美波は部屋を大体片付け終わったので昼前に小樽へ帰った。
電車の中で昨夜の双子ちゃんのことを思い出し、
お母さんが今の私と同じ年齢で身ごもったことを思い出した。
私が生まれて数年暮らしてお父さんが亡くなり美波を一人で育てた。
それは今の自分には想像もつかないくらいの長い時間だった。
今でこそ娘の私が『お母さんが可愛い』と感じるくらい変わったが、
小さい時から強い母しか見ていない美波は戸惑いを感じている。
それほど母にとっては厳しい世の中だったということと理解した。
お父さんにしても、母と結婚してくれてすごく嬉しいが
死別した相手を持つ女性を妻として迎えることのできる心の強さにも驚いた。
そして、今も仏壇を持ってきている。
美波もお父さんみたいな心の強い男性を見つけて、
母のように強くなりたいと思っているが、
実際に母と同じ経験をして同じことができるとは思えなかった。
二人の長い間夫婦として暮らしたような溶け込んだ雰囲気を感じて、
ジェラシーに近い感覚を感じる自分もいることに気がついて驚いている。
赤ちゃんたちも生まれることだし、
私にある母との双子感覚を捨てる必要があると感じた。
私を見送る時に涙を浮かべる母を見て、こちらも強がって笑っている。
しかし、本当のところは二人が札幌へ来て、ほっとしている自分もいる。
(つづく)