はっちゃんZのブログ小説

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98.特訓7(浅間別荘編7)

翌朝からのランニングは、熊の出現を警戒して滝へのコースは避けた。

警察にも連絡し間違って観光客が立ち入らないように注意を喚起した。

万が一に備えて、優子の指示で

アスカが警備犬のロビンをバトルカーに乗せてこちらへ向かっている。

熊の出現に備えてロビンを別荘周りの警備をさせるつもりだった。

アスカは別荘駐車場のバトルカー内で待機させることとした。

 

ランニングコースは、より体力を付けるため河口湖畔1周コースとした。

早朝の山間部特有の清浄な冷たい空気が肺を刺激し気持ちよかった。

湖面は淡い靄が漂っている。

太陽の光が湖面を照らし始めると、靄が次第に動き始めいつの間にか消えた。

鍛錬の時間は、長距離ランニングを追加し3時間に変更した。

 

テレポーテーションの訓練は、

観光客や地元民の目を避けるため別荘敷地内でしている。

太い杭を何本も打ち、それを敵に想定しながら『跳ぶ』訓練であった。

短距離(数メートル)の跳躍ならば2回でも動きが止まることはなかった。

ただ使えば使うほど動きが鈍くなることはどうしても避けられなかった。

最初はただひたすら走って体力を付けて、数メートルの短距離移動の回数を増やし、

跳ぶ感覚に慣れることと筋肉や反射神経の低下の程度を身体へ覚えこませた。

 

『跳んで』は、拳の連打(正面からの顔面と腹部への連続突き、側面からも同様)

『跳んで』は、蹴りの連続(正面から顔面と腹部への連続攻撃、側面からも同様)

『跳んで』は、手刀の連続(後背部からの後頚部又は頚動脈への連続攻撃)

徐々に跳ぶ感覚も身体が覚えて来ている。

そして跳んだ後の脱力感で倒れこむことは無くなってきた。

最終的には跳んだ後も通常の動きが出来るようにすることが必要だった。

しかし、一朝一夕では簡単には出来ることではなかった。

それから2週間経ったが、残念ながら大きい変化は見られなかった。

どうしても体力が大幅に削がれ動きが鈍くなることは避けられなかった。

跳んだ後の筋肉の痺れと倦怠感が残る弱い戦闘力では敵と戦うことは出来なかった。

 

百合から『葉山のお爺様に聞けば何か突破口があるかもしれないわ』の提案があった。

翔としても賛成するしかなかった。

それ以上の方法が全く思いつかなかったからだ。

館林家頭首の館林隆一郎翁は、

興味深げに百合の話を聞き、『すぐに来るように』と答えた。

とうとう今夜が二人きりの最後の夜になる。

ついつい二人はいつもより深く、いつもより長く愛し合った。

(つづく)