はっちゃんZのブログ小説

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84.秋の道東旅行1(丘珠空港から阿寒湖へ)

 北海度ではお盆も過ぎ朝晩も涼しく感じてくると
そろそろ街の人々も紅葉シーズンの訪れを意識するようになる。
道庁前の広場では例年通り北海道内にある市町村の特産品展が開催されている。
いよいよ海川山大地のあらゆる食材の旨味が深くなる季節の訪れだった。
来年春の神奈川県への転勤も決まり、
先月の道央旅行で子供達も長期の旅行にも大丈夫なことがわかったので、
秋休みに有給休暇を取って北海道最後の記念として長期旅行を計画した。
美波も来年には就職のため、なかなか家族で旅行は出来ないのではないかと考え、
強行軍ではあるが街が雪で閉ざされる前に家族全員での道東旅行を企画した。
今回は、移動距離も長いことから飛行機を使っての旅行を考えている。

 さて出発の初日、朝ご飯を食べて荷物を確認して、
車に乗ってマンションから丘珠空港へと向かった。
30分ほどで到着、駐車場へ車を停め空港へ向かう。
空港内では観光客や出張者らしき人々で溢れている。
搭乗手続きをして少し多めの荷物を預け女満別空港行きのゲートへ向かう。
子供達は待合から駐機場に停まっている飛行機を見つけてからはずっと見ている。
雄樹は飛行機が好きで飛行機を指差しては母親の静香へずっと楽しそうに話している。
夏姫は美波に抱っこされて飛行機を見て何かを話しては笑っている。
しばらくすると機内への案内のアナウンスが聞こえてくる。
飛行機は小さくて横1列、通路左右2席ずつの4席のため慎一だけ別の席に座り、
母の静香と雄樹、美波と夏姫は一緒に並んで座っている。
子供達が少し離れた席に座る父親へ伸びあがっては手を振っている。
慎一は手元に準備した旅行のコースや地図を再確認しているといつの間にか眠っていた。
席の傾きの変化と女満別空港に到着の機内アナウンスが聞こえてきて目を覚ます。
子供達の席を見ると二人とも眠っているのか静かだった。
女満別空港に着いて、空港から出て予約しているレンタカー会社へと向かう。
自家用車と同じタイプの車にしてチャイルドシートを二つ用意してもらっている。

 今日のコースは、
オンネトー湖と阿寒湖の観光をしてニュー阿寒ホテルで泊まる予定である。
女満別空港から美幌バイパス、そして美幌ICから北見国道を進み美幌町へ入り、
美幌町国保病院を越えて次の大きな交差点手前を美幌駅方向へ右折し、
駅前にあるロータリーに車を停めて、
駅前にある「映画 君の名は」の石碑の前で写真を撮って貰う。
すぐさまロータリーを回って元の北見国道方向へ走り、
途中の美幌駅前郵便局で左折し、突き当たりを左折し予定通り釧北国道へ入る。
後はこの釧北国道を南下し津別町を進み途中にある「道の駅あいおい」へ向かう。

 さて最初の休憩地、木の香ただよう山のオアシス「道の駅あいおい」である。
この道の駅は釧路と網走を結ぶ産業観光の大動脈、国道240号沿いにあり
道産そば粉を使った手打ちソバや、地元産大豆を使った手造り豆腐をはじめ地元農産物、木工クラフト製品等を販売する物産館、旧国鉄北見相生駅を利用した展示館やカフェ、客車を改造した宿泊可能な展示車両など、さまざまな興味深い施設があり、絶好の休憩ポイントである。

 駐車場に車を停めた途端に秋風に揺れる「クマヤキ」の幟が最初に目に入る。
道の駅「あいおい」の代名詞ともいえるお菓子の「相生名物元祖クマヤキ」。
名前のいかつい印象とは裏腹に、ほっこりするデザインが人気を集めるお菓子で、その味のある風貌は、地元イラストレーターで造形作家の大西重成さんが考案したものらしい。 焼きあげられたクマヤキは全て手作業で”耳“をカットしてから客に渡しているため、微妙に一つずつ表情が異なるところがあって可愛いと評判である。

クマヤキの大きさは手の平くらいでお腹が丸く可愛いフォルムとその表情が特徴的だった。
特に生地のフワフワ感と優しい甘みは疲れを取るには最適だった。
クマヤキの種類としては、4種類あって、
クマヤキ:津別産のホクホクの小豆を使用した自家製のつぶあんを生地で包む。
ナマクマ:自家製のつぶあんと濃厚生クリームを生地で包む。
ヒグマ:濃い豆乳クリームを生地で包む。普通のカスタードよりさっぱりなのにコクが感じられる逸品。
シロクマ:たっぷりの自家製粒あんタピオカ粉で作った真っ白でモチモチの弾力の生地で包む。
秋限定クマヤキ:旬の甘いかぼちゃを使ったクリームをフワフワ生地で包む。
これらがちょうど5種類だったので1個ずつ買ってベンチに座ってみんなでシェアをして食べる。
夏姫は、「白熊さん可愛い」と言ってじっと熊の表情を見ている。
雄樹は、「熊さん、ガオー」と言って一気に顔から被り付いている。
どのクマヤキも名物だけあって噂通り美味しくて小腹の空いた慎一達にはちょうど良かった。

ふと駅舎風のカフェ「くるみの森」が目に入った。
ここはネットにも紹介されている様に旧国鉄北見相生駅時代の時刻表や料金表などがそのままの旧駅舎を活用したカフェで自家焙煎コーヒーや焼き菓子がメニューにあった。
その隣には相生鉄道公園があって、旧国鉄時代の北見相生駅の駅舎の資料室や当時走っていた列車が置かれており当時の面影を再現されている。
雄樹は置かれている列車に興味津々で母親と手を繋ぎながらその周りを歩いている。
夏姫はいつもの様に美波に抱っこされながら駅舎の中を歩いている。

 実はここら辺りには他にも以下のような観光場所もあり宿泊して楽しむことも可能である。
「チミケップ湖」
原生林の奥地に潜む幻想的な湖、澄んだ湖面の周囲約12kmは野生生物が生息している天然樹に囲まれた神秘的な秘境がある。
「シゲチャンランド」
造形作家として活躍する大西重成さんが開設した私設ミュージアムで、道の駅「あいおい」から阿寒湖方面に向かって約1kmの雑木林の中にある。
「木材工芸館」
木のまち「つべつ」のシンボル館で、館内には樹齢数百年の巨木による森が再現され、動植物や、木材の資料が展示されている。併設されている木工体験工房では、自分だけの一品を製作可能。
「ランプの宿 森つべつ」
森に囲まれた物静かな環境の中で、ゆったり過ごすことのできるホテル。満天の星を眺めることのできる天然温泉の露天風呂で泉質は単純アルカリ泉。 
「津別峠展望台」
この峠は標高947mで阿寒摩周国立公園の人気観光地である屈斜路湖の北西、サマッカリヌプリ(標高974.4m)とコトニヌプリ(標高964m)の間に位置し、屈斜路湖畔西部国道243号屈斜路交差点から津別市街を結ぶ北海道道588号屈斜路津別線が津別峠を通る。
ここは美幌峠や小清水峠よりも標高が高いため雲が掛かりやすく雲海の広がる名所としても知られ、天気が良ければ眼下に屈斜路湖雌阿寒岳雄阿寒岳などの阿寒の山々の稜線やオホーツク海まで一望することができる。またここら一帯にはキタキツネやエゾリスなどの野生動物もよく出没する。

 道の駅で休憩後再び南下し、まりも国道を進み、次の交差点で右折し、
241号線阿寒横断道路・足寄国道と進み足寄町方向へひたすら一本道を走る。
この足寄町は、ご存知でない方は居られないとは思いますが、
「果てしーない おー空と広い大地の・・・」
の歌で有名な国民的大歌手の松山千春氏の生まれた町である。
その昔、新婚旅行で北海道を旅した同僚に聞いたところによると
彼の生家がそのまま観光名所にもなっており、
家の屋根の上に彼の似顔絵が描かれた大きな看板が備え付けられていたらしい。
そんなことを思い出しながら、窓から見える景色、
遠くの山並みは、既に紅葉し始めており初秋の旅行を強く意識させている。
空港を出て2時間くらいすると『オンネトー』の看板が出てくる。

 このオンネトー湖は、“北海道3大秘湖”の一つである。
この“北海道3大秘湖”に関しては、この小説の20話でも説明はしていますが再掲します。
北海道三大秘湖とは、「阿寒カルデラオンネトー」「東大雪の東雲湖(しののめこ)」、「支笏カルデラのオコタンペ湖」と言われています。
ただ最近は、北海道三大秘湖のうちオンネトー・オコタンペ湖は、アクセス路が整備され、秘境と呼ぶにはあまりにインパクトに欠けるという理由から、この2湖に代わり「チミケップ湖」「シュンクシタカラ湖」を含めた新北海道三大秘湖が提唱されるようになっている。ただしこの新北海道三大秘湖の定義ははっきりしていないため、人によっては「|豊似湖《とよにこ》」を含める場合もあるいう。

オンネトー湖のネット情報>
所在地は、北海道足寄郡足寄町茂足寄原野国有林内
名前の由来は、アイヌの言葉で「年老いた沼」「大きな沼」を意味する「オンネトー」。
出来た時期は、約2000年前。
規模としては、周囲2.5km、最大水深9.8mの湖。
成因としては、阿寒富士の爆発によって螺湾川が堰き止められて誕生した。
景観としては、湖の周辺の見事なアカエゾマツ、トドマツに広葉樹を混ぜた原始性の高い針広混淆林で、
エメラルドグリーンに輝く湖面に、周囲の緑、雌阿寒岳、阿寒富士を映す絶景の湖で怖いほどに神秘的である。湖底から天然ガスや酸性の温泉が湧出しているため生物が繁殖せず、沈んだ木にも苔や水草も付かず、昔に沈んだ当初の色合いのまま神秘的な湖底の様子が見える。

 いよいよ三大秘湖最後の「オンネトー湖」に着いた。
湖の畔に作られた駐車エリアに車を停めて家族で湖へ近づいていく。
湖畔西側にある展望デッキをゆっくりと登っていく。
やがて目に入って来た湖はまったく風も吹いておらず、
秋の冷たさを含んだ空気だけが肌を包んでいる。
湖面には秋の陽に照らされた阿寒富士と呼ばれる雌阿寒岳が正面に逆さに映っている。
覗き込んで見たその湖の水は秋の空の色を写してるかの様に透明で神秘なまでに蒼く、
湖の深い場所は濃いエメラルドグリーンに染まっている。
湖底に沈んでいる樹木は、沈んだ当時のままの色合いで所々に苔が生えている。
ネット情報にある様に、もし湖底から天然ガスや酸性の温泉が湧出していたら
それらしき匂いがあるのかと考えていたが何も匂いは感じられなかった。
ここは「五色沼」と呼ばれ、季節や天候や見る角度により
現在見えているエメラルドグリーンやダークブルーなどその色合いを変えると言われている。
ちょうど家族以外誰も居ないため、子供達の走る笑い声が湖面へ響いている。
この湖が2000年前からこの場所で息づいていたと考えると北海道の大地の深さにも驚かされた。
さすがに秘湖だけあってこの一帯に店らしきものも何も無かったため、
ある程度家族の写真やビデオを撮ったら車へと戻り阿寒湖に向かった。
我が家としては美波が近くまで行った上士幌町にある然別湖隣の東雲湖を含めて
とりあえず「北海道3大秘湖」近傍への接近は達成したことになる。
子供達が小さいことを考えるとこれが最大限だろうと考えている。
ここら辺りの観光スポットとして、
オンネトー湯の滝」「オンネトー展望台」「山の宿 野中温泉」「雌阿寒オンネトー自然休養林」
などたくさんの北海道の原生林の息吹が感じられる場所だった。

 今夜の宿泊場所の阿寒湖へと向かうために車に乗り込む。
夜までまだまだ時間あるので阿寒湖周辺で色々と観光の予定だった。
オンネトー湖から足寄国道へ戻り右折して阿寒湖方面へ向かう。
途中に「白藤の滝」の看板が出て来たので林道へ入り駐車場へ向かう。
駐車場から急な斜面を下りて行くと川が見えてくる。
肌を吹き渡る風に秋の気配がより深く感じられる。
流れる水を良く見ると色が茶色く濁っていて微かに硫黄の香りがする。
そこから少し上流に行くと轟音とともに勢い良く流れ落ちる滝が目に入った。
名前の由来通り真っ白い藤の花のように垂れ下がる柔らかい水流が印象的だった。
「白藤の滝」を見て駐車場を出て元の林道を走り左折する。
まりも国道に突き当たると右折してそのまま道なりに走ると阿寒湖の湖面が目に入って来る。