はっちゃんZのブログ小説

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1.無差別殺人事件、悲惨な事故の発生(第4章:迷い里からの誘い)

ここ半年の間、無差別殺人事件及び悲惨な事故が新聞紙上を賑わせている。
それを知らされた国民はそれらの不幸が、
いつ自らの身に襲い掛かるかわからないと不安な心持ちになっている。

事件日時:6月26日 16時
被疑者:木村 羅詩亜《らしあ》(30歳、ユーチューバ―)
被害者:久保田倫幸(30歳)
    道下友梨佳(29歳)
    山口沙里愛(20歳)
状況:犯人が横断歩道上で突然、包丁を振り回して暴れる。
   被害者の3名は首筋、腹部を抉り刺されて病院へ運ばれるも死亡。
   本人もその後、首筋を包丁で切り自殺。
証言内容:
①家族から以下証言
 最近、ユーチューブ番組の視聴者数が減ってイライラしていた。
 昨夜都内をドライブしている。
 自宅に帰って来て『見たことも無い村に着いてしばらく滞在した』と話す。
②コンビニ店員から以下証言
 夕方に来店して料理用包丁を買った。
 イライラした雰囲気でお金を払うと早足で店から出て行った。
③横断歩道に居た人からは以下証言
 前を歩いていた犯人が急に前から歩いて来る女性に近づいた。
 相手は驚いた様に立ち竦んで「あなた誰ですか?」と話したが
 犯人はコンビニ袋から包丁を出して
 「お前を殺さなければならない」と叫んで襲い掛かった。
 彼女(道下友梨佳さん)が刺された直後、
 後の二人には「お前達、うるさい」と言って襲い掛かった。
 その後、「ははは」と笑うと自分の首筋を切り裂いて自殺した。

事件日時:7月25日 17時
被疑者:浜口 厚(35歳、無職)
被害者:小林紀子(45歳)
    道上翔子(36歳)
    道上沙也華(5歳)
状況:犯人が車を運転中、赤信号を無視して、
   フルスピードでノーブレーキにて
   横断歩道を歩いていた歩行者へ突っ込む。
   被害者の3名は病院へ運ばれるも重症にて死亡。
   犯人は街路樹に衝突し顔面からフロントガラスに突っ込み死亡。
証言内容:家族からの報告では、長年家に引き籠っており困っていた。
     何か面白くない事があったのかイライラして昨夜長時間のドライブで出た。
     その日、朝方に家に戻ってきて、母親がどこに行ってたのか聞いたら
     「変な村だった」と答えたと言う。
     「あんなことは、絶対に許されない」など独り言を言っていた。

事件日時:8月23日 15時
被疑者:天山 聡(61歳、運送業
被害者:上田 |馬生《うまお》(51歳)
    木下あゆみ(30歳)
    浜田小百合(48歳)
    道中絵里奈(50歳)
    輪島和親(67歳)
状況:被疑者がトラック乗車中、赤信号を無視して横断歩道へ突っ込む。
   横断中の5名は跳ね飛ばされ病院へ運ばれるも全員重症にて死亡。
   被疑者は脳卒中にて意識不明で治療中だったが翌日に死亡。
証言内容:事故現場付近を歩いていた目撃者の証言では
     天山被疑者が『シネ・・シソン・・シネ』と叫んでいたらしい。

事件日時:9月22日 18時
被疑者:高田 鼓太郎(20歳、大学生)
被害者:佐藤佳代(45歳)
    佐藤桂里奈(17歳)
    羽田芹亜(17歳)
    道泊由香里(17歳)
状況:娘桂里奈の誕生日会の途中に全員惨殺の上、犯人は放火して焼身自殺。
   佐藤家長女桂里奈から高田のストーカー行為について警察へ相談していた。
証言内容:高田の友人は以前から
     『桂里奈と必ず一緒になるが、道泊が邪魔』との発言があった事を記憶している。

事件日時:10月21日 2時
被疑者:大熊 正道(67歳、無職)
被害者:道主圭蔵(78歳)
    道主香織(80歳)
状況:強盗殺人にて被害者は全員殺害される。
    殺害現場が防犯カメラに映っており、街中で彷徨っているところ逮捕される。
自供内容:どこか知らない古い村を彷徨っていた記憶はあるがあまり覚えていない。
     この家の人間は常々お金持ちを自慢していて貧乏な自分を馬鹿にしていた。
     道で会って挨拶しても無視をするような人間だったので憎かった。
     いつか殺してやろうと思っていた。
     被疑者として勾留された拘置所内で夜中に衣服にて首吊り自殺。
証言内容:①近所の住人への聞き込みでは、全員が被害者夫婦を
      『いつも笑顔で挨拶してくれる気持ちの良い夫婦だった。
       町内の活動にも積極的で良い人達でした』と答えている。
     ②自殺した被疑者には、近所の住人の証言では、
      『いつもアルコールに酔っていて目つきが悪く気持ち悪かった。
       いつか何か事件を起こしてもおかしくない人間だった』と答えている。

事件日時:11月20日 9時
被疑者:小鹿 隼人(67歳、バス運転手)
被害者:同乗の職員道畑理沙子(26歳)と幼児10名
状況:保育園の通園バスの運転手が突然暴走し、谷底へ墜落し全員死亡。
証言内容:当日朝に小鹿被疑者に不審な所は無かったとの幼児の母親の供述あり。

事件日時:12月20日 23時
被疑者:永源 太一(30歳、看護師)
被害者:入院患者の道下世志明(84歳)
状況:夜勤の被疑者が夜中に患者の点滴静注へ毒物を入れて殺害。
   犯行後、犯人は非常階段から投身自殺。
証言内容:被疑者は前日が久しぶりの休みで趣味の山登りへ行くと言っていたらしい。
      
遼真と真美は最近続くこれらの不穏なニュースが気になっていた。
これらの事件の特徴として
被害者と被疑者に濃厚な関係は無く、
突発的に起こった事故あるいは殺意が原因で
被疑者も被害者も全て亡くなっているという恐ろしい点である。

「遼真様、怖いニュースが続きますね」
「そうだね。犯人と被害者にほとんど何も関係が無いのにねえ」
「同級生もみんな、不安に思っているようです」
「そうなの?
 じゃあ、何が起こっているかを調べる必要があるね」
「宮尾さんや小橋さんも担当するんでしょうか」
「いや、すぐにはならないと思う。事件がお宮入りしてからかな」
「そうでしたね。じゃあ、このたびは二人だけで調べる事になりますね」
「そうなるね。少し京都の師匠へ聞いてみたいと思ってるんだ」
「それがいいですね」

その時、
警視庁迷宮事件係(通称038《おみや》課)宮尾徳蔵警部と小橋光晴刑事は
刑事部屋の中でニュースを見ながら話していた。
「何か不思議な事が起こっていますね」
「そうだな」
「何かイライラして面白くないからとか、
 憎くも無いのに殺すとかおかしい・・・
 いや、憎くても殺しては駄目だけど・・・」
「確かに何か釈然としないよな?」
「ええ、じゃあ、あの二人に聞きますか?」
「いや、犯人はすぐに死んでいるし、
 全て怨恨などからの突発的な殺人事件に決められそうだ。
 だから我々が担当にはなることはないからそんな必要は無い。
 ただなあ、最近不思議な納得できない事件が多過ぎる」
「まあ殺人事件とかはほとんどそうなのかもしれないですね」
「この世の中はみんなギスギスしてて、住みづらくなってきてるのかなあ」