はっちゃんZのブログ小説

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123.首都を防衛せよ10

スーパーコンピューター優子に戦況を聞くと

上陸阻止部隊は苦労しながらもなんとか阻止できているようだった。

このまま行けばうまく阻止できると考えられた。

潜水艦3隻は潜航が不可能とはなったが、

こちらへ向かっている大型船舶の戦力はそのままだった。

 

大型船舶も潜水艦を守るべく目の前に迫ってきている。

その時、

最初のミサイルを発射した隊長艦と思われる潜水艦のハッチが開かれた。

各潜水艦のハッチが開かれて乗組員が脱出準備でゴムボートが水面に落とされている。

翔が乗組員の脱出を邪魔しないように備え付けの大口径銃で撃って来る。

翔の足元の部分が削れることも物ともしない。

潜水艦は深海の強烈な水圧から守るため

壁に傷はつけることは考えないものなのに平気で傷つけてくる。

もう潜水艦を放棄する事が前提のような行動であった。

 

その時、優子より敵潜水艦に残された全ミサイル発射の可能性について報告があった。

確かに隊長艦に残されたミサイルを使わない手はないからだった。

優子は、急いでその意識を移す人工衛星の近くに浮かんでいる

戦略兵器を積んだ人工衛星支配下に置いた。

その人工衛星はある宇宙強国所有で宇宙空間からの地上攻撃も可能なものだった。

優子は攻撃目標をこの隊長艦を始めとして残りの潜水艦と軍艦となるよう調整した。

そして、すぐに翔へ大井埠頭のバトルカーへと跳ぶように指示があった。

 

それと同時に宇宙空間では

攻撃型人工衛星の側面パネルが太陽の方を向き、大きく開き始めた。

太陽と垂直にパネルが大きく開いた時

莫大な太陽エネルギーが瞬時にパネルの中央部の空間の一点へ集まっていく。

それが眩しいくらい光る大火球へ育っていく。

そのエネルギーが頂点に達した時、

それは地表のある一点へと放出された。

 

乗組員が避難している途中、

『ガゴ、ガゴ、ガゴ』と

潜水艦のミサイルサイロの蓋が開かれた。

もうすでに発射態勢に入っている。

ミサイルが発射される瞬間、

それは天空から降ってきた。

 

真っ青な空に浮かぶ雲が、白く輝き一瞬で蒸発していく。

空から直径50メートルの白い光の柱が降りてくる。

まさしくそれは眩しく輝く光の槍だった。

その槍が潜水艦のミサイルサイロへと突き立った。

 

『天空の光槍』

その槍が潜水艦に突き立った時、

一瞬、船体が真っ白に光り、

ミサイルサイロやミサイルは炎で炙られた飴のように溶けていく。

その熱さでミサイルが大爆発を起こしていく。

そして、船体が真っ二つに折れて沈んでいく。

残りの軍艦や潜水艦にも次々とそれは突き立っていく。

 

大井埠頭に跳んだ翔のゴーグルの映像は、

精神保護モードとなって切り替わり、

それらの光景は映らなかったはずだった。

このモードは人間の心が傷つくと判断される場合は、

その心を守る意味でスーパーコンピューターである優子が代行で実施し、

その光景を人間には映さないようにしているものだった。

 

だが、翔は跳ぶ前の一瞬ではあったが

肉眼でその地獄のような光景を見てしまった。

阿鼻叫喚の世界だった。

光の槍に飲み込まれた人間は

瞬時に燃え、炭となり、内部圧で爆発し四散し、

その炭の塊でさえも高熱で分子レベルに分解されていく。

 

戦闘の名残の水蒸気が風に飛ばされたその海域には、

何もない静かな蒼い水面だけが漂っていた。

(つづく)