はっちゃんZのブログ小説

スマホの方は『PC版』『横』の方が読みやすいです。ブログトップから掲載されています作品のもくじの章の青文字をクリックすればそこへ飛びます。

65.怪しいクライアント

ここで時間軸は現在に戻る。

『お化けアパートの怪事件』を解決した翌日は、銀行強盗一味逮捕のニュースが

テレビや新聞を飾った。しかしニュースには翔の情報は一切入っていない。

ただ外道組の残党は、警察以外の何者かが

敵として絡んでいることを知ったはずで注意が必要だった。

 

そんな時、翔の店『オールジョブ』へ若い女性が訪れた。

毛皮のコートに派手な化粧で大きなサングラスをかけて

大きな口でタバコをプカプカ吹かしながら、コーヒーを飲んでいる。

事務所の中を無遠慮にジロジロと見回している。

翔も百合もアスカも中年の変装をしているので正体がばれる心配はない。

 

「本日はどのようなことでしょうか」

「うーん、あのさ、ここの人はあんただけなの?」

「はい、とりあえずは私一人ですが」

「うーん、馬鹿だから難しいことわかんないんだけど、

 今、ニュースになってる事件なんだけど知ってる?」

「は?はい、ニュースは見ていますが」

「そんなことでなくて、えーい、もうこの写真見てくれる?」

写真にはあの事件の時に変装した翔が写っている。

 

百合が近くで話を聞きながらアスカに目配せをする。

アスカがパソコンでクモ助を出動させて、

このクライアントの毛皮に潜らせてGPS付き聞き耳タマゴを埋め込んだ。

「この人を探してくれない?」

「この人と言われても、お名前とかわからないと探しようがないのですが」

「よくわかんないんだけど、とにかく探してよ。何でも屋でしょ?」

「いえ、そんな雲を掴むようなご依頼は責任がもてませんので、

 申し訳ありませんが、お断りさせていただきます」

「えー、困るよ、私が叱られちゃう、どこも断られてるんだ」

「いやあ、本当に申し訳ありません。写真だけでは無理です」

「もう、まいったなあ、あんたの知り合いで人探しの上手い人紹介してよ」

「申し訳ありません、他へご依頼ください」

女はイライラした仕草で吸い口に口紅のついたタバコを灰皿でギュッともみ消した。

そして折れ曲がった吸殻をコーヒーカップへ放り込んで事務所を出て行った。

(つづく)