はっちゃんZのブログ小説

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46.新婚旅行、娘と、2

翌日、小樽観光を満喫した。

小樽運河クルーズ」や「北一硝子」などを回り

休憩では「ルタオ本店」を目指した。

有名なこの店の人気商品『ドゥーブルフロマージュ』を食べるためだった。

慎一はコーヒー、静香と美波は紅茶を頼み、ケーキセットを頼んだ。

美波は『奇跡の口どけセット

(生ドゥーブルフロマージュと生ヴェネチア・ランデヴーのセット)』

静香は『ショコラドゥーブル』を頼んだ。

 

・生ドゥーブルフロマージュ

噂通りの美味しさで女子二人は

『美味しいわ、これは太るわ、でもやめられない』と大騒ぎだった。

ふんわり雪のようにとろけるレアチーズケーキ、

しっとり濃厚なベイクドチーズケーキの2層仕立てで

口の中では2層が溶け合い、ふわふわっトロトロの食感が広がった。

・パフェ ドゥ フロマージュ

クリームチーズとカマンベールチーズ、マスカルポーネチーズの3種を

低温のスチームオーブンでじっくりと蒸し焼きにしたもので

見事に3種のチーズが一つになっている。

これも女子二人は『これも好き』などと大騒ぎ。

・ショコラドゥーブル

ドゥーブルフロマージュクーベルチュールチョコを加えたものらしく、

カカオのまろやかなほろ苦さと、チーズの酸味が調和していた。

下層はクリームチーズとスイートチョコを使って焼き上げたベイクドタイプ。

上層はマスカルポーネチーズと北海道産の生クリームを使った

レアタイプの2層仕立てで

これも女子二人はきゃあきゃあ言いながら食べている。

結局、最初から最後まで騒ぎ通しでよく疲れないものだと感心しながら、

本当にうらやましいくらい仲の良い親子だなと感じた。

 

もう夕方が近づいて来ている。

今晩は札幌市内のホテルで泊まり明日に米子へ帰る予定だった。

静香は離れがたいのか美波に札幌にも泊まりにこないかと誘っている。

美波は『新婚旅行なのだから二人で楽しみなさい』と答えている。

『それにこれから毎年北海道に来るつもりなんでしょ?』とも答えている。

どちらが年上かわからないくらいだった。

子供とはほんの少し離れただけで

こんなに大人になるスピードが速いのかと驚きもした。

 

静香が少し席を外している間に、美波が

「お父さん、お母さんすごく綺麗になってて驚いた。

 あんなに笑うお母さんは初めて、きっと今がすごく幸せなんだなって思った。

 お願いがあるの、絶対にずっとお母さんのそばにいてあげてね。

 美波もお父さんみたいに優しい人を探すからね。

 ・・・それと早く妹が欲しいなあ」

そこに静香が帰ってきた。

「美波、本当に帰っていいの?ねえ、あなた」

「お母さん、いいの、お父さんとお母さんは今夜こそ札幌でゆっくりとしてね」

「そう?そうなのね。わかったわ。でも休みになったらいつでもかえってきなさいよ。

 美波の部屋はそのままでマンションに置いているから」

「はーい、ありがとうね。では美波はここで、友達が向こうで待ってるの、じゃあね」

「気をつけてね、美波」

美波が足早に店を出て行く。

少し目が赤いところを見ると泣くのを見られたくなかったようだ。

静香はもう涙してる。

「静香、あの子ももう大人やから、今度は我々が子離れせんといかんのだろうな」

「そうですねえ。でもあの子、元気そうで安心しました」

「そうそう、もしかしたら札幌に転勤あるかもよ」

「そうなの?」

「そう、今、札幌の銀行と提携を進めていて、

 来年春には新たに支店を立ち上げるって。

 日本のどこかから社員が集められるらしいよ」

「じゃあ、来ることになるかもしれないわねえ」

「またまた、子離れ・・・っていったのに」

「ごめんなさい、そうだったわ。

 もしそうならいいなと思ったの。

 札幌に来てあの子の言ってたことがわかったの。

 確かに住んでみないことにはわからないけど、第一印象として札幌は最高ね」

「そうやね、こっちには同期もいるし知り合いもいるし」

「わたし、なにか美波がうらやましくなってきちゃった」

「心配したり、うらやましがったり忙しいねえ、まあ仕方ないけど」

「そういえばそうね。これも神様任せにします」

「そうそう、神様に任せるのが一番」

「きっと、いい方向に行くわ。うん、そう決めた」

「そうそう、美波が妹はまだかって言ってたよ」

「えっ?もう?美波ったら・・・気が早いんだから・・・」

耳まで真っ赤になった静香がうつむいている。

(つづく)