はっちゃんZのブログ小説

スマホの方は『PC版』『横』の方が読みやすいです。ブログトップから掲載されています作品のもくじの章の青文字をクリックすればそこへ飛びます。

99.特訓8(葉山編1)

翌日早々にバトルバイクで葉山の館林邸へと急いだ。

アスカとロビンは新宿の事務所までバトルカーで帰って行った。

翔は背中に触れる百合の感触から昨晩のことを思い出しては密かに喜んでいる。

百合は百合で大きな背中に頬をつけて昨晩の幸せをかみ締めていた。

彼に抱かれはじめてから、昨夜初めて意識が遠くなった経験をしたからだった。

週刊誌の情報や友達からは色々と聞いていたがあまりよくわからなかったし

今のままでも十分に幸せで特に不満もなかった。

そういうものは人それぞれだと思っていたが、

本当にそんな風になることを知ったのだった。

 

身体の奥深いところに彼の熱さを感じた瞬間、

その奥深いところから全身へ痺れに似た感覚がひろがり、

身体が空中に浮かぶような浮遊感があった。

その時に必死で彼に抱きつきながら何かを叫んだようだが覚えていなかった。

その時、目の前が白くなり急に全身に力が抜けてしまったのだった。

全身がポカポカして気だるくて幸せな気持ちが続いている。

百合は少し恥ずかしかったけれど

愛する彼と一緒に今までより

もっと深い関係になれたような気がして嬉しかった。

真っ白い富士山から吹いてくる冷たい風も二人には何も感じていなかった。

 

河口湖を出発し東富士五湖バイパスを南下し、御殿場、箱根、小田原を越え、

西湘バイパスへと走ると湘南の海が広がっている。

もう湘南の海も冬の色となり始めている。

浜風も強く、細かい砂をヘルメットへ飛ばしてくる。

打ち寄せる波も大きくなり、

サーフィンやウィンドサーフィンを楽しむ姿もちらほら見える。

江ノ電線沿いにある湘南鎌倉高校を通り過ぎるともう館林葉山邸は目の前である。

 

館林葉山邸に着くと二人は隆一郎翁に挨拶をした。

しばらく翔の話を聞いていたが、

「とりあえず道場でその能力とやらを見せて貰おう。

 道着を用意しているのでそれを来て道場へ来なさい。

 今日は京一郎も呼んでいるので、一緒に来なさい」

 

翔は道着に着替えて道場へ向かった。

京一郎はいつものように白衣を着て壁際で座っている。

翔が神棚に参拝して正座して待っていると隆一郎翁が現れた。

百合は悠香婆と一緒に心配そうに翔を見ている。

 

「では、翔君、始めよう」

「はい」

その瞬間に、隆一郎翁の横へ『跳んで』攻撃をした。

「・・・」

隆一郎翁は予想していたように軽く裁いて翔を壁板へ叩きつけた。

一瞬で勝負がついた。

「翔君、この力は全く攻撃技には使えない。

 君の目の動きで君の跳んでいく方向がわかるので次の攻撃を予想しやすいね。

 それに君が危惧しているように攻撃スピードが遅くなる」

「そうなのです。せっかくの力なのですがあまり意味がないのです」

「意味がない訳ではない。

 例えば遠距離の敵の背後へ跳んで攻撃するとかは大丈夫と思う。

 敵は君がいる筈がないと思って油断しているのでそのスピードでも可能だな」

 

次は、隆一郎翁が道場の隅へ行き、目を閉じて立っている。

翔が反対側の道場の隅で待機している。

「では、始めよう」

翔は隆一郎翁の背後へ跳んだ。

翔が攻撃しようとした瞬間、またもや壁板へ叩きつけられた。

「ほう、気配が背後に一気に湧いてくる。

 確かにこれはいい技になる。ただスピードが話にならない」

「これが精一杯のスピードなのですが、やはり駄目ですね」

何度か同じ場所から跳んで攻撃したが全てかわされて壁板へ叩きつけられた。

(つづく)