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はっちゃんZのブログ

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6.葉山館林邸1

 翔が超能力を発現した後に再度検査して比較データをとり今日は終わった。

研究所の地下道のエスカレータに乗り、葉山館林邸へ運ばれていく。

翔はと言えば、1年ぶりに顔を出すので緊張している。

ここ館林家の爺さんや婆さんは、

桐生家実家の爺さんや婆さんと同じくらいやばい人達なのだ。

執事の藤原さん(正真正銘の人間、アンドロイドではない)に案内されて、

一階の奥の部屋へ入った。

大きな和室で上座に、館林家頭首、つまり百合の爺さんの隆一郎翁と婆さんの悠香さんがにこやかに座っている。

「ただいま。お爺様、お婆様、しばらくお世話になります」

「おう、よく来たな。この前の事件解決は立派だったな。

 都倉君が感謝しておったぞ」

「あ、ありがとうございます。お陰様で無事解決することができました」

「何を硬くなっておる。何回も来ている屋敷じゃないか?

 リラックスじゃ、リラックス」

「はい、そうします」

「お爺様、お婆様、今日は兄の実験で、翔さんは大変疲れてるの、

 少しゆっくりとさせてあげたいの、いいでしょ?」

「おう、おう、確か、あやつは昨日夜から、

 やたら興奮しておったのう、婆さんや」

「そうだったねえ。

 あの子はほんに一生懸命になると回りが見えなくなるからねえ」

「まあ、どうせ、つまらないものを作るつもりじゃろうなあ。

 翔君、ここは知っての通り何もないところじゃが、ゆっくりとして行きなさい」

「はい、よろしくお願いします」

「では、お爺様、お婆様、翔さんをお部屋へ案内するね」

翔は用意された部屋に入って、カチンコチンになった身体をほぐした。

百合がすぐ入ってきて、

「翔さん、今日は疲れたでしょ?少し海岸を散歩しない?もうすぐ晩ご飯よ」

 

 翔と百合、二人が部屋から出て行った後、しみじみと二人が

「運命とは不思議なものじゃのう、あの時、切れたと思った縁が繋がっておる」

「そうですねえ。あの二人は許婚だったことを知らないものねえ」

「それにしても翔君の父君麒朗殿、母君沙耶殿の事故は痛ましいことじゃった。

 その折に切れたものと思っておったが、

 神様も粋なはからいをするものじゃなあ」

「そうですね。百合のあの光り輝く笑顔、

 あれは翔君が百合に与えたものですもの」

「しかし、あの時、百合と翔君はお互いの記憶を消したはずだが・・・」

「記憶は消えても、思いは残ります。きっとそれが二人を引き合わせたのですよ。

 でもあの二人なら、いつか消した記憶を元に戻すような気がします」

「そうなれば、われらは嫌われようなあ」

「あの二人ならきっとわかってくれますよ」

「それにしても、翔君のあの佇まい、桐生家麒一殿が相当に鍛えたものと見える。

 桐生家も元気のいい『小鬼』を育てたものよ。

 まだまだじゃが、徐々に完成されよう」

「そうですね。百合も今一度、

 鍛え直す必要があるかどうかをこのたび確かめます」

「翔君との手合わせは楽しみじゃ。今回はどれほど強くなっておるかのう」

「ふふふ、翔君が来ると聞いた時からご機嫌でしたものねえ。

 あまり自信を無くさせてはいけませんよ。これからの若者に」

「そうじゃが、あの可愛い百合の夫となるならばそれなりの技量がいるのは当然」

「また始まった。あなたの百合びいきが」

「当然じゃ、わしの可愛い孫娘、我が一族一番の姫だからのう。

 でも翔君も好きじゃ」

「私もあなたもあの二人が来る時は、心身共に若返りますねえ」

「そうそう、あの二人はわしらのアンチエイジングための薬じゃ」

「ほほほ、そんなことを言うとあの二人がかわいそうですよ」

「わしらの年寄りが、元気でいてこそ館林、桐生共に栄えることができようぞ」

「そうそう、その意気ですわ、あなた」

 

 葉山海岸は、湘南海岸サザンビーチに近い事もあり、

秋にも関わらず柔らかく少し温かめの風が百合の髪をそよがせる。

おだやかな波に遊ばれる真っ白い砂浜、

流れてきた海草や貝殻と遊ぶ小蟹達、

夕飯を探しているのか、ゆったりと飛ぶカモメ、

二人は砂浜に座り肩寄せあって海を眺めていた。

「ねえ、翔さん、私はあんな能力には頼らなくていいと思うの」

「本当に怖かった。便利だけどあんな怖い思いするなら普通に闘った方がいい」

「違うの、あの能力に安心して、逆に危険な中に入るほうが怖いから」

「まあ、頼りにするほどの力はないと思うんだ。自由に使えるとは思えないし、

 あくまでも最大の危機の時に百合の元に帰る最後の手段にとっておくつもり」

「私はその最大の危機が嫌なの。それにもしあの能力が出なかったら、

 その瞬間からあなたとはもう会えないのよ。

 私はあんな能力には期待したくないの」

「百合、そう簡単にあの能力が出るはずないよ。安心して、使わない。誓うから」

「あの兄が本当にそれを許してくれるかをどうかを心配してるの。

 何といっても館林一族の長い歴史の中で最高の頭脳を持っている人なのよ」

「えっ?そうなの?」

「そう、今まで謎を謎のままにしてきた人ではないの」

「そうなると、もしかしてあの能力を?」

「そう、必ず使えるようにする人。本当に怖い人なの。

 私すごく後悔しているの、相談なんかするんじゃなかったって。ごめんなさい」

「いいよ、俺のためだもん。今は何も考えたくない。

 ねえ、ひざまくらしていい?」

「ふふ、翔ったら甘えん坊さんね。今日は疲れたでしょう?いいわよ」

翔は頭で百合の形の良い腿の弾力を楽しみながら、夕日に輝く波を見つめていた。

百合は膝枕している翔を菩薩のような微笑で見つめている。

(つづく)