はっちゃんZのブログ小説

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121.首都を防衛せよ8

同じ頃、自衛隊の官舎や部隊へ潜入していた一族より、

何とか家族全員の首飾りを爆発させることなく外すことができたと連絡があった。

反乱兵士の家族達も首のバンドの性能は知っており嘆いていた。

恒例になっている同郷の仲間のお誕生会が発端だった。

その会のゲームで全員バンドを着けた事が始まりだった。

主催者から突然に『夫にも着けないとみんな死ぬ事になる』と言われて

怖くなって家に帰った妻は夫へそれを伝え、夫もそれに従ったのが真相だった。

 

このバンドは破壊されると信号を発信し、

その信号を受けると爆発する構造であり、

破壊しても電波を受けなければ起動しないことがわかった。

信号が無くなれば起動することがないので

全員に一つの部屋に集まって貰い、妨害電波でジャミングしながら、

室内で電磁パルスを一斉に発生させ、全てを同時に一斉破壊した。

それにより他に電波は発信されることもなく無事破壊することができた。

このことは自衛隊の反乱軍にも伝えられた。

反乱軍の兵士はすぐに武器を捨て投降し、

官舎へ戻ると家族と涙を流しながら抱きあっている。

自衛官の夫は、もちろん望んで起こした行動ではないが捕縛され状況を聴取された。

 

政府官邸も戒厳令を発令し矢継ぎ早に対策を実施していたが、

自衛隊が動けないうちは警察だけに頼ることとなり遅々と進まなかった。

やがてやっと自衛隊が動けるようになったが、

自衛隊内では全ての機器の電源が落とされており復旧を目指すも簡単ではなかった。

イージス艦のイージスシステムも地上配備型イージスアショアシステムも

回路そのものを破壊されて復旧には時間がかかると現場より報告があった。

 

日本中の大きな街のあちこちでは、異様な光景が現れている。

市役所、駅や原発など公共機関付近では、

最初は少人数の集団だったものが徐々に大きくなって、

先頭に混じってヘルメットにマスクを付けた人間によって、

建物へ火炎瓶が投げられ、車を引っくり返して火をつけるような過激なデモに発展している。

 

一部の宗教団体も

「新しい世界は目の前です」

「この世の終わりが近づいている。悔い改めよ」

「今こそ光を見つめなさい。その身を委ねなさい」などの

プラカードを持ってぞろぞろと歩いている集団の前には

流れる音楽に合わせてその宗教独特のダンスの列が道路を進んでいく。

 

公共機関への過激なデモの集団は、

現在の日本に不満や恨みを持つ人達のようで

多くの一般市民を率いているのは、

若い時に学生運動をした活動家だった人間で

プロ市民として先頭に立って暴れている。

マスコミに人道主義者として絶賛されている男が、

『総理、死ね』『日本、潰れろ』と叫んで暴れている。

 

遅ればせながらやっと警察が国内暴動へ対応し始め、

暴動やデモを心配そうに遠巻きに見ていた一般市民も

暴動の主導する者が逮捕されていくと徐々に平静に戻っていった。

大声を上げたり、建物へ火炎瓶や石を投げていたヘルメットやマスクをしていた人間もいつの間にかデモ集団の中からいなくなっている。

そういう人間はどうも扇動する役割を与えられているような行動だった。

一時の喧騒が嘘だったかのようにデモをしていた人達も徐々に減っていった。

 

そんな時、官邸や自衛隊へ大型ミサイル発射の報がもたらされた。

官邸も自衛隊上層部も一瞬で凍りついたまま何も対応できなかった。

(つづく)