はっちゃんZのブログ小説

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20.お食い初め

もうそろそろ雄樹と夏姫の100日のお食い初めが近づいてきている。

歯固めの儀式用に北海道神宮内で

誰も踏んでいないと思われる場所の白い小石を6個拾い綺麗に洗い乾燥させた。

スーパーマーケットで真鯛2匹を買い、お食い初めの準備をした。

静香が真鯛の塩焼き、お味噌汁、高野豆腐や大根の煮物、ダシ巻卵や赤飯を作り

塗り物の膳2つへ盛り付けていく。

ちょうど顔を出した美波へビデオ係をお願いし、雄樹と夏姫を抱っこして

『子供が将来、食に困らないように。また、健やかに育ちますように』と祈り、

慎一は二人へ交代で祝箸を使ってお食い初めの儀式を始めた。

静香が二人の近くで姿勢が崩れないように支えている。

二人とも興味津々で箸や食べ物をじっと見て口許に来ると舐めている。

初めての味のはずなのに変な顔もせずに舐めていく。

『どうやらお父さんに似て食べ物が大好きかも』と美波が笑っている。

膳の赤飯1粒を二人の口に入れて、最後の『歯固めの儀式』で終わった。

 

まだ生まれてほんの3ヶ月なのにこんなに多くの儀式があることに驚いた。

自分が父親になって初めてわかったことだった。

子供たちの一日一日大きくなる姿を見ていると本当に愛おしく思えるのだった。

夫婦とはこういう歴史を積み重ねていき、年をとっていくのだと感じたが、

新人パパの慎一にはまだまだその実感はなかった。

 

やがて12月に入り美波が冬休みとなり、

高校受験を目前に迎えた中学生の家庭教師に力が入り始め、

家へ帰る回数が減ってきている。

北海道神宮に参拝した時も、

合格祈願として絵馬奉納とお守りを買って、

家庭教師の女の子へ贈っている。

 

根雪となる雪が積もり始める頃には

早いものでもう子供たちの首が座りはじめている。

そっと座らせるとしばらくじっとしているし、

うつぶせにしても顔を上げたままにでき始めている。

ある時、雄樹が寝返りを打ちそうになっている。

慎一が『がんばれ、がんばれ』と励ましていると

夏姫も同じようにし始め、二人殆ど同時に寝返りをうった。

当然二人とも元には戻れず顔を布団に置いて泣き始める。

二人を一緒に抱き上げてあやしていると二人の機嫌が直る。

 

『二人とも大きくなってきているので母乳だけでは足りなくなってきているの』

と静香が喜んでいる。

最近は昼夜逆転していないので静香も少しは楽になったようで顔色もいい。

お腹を空く時間も時間差でやってくるのでまだましだった。

最近は紙おむつがあるので便利だが、

自分の時代が布おむつだったことを考えると

母親や父親に対して感謝する気持ちが芽生えてくる。

子育ては決して一人ではできないほど大変なことだった。

それを静香はずっとやってきたことを考えると頭が下がる思いだった。

(つづく)