズムをうまく叩けた夏姫は満足している。
部屋に戻ると雄樹がどのベッドで寝るのか全てのベッドに順番に寝転んでいる。
夏姫は『私は美波姉ちゃんと一緒に寝る』と言って美波へ抱き付いている。
そして雄樹は『僕は一人でこのベッドで寝る』と言っている。
しばらくすると雄樹は寂しくなったのか『僕が寝るまではここに居て』と母にお願いしている。
その夜は子供達も硫黄山で歩いたり砂湯や楽しいゲームなどで疲れたのか早めに寝ついた。

翌朝は子供達の目覚めと共に早めに起きて、
予約していたホテル1階の「レストラン ルーペーニュ」へ向かう。
ここで朝食用バスケットを受け取り、レイクサイドガーデンへ向かう。
そのレイクサイドガーデンは、その名の通り
目の前が朝靄に沈む屈斜路湖畔に面しており、ときおり爽やかな風が吹いてくる。
朝食バスケットの内容は、
◆北あかりのポタージュ          
◆北海道産卵のスクランブルエッグ 
◆十勝の森放牧育ち どろぶたボロニアソーセージ 
◆北海道産厚切りベーコンのグリル
◆白糠酪恵舎モンヴィーゾのシーザーサラダ
◆べつかいのヨーグルト屋さん
◆フルーツの盛り合わせガーデン風
◆べつかい牛乳パン・摩周そば粉のフィセル と種類も多くとても豪勢な内容だった。
家族全員、北海道の豊かな自然の中で新鮮で美味しい空気と料理に舌鼓を打った。
屈斜路湖摩周湖と同様に朝はうっすらと霧に包まれている。
その湖面の霧へ太陽の光が湖面を射すと
湖面に漂う霧は大きく動き始め深い青色の湖面が顔を出し始める。

この場所では、グランピング宿泊テントもあり夕食も取ることが出来るようだ。
その他、テントサウナという珍しい施設もありキャンプ感覚で楽しむことが出来るらしい。
またここでの夕食プランの内容は例としては、以下である。
◆ポーク(豚)ジンギスカン 
◆豚バラの串焼き 
◆ひな鶏の串焼き
◆道産帆立・イカ 
◆ウィンナー 
◆手作り芋団子 
◆地場産焼き野菜
◆焼きおにぎり
その他のホテルイベントとしては夏の期間限定で「屈斜路湖夕涼み遊覧クルーズ」もあって、
長い間ホテルに滞在しても楽しむことが出来そうだった。

雄大屈斜路湖畔の自然の中での朝食と言うオシャレな時間を満喫してホテルを出発する。
今日の予定は、いよいよこのたびの最終目的地である知床半島へ向かう事である。
途中に見る場所はあってもそこで時間を使うと知床半島での観光があまりできなくなるため
午前中は必然的に車中の時間が増えてしまう事になるが、子供達用に持ってきたテレビ番組や映画のDVDを車内ビデオに流しながら移動することとしている。
パイロット国道を北上し、昨日に訪れた美幌峠を越えて美幌国道で美幌町方面へ向かう。
途中右折し249号線へ入り大空町へ向かい道なりに走ると334号線知床国道へ突き当たる。
右折しただひたすら道なりに走るとこじんまりとした小清水町が見えてくる。
そこから小清水町を越えて清里町が見えてくると最初の休憩地である斜里町は目の前である。

「道の駅 しゃり」の駐車場に車を停めてトイレ休憩をする。
この道の駅は、JR知床斜里駅から徒歩5分の場所にあり訪れる観光客も多い。
道の駅の中にはレストランや喫茶軽食の店もあったが、今夜もホテルバイキングだし、まだ昼には早いのでジュースを買った。
ジュースを飲みながら駅内を歩くと
なぜか「ねぷた山車」が展示されている。
この色彩鮮やかな山車は毎年7月に行われる「しれとこ斜里ねぷた」の山車らしい。
以前青森県弘前市へ桜の花桟敷を見に行った時に観光館があって見た記憶が蘇った。
不思議に思いこの地と弘前市の関係をネットで調べて見ると、
知床の斜里町青森県弘前市の"ねぷた"の関係が見つかった。
今から200年以上も前のことで、1807年、オホーツク海沿岸でのロシア軍艦による砲撃や略奪に対して、幕府が津軽藩を北方警備に当たらせたことが発端だったようだ。
北方警備を命じられた藩士100人にとっては、知床の冬は予想以上に過酷だった。
赴任当時は秋の季節、漁場に建てられた粗末な小屋で暮らし、赴任時に持参した米と味噌で食いつないだ。季節的にもう山菜はなく、売り物として扱われる川魚を捕ることや、アイヌからの支援を受けることさえも禁じられていた。その上、急な出発命令だったため、着の身着のままだった藩士たちは厳しい寒さ、栄養不足と飢えで次々と倒れ、春を迎える頃には、わずか28人になっていたらしい。この惨たらしい事件は、藩士の引き揚げ後、藩は民心に動揺が広がるとして関係者を口止めにし、事件の記録を“封印”した。この惨たらしい事件に関して、斜里町には死亡者名簿が残されていましたが、具体的なことは分からずに、本事件は永遠に闇に葬られるはずでした。
しかし、1954年、「他見無用」と書かれた藩士の日記が、東京・神田の古書店で見つかったことで、事態は一変する。そして翌年に斜里町史にも掲載され、ようやくこの事件は明るみになった。
その後、地元の郷土史研究家らによる慰霊碑建立の機運なども盛り上がっていき、弘前市との交流のあった「津軽藩士殉難慰霊碑を守る会」の名誉会長・日置順正氏の尽力から、現在ある知床博物館の裏道を上がった町民公園に、1973年に「津軽藩士殉難慰霊の碑」が建立された。
その後、斜里町は、慰霊碑を建立して以来、毎年町民の手で慰霊祭を行っていたことが縁で1983年に青森県弘前市と「友好都市」となり、両市の交流が盛んとなり、当時亡くなった藩士たちの霊を慰めるために、「知床ねぷた」は2日間にわたり開催され商店街を中心に知床の夏を彩る最大のお祭り「しれとこ夏まつり」として開催されている。

少し館内を行くと何と大きな水槽に「クリオネ」が展示されている。
これには雄樹も夏姫は走って行き水槽に額を付けて「可愛い」と喜んでいる。
ふとピアノの音が流れていることに気がつくと観光客らしき人が弾いている。
ここでは「ストリートピアノ」が設置されていて、誰でも弾けるようだった。
実は札幌市南区にあるコープさっぽろにも同様な「ストリートピアノ」が置かれている。
家族で買い物に行った時に腕に覚えのある人がピアノを弾かせているのを聴いている。

しばらく休憩して334号線知床国道を東へ向かい次の目的地の知床峠を目指す。
知床国道の左側は一面オホーツク海で蒼い海が広がっている。
やがてこじんまりとしたウトロの街が見えてくる。
今夜宿泊予定の知床第一ホテルの場所を確認しつつ道なりに進んでいく。
港湾内には明日の朝に乗る予定の知床半島観光船の姿が見える。
遠音別村を越えて知床横断道路を進んでいく。
左折「知床五胡」の看板を越えてただひたすら走る。
道の両側は、紅葉がどんどん深くなり、風の吹き渡る空には雲一つない青空が広がっている。
ふと気づくと両側の色づく木々が徐々に低くなり空が一面に広がる場所「知床峠」に到着した。

知床峠は、斜里町ウトロと羅臼町を結ぶ国道334号の峠で、知床八景の1つにも選ばれている。全長27kmの曲がりくねった峠道、知床横断道路の最頂部にあたる標高738mにあるビュースポットです。
真正面に羅臼岳、眼下には深緑の大樹海、天気が良ければ、遠く根室海峡とそこに浮かぶ北方領土の一つである国後島を望む大パノラマを楽しめる。ただ、この一帯は気候の変化が激しく雪崩や崖崩れなどの可能性もあるため、降雪により北海道内の国道で唯一通行止めになることがある。また、知床横断道路は11月初旬~4月下旬は通行不能となるため、日本一開通期間が短い国道と言われている。

知床峠展望台には広い駐車場があり既に数台駐車されている。
展望台に設置されている知床峠の石碑の前で観光客が写真を撮っている。
子供達も久しぶりに外に出れて嬉しいのかそこじゅう走って行っては色々と見ている。
やや冷たい風が吹く中で紅葉に彩られた雄大羅臼岳や天頂岳が見える。
今日は幸運にも快晴のため、ネット情報通り、
うっすらと北方領土国後島が深い蒼い根室海峡の向こうに浮かんでいた。
改めてその距離の近さを目にした時、
終戦時のソ連による一方的条約破棄による現在も続く不当占拠を思い出し忸怩たる思いが蘇った。
その思いを振り切って気分を切り替えて家族と知床第一ホテルへ向かった。

知床第一ホテルは、1970年に設立され、1990年にお料理を一番美味しい状態でご提供し、お客様の好みに応じて利用できるバイキングスタイルのお食事を採用した。この方式をホテル業界で真っ先に採用したことから注目を集め人気を博した。そしてバイキング日本一の称号を獲得したホテルである。
広い駐車場に車を停め、ロビーに向かう。
広く開放的なロビーで華やかなカーペットで彩られている。全面ガラス張りのラウンジで、青いオホーツク海や知床の大自然を一望できる。フロントでチェックインして予約している至然館の和洋室の鍵を受け取った。