はっちゃんZのブログ小説

スマホの方は『PC版』『横』の方が読みやすいです。ブログトップから掲載されています作品のもくじの章の青文字をクリックすればそこへ飛びます。

64.消された記憶3

百合は翔と会えない間、実は葉山館林邸に戻っていた。

そして、このたびの事件について、こと細かく話した。

祖父母はさすがに驚いた様子だったが、二人が無事だったことと

翔が無事 新宿事務所に引っ越したことを知り二人とも胸を撫で下ろした。

 

その夜、百合は祖母へ

『もしかしたら夢や勘違いかもしれませんが』と前置きして

事件の最中に幼い頃の記憶らしきものが蘇ったことを話した。

それを聞いた祖母は、

『しばらくここに待っているように』と言い置き、急いで祖父の元へ戻った。

しばらくして祖父の部屋へ来るように言われ部屋を訪れた。

 

祖父母は少し沈痛な顔つきで並んでいる。

「百合や、婆さんからお前の幼い頃の記憶が蘇った話を聞いた。

 翔君と付き合い始めたし、

 もしかしたら・・・そろそろか・・・と思っておった。

 確かにお前のその記憶は正しいと答えておこう。

 ただし、今はその理由を言えないし聞いて欲しくない。

 いずれお前に話す時がくると思うのでそれまで待って欲しい。

 これからもっと色々な記憶が蘇ってくるかもしれんが、

 我々一族全員がお前のためを思ってのことだったとわかって欲しい。

 決して悪意からではないことを・・・」

祖父母から頭を下げられるとこれ以上は聞けなかった。

 

「百合、お前に翔君とのことを伝えておこうと思う。

 翔君には翔君のご家族がいずれ伝えることとなろう。

 お前が思い出した『強く大きな眼の少年』は確かに翔君自身だった。

 そして、お前と翔君は許婚の間柄だった」

「えっ?許婚?」

「百合が驚くのも当たり前とは思う。過去に一度は切れた関係のはずだった」

「一度は切れた?」

「ああ、だが再び繋がったと言う事じゃな」

「百合は翔さんを見て、なぜか懐かしく思えたのはそのせいなのですね」

「そのようじゃ、わしにはそれが二人の運命かもしれないと感じておる」

「お爺様、お婆様、百合は翔さんのことが大好きです。

 ずっとずっと一緒にいたいと思っています。

 百合は翔さんのお嫁さんになってもいいですか?」

「ああ、翔君がそういう気持ちになれば、

 いずれお前にそう言うだろう。待っていなさい」

「はい、待ってます。百合は翔さんをとても愛しています。

 こんな気持ちは生まれて初めてのことです」

「そうか、わかったよ。その気持ちを大切にしなさい」

 

しばらくして、翔は突然実家へ呼び出されて百合とのことを聞かされた。

あまりの想像外のことに驚き、

そして混乱したが、

事務所で待っていた可愛い百合の笑顔を見るとすべて納得したのだった。

(つづく)