日本国憲法には「緊急事態条項」がないため、
こうなると総理大臣も身動きが取れない。
『国民の命と財産を保護するための行動』を発動することができない。
憲法改正反対をしてきた勢力は、こういう事態を想定して、
憲法改正反対をしてきたと思える節がある。
多くのテレビ局では、政府が隠しているにも関わらず、
多くの特別番組が組まれ、世界市民を推進する評論家などが
「日本人は平和を好むので誰一人として戦うべきではない。
平和憲法がある限り日本人は戦ってはいけない。
おとなしくしていれば命は保障されます。
敵に抵抗してはいけない。
この革命により新しくなった日本で幸せになりましょう」と連呼されている。
街中では、戦闘服らしき服装で叫んでいる男の口から
「この革命でこの国は新しくなる。
腐った政治家によって腐敗しているこの国を作り変えよう。
今度の新しい日本では、俺は隊長の約束を貰っている。
日本国民よ、諦めて我々に投降しなさい。
我々は今度こそ戦勝国国民になるのだ」と叫んでいる。
またある集団の女性の口からは
「若い人は警察へ抵抗しなさい。年寄りは抵抗して死になさい。
それこそが新しい日本の礎となるのです。
新しい日本のためには日本人の血が必要です。
抵抗する者を殺しなさい。
きっとあなたは新しい日本の指導者になれます。私が保証します」と叫ばれている。
警察や政府関係施設は、
朝から夜中まで市民からの電話で謝罪と説明の対応に追われている。
警察は原発や港などテロ重要拠点の警備に人員を裂かれ、
市民の安全まで目配りができていない。
ただそんな中でも、きちんと規則を守り暴動にまで発展しない日本国民が多かった。
もしかしたら状況が把握出来ていないためと、今まで表立っては話されていなかった他国の侵略行為に目を瞑って気付かないふりをして、偽りの平和な生活が続くと考えているのかもしれなかった。
在日米軍横須賀基地には、日本独立革命軍(JIR)より打電があった。
「これは日本国内の内戦であり日米条約の限りではありません。自衛隊も我々の同志
が抑えており現在動くことが出来ません。もし米軍として反撃するならば、あなた
達とそのご家族は責任持てない事となります。我々はあなた達とその家族にいつで
もミサイルを撃ち込む事ができます。動かない方が身のためです」と脅迫があった。
本国から指示がないので米軍としては動くことは出来ないが、自衛隊も抑えられている事態を知り愕然としていた。基地上層部としては米国兵士とその家族を守るために日本政府や自衛隊への協力に動くことが出来なかった。
スーパーコンピューターの優子から次々に指令が出されてくる。
葉山研究所内ドッグから静かに、
公海上の潜水艦へ『イルカ型ロボット(=ドル)』が10体放たれた。
ドルは体長5メートルの表面を人口皮膚で覆っており一見本物と区別がつかない。
ドルは自然な泳ぎで一直線に潜水艦へと向かっていく。
仮にレーダー探知されてもロボットとは気がつかない精巧な作りだった。
潜水艦を周回しながらそっと腹部に格納された『ウニ丸』を海中へ放っていく。
ウニ丸は、直径5センチ程度の大きさでドル1体には3000個格納されており、
波に揺れながら海水面下を磁性体に向かってそっと移動していく。
仮に磁性を消した船体でもドルが誘導波を出しているので接着していく。
浮上している潜水艦の喫水線以下に沈みながら
そっと船体壁面やスクリューの羽根部分や根元部分へ接着していく。
針の先端部分から熱線が発射され溶接され全体が船体部分に食い込んでいく。
これで潜水艦は行動が不能になりどこに行っても探知される事となる。
さて大井埠頭では
偵察及び武器投下用ステルス機『ホーク号』による情報収集が続いている。
『ギギギギギー』
沖で停泊しているクルーズ船から異音が地響きと共に足元から響いてくる。
大きな扉が開くような重い音だった。
しばらくすると地の底から、
『ズシーン、ズシーン』
と重い響きが徐々に近づいてくる。
上陸阻止部隊は、じっと固唾を呑んで海面を見つめている。
波立つ海面から水煙を上げながら、
蟹の甲羅のような上半身に続いて、
二足歩行の上背20メートルの大型ロボット3体が姿を現した。
両肩に2基のキャノン砲が見える。
側面には鋏型の両手があり捕まればまっぷたつにされそうだ。
それと同時にクルーズ船の側面ハッチからは
20艘ほどのゴムボートも発進しており、
各ゴムボート上には10名程度の獣人化兵士と機械化兵が見える。
甲板ハッチからもヘリコプターも発進しようとする気配もある。
甲板から上がってきた大砲の砲塔がこちらを向いている。
大型ロボットとゴムボートが近づいてくるには若干の時間がある。
AI学習型人型ロボットのレイ、アイ、アスカの3姉妹は、
砲弾をも弾き返す分厚い盾や砲弾の衝撃を吸収する網を持ち、
頭・肩・胸・脚部を盾と同じ素材のパーツで保護したバトルスーツを着込み
上陸阻止部隊の最前線に散開している。
(つづく)