はっちゃんZのブログ小説

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79.道央旅行3(ファームでランチピクニック)

 視界一面に広がる美しく神秘的な雲海テラスへの感動を後にして、
部屋へ戻って朝早かったため少し休憩する。
今日は、お昼過ぎまで「モーモーカートで行くランチピクニック」を予約している。
このアクティビティは、ランチボックスとピクニックセットが含まれており、
レジャーシートを広げて、ごろりと横になりながら北海道の大自然を満喫できる。
それ以外にも、ファームの動物への餌やりや、ヤギやヒツジの放牧体験ができる「モーモーカートで行くファーム体験ツアー」も一緒に予約している。最後に出して貰えるトマムファームで搾れた絶品のミルクを楽しみにしている。
このようなピクニック系の他のアクティビティには、「トマムピクニックレギュラー又はリッチ」がありこれらには、ピクニックシート、ミニテント、ミニテーブル、ブランケットといったピクニックグッズが借りられるらしい。他の客は見えない様な自然の中で家族だけで贅沢な時間を過ごすことになる。

ファームエリアまで移動して係員に声を掛ける。
ランチボックスとピクニックセットが渡されると子供達は大喜びで走り回る。
お昼ご飯を食べる前に予約していた「モーモーカートで行くファーム体験ツアー」だ。
モーモーカートに乗ってファームへ移動して柵のあるファーム入り口に停める。
「さあ、着いたよ。気を付けて降りるんだよ。
 今からヤギさんやヒツジさんにご飯をあげような」
「えー、ご飯をあげるの?」
「私、嚙まれないかしら」
「ガブって食べられるかも」
「えー、怖いよ」
「雄ちゃん、夏ちゃん、大丈夫よ。
 ヤギさんもヒツジさんも優しくて草が好きだから噛まれないわよ」
「草なの?ウシさんやウマさんと一緒なの?」
「そうよ、牛さんや馬さんと同じ。夏ちゃん、えらいわ。よく覚えていたわね」
「美波姉ちゃんが教えてくれたじゃないの」
「そう、昨日車の中で教えてくれたよね」
「まあ、雄ちゃんもよく覚えていたわね。二人ともえらいわ」
「美波姉ちゃん、あそこにヤギさんがいるから行きましょう」
「夏ちゃん、わかったわ。さあ、ヤギさんやヒツジさんに餌をあげましょうね」
と美波と夏姫は手を繋いで入口へ走って行く。
「待ってー」と雄樹も走って行く。
夫婦は、荷物を持ってゆっくりと周りの景色を見ながら歩いていく。
「ねえ、あなた、ここって本当にすごいわね。本当に自然の中にいるわね」
「そうだな。こういう自然を見ると北海道に来て良かったと思う」
「そうね。ずっと札幌に居れる訳でもないから、今のうちに満喫しなくっちゃね」
「まあね。3年から5年は居れるけど後はわからないな」
「お父さん、お母さん、早く来てよ。ヤギさん達が待ってるよ」
「おお、そうだな。じゃあ、急ぐか」
「ふふふ、そうね。あの子たちのいい笑顔が一番ね。
 こんな素敵なところを予約して貰って。あなた、ありがとう」
「美波やあの子たちが一緒に楽しめる時は、美波が夏休みの今しかないからね。」
「そうね。美波も元気がでてきたみたいね」
「それならいいんだ。最近、ちょっと心配だったからなあ。」
「へえ、あなたも美波の良いお父さんをしてるわよ」
「それは良かった。ほんまに出来の良い子やからなあ。銀行でも鼻が高いんや」
「そうなの?うれしいわ。ありがとう」
二人はみんなが待つファームの入り口に着いた。
子供達は係員の人からバケツに入った餌入れを渡されるとヤギやヒツジの群れへと近づいていく。
夏姫も雄樹も怖いのか少しおずおずしながら歩いている。
「こうやってあげるのよ」
美波が先ず一匹のヤギにそっと餌を上げると、
ヤギは『メエー』と言いながら美味しそうに食べ始めると
とたんに周りから多くの他のヤギやヒツジが集まってくる。
夏姫は急いで
「お父さーん。抱っこして」
「おお、わかった。ほれ、これでいいか」
「うん、ねえ、夏姫は餌をあげたいなあ」
「お父さん、僕も抱っこして」
「おお、いいぞ。よいしょっと」
慎一が二人を抱っこして群れの中へと入って行く。
三人の周りにヤギやヒツジが集まってきている。
「お父さん、雄ちゃん、早く餌をあげましょうよ」
「そうしようか。じゃあ、近づくぞ」
慎一が中腰になって子供達が餌をやりやすくなるようにする。
最初は、恐る恐る餌を渡してすぐに手を引っ込めていたが、
やがて慣れてくると餌をあげながら頭や身体を触ろうとしている。
ヤギやヒツジ達は、餌を食べるのに忙しいのでそのままにしている。
「可愛いね。すごく美味しそうに食べてるね」
「うん、可愛いー」
「うん、すごく食べてるね」
他の家族も同じように餌をあげては悲鳴や笑い声をあげている。
たくさんあった餌も全部なくなると、
そこに居たヤギやヒツジ達は餌の残る他の家族の方へと移動していった。

「お父さん、僕はあそこへ行きたい、草のベッドみたいだよ」
「ほんと、ハイジみたい。私も乗りたい」
「おお、そうだねえ。どんなベッドかな。さあ行ってみよう」
「あなた、私はここらでレジャーシートを敷いて見ていますね。
「うん、頼むよ。じゃあ、雄樹、夏姫、行こうか」
「「うん」」
このベッドは『牧草ベッド』と名付けられている。
子供二人は、大きな牧草ベッドの上に上がると
「姉ちゃんも来てよ。すごーくフワフワしてるよ」
「そう、わかったわ。姉ちゃんも上がってみるね」
「姉ちゃんはここね。私の隣なの」
「ありがとう。本当にフワフワして柔らかいね。思ったより眠りやすいわ」
この天然のスプリングマットレスは、牧草がツンツンと飛び出てくすぐったそうに思えたが、
実際にはそんなこともなく草の香りのするふかふかのベッドだった。
夏姫が『ハイジみたい』と言っていたが、本当にそんな気分が味わえそうだった。
夏姫は嬉しそうに腕枕をして貰って美波の胸に顔を埋めている。
美波も夏姫を愛おしそうにそっと抱っこしている。
雄樹は、その場でジャンプをして『スゴイスゴイ』と笑っている。
ゆっくりと座って三人の様子を見ていた。
「さあ、みんなお腹空いてないか?」
「うん?・・・お腹空いたあー」
「お昼はなーに」
「さあ、どんなお弁当かな?楽しみね」
「うん、楽しみ。お母さーん」
静香の敷いたランチセットが広げられているレジャーシートの方へ向かう。
しばらく自然の景色を満喫しながらお昼ご飯を楽しむ。
雄樹と夏姫は早めに食べ終わると
急いでもう一度ファームに近づいて二人が餌をあげたヤギやヒツジ達が、
他の客から餌を貰っている様子を二人並んで座ってじっと見ている。
二人は何を話しているのかは聞こえないが、ヤギやヒツジの仕草を見ては笑っている。
このプランの終了時間も近づいてきているため、一度部屋に戻ることとした。