はっちゃんZのブログ小説

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86.秋の道東旅行3(摩周湖・屈斜路湖にて)

まだ十分に陽も昇らない内にホテルを出発する。
今日のコースは計画より時間が早く進んでいるため最初に摩周湖を入れた。
屈斜路湖付近の摩周湖・硫黄山・砂湯・美幌峠で観光し屈斜路プリンスホテルで泊まる予定である。
最初に行く「摩周湖」と言えば歌にもなる様に「霧」で有名である。
霧は早朝だと教えて貰ったので急ぐ。
ホテルを出て、まりも国道を東へ向かい、途中阿寒横断道路へと右折し道なりに進む。
阿寒横断道路を突き当りパイロット国道途中から「摩周湖」の標識に従って右折し52号線を進む。
やがて「摩周第一展望台」が見えてくる。
すでに多くの観光客の車が駐車場に止まっている。
この「摩周第一展望台」は、年間100万人以上の人々が立ち寄る、摩周湖を望む展望台の中でもっともポピュラーな展望台で、展望デッキからは摩周ブルーの湖とカムイシュ島、湖を守るようにそびえるカムイヌプリ(摩周岳)の眺望が綺麗に見えると言われています。

湖の名前についてだが、隣の屈斜路湖の場合、湖が川になって流れ出す口をアイヌ語でクッチャロ(のど口)といい、その近くに昔から自然資源が豊かなコタン(村)があったため、和人がその名を湖名にして屈斜路湖と呼ぶことにしたと言われているが、摩周湖は「マシュウ」と美しい名にもかかわらず語源が定かでは無く、アイヌの人々は「マシュウ」とは呼ばずに「キンタン・カムイ・ト(山にある・神の・湖)」と呼んでいたと解説されており、摩周湖は名前までもが神秘的という事だった。
摩周湖データとしては、
・形態…カルデラ
・大きさ…19.6平方km(周囲20km)。国内で6番目。
・水深…最深212m/平均水深146m。国内5番目。
・透明度…15~32m。流れ込む川がなくプランクトンなどが運び込まれないため。
・標高…湖面351m/周囲のカルデラ壁150~350m。壁の斜度は平均45度。

まだ着いた頃は太陽も高くなっていない時間帯だった。
急いで展望台に立つと、
果たして・・・「霧の摩周湖」が広がっていた。
湖全体が深い霧に沈みあまり湖面は見えなかった。
薄く濃く静かに佇む霧の間からはまだ暗い深い青色の湖面が広がる。
やがて時間と共にその霧へ太陽の光が差し込んでいく。

太陽の光が当たった瞬間、
眠っている様に静かだった湖面の霧が激しく動き始め、
徐々に激しく渦巻きそして見る見る間に消えていく。
しばらくすると吸い込まれそうなほどの深い青色の湖面が広がってくる。
この湖面の色が「摩周ブルー」と呼ばれる藍を流したような神秘の青色だった。
世界でも一級の透明度を誇る湖水に、空の青が映りこんで生まれる独特の色で、
今日は風も無くその青さがいっそう際立っている様に思えた。
家族全員その美しさに言葉もないほどにじっと見つめていた。

今度は、摩周湖西側の52号線道路を北上して「摩周第三展望台」を越えて
クネクネ曲がる山道を道なりに進んでいくとやがてアトサヌプリ(硫黄山)の看板が出て来る。
駐車場に車を停めてドアを開けた途端に硫黄の匂いが鼻を突く。
雄樹と夏姫は、鼻を摘まんで『臭い、変な匂い』と叫んでいる。
やがてみんなもこの匂いに慣れたのかゆっくりと歩き始める。
目の前の茶色の山肌から白い噴煙が吹き出しているのが見え始めた。
駐車場から砂礫を歩いて行くと、噴気孔のすぐそばまで近づくことができた。
その硫黄色の噴気孔では白い蒸気に混じって熱水も吹き出しているのが見える。
足元から絶え間なく白煙が吹き出していてダイナミックな地球の鼓動が感じられた。

この山、「アトサヌプリ(硫黄山)」は、アイヌ語で「裸の山」を意味し、その名の通り、山肌は木々が生えていなかった。標高は508mで山肌は黄色く硫黄そのものが見える。この山はかつては硫黄採掘で栄えて、採掘した硫黄を運び出すために敷設された鉄道を通して、弟子屈の町の発展の礎を築いた場所だと解説されている。
雄樹と夏姫が、もう臭いから車に戻ろうと言い始めたので急いで戻った。

そこから屈斜路摩周湖畔線52号線を進み、川湯温泉街を越えて行く。
車の中でコンビニで買ったおにぎりやサンドイッチを食べ、子供達を水着に着替えさせる。
やがて目の前に屈斜路湖が見え始める。
湖畔線を湖に沿って南下して行くと「砂湯」に着く。
車を駐車場に停めて砂湯の受付に向かう。
ここは砂浜に温泉が湧き出ていて砂を掘ると温泉が湧き出て来る場所である。
雄樹と夏姫は、砂を掘ってみんなその中に入っている姿を不思議そうに見ている。
恐る恐る砂を触って暖かくて掘ると底に湯が溜まるのがわかると二人で掘り始めた。
慎一も二人の近くで一緒に砂を掘って遊んだ。
子供達二人を砂に埋めていると『砂のお風呂みたい』と喜んでいる。
静香と美波は二人並んで足湯に浸かり湖面を眺めて色々と話している。
すぐそばにレストハウス「レタラチップ」があり、大きな青いクッシーの像が見える。
静香と美波はその店のソフトクリームを買って来ている。
クリームの種類はピスタチオ、コラーゲン、バニラがあって、
慎一はピスタチオ、子供達はバニラ、静香と美波は勿論コラーゲンを選んでいる。
ある程度砂で遊んで白鳥のボートに乗って湖面を泳いだ。
慎一と雄樹、美波と静香と夏姫の2台で子供達に漕がせて競争したりした。

もう15時頃になって来た。急いで最後の場所「美幌峠」へ向かう。
今夜泊まる予定の屈斜路プリンスホテルを横目に見ながらパイロット国道を道なりに北上する。
やがて道の駅「ぐるっとパノラマ美幌峠」が見えてくる。
この道の駅は、標高約525m、眼下には日本屈指のカルデラ湖「屈斜路湖(くっしゃろこ)」を一望できる美幌峠の頂上に位置する道の駅で、国土交通省より毎年発表される北海道「道の駅」ランキング景観部門では6年連続の1位を獲得していて、年間60万人の来場実績があるエリア屈指の観光拠点となっている。
道の駅の駐車場から階段を登ると展望台に到着する。
その展望台からは日本最大のカルデラ湖の屈斜路湖、今もなお噴煙をあげている硫黄山、遠くに知床連山も見えて、その名の通りまさにパノラマで楽しむことができる。湖の周りの生い茂る木々の緑に秋の紅葉が混じり始めそれが屈斜路湖の深い青色をより際立たせている。

ここからの風景で気がつくのは、屈斜路湖の周囲にある藻琴山や美幌峠などの山々がほぼ円形に取り囲まれていると言うことで、この取り囲んでいる山々を外輪に屈斜路カルデラでできていることだった。
このカルデラが「日本最大のカルデラ」とのことだった。
屈斜路カルデラの歴史としては、約200~100万年前に複数の巨大な成層火山がつくられたことから始まり、約30万年前から何度も大噴火が繰り返され、その噴火活動にともなって発生した火砕流オホーツク海岸や根釧原野などの広大な大地を形成していき、そして約10万年前に最大規模の噴火が起こり、火山の中心部分が大きく陥没した。現在見えている藻琴山や美幌峠の外輪の山々は、その陥没時に崩壊した火山帯の名残です。やがてこの大きなカルデラの中に水が溜まり始め、アトサヌプリ火山、中島火山、和琴半島のオヤコツ火山やさらには東部には摩周火山が誕生していき、現在の屈斜路カルデラと火山群が形成されたらしい。まさに太古から生き動き続けてきた地球の姿がそのまま残っている最もホットな場所だった。

さてここの名物と言えば「美幌峠の揚げいも(元祖あげいも)」である。
1個が女性の握りこぶしくらいの大きさの芋が2個のセットのため、とりあえず2セット買う。
齧りつくと衣はほんのり甘くてさくさくとしてて甘い香りが漂ってくる。
中のじゃがいもは塩ゆでされていて、衣の甘さとじゃがいもの塩味のバランスが絶妙だった。
みんな砂湯で遊んで小腹が空いていたのでちょうど良かった。
今までは何度も「中山峠のあげいも」を食べてきたが、若干中山峠の方がスイーツっぽく感じた。
次に初めてのよもぎ色の鮮やかな「熊笹ジェラート」を買ってみる
熊笹か・・・どんな味?』
これは渋過ぎず甘過ぎずスッキリした味わいの抹茶味で美味しかった。
この道の駅には、「海空のハル」という美幌町の食材で作る料理が食べられるレストランが入っている。一番人気の8種のスパイスが効いた『美幌牛と玉ねぎのカレー』をはじめ、『えぞ鹿肉ロースト丼』や『美幌産野菜の天ぷら定食』などが提供されていてお昼ごはんには最適である。
2Fには展望休憩室が設置されており、巨大なモニターでの観光情報やタブレットなどによる観光案内、悪天候時でもきれいな峠の写真を背景に写真撮影ができるARコーナーなどもあり訪れた人の心に寄り添っている。

道の駅を出て美幌峠の展望台へ向かう途中に国民的歌手美空ひばりの『美幌峠』の歌碑があり、
七色の声を持つと言われた彼女の音声が古いレコードの様な音声で流れており非常に懐かしかった。
展望台に昇るとそこからは「日本最大のカルデラ」の全景が見えてくる。
丸く外輪山の囲まれた摩周湖とは異なる蒼色の屈斜路湖が眼下に広がっている。
左側には藻琴山、正面には川湯温泉の街並みと白煙の立ち昇るアトサヌプリ(硫黄山)、
右側には弟子屈町の街並みと屈斜路湖温泉街と宿泊予定の『屈斜路湖プリンスホテル』も見える。

さて今晩宿泊する『屈斜路湖プリンスホテル』へ到着する。
このホテルは全室湖面側の部屋で、日本最大のカルデラ湖といわれる屈斜路湖畔に隣接する温泉リゾートホテル。阿寒摩周国立公園に位置し、視界に人工物が入らない唯一無二のロケーションで太古の大自然を全身で体感できるとの声も名高いホテルである。
予約している部屋は、ファミリールームでベッドが4つありみんなが好きに眠れる部屋である。
早々に部屋に荷物を置いて温泉へと向かう。
今日のお風呂は、雄樹と夏姫は父親と入るそうで静香と美波は二人だけで入ることとなった。
慎一は雄樹と夏姫二人を両腕で左右に抱っこしてみんなでお風呂へ向かった。
ここの温泉は、源泉が地下約1,000mから湧き出ている。
脱衣場の説明文には、
塩分や炭酸ガスが豊富に含まれており、保湿効果やお肌の新陳代謝のほか、毛細血管の働きを活発にするため美肌や血圧などへの効果が期待できると書いてある。
泉質:ナトリウム・カルシウム硫酸塩・塩化物泉
PH値:6.3
浴用効能:健康増進・神経痛・関節炎・冷え性疲労回復・五十肩・病後回復期・慢性消化器病
・運動麻痺・動脈硬化症・関節のこわばり・くじき・切り傷・やけど・うちみ・虚弱児童
・慢性婦人病
飲用:この温泉を飲むことはできません
泉湯:45.0℃
湧出量:毎分280リットル
知覚:無色透明・無臭・苦味および弱甘味
温泉利用温度:41.5~42.5℃

子供達に『滑らない様に注意してね』と言いながら二人と手を握って浴室へと入る。
早速二人の身体に湯を掛けて頭と身体を洗っていく。
洗い終わった二人を浅い浴槽に浸からせて手早く頭と身体を洗い、露天風呂へと移動していく。
この露天風呂は屋根付きで安心して湯に浸かったまま庭園を眺めることができる。
『ホー』と言いながら身体を伸ばして湯船に横になると
二人も真似をして『ホー』と言いながら慎一の左右に歩いて来る。
両手で二人を抱っこしてお風呂に浮かんで三人はしばらく過ごした。
空を見上げると札幌市内では見られない様な数の星が満天に散らばって瞬いている。
二人に「お星さまがいっぱいだよ。数えてみようか?」
夏姫が「ううん、いっぱい過ぎて無理なの」と笑っている。
二人が『お父さん、もう出ようよ』『お父さん、もう熱いよ』と言い始めたので湯から出る。
3人で部屋に戻ると静香と美波の双子母娘はまだ帰って来てなかった。