はっちゃんZのブログ小説

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13.シシトー神教団と令和獅子党の躍進(第8章:占い死)

徐々に『シシトー神の館』の噂が一般人の口の端に上り始め
最初は興味本位の人も多かったが、一度面会して占って貰うと感激し、
それがSNSなどに囁かれ始めると深い悩みを持つ多くの人々から、
『もっとシシトー神の館を増やして欲しい』との願いが多く寄せられた。
その願いを受けて『シシトー神の館』側としては、
何とか深い悩みに身を焦がしている人たちを救うべく、
元々置かれていた『シシトー神教団』と同じ場所へ小部屋で『シシトー神の館』を開店した。
場所は東京を本館として、札幌、仙台、名古屋、大阪、神戸、広島、福岡に開かれた。
その場所には『シシトー神教団』と『令和獅子党』の本部や支部が置かれている。

ここで問題は、神様のご神託を聴ける姫巫女は一人しかいないため、
各館へ毎日の様に姫巫女を移動させるのは無理があった。
そこで全国の多くの悩みを聞くために、占い方式を『リモート』とすることになった。
予約順に全国各地の『シシトー神の館』にある占い部屋のリモート画面で
天座に座り踊る姫巫女と向き合い悩みを相談し解決していった。
人間と思えないほどの長い時間、
人の幸せのために占いをしていく姫巫女。
その神懸かりとも思える行動に感銘を受け、それがSNSへ配信される。
そのたびに『シシトー神の館』への予約は急激に増えて、
占いを終わるたびに『シシトー神教団』へ入信する人が増えていく。

最初、渋谷駅前に『シシトー神の館』に開いた当初は、
若い人が中心で関東圏からの客だけだったものが、
今となってはいつの間にか口コミで全国へ広がり始め
多くに人から館を増やす要望が増え続け、
それに応えるとなおさら予約は増える一方だった。
そんな中でも、
姫巫女は寝る間も惜しんで精力的な占いにて全国の人々の悩みに向き合った。
その真摯な姿勢に占い客も感激し更に教団信者は増えていく。

クモ助と天丸から情報では、
占いのリモートの装置に関しては、
IT企業でプログラマーをしていた事務長の鷲が作成したもので、
鈴女以外が話す声も鈴女の声に変えられ、踊りも何種類もあり、
表情も数パターンあって姫巫女の顔は差し替えられたものだった。
非常に細かい画像処理をしているため普通は気がつかなかった。
このことを知っているのは、宍戸家の兄弟だけである。

実はリモート占いを実質的に実施しているのは鷹だった。
館が出来てずっと現在まで鷹が占い客本人の個人情報を読み取り、
それを文書として姫巫女の鈴女に伝え、
鈴女の口から神託としてまたは占い結果として客へ進むべき方向を伝えた。
すると占い客は、誰も知らない自分の秘密を語られ驚き、
自らが内心望む方向を指し示して貰ったおかげで物事をスムーズに進めることができた。
鷹はなぜかリモート画面の映る人物の悩みや個人情報でさえも知ることが出来た。
その理由がわからなかったが、彼の行動からある程度読み取れた。
それは鷹が定期的に政党支部を回る時にシシトー神の館の占い部屋を訪れ、
必ず占い客や支部長の部屋の壁に描かれているシシトー神の象徴『北極星』へ、
祈りながら両手でそっと大切に長い間触っていることから、
もしかしたらその時にあの黒い影の粒子を宿らせているのかもしれないと考えた。
こういう霊力の道は、何らかの方法で最初に一度強い霊力で通じさせると
その後はどんな遠距離であってもどんな場所からでも作用させることができた。
鷹の身体から伸びる霊力の道が、常に繋がっている状態となっている。
その霊力の道の原因となるものは、あの黒い物質であり、
支部が非常に地脈の濃い場所に立っていることから
それを動かすためのエネルギーとなるものは、地脈ではないかと遼真は推察した。

じわじわと勢力を伸ばした『令和獅子党』は、
とうとう衆院参院選共に3名ずつ当選者を出し政党要件を満たした。
特にこの政党の候補者全員が女性で、年齢も政治家の中では若かった。
日本は先進国の中でも女性議員の数が少なく批判されていたことも時流に乗れた。
その上、彼女たちは元アイドル歌手や元モデルばかりで見映えも良く、
元々の知名度もあるが、それ以上に彼女たちは、
政治や経済について大学や大学院へ再び入り直し高学歴となり、
学問の裏付けを持って立候補したため非常に人気が出た。

ここで政党要件の説明だが、
政党として認めるための条件で以下がある。
(1)現職の国会議員が5人以上所属している、
(2)前回の衆議院議員総選挙か、前回か前々回の参議院議員通常選挙のいずれかで、得票率が全国(選挙区か比例代表のいずれか)で2%以上ある、のいずれかを満たす必要がある。
そして政党になれば、以下4要件が可能となる。
(1)政党交付金の交付対象となる。
(2)政治献金は、企業や団体から政治献金を最大年間1億円受け取ることが可能、個人献金の受取上限額を年間2000万円まで可能となる。
(3)衆院選公認候補は政見放送を利用でき、参院選公認候補は、スタジオ録画や持ち込みビデオも可能。その他にビラ(11万枚)や政党パンフレットを無制限に配付でき選挙カーの台数も増やすことができた。
(4)政党は衆院選小選挙区の候補者を比例代表でも重複立候補させることができる。

『令和獅子党』には、“十の約束”というものがある。
これは政党としてのマニュフェストである。
一.日本の国土を守る
  首都移転。地震など災害から国土を守る。外国勢力による侵略から国土を守る。
  日本国軍の創設。防衛装備の拡充。有事及び離島へのロボット兵及びAI兵器の配備。
  離島国営化及び保全整備による消滅回避。専守防衛から先鋭的専守防衛への転換。
二.日本人の命を守る
  防衛力の強化。官民一体となった防衛技術の開発及び輸出の推進。
  災害に強い街の構築推進。スパイ防止法制定。国会議員の国籍公開。
  外事警察及び国内警察力の強化。AIによる悪意のSNSへの監視。
  裁判及び法律の凡例主義からの脱却。外国人犯罪者の国籍と氏名の公表。
三.日本人の社会生活を守る
  センターシティ構想の実現。消費税減税。企業の内部留保及び宗教法人への課税。
  国内企業の海外資産への課税。高校までの授業料や学校給食の無償化。
  少子化の脱却。在日外国人への日本生活への教育指導。凶悪犯罪への厳罰化。
  社会のシステム維持に必要な犯罪者の位置情報監視による管理。
四.日本人の心を育て守る
  宗教庁の新設。日本人として誇りの持てる国史教育の確立。
  LGBTQ?など多様性社会の推奨。国民全員参加での宗教による人権侵害の防止。
  ロボット及びAIによるケアへの対応。虐めへの公的通報制度設置。
  家庭内・職場内・社会的ハラスメントの厳罰化。ハラスメント監視員の設置。
五.日本人の健康を増進し守る
  未成年及び高齢者医療の無償化。先進医療の開発。違法薬剤犯罪の厳格化。
  科学技術の発展により食料自給率超50%の達成。生活保護等貧困家庭への現物支給。
  在日外国人及び法人への医療制度運用の見直し及び厳格化と期間別保険料の徴収。
六.日本人の教育を育成し守る
  高校生まで公立校の教育費無償化。学校教師資格の定期的査定による厳格化。
  学校教師への生徒からの投票制度の導入による教育環境の改革。
  国費による科学技術発展のための人材育成。自由民主主義思想の徹底。
  高校卒業までのSNS禁止。近隣諸国条項の廃止。日本国史へ神話時代の復活。
  外国語翻訳機又は統一アプリの無償配布。国費による海外留学制度の推進。
七.日本の資源を開発し守り活用する
  日本の国土及びその周辺に眠る天然資源の開発と活用。エネルギー問題の解決。
  低炭素社会用技術開発の推進。核融合発電の推進。
八.日本の経済を大きくし国民の利益を守る
  日本政府の特別会計及び一般会計の一本化。国民への投資の推奨。
  財務省の解体(再出庁と歳入庁に分解)。科学技術の発展へ注力。
  公営以外のギャンブルの禁止。国際的知的財産権保護推進。
  国民全員参加による労働市場の拡充及び国力にあった賃金上昇。
九.日本の空を守る
  宇宙空間デブリの回収と再使用。商用衛星の防御。攻撃型衛星の打ち上げ。
  近隣外国勢力からの気球及び人工衛星によるスパイ行動及び攻撃からの防御。
十.マイナンバー制度の拡充
  個人の戸籍・健康情報・免許証・資産等の一括管理による税金の明瞭化。
  量子AIによる全ての国民個人情報の管理。
  スマホ等使用機器とマイナンバーの連動登録による違法行為の阻止。
これら“十の約束”の大きな表題は、令和獅子党の立ち上げの時に
黒い十房の鬣を持つ獅子の顔の絵柄を党旗とした理由と共に説明されている。
このたびの選挙で令和獅子党は、国民から政党として認められ、
今度の選挙以降は比例区での立候補も可能となった。
つまり姫巫女であろうが鷹であろうが、
立候補が可能になり当選も可能になったのだった。

宍戸 鷹は定期的に政党支部や支店へ顔を出しているが、
支部長から毎日の様に相談と称する鷹への面談希望が多かった。
10支部支部長は、現在の国会議員が6名、次期選挙立候補予定者が4名で
徐々にたくさんの優秀で真面目な人材が集まってきている。
政治に変な野望を持った人間や邪な考えを持った人間が入って来ても
すぐに身体を壊していつの間にか辞めて行っている。
シシトー教団信者である彼女たちは、
最初は不幸な逃れられない事情に迷いそして傷つき、
深い悩みを持ちながら『シシトー神の館』を訪れた。
その結果、現在己に降りかかっている不幸は無くなり
彼女たちの悩みは解消され前向きに自らの道を見つけ、
辛い過去にあったことを忘れたかのように明るく歩み始めている。
彼女たちは、教団の教え通り可能な限り北天に座する極星である“北極星”へ深く祈る。
現在問題となっている寄進についてだが、
教団からはシシトー神へ祈ることを勧められるだけで寄進に関する話は一切出ない。
ただ信者たちは自ら進んでシシトー神へ感謝を捧げそのお礼として
本人が決めた現在の生活を壊さない程度の無理をしない寄進をするだけだった。
その寄進を受ける場所も、教団内の祈りを捧げる部屋の隅にポツンと
シシトー神の象徴が彫られたポストの様な大きな金属の箱が置かれているだけで
寄進を入れる箱の傍には誰もついておらず、寄進したことは神様しかわからなかった。

彼女たちを深い絶望の淵から救ってくれたのはシシトー神様であること、
シシトー神様のご神託を姫巫女がお伝え頂いていることは理解しながらも、
彼女たちの深く傷ついて立ち直った自らの心が、理由はわからないながら、
本能的にシシトー神様と共に鷹の存在を感じている様だった。
シシトー神の神託を届ける姫巫女の鈴女としても、
神の巫女である自分よりも兄の鷹へ注目が集まり、
支部長から多くの面談の依頼のあることを悪くは思っていない様だった。

彼女たちと鷹との会話からわかったことは、
今まで彼女たちに纏わり付き、
彼女たちの心を地獄の底に叩き込んできた
少年法で守られた虐めを行う殺人者、
恫喝の暴力ヤクザ、
DVでギャンブル狂のヒモ男、
セクハラ変態プロデューサー、
外国人へ売春斡旋する社長などの最低で糞な男達は、
シシトー神の神託通り、
抗争による死亡や交通事故や突然死や急性の血管疾患による入院など
彼女たちを苦しめる者は次々と彼女たちの目の前から消えて行った。
その後の継続的な彼女たちへの鷹からの様々な導きや応援が、
傷ついた彼女たちの心を癒し、
彼女たちの見たことも無かった将来の夢を見せた。
それらは彼女たちに自信を持たせ、この国の政治や経済などの現状を憂い、
そして自ら変えようと決意させ、最後には国政選挙へ打って出る勇気を持たせた。
彼女たちは今後の事でわからないこと、
不安なことがあれば全て代表の鷹へ相談した。
鷹がいつ寝ているのかわからないが、
24時間いつでも彼女たちの相談に乗ることができた。
不安で塗りつぶされた彼女たちの瞳が鷹の笑顔を見ると和らぎ落ちつき始める。

ある代議士からの肉体関係への誘いがしつこくて断っても諦めない事案があった。
最後には逆切れしてヤクザを使うと脅しが掛かってくる事態となり
警察にそのことで相談しても、
警察からはその代議士と仲が良いのかやんわりと断られ、
その代議士の意向に沿う様な力を感じたので鷹に相談してみると
シシトー神様からのご神託で『心配しなくていい』と言われたと告げられる。
しばらくすると、ご神託の通り、
その代議士は高速道路を移動中に大事故を起こし重傷を負い政界を引退した。
事故の原因は、運転手がまだ若いにも関わらず突然脳卒中を起こしたことだった。
また別の事案では、
過去に撮影したグラビアから変な中傷記事を出すぞと脅されたとのことだったが、
なぜかその記者はその翌日に急に行方不明になり現在も見つかっていない。
このように彼女たちの政治家として不利なスキャンダルは事前に全て消えて行った。
彼女たちはシシトー神様に自らが選ばれ守られていることを意識している。

遼真はこれらの情報を知るにつれて、
彼女たちからは辛い過去の記憶に痛みが全く感じられないことに疑問を抱いた。
人間は辛い過去があればその痛みを時折思い出すことが普通なのである。
母親の鶴は、夫の位牌へ毎日の様に声を掛けているが、
長い間、夫から自分や子供達が家庭内暴力を受けていたことが、
全く記憶から無くなっているのか、夢の中の出来事の様に認識されている。
この傾向は、他の信者も同様であった。
暴走族から酷い暴行を受けた姫巫女の鈴女にしても時折悪夢にうなされてはいるが、
お守りをじっと握っているとすぐに幸せそうな顔つきに変わっている。