はっちゃんZのブログ小説

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3.捜査1(シシトー教団)(第8章:占い死)

藤波幹事長が倒れた翌日に
京都の祖父より「シシトー教団」を内密に調査するよう指示があった。
ただし注意する点として、直接相手と会わない様にして調査せよとのことだった。
理由としては、今までの調査段階において、
直接相手に会った調査を依頼した探偵に不審な死が見られたとの情報で、
現在日本で蔓延する多くの死の一部に教団との関連を示唆するものがあったらしい。
遼真は先ずネット等で情報の収集を開始した。

〔教団〕
住所:東京都渋谷区渋谷駅前ビル3階
名称:シシトー教団
教主(姫巫女):宍戸 |鈴芽《すずめ》
教主秘書兼教団責任者:宍戸 |鷹《おう》
事務長:宍戸 鷲《しゅう》

〔政党本部〕
住所:東京都渋谷区渋谷駅前ビル2階
名称:令和獅子党
党首:木村千種
秘書:中野海里

〔宍戸家の場所〕
生まれた場所は兵庫県丹波篠山市
現在渋谷駅近くのタワーマンション最上階にて家族で住んでいる。

〔家族関係〕
父:宍戸《ししど》 隼《しゅん》 
20年前45歳で病死。
母:鶴 60歳 
  夫の死後、長男|鷹《おう》の進学に伴い家族全員で都内へ引越。
兄:鷹《おう》 38歳
  東京の国立大学を出て、証券会社へ就職するも退職後、投資で成功を収める。
弟:鷲《しゅう》 35歳
  電子情報系の大学を卒業後、IT会社へプログラマーとして就職する。
教団設立と共に退職し、シシトーの館の事務長として勤務。
妹:鈴芽《すずめ》33歳
  都内の女子大を卒業して怪奇系雑誌社の事務員をしていたが、突然神懸かりとなり、
  シシトー神の館の代表として28歳の時にデビューし現在へ至る。

遼真は先ず『シシトーの館』と『令和獅子党』の調査に着手した。
『シシトーの館』の捜査を開始する話を真美へするとすぐに
「夢花ちゃんと一緒に『シシトーの館』へ客のふりしてクモ助を置いて来ましょうか?」
と張り切って言ってきたが、
もし敵に何かを悟られ二人に危害を加えられても困るのでその方法は止めさせた。
当然、直接遼真が館や政党本部へ侵入するわけにも行かないので
いつもの様にテントウムシ型の天丸とクモ型のクモ助の昆虫型盗視盗聴器を使って、
『シシトーの館』や『令和獅子党』の部屋へ侵入させての調査することとなった。
ビル近くの有料駐車場へバトルカーを停めて、暗闇に紛れて迷彩ドローンを飛ばす。
夜のためか室内に電灯は付いているが窓は開けられていない。
その間にビル周りの監視装置をドローンで調べていく。
当然多くの監視カメラがあって侵入は不可能だった。
翌日昼過ぎになっても2階と3階の窓は開けられることなく
残念ながら天丸やクモ助をビル内へ侵入させることは出来なかった。
2階と3階のフロアの清掃は、固定された清掃員で実施されている。
だが、その清掃員は教団信者を雇用しており変装しての侵入も不可能だった。
遼真はビルの従業員出入り口を監視し、清掃員である信者の二人を調査し始めた。
彼女たちの行動パターンを見ていくと、
朝の出勤前にビル近くのカフェでモーニングを食べており、
カフェに入る時間も彼女たちの座る席も決まっていることが判明した。
出勤すると彼女たちは政党本部の奥の小部屋で作業服に着替えて、
午前中業務を終えるとその小部屋でお昼ご飯を食べて、
午後の業務が終了する15時になると作業服を着替えて帰宅していく。

翌朝、彼女たちの入る時間の少し前にそのカフェへ入り、
彼女たちの座るであろう隅の席の隣のソファへ座り、
フレンチトーストセットのモーニングを頼んで彼女たちを待った。
やがて時間が来てビルフロア清掃員の彼女たちが店へ入って来た。
そしていつものように遼真の席の隣の席へと歩いてきて座った。
60歳前後の二人は最近のドラマ内容や子供や孫の話をしている。
二人の話を聞いていると清掃員と言っても業務内容は結構楽で給料も高いようで、
二人とも楽しい毎日を送っているようだった。
やがて彼女たちは化粧室へポーチを持って入って行く。
彼女たちの今日のお昼弁当や水筒などが入ったカバンはソファへ置かれている。
遼真はパソコンを使いながらソファの下に待機させていたクモ助を
彼女たちの大きなカバンの中へ移動させカバンの底の方へ潜ませた。
綺麗に化粧した彼女たちはカバンを持ってお金を払って店を出て行く。
そこからは彼女たちは2階の政党本部の小部屋へ入り着替えて仕事へと入って行く。
財布などの貴重品の入った服はロッカーへと仕舞われるが、
お弁当や水筒が入ったカバンは、
彼女たちが途中休憩で部屋へ戻るため無造作にソファの上へ置かれている。
遼真はやっと潜入に成功しほっとした。部屋の電気が消されている。
急いでカバンからクモ助を脱出させるとすぐさまロッカーの後ろへ移動させた。
すぐに部屋の電気が点いて政党本部の事務員らしき女性数人が入って来る。

「おはよう、今日も木村党首は外回りで居ないわ。
 でも時々帰って来るから安心していないで注意してね。
 言われたら必ずすぐにするのよ。そうじゃないと機嫌悪いわよ」
「わかったよ。
 ねえ、それはそうと木村党首と鷹《おう》様の関係ってどうなってるの?」
「関係って、そりゃあ木村党首が首ったけなんじゃない?」
「そうなの?」
「私たちには威厳を持って話してくるけど、
 この前偶然秘書の中野さんにバーで会って、
 なぜか彼女だいぶ酔っ払てて、その時に聞いたところによると
 鷹《おう》様と二人きりだともう蕩けてるみたいになってるらしいよ」
「もしかしたら中野さんも|鷹《おう》様のこと・・・」
「たぶんね。彼女もきっと好きなんだと思うよ。
 だってあんなにカッコイイんだもん。私だってもしそうならと思うもの」
「そうよね?お金も一杯あるし逆玉だもんね。
 だけど鷹《おう》様はどうなの?」
「鷹《おう》様は、女性には今のところ手が回らないみたい。
 相変わらず毎日毎日、この教団と政党本部を大きくするのに必死でがんばっているわ」
「そうよね?いつ見ても素敵だわ。鷹《おう》様のお嫁さんになりたいな」
「まあ無理ね。鷹《おう》様には、最強のお目付け役がいるわ。
 もちろん木村党首じゃないわよ」
「えっ?木村党首じゃないの?」
「違うわよ。彼女は単に鷹《おう》様のファン。姫巫女様、鈴女様よ」
「だって兄妹でしょ?」
「そうだけど、強度のブラコンみたいよ」
「そうなの?変なの。
 まあでも姫巫女様の立場からすれば
 神様が夫みたいな感じだから誰とも結婚はできないもんね」
「そうね。仕方ないかも。
 そうそう昔、鷹《おう》様が鈴女様の心を救ったんだって。
 鈴女様が何かの時にそんな話をしていたらしいよ」
「もしかしたら鷹《おう》様も『神の御子』なのかも、
 あの素晴らしい頭脳に真面目で心優しい性格といい神々しいよね」
「そうね。そろそろ行くよ。
選挙期間中だから忙しくて党首の機嫌が悪かったら嫌だからね」
「大丈夫、今日も|鷹《おう》様が一緒なんでしょ?きっと機嫌良いわよ」
「・・・まあ、そうだったわね。本当に鷹《おう》さまさまだわ」
二人は目を閉じて柏手を打って笑いながら部屋から出て行った。

お昼休みに清掃員の二人が帰って来てお昼ご飯を食べ始めた。
「今日は慌ただしかったね」
「まあ選挙期間中だからね」
「そうだった。そうだった。また投票とかお願いされるんだろうね」
「まあ仕方ないんじゃない?私たちここで給料もらってるし」
「まあ私たちで2票くらいだけど少しは役立ててもらえるといいね」
「そうそう、木村さんが張り切ってるからねえ」
「まあ、教団代表を総理大臣にするのが目標らしいからすごいよね」
「そうそう、私たちの知ってる人が総理になるなんて嬉しいよね」
「でも木村さんも女を出してるね。あの表情を見れば一目でわかるよね」
「まああの教団責任者の宍戸さんに惚れちゃってるからねえ」
「必死で尽くしてる感じが伝わって来るね」
「良い男だから当然だよね。本当にあの人は私たちの願いもわかるものねえ」
「そうね。なぜか私たちの考えてる事がすぐにわかるみたい」
「不思議ね。まるで心を読まれてるみたいで少し怖い時もあるわ。
 でもあの人の10分の1でもうちの旦那にあればと思うわ」
「それはそうね。私も同じ意見。でも私たちの味方だしいいんじゃない?」
「そうよ。私たちは教団や政党へ協力してるから怖くはないわ」
「でも今、マスコミがうちの教団の話で色々な怪しい話をしてるよね?」
「ああ、呪いとかで人の命をどうだとかの話?馬鹿らしい。
 たまにテレビ番組でやってるけど都市伝説や陰謀論なんじゃないの?」
「そうね、そうね。都市伝説に陰謀論か・・・好きな人が多いからね」
「きっと選挙も近いから必死で邪魔してるってところなんじゃない?」
「若い人なんて逆に面白がって票を入れるんじゃないの?」
「普通の人間がそんな力を持ってる筈ないのに馬鹿みたい」
「うーん、もうそろそろ午後の仕事の時間だわ。あと少し頑張りましょう」
「そうね、あと少し。じゃあ行きましょう。よいしょっと」
「出たわね。その言葉が出たら年寄りだよ。よいしょっと」
二人は笑い合いながらソファから立ち上がると部屋を出て行った。
遼真はクモ助をドアの下側の隙間から慎重に外へ出して、
体色をカーペットと同色に変更して事務所へと進めた。
事務所内に設置されている多くの文書ロッカーの後ろへクモ助はその身を潜めた。