冬が近づいてくると米子と違い、一気に札幌の街が染まり始める。
ニュースで北海道大学内の銀杏通りが紹介されている。
慎一は、家族で出かけた。
『北海道大学』は、1876年本学の前身となる札幌農学校から開校され、
面積は1,776,24 9㎡(東京ドームで約38個分)と紹介されている。
大学病院の駐車場へ車を停めて、
双子用のベビーカーを出して家族で銀杏通りに向かった。
多くの市民が紅葉狩りに来ている。
みなが空や地面を見て笑顔で秋を満喫している。
雄樹と夏姫も陽に当たると金色に輝く銀杏が珍しいのかじっと見つめている。
慎一も静香もこんなに見事な銀杏通りを見るのは生まれて初めてだった。
大通公園も、赤系統の紅葉と黄色の銀杏のコントラストが美しかったが、
北海道大学の太陽光に照らされ金色に輝く銀杏が長い通り一面を染めており、
地面に落ちた葉も含めて上下の見える空間すべてが金色に染まっている。
秋は寂しさを感じるものと思っていたが、
それとは異なり目に迫ってくるほどの迫力があった。
そして、大学からの帰りに偶然もう一つの紅葉ポイントを見つけた。
北海道庁東門から駅前通りに向かう通りの銀杏の美しさも秀逸だった。
特に銀杏の間から見える歴史を感じさせる赤レンガの道庁が綺麗だった。
ここの通りは将来には「赤レンガ通り」として開発されるという噂もでている。
道庁の敷地内では、定期的に道内の多くの市町村からの名産品の店が集まり
名産品市(いち)が開かれている。
近くのパーキングに停めてベビーカーを押しながら4人で歩いた。
この市では北海道中から旬の物産が集まり、町の名前を掲げて販売している。
海の物は、花咲ガニ、イカの一夜干し、キンキ、北海シマエビなどが、
地の物は、ブドウ、リンゴ、サクランボ、カボチャ、ジャガイモなどが、
新米として『ななつぼし』『おぼろづき』『ゆめぴりか』『ふっくりんこ』が、
加工品としては、自家製ソーセージ、燻製製品など
その他、スイーツとしてはシュークリームやプリンなどが販売されている。
夜には美波も来るのでそれらを買い込んだ。
初めて食べた『花咲ガニ』
歯ごたえとして感じる肉質はみっしりと筋肉質でこれは蟹で一番だった。
味は脚やハサミだけでなく甲羅の中にある棘の身まで蟹として味が濃く
『これぞ蟹』というくらい本当に美味かった。
今までズワイガニやタラバガニを食べたが
それらとは異なる蟹であることがよくわかった。
しかし、慎一や静香にはじわっと味が沁みてくる松葉ガニも好きと感じた。
『北海シマエビ』は、道東地方の別海町野付湾で生息しており、北海道でもきれいな海にしか生息しないといわれる希少なエビで、茹で上がった綺麗な赤い色のため「海のルビー」とも呼ばれている。
北海シマエビ漁は、野付湾の風物詩となっている打瀬舟で行われているらしい。
この打瀬舟漁が、水深の浅い野付湾をシマエビの住処であるアマモを傷つけないようにエンジンを使わず帆を立てて風力で進むという明治時代から続く伝統漁法で、三角帆に風を受けて、ゆらりゆらりと漂うように漁を行う打瀬舟の情景は尾岱沼の風物詩になっており、北海道遺産に選ばれている。
漁期は、例年夏は6月中旬から、秋は10月中旬からのそれぞれ約2週間。 茹でたシマエビはもちろんのこと、年に2回の漁期の間だけ地元で食べられる踊り食いや刺身も人気とネットでは説明されている。
塩ゆでされたシマエビは身がキュッとしまってプリプリで、味も濃厚で絶品だった。
焼きあがったばかりの『キンキの一夜干し』は、
立ち上る海の香りと口中で広がる深海の旨みが日本酒を更に誘った。
最後に今回試しに買った『おぼろづき(新米)』のオムスビは、
十分に炊かれ蒸らされた米の表面はキラキラ光っている。
ほろりと口中でほどけ、独特の香りが鼻腔を通り、噛めば噛むほど甘みが増した。
以前北海道は寒冷地のため、米作には不向きと言われていたが、
品種改良のおかげもあって、非常に食感の良いお米が出来始めている。
(つづく)