はっちゃんZのブログ小説

スマホの方は『PC版』『横』の方が読みやすいです。ブログトップから掲載されています作品のもくじの章の青文字をクリックすればそこへ飛びます。

15.レッドシャーク団との戦い1(第7章:私の中の誰か)

 

※これからは残酷なシーンがありますので注意してください。

『レッドシャーク団』の幹部の男女4人と数名の組織員は、
東京湾に停泊しているとある東南アジアの国の小型コンテナ船へ隠れていた。
夜中に偶然上田のユーチューブを観たクリスが急いで赤城へ連絡を入れて、
ボスからの指令でこの貨物船へ集まる様に指示があったのだった。
この小型コンテナ船の運営会社は、
赤城の傭兵時代に使っていた部下が経営している会社で、
自分の身に危険が及べばいつでも国外へ脱出するつもりで用意していたものだ。
今まで稼いだ金は、海外口座だけでなく金や貴金属やドルの現金にも換えている。
すぐに出航してもいいのだが、時間的に警察から目の付けられる恐れもあり、
数日は港の沖で停泊しているこの小型コンテナ船で隠れていることにしていた。
それに夕方に出航した方が、海保の目から逃れるためにも都合が良かった。
小型コンテナ船の船倉の部屋に
レッドシャーク団の幹部4人と残り数名の組織員が集まっている。
『レッドシャーク団』の幹部の男女4人と数名の組織員はテレビに釘付けだった。
狂次を始めとして、検挙された組織員は殺人犯として逮捕されている。
外道組のNo2も逮捕された報道も変更して流れている。
テレビは彼らの顔などの写真を派手に流し世間を賑わせている。
マスコミも世間も『彼らを死刑にすべき』だと声高に放送している。
「みんな、よく集まってくれたな。今からアジアのある国へ行く。
 日本とは犯罪者引渡し協定を結んでいない国だ。そこで身を隠す。
 今頃俺達でやった多くの仕事が明らかになっている頃だと思う。
 我々も捕まれば確実に死刑になるだろうな・・・。
 でも金もたっぷりあるし偽造パスポートも出来てるから心配しなくていい。
 みんな、安心していい。わかったな」
「「「へい、ボス、わかりました」」」
「その国に入ったら、少し整形して他人になりすますからそのつもりでな。
 それと一緒に近くで住むようにしていつでも連絡がつくようにしろ」
「「「へい」」」
「それといくらでも金があるからとあまり羽目を外して目立つなよ。
 どこに誰の目があるかがわからないからな。
 ある程度、落ち着いたらその国で日本と同じ仕事をして面白可笑しく暮らそうぜ」
「「「へい、わかりました」」」
レッドシャーク団の組織員は、各々ナイフや銃などの武器を持って寛いでいる。
頭領の赤城と副頭領の高橋は、傭兵時代の迷彩服を着ている。
「では、全員で乾杯でもしよう」
「「「カンパーイ」」」

数日後、水平線へ太陽が沈み始める頃、
世間のニュースもやや下火になり、
港へ警察の目が向けられていない事を確認して、
一味の乗ったコンテナ船は静かに出航していった。
船は東京湾を出て相模湾を通過している。
明るい月が水平線から上がって来た。
しかし三浦半島を越える辺りからその船の後ろには、
距離を取って海の色に溶ける様に半潜水型のバトルシップが尾行している。
一味の乗った船の周りにはイルカ型ロボットが数頭群れを為して泳いでいる。
このイルカ型ロボットは、館林京一郎が発明したもので海での戦闘に使用される。
『レッドシャーク団』のアジトである倉庫にはクモ助が常にいたため、
部屋を開けるちょっとした隙に、レッドシャーク団の幹部4人の服には、
聞き耳タマゴが付けられ、会話内容と位置情報は常に発信されている。

貨物船には夜のうちに『迷彩ドローン』を飛ばしクモ助や天丸などを降ろしている。
ドローンからこの小型コンテナ船を撮影し、X線撮影もして、
底部の後部に普通のコンテナ船にはない特異な構造があることがわかっている。
バトルシップの中には遼真、紅凛、黒狼が乗り込んでいる。
バトルシップの操縦は、アンドロイドの『アイ』が乗り込んでいる。
このアンドロイドは、AI搭載型で人間と変わらない表情と動きが可能である。
館林研究所で作られた物で、家事や戦闘も可能で、現在人間型は3体駆動している。
この3体は、『レイ』『アイ』『アスカ』と命名されており、レイは研究所勤務、
アイは武器関係のメンテナンス等、アスカは新宿探偵事務所で事務員をしている。
遼真は、今回のミッションは人間同士が殺し合う可能性があることを考えて、
『私も遼真様と一緒に行きたい』と言い張る真美を何とか止めた。
遼真も真美も今まで霊達との会話で、
彼らが殺された時の光景を目にしてはいるが、
人間の命に直接触れる行為、
仮に真美が自らの手で人間の命を消さなければならない時、
躊躇せずに遂行できるかと考えると今の真美には無理と思えたからだった。
真美は、現在ハングレ団の倉庫内に漂う瑠海を始めとした殺された多くの人たちの霊や
その霊魂から聞いた場所へ行き、その場で自縛されている霊を人形へ乗り移らせている。
その数は信じられないほどであまりの悲しさに真美は涙を抑えることが出来なかった。
同じ人間をここまで簡単に殺せることのできる人間の心にも悲しみを感じた。
また臓器移植のために臓器を取り出した手術室にも行き瑠海の霊魂を集めた。

ハングレ団全員で祝杯を挙げて大酒を飲んでいる。
そんな時間が過ぎて行った。
ある程度みんなに酒が回った頃、赤城が組織員だけを集めて
「お前達、これからどんな事があるかわからないから頼むぜ」
「へえ、わかりました」
「じゃあ、俺を見な」
組織員の視線がボスの顔に集まる。
その瞬間、首に吊られた小瓶と赤城の目が金色に光った。
組織員の顔から急に表情が無くなり部屋へと戻って行った。

赤城はもうじき船が領海外へ出ることに安心したのか、
「桃、何かほっとしたらしたくなった。こっちへ来い」
「えっ?まだ早いよ」
「そう言うな。お前はいつしても喜んでるじゃないか」
「まあそうだけど。じゃあ、シャワーを浴びさせて」
「わかった。俺も一緒に入るぜ」
「うん、どこの国に行くのか知らないけど、ずっと私を愛してね」
「わかってるよ。心配するな。ずっと一緒だぜ。お前が俺を裏切らない限りな」
「裏切る?そんな筈ないでしょ?こんなにあんたの事を好きなのに」
「わかってるって、じゃあシャワー浴びようぜ」
「うん」
赤城がスタイルの良い桃の腰を抱いて二人でバスルームへ入って行く。
その頃、副首領のディック高橋とクリス松本の部屋では、
領海外へ出て安心した高橋が、ベッドで横たわって目を瞑っている。
クリスは、水割を飲みながらずっとテレビやネットでニュースを見ている。
数名の組織員も別室で静かだし眠っているようだった。

この時、遼真と紅凛と黒狼は、バトルシップから海中へ出て行った。
全員、バトルスーツ、バトルヘルメット、バトルブーツ、バトルハンドを装着し、黒一色で闇に溶けている。

ここで彼らが装備している戦闘服一式の解説である。
拙著『武闘派なのに、実は超能力探偵の物語』で解説されているが再度解説すると、これは新宿で探偵事務所を開いている従兄の桐生 翔の婚約者である館林百合の兄の館林京一郎が発明したものである。
バトルヘルメットの素材は、セラミック表面に炭窒化チタンを吹きつけ、より硬度の増したもので、ゴーグル部分は超高質ガラス製、戦闘時には鼻・口・アゴ部分は張り出してきたプレートで防御される。機能としてはヘルメット内には通信装置があり、ゴーグル内面へデータが投影され、データ確認が可能、またヘルメット前面のカメラアイからの視覚データの調査も可能である。また酸素を放出する機能が有り、宇宙空間や水中や毒ガスの充満した中でも活動が可能である。
バトルスーツで鬼派や狐派が着用する物に関しては、素材は布部が超高分子量ポリエチレン繊維、プレート部が超高分子量ポリエチレン繊維へ炭窒化チタンを吹きつけ編みこまれたもので、戦闘時、身体の前面にある急所及び脊髄保護のためのプレートが入っていて、首筋・肩・ひじ・ひざ部分も同様であり、プレート内側には衝撃吸収素材が貼られていて身体にショックは感じない様になっているが、霧派の場合には、スピード・気配遮断重視のためプレートは付けていない。性能としては、軽くて防弾・防刃・防衝撃機能を持つが、繊維は高熱には弱いので注意となっている。
バトルブーツの素材も布部はバトルスーツと同様で踵と脛部分にプレートが入っている。底部分は超高分子量ポリエチレン繊維を固めたもの。機能としては、足の防御と踵後に噴射口があり蹴りに威力がますように調整されている。その他、底部分にはスクリューが格納されていて水中を移動できる。
バトルハンドの素材も布部はバトルスーツと同様で拳部分と指先、指関節、手のひら付け根部分にプレートが入っていて、プレート内側には衝撃吸収素材が貼られていて身体にショックは感じない様になっている。その他の機能としては手のひらからスパイダーマンのような糸を出し、敵を絡みとったり、おもりを付けて発射可能でビルの屋上へも上がることが可能となっている。

遼真達はイルカ型ロボットの取っ手に捕まり奴らの乗る船へと近づいていく。
船の船尾に到着すると黒狼が、バトルハンドから糸を射出して、
手摺に巻き付けると貨物船の甲板へと体重を感じさせない様に昇っていく。
誰もいないことを確認して、海面へ合図すると遼真と紅凛が海面から糸を射出した。

遼真は貨物船の操舵室へと向かう。
遼真達の侵入に気付かない操舵室の船員を催眠ガスで眠らせた。
遼真は、音声遮断目隠しとロープで船員を縛り上げ、操舵を行っている。
黒狼は、組織員達の眠る筈の最上階の部屋へと向かう。
クモ助からの音声データでは、規則正しい息が聞こえてきている。
更に扉から催眠ガスを入れて、しばらくして入って行く。
「「!!!」」
「「「バン、バン、バン」」」
黒狼に向かって拳銃が撃ち込まれる。
もちろんこの戦闘服は防弾効果があるので何も心配はしていないが、
普通の人間なら朝まで眠る濃度のガスにも関わらず、
蒼白く表情の無い顔つきでベッドへ立ち上がり拳銃を向けている。
黒狼は、彼らが眠っていなかったことにほんの一瞬驚いたが、
『ニヤリ』と笑うと、残像が残るほどの速さで飛び込むと
両腰に備え付けられた二本の大型ナイフを一閃し、
一瞬に二人の首を撥ね跳ばし、
後方に居た残りの一人の首へ投げつけた。
『『ピュー』』
二つの首の無い身体から血液が噴水の様に吹き上がりベッドを真っ赤に染める。
だが、喉に深くナイフを突き立てられた一人は、
身体をガクガクさせながらもまだ起き上がり攻撃をしようとしてくる。
実は組織員自身は眠っているのだが、
組織以外相手を殺す様に赤城に操られていたことに気がついた。
完全に首が無くなった死体は動いていない。
すぐさまに動いている一人の頭を撥ね跳ばすと静かになった。
「へえ、首がある間は・・・すげえ術だな、こりゃあ楽しみだ」
このナイフは、『斬鉄君』と命名されていて、鉄をも切断出来る。
峰の太さは1センチ、幅は4センチ、刃渡りは20センチのまるで鉈の様なナイフである。
黒狼はすぐさま赤城の居る船倉の部屋へと向かう。
この襲撃に赤城はすぐさま気がついた。