はっちゃんZのブログ小説

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49.翔、久々に実家へ帰る 2

「それならば良い。今日お前を呼んだのは他でもない。将来の事じゃ。

 お前はどのような職業に就くつもりだ?あと1年で社会人になるが」

「それを今、考えています。会社に入るのも性に合わないし、

 仮に入っても役には立たないと思うし、

 都倉警部から警察はどうだと言われていますが、

 警部には申し訳ないのですが警察に魅力は感じないのです」

「お前は正義感の強過ぎるところがあるのでそうかもしれんなあ。

 かといって頭領には早すぎて話にならないし」

「話にならない?そうなのですか?」

「お前は今まで何を感じていたかは知らないが、

 今のお前では一族を守れないし

 それ以上に一族の者から頭領として受け入れて貰えないぞ」

「やはりそうなのですね。薄々わかってはいましたが・・・

 お父様が生きていればお父様がなっていたのですよね?」

「いや、たらればを言うつもりはないが、

 仮に生きていても鬼派にはなれなかったと思う。

 格闘技術は同じ年齢を考えるとお前の方が明らかに上だ」

「血筋でもないし、技術だけでもない・・・頭領とは難しいものなのですね」

「当然じゃ、わしもまだまだ先代にはかなわない。人間一生修行じゃ。

 もちろん我ら一族も過去においては、

 血筋だけ技術だけで頭領になったこともあったが、

 その時は必ず一族の運命が暗転しておる」

「それほどの重責を爺様は負うているように見えませんでした」

「それが頭領じゃ。ただし頭領には正義が絶対に必要な条件じゃ」

「爺様ってやはりすごかったのですね・・・私では駄目かもしれません」

「駄目だからと言って修行を止めるお前ではなかろう?」

「ええ、修行は一生続けます」

「ならそれでいい。

 頭領なぞならずとも一族に世の中に必要な人間になればいい。

 お前はお前の正義を貫けばいい」

「はい、今、気づきました。世の中の困った人を助ける仕事を考えます」

「それでいい、目一杯考えて見なさい。必ず道は見つかる」

 

「それはそうと館林百合さんだったか?お前好きなのか?」

「は?は・・・はい。とても好きです」

「お前も次期頭領候補の身、無責任なことはしていないな?」

「はい、それは気をつけています」

「ならばいい。でもキスくらいはしたのか?」

「えー?なんで・・・いや、そんなことはありません」

「隠さなくていい、いまどきキスくらいは何も大したことはない。

 婆さんからの話ではとても可愛いお嬢さんだそうだな」

「は、はい。笑顔を見ているだけで満足と言おうか・・・」

「今まで女には一切興味を示さなかったお前が

 好きになったお嬢さんなら大切にしろ」

「いいですか?このまま好きになっても」

「ただし、百合さんを泣かすことはまかりならん。

 どんな事があっても、たとえお前が死ぬようなことがあっても守れよ」

「???・・・はい、そのつもりでいますが」

「ならいい。今度は百合さんを連れておいで」

「えっ?爺様、よろしいのですか?桐生本家に連れてきて」

「もしかしたら次期頭領かもしれない

 お前の嫁になるかもしれないお嬢さんだぞ。

 わしもそのお嬢さんと一緒にご飯を食べたいじゃないか」

「爺様、ただ若い可愛い子とご飯食べたいだけじゃないのですか?」

「婆さんには内緒だぞ。これは約束だ」

「はいはい、わかりました。

 ちょうど彼女も来たがっていたので、今度連れてきます」

翔は、以前の婆さん同様爺さんの言葉にも腑に落ちないものを感じたが、

ただそのときは、百合との交際を認められて舞い上がって深くは考えなかった。

(つづく)