はっちゃんZのブログ小説

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12.霊査5(怪死の現場)(第8章:占い死)

翌日、宮尾警部へ連絡して過去の怪死のあった現場への立ち入りを相談した。
先ずは野党最大政党である博愛民主党の武藤政調会長
愛人の銀座のママの上で腹上死した都内のあるホテルの一室へ向かった。
ホテルも警察の要請ならば断わることは出来なかった。
もう警察の現場検証のテープは無くなっているが、部屋はまだ使われていなかった。
死体の出た部屋なのでホテルとしてもすぐに客を案内することは出来ない様だった。
宮尾警部と小橋刑事と3人で部屋へ入る。
立派な備品の備え付けられた特別室で大きなベッドがあった。
遼真は、霊獣キインを胸ポケットに入れて
大きなダブルベッドへ座り、掌をシーツに這わせる。

遼真の脳裏にテレビでよく見る武藤の脂ぎった顔が現れた。
お酒をだいぶ飲んでいるのか既に足元がふらついている。
「ムーさん、危ないわよ。今日は飲みすぎじゃない?」
「だいじょーぶだー。あ〇ーん」
「まあムーさん得意のモノマネね。今日は良い事があったのね」
「そう、今日は良い日だぞ」
「そろそろ代表選だし、もしかして・・・」
「そうだ。さすがママだな。今度代表選に出る事が決まった。
 各派閥の主だった者に聞いたら俺で決まりらしい」
「さすが”現在の水戸黄門様”だわ。良かったわね」
「ははは、この印籠が目に入らぬか」
「もう、それは印籠じゃないでしょ?医学的には陰嚢よ。
 ふふふ、わかったから、そんな可愛い物を押し付けないの。
 今夜はゆっくりできるでしょ?焦らないの。
 夜はまだまだ長いんだからね」
「せっかくお前に知らせようと真っ先に電話したのに」
「わかったわよ。じゃあ一緒にお風呂に入りましょ」
しばらくして二人は、
バスルームから出て来てベッドへ流れ込む。
「ママー、いつものお願い」
「はいはい、わかりましたでちゅよ。
 力ちゃんはいつまでも赤ちゃんでちゅね」
「あい、ぼちゅは赤ちゃんでしゅ。ママおっぱい」
「はいはい、大きな赤ちゃん、たっぷり飲んでね」
強面の武藤がママの豊満な乳房を赤ちゃんの恰好をして吸っている。
「ママ、おしっこしちゃったよ」
「はいはい、さあオムツを替えましょうね。
 あらあらこんなに元気になっちゃって可愛いわ」
もう70歳である武藤は、モノを硬く大きくさせている。
「ふふふ、もう可愛いから食べたくなっちゃう」
「あーん、ママ、気持ちいいよー。もう我慢できないよ」
「わかったわ、力ちゃんおいで」
「はーい、ここからは成長した俺を見せてやるぜ。ダッ〇ンダ」
「はいはい、優しくしてね。
 うっ・・・ああ・・・素敵・・・とても気持ちいいわ」
「・・・・・・・・・」
「???
力ちゃんどうしたの?
全然動かさないけどどうしたの?
すごく重いわ。
ねえ重くて息がしにくいからどいてくれない?」
「・・・・・・・・・」
「えっ?・・・
 キャー、ムーさんどうしたの?目を開けて」
武藤は、局部を屹立させたまま青黒い顔色でベッドへ倒れている。
その後、ママが秘書へ電話連絡をして急いで部屋から出て行った。
それからしばらくして秘書たちが部屋へ来て荷物を片付けていく。
武藤の死体を革製の袋に入れて車へと担いで行く。
しかし、運の悪い事に普段から武藤を追っていた雑誌記者が、
銀座のママとの浮気現場の特ダネをニュースにしようと待っていた。

その時、遼真はそのシーンを見つめている存在を感じた。

どうやらその存在の視線は向かいのホテルからのようだ。
その視線方向へズームアップさせていくと向かいのホテルの7階の角部屋だった。
宮尾警部にそのことを伝えて、
武藤議員が死んだ当日に向かいのホテルの該当する部屋を借りた人間を調べて貰った。
客の名前は『渋谷区 進藤 孝雄』と記載されていた。
監視カメラ映像でその男を調べるも
深く帽子を被りマスクをしてサングラスを掛けていたため人相はわからなかった。
戸籍を調べるもその氏名の人間は存在しなかった。

次に3年前に馬場元総理を殺したテロリスト出口が亡くなった留置場の部屋へ入る。
出口が死んでいた粗末なベッドに掌を這わせる。
遼真の脳裏にテロリスト出口の顔が浮かんでくる。
出口はニヤニヤしながら
「俺はとうとうやったぞ。俺の心の仇を討ったんだ。
 馬場の驚いた顔を思い出したら笑いが止まらない。
 今まで俺を貧乏だとか馬鹿だとか言ってた
 街や同級生の奴らもきっと俺のことを見なおすだろう。
 俺はお前たちのために、この社会のために馬場を殺したんだからな」
留置場の窓から夜空を見ている。
今夜は新月のせいか星明かりがいつもより強く感じる。

出口は気持ち良く窓から入る涼しい風に目を細めている。
じっと夜空を見つめていた出口が突然苦しみだす。
「ぐっ・・・くる・・・しい」
と両手が心臓の辺りで強く握られて倒れていく。
その苦しみに歪んだ目は、星の瞬きを見ていた。
出口の視線の先には北極星が輝いていた。

遼真は再び何かの視線を感じた。
霊獣キインの目に映る出口の死んだ顔から黒い影の様な粒子が湧き出てくる。
その粒子は、開けられた窓から近くに停められた車へと流れていく。
遼真の視線がズームアップされて車へと向かう。
そのウィンドウからじっと留置場を見つめている男が見え始めた。
その男は「宍戸 鷹」だった。
星の光の当たる窓から出した鷹の掌へ黒い粒子は吸い込まれていく。

出口へその黒い粒子を乗り移らせた者は、
東アジア平和会の別室で見えた映像
『イン』氏と呼ばれる男がその手から赤黒い液体状の物を出口の頭へと落とした場面を思い出した。
ここでやっと東アジア平和会で出入りしていた『イン氏』は、
シシトー神教団責任者の『宍戸 鷹』であることが判明した。
ちなみに『イン』と言う字を調べると中国語で『鷹』の字の発音だった。

遼真は鷹の身体に宿った力が、
他者の命を絶てる可能性があること
他者を操る可能性があることを知った。
今回の敵は非常に危険だった。
何か対策していないとそのまま殺されてしまう可能性が高かった。
道理で一族が依頼した探偵などが何人も死亡している筈だった。

最後は、東アジア平和会のメンバーの行方であるが、
教団秘書からの情報を元に新宿にあるGD芸能オフィスを訪れた。
宮尾警部が東アジア平和会の在日外国人の写真を見せると
彼らは何年か前に本国へ帰って、
帰国後すぐに会社を辞めたのだとの返事だった。
遼真達は事務所内を色々と見て確認したが、
ただ社長のデスクの前にある応接セットからは、
当時恫喝されていた数人のヤクザ者らしき姿は確認できた。
その原因は所属タレントが組長の娘を抱いて捨てて外国へ逃げたらしい。
組長はそれを恨み、巨額の慰謝料と利子代わりに当時副社長だった
元アイドルの木村千種氏を抱かせろと言ってきたようだ。
脅されている社長は彼女へ
『ほんの一晩だけだから』
『このままでは会社が潰される』
『君はあのタレントのマネージャであり副社長だから責任がある』
と必死で説得しているが、
当然ながら彼女は決して首を縦に振ることはなかった。
いくらサイコメトリーしても彼らに繋がる物は見えなかった。
ふとこのビルを訪れた時に目に留まった、
駐車場に停められていたGD芸能オフィス専用マイクロバスを見せて貰う。

オフィスの事務員が怪訝な顔でマイクロバスの扉を開ける。
時間を3年前頃に遡らせて最後部席を触れた時に、
果たして、
遼真の脳裏に東アジア平和会のメンバーの顔が映り始めた。
彼らは東京湾の埠頭にある倉庫へ向かうようだ。
「飛行機で帰るんじゃないの?」
「もしかして帰るのは船なのか?」
「まあ、警察に目を付けられて奴もいるから仕方無いか・・・」
「帰る準備ができるまでここで待つんだって」
「もう着いたからまあ待とうや」

遼真達3人は、東アジア平和会のメンバーの居た東京湾の埠頭の倉庫へと向かう。
その倉庫は現在では誰も使って居らず、管理会社から鍵を貰って倉庫内へ入った。
以前借りていた会社は『GD芸能オフィス』だった。
その倉庫内は何もないガランとした空間だけがある。
倉庫内のモノをサイコメトリーしようにもするものが無かった。
床の大きな四角の跡を見つけたため、管理会社に何が置かれていたのか聞くと
大きな冷凍倉庫とクルーザーだったらしい。
クルーザーは現在港のマリーナ内の艇庫に置かれているらしい。
艇庫に置かれているクルーザーの元へ向かう。
そこでクルーザーをサイコメトリーをして
やっと東アジア平和会メンバーの行方がわかった。

遼真の脳裏へあるシーンが浮かんでくる。
その夜は新月で雲も無く星空には北極星や北斗七星が瞬いている。
場所は相模湾の真ん中でクルーザーを停泊させている。
甲板にブルーシートで包装された数個の四角い箱状の物のシートを破いている。
やがてシートが全て剥ぎ取られ、その中からは金網の箱が出て来た。
その大きな金網は各々鎖で繋がれている。
その金網は1辺5センチ程度の網目で四隅に重い錘を付けられている。
金網に彼ら東アジア平和会メンバー5人が詰め込められている。
彼らの顔色はどす黒く既にもう生きていないことがわかった。
全員が苦悶の表情で、胸に血で黒く変色した大きな穴が開いている。
どうやら心臓が抉られている様だった。
それらが大物用のクレーンで吊り下げられ海へ投げ入れられた。
彼らの死体は東京湾の深海へ沈み、深海魚の数年分の栄養源となった。
宮尾警部と小橋警部には、
『彼らはこのクルーザーで国外へ脱出したようです』と伝えた。
全てを知らせると宮尾警部や小橋刑事の命が危ないからだった。