はっちゃんZのブログ小説

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93.特訓2(浅間別荘編2)

今回は別荘に行く前に「河口浅間神社」へお参りし

この度の特訓がうまく行くように必死でお願いした。

この神社は安産や良縁の神様だが、百合との事や様々なお願いの一つにした。

館林家の別荘は「河口浅間神社」と「母の白滝」の間の道から少し入った高台にある。

突き当たりの鬱蒼とした林の中に建っており外面は鉄筋コンクリートの洋館だった。

窓からは真っ白の富士山を映す紅葉に染まる河口湖が目の前に広がっている。

以前来た時は夏だったので湖の様子が異なっているがこちらの方が綺麗だった。

 

百合が豪華な樫の木の扉を開けて入っていく。

それに続き、荷物を一杯に担いだ翔が入っていく。

既に空調は動いていたようで、

部屋の空気もしばらく使わなかったようなカビ臭さも一切無かった。

暖炉にも薪が入っており揺れる炎の暖かい光が部屋を照らしている。

 

二人だけの生活は久しぶりだった。

事務所ビルに生活用の部屋はあるが、

警備用のロボット犬「ロビン」が歩いているし、

事務所にはアスカが常に待機している。

二人ともなるべく気にしないようにしているが

やはり彼らの目が気になって少しは遠慮している。

しかし、両一族の重要人物である二人には

常に優子からバトルヘルメットやテレビなどへ

別荘周りの状況などが送られてくる。

本当の所は二人きりとは言えないが十分に二人だけの生活だった。

 

翔は百合が忙しげに荷物整理をしている間、

暖炉の前のソファーに座ってテレビのニュースを見ている。

いつも見ている番組とは異なる地元の番組が放送されており、

地元情報を中心に穏やかな毎日のニュースが流れている。

整理の合間に百合が「富士桜高原麦酒クラフトビール」を

テーブルに置いてくれている。

ほど良く冷えた瓶の栓を抜くと『シュッ、ポン』と心地良い音がした。

冷えたコップに注ぐと小麦色の液体と真っ白な泡の二層が出来ていく。

とりあえず液体7、泡3の割合の1杯目ができた。

 

ちょうどその時に百合が居間に顔を出した。

「翔さん、荷物の整理は終わったわ」

「お疲れ様。少し休もうよ。今、美味しいビールが出来たよ」

「わかったわ。少し休むわ。ふう、暑いわ」

百合は翔の隣に座った。

翔は急いで2杯目を慎重に作った。

「綺麗なビールね」

百合が嬉しそうに手に持ってコップの壁面を立ち上る泡を見つめている。

「乾杯」

「乾杯」

二人は一緒に飲んだ。

『ゴクッ』

とても美味しかった。

百合の最高の笑顔が翔へ向けられた。

このビールは、女性でも飲みやすいフルーティーな香りと上品な味わいドイツ・バイエルン地方で愛飲されているビールを元に作られたもので、小麦麦芽と上面酵母による濁りとフルーティーな香り、上品な味が特徴で、あまりアルコールに強くない百合にもそれほど多くは飲まない翔にも最適だった。

(つづく)