はっちゃんZのブログ小説

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1.事件発生(第5章:真美を救え)

ある事件が新聞の第一面を飾った。
「謎、真夜中の十字路で少女死亡」
事件の詳細は以下、
名前:萩原すみれ
年齢:4歳
場所:京都市内猿塚公園横の十字路
死亡時間:午前0時から5時の間
発見時状況:早朝5時、十字路の真ん中に路上に横たわっており、
      パジャマ姿で眠った様に死んでいる。
      新聞配達員の発見時において既に死亡。
検視結果:身体に一切外傷は無し。低体温症にて死亡?
子供部屋状況:窓の鍵は掛けられておらず窓は開いていた。
       部屋は4階であり角部屋で外部からの侵入も不可能。
母親マリ子の証言:朝、娘のすみれを幼稚園へ送り、
         午後3時にお迎えして、オヤツを食べさせて
         マンション敷地の隣にある猿塚公園で遊ばせた。
         その後、家へ戻り、娘にテレビを見せながら晩御飯の用意をして、
         一緒にご飯を食べて、お風呂に入れて午後8時には

         子供部屋で寝させた。
         母親の友人の男が午後9時過ぎに部屋を訪れて、
         夜中の0時まで居間でお酒を飲みながら色々と楽しんでいる。
         午後11時頃に隣部屋から騒音の苦情電話があり謝罪している。
         その後、その友人も朝まで居間のソファで酔って宿泊している。
友人の男の証言:居間のソファに眠った。

        ただお酒の後で喉が渇いて水を飲んだりして、
        寝入りが悪くて起きていたが、酔った母親はずっと横で眠っていた。
        夜中に同じ階の部屋の窓が開けられた様な音がした気はするが、
        すぐに眠ったので詳しくは覚えていない。

この十字路は見通しの良いにも関わらず、
不思議と今まで何度も交通事故死が起こっている。
その事故死の被害者の中に、
萩原すみれの関係では実の父親と義父が入っている。
被害者は全員なぜか真夜中に十字路付近に居て、
突然フラフラと対向車へ飛び込んでしまったらしい。
彼らの後に人影があり、
押された様に車の前へ飛び出したと言う目撃もあるが
防犯カメラには誰も映っていなかった。

遼真の祖父である桐生令一は、
桐生一族狐派頭領であり、ここ桐生京丹波家の家長である。
この続けて起こった不思議な事故と
記事に載った“十字路”という言葉に
『何かが起こっているのではないか・・・、
 この世に害する何かが現れたのではないか・・・』
頭領の桐生令一の胸に漠然とした不安が沸き起こった。

そんな時、幼稚園児だった真美が行方不明になった。
幼稚園から帰ってきて、近くの公園で居なくなったのだ。
「かくれんぼしていて真美ちゃんが急に居なくなった」
公園の中で一緒に遊んでいた真美と同い年の景香が、
泣きながら家に戻ってきた。
真美の両親は急いで公園辺りを探したが真美は見つからなかった。
景香の話では、かくれんぼしていたら急に林の中から消えたらしい。

頭領の令一は、すぐさま筮竹(ぜいちく)を使って
出てくる結果を算木(さんぎ)に置き、
易(えき)の一つの八卦(はっけ)にて真美の行方を観たが、
靄(もや)がかかった様にその結果は明確にあらわれなかった。
令一は、『この事件は”神隠し”の可能性が高い』と感じた。
真美をさらった相手は力の弱い低級な悪霊ではなく、
非常に力の強い”何か(モノ)”が起こした事件と直感した。
仮に相手が低級な悪霊だったとしたら、
その時に発動される真美の”魔眼”にて動けなくなるため
真美を連れ出すことは不可能な筈だった。
真美は3歳の誕生日からこの力の一端を示し始めた。
4歳の誕生日を迎えてからは、相手が弱い霊ならば
真美が見つめるだけで”金縛り”に遭った様になるのだった。

小学校から帰ってきた遼真は、真美が行方不明になったことを知り、
急いで真美の気配を探りながら家の周りや普段真美が遊んでいた場所を探った。
あらゆる場所に真美の淡い気配はあるがどれも過去のものであった。
その日のうちに桐生京丹波家から
『真美を探します』との書置きと共に遼真の姿も消えた。

ここで八卦とは、
中国神話の三皇の一人と言われている伏羲(ふくぎ)の創案と伝えられている。
その方法は、陰(--)と陽(-)とを示す三個の算木を組み合わせてできる八種の形(乾《けん》,坤《こん》,震《しん》,巽《そん》,坎《かん》,離,艮《ごん》,兌《だ》)を検出し、それに該当する易経の卦辞《かじ》,爻辞《こうじ》などを見て吉凶,運勢を判断する占いである。それまでされていた亀卜《きぼく》に取って代わり,漢代には民間にも流行し、日本への伝来は儒教と思われるが、日本の一般社会に流行したのは平安中期以後と考えられる。

さて、読者の皆さんは不思議に感じられた書き出しと思いますが、
この章は、この小説の主人公、桐生遼真と真美の子供時代の物語です。
時間軸としては現在より13年前。
遼真が7歳、真美が4歳の頃のことです。
場所は京都、
家名は、桐生京丹波家、
遼真は、桐生一族狐派の頭領桐生令一の孫として生まれた。
遼真も両親も東京生まれで、
19年前に起こった桐生一族と館林一族の戦いで父親は命を落としている。
この戦いに関しては、
小生の前作『武闘派なのに、実は超能力探偵の物語』で概要を語っています。
この時、生まれたばかりの遼真は、
父親との思い出もほとんど無いまま母子二人となり、
京都に住む狐派頭領祖父の令一の元へ預けられ育てられた。
なお、桐生一族は、使う技により各流派に分かれており、
それらは鬼流とも霧流とも狐流とも読める集団で、全てが『きりゅう』であった。
その『き』という文字に、『鬼』『霧』『狐』の文字があてられ、
『鬼派《おには》』『霧派《きりは》『狐派《きつねは》』と呼ばれている。
真美も桐生一族狐派に属する夫婦の長女として京都で生まれた。
同じ苗字ではあるが、遼真と真美に血の繋がりはない。
遼真も真美も桐生一族狐派の両親の元で生まれて戦士になるべく育てられ、
二人とも幼い時より、多くの異能を発揮し、将来の一族の戦士として期待された。
二人は幼い頃から兄妹の様に育ったため、
お互い気心が知れていることもある上に、
特に二人の能力の相性が良く、
依頼される除霊など多くの仕事は二人ですることが多かった。
それは、二人が持つ力『金環力』と『銀環力』の共鳴する力が特に強く、
一族の宝である『金狐刀』と『銀狐刀』と共振する力が一族内では一番強かった。

ここから遼真と真美が二人で良く仕事をすることになった理由と東京に来た経緯を簡単に説明します。
これはこれで一つの物語がありますので違う章で紹介いたします。
遼真と真美、二人の霊的能力の組み合わせが、
現在の一族の若者の中では最高の水準にあり、
二人は中学生や高校生時代から一族への多くの依頼を何度も問題無くこなし、
大概のことはもう二人に十分任せられると言う判断から
『そろそろ二人には東京で一族のために働いて貰おう』と一族会議で決議され、
遼真が東京の大学に進学するタイミングで、真美も東京の女子高へ転校した。
また東京には、ちょうどこの春から桐生一族鬼派次期頭首候補である
従兄弟の桐生 翔が、新宿へ探偵事務所を構えたこともあり、
一族としては、霊的な観点からも東京での活動が最適と考えた。
それから少し遅れて、
真美を“姉さま”と慕う、真美とは従妹の妹分の夢花も
二人を追いかけて上京し、今は遼真の実家から女子中学校へ通っている。
実は、東京での都会生活を夢見て『私も東京へ行く』と言い出した夢花に、
最初、彼女の両親は『まだ中学生だから無理』と反対していたが、
あどけない夢花の顔には似合わない一度言い出したら聞かない頑固さと
毎日のように繰り返される執拗なお願いにとうとう折れてしまい、
『遼真様と真美さんの仕事の邪魔はしない』
『キチンと勉強も修行もして二人を手伝うこと』を条件に上京が許された。
真美も夢花も可愛く運動神経も良く成績優秀で学校でも人気者だった。
閑話休題、次から再び時間は遼真と真美の子供時代へと戻ります。