はっちゃんZのブログ小説

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45.新婚旅行、娘と、1

新婚旅行は美波もいる北海道と決めて6月に出発した。

北海道は梅雨のないカラリとした気候で、

確かに冬は寒いかもしれないが

その過ごしやすさに夫婦は大変気に入った。

そして今後、定期的に娘と会いがてら観光に来ようと決めたのだった。

千歳空港からはレンタカーを運転しても良かったが、

今回は電車で小樽へいくこととした。

小樽駅では慎一が贈ったバッグを肩にかけた

少し大人びた美波が待っていた。

ほんの1か月前に会ったばかりなのに、

娘の顔を見ると静香はまた涙している。

 

今晩は「ホテルノルド小樽」の和洋室に3人で予約を取っている。

このホテルの外観は大理石で出来ており、

小樽の石造りの街並みに溶け込んでいる。

1階は木を基調にした暖かくそして優しさ内装で、

大理石に囲まれた空間に噴水と花が飾られている。

部屋の窓からは、歴史的にも有名な小樽運河と倉庫群、

そして日本海を望む小樽湾が広がっている。

慎一と静香は親子3人でゆっくりとホテルライフを楽しもうと考えている。

美波はすでに地元の人間になっているが

それほど小樽の街を知っている訳ではないので喜んでいる。

 

先ずは大学と美波の女子学生専用のマンションへ

行って見ようということになりタクシーに乗って大学まで直行した。

小高い山の上に小樽商科大学はあった。

運河と同じレンガ色の校門が3人を迎えた。

単科大学なのでこじんまりとしているが

日本でも有数の古い歴史を誇るプライドが現れているように見えた。

慎一は大学時代のことを思い出し、娘の青春が始まったことを感じた。

大学を色々と散策し、正門を出て坂道を下りていくと

マンションは垢抜けした感じで小樽の街並みに溶け込んでいた。

冬にはこの坂道は雪の壁が出来るくらい降り積もるらしい。

美波が入試の時、

積もった雪が舞い上がり吹雪になって目の前が真っ白になって、

ついつい足元から注意を逸らしてしまい坂道で滑って転んだ話をした。

一瞬、縁起が悪いと思ったが無事合格してほっとしたと笑っている。

 

3人は小樽の街並み観光を人力車に乗って楽しんだ。

夕陽に染まる運河が美しかった。

ホテルで親子3人水入らずで部屋食をゆっくりと食べた。

北海道は食材王国で海の物、山の物全てが美味しかった。

「刺身(スルメイカ、ウニ、甘エビ、ボタンエビ、ヒラメ、サーモン)」

「シャコエビ、ミズタコ酢の物

「蟹三昧(ケガニ、タラバガニ、ズワイガニの蒸物)」

「白老牛のステーキ」

「鮭とキノコのホイル焼き」などテーブル一杯に広げられている。

慎一は、北海道限定の

サッポロビールクラシック』の生ビールを頼んだ。

このビールはコクがあるのに

スッキリとした飲み心地でいくらでも飲めた。

静香は飲み過ぎないようにと慎一のビールを少しだけ貰って飲んでいる。

でもついつい半分くらい一気に飲んでしまい、

それを見て美波が大笑いしている。

静香は真っ赤になって恥ずかしがった。

 

美波と静香は仲良く二人でかけ流しの温泉のある大浴場へ行った。

慎一もゆっくりと大浴場に入り、

広い窓からイカ釣り船らしき灯りを映す日本海を見ていた。

日本海には色々な顔があることを知った。

今日の日本海は優しく静香、美波親子を見守っている。

(つづく)