はっちゃんZのブログ小説

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76.遺族の恨みは晴れるのか2

Ryokoにネット上で殺害事件の裁判への批判情報の収集を指示した。

夥しい数がヒットしたが、その中で何件かが気になった。

「INOCHI その重さ、理解できますか」

「平成仕事人」

「あなた、今の刑法で満足していますか?」など

数多くの闇サイトがネット空間に存在していた。

それらは海外サイト(主に中国・韓国のサイト)とも共有しており

それらの追跡には非常に時間がかかることがわかった。

 

昨今、死刑の賛否については多くの機会で論議されている。

死刑制度の廃止を訴える人間と必要性を訴える人間が討論しているテレビ番組もある。

実際の世界の傾向として、死刑制度は取りやめている国もあれば、復活させた国もあり、

国際情勢も混沌としている。少年でさえも死刑を執行される国家もある。

 

死刑の賛否に関しては、

仏教系のある宗教家の随筆から死刑の賛否理由を引用すると以下にまとめられる。

死刑賛成の理由として以下、

・悪いことをした報いを受けるべき

被害者感情、報復感情

・犯罪の抑止効果

・再犯防止

・世論が死刑制度を支持している

死刑反対の理由として以下、

・死刑は残酷な刑罰である

・国家でも命を奪うべきでない

・冤罪、誤判の可能性

・判決が不公平に適用される

・更生の可能性

・犯罪の抑止効果がない

・生きて償うべきである

・死刑執行に関わる刑務官の苦しみ

 

確かに死刑制度反対派の言うことにも納得するものがある。

死刑制度が文明的ではないという批判が多い言葉は別にして

例え犯人を殺しても被害者が生き返る訳ではないので

犯人を殺すよりも寿命を迎え死ぬまでの期間に改心させた方がいい。

死刑になっても被害者遺族の心が晴れることはない。

死刑制度によって犯罪率を減らすデータはない。

そして、それ以上の問題として冤罪の可能性への危惧もあるとの論法である。

 

しかし、死刑制度賛成派の言葉にも納得するものがある。

多くの国民(約半分以上)が制度を支持している点。

出所後、再犯によりまたまた新しい命が失われることもある点。

その中で一番ウェイトが大きいのは被害者の感情と思われた。

突然、途切れた被害者の人生や被害者遺族の心や生活はどうなるのか?

他人の突然の凶行により理不尽に人生が奪われた被害者の無念や悲しみ、

大切な家族が、友人が、無残に殺害され、被害者が生きていたら訪れたであろう

様々な幸せの光景を奪われた遺族の悲しみや喪失感を理解できるであろうか。

反対派は、犯人が死んでももう殺された人間は戻ってこないというが、

もう戻ってこないのだから、死にたくないのに殺されて悔しかったであろう

死んだ人間の気持ちは無視して良いのか。

そして長い期間で本当に犯人が改心するのであろうか。

改心したからといって殺された被害者やその遺族の心は救われるのだろうか。

 

昔は個人による復讐が許されていた時代もあった。

しかし、現在は国家が法により殺人犯を罰し、時には死刑を実行する。

個人による復讐の機会を奪われた被害者やその遺族の気持ちは理解できるであろうか。

死刑がなくなり時間が経てば、犯人が何気ない顔して社会に戻ってくるかもしれない不合理は理解できるであろうか。

死刑制度は「法律で個人の復讐を禁止した上での法による復讐の成就」の側面もある。

(つづく)