はっちゃんZのブログ小説

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16.真の敵との戦い1(第2章:いつまでも美しい女)

魔法王ソロモン王の瓶から取り出された胎児の頭部の骨に
大天使ラファエルの癒しの水が捧げられて元の胎児の姿に戻り母親のお腹に戻った時、
「うっ、ラファエルめ、
 よくも俺様の依り代を・・・
 我の力の源が・・・
 まさかあの女と同じ依り代とは思わなかった。
 あの方も迂闊なことをしてくれる。
 まあ子供を一人でも食べれば元に戻るからいいか」
と藤原は洋館へ走っていく。
「そうはさせるか」
翔が藤原の前へ立ち塞がった。
「お前、邪魔をするな。殺すぞ」
「お前に子供達は殺させない」
「ふん、小僧、邪魔だ。
 いつまでもこの格好だからいつもの力が出ないのだ」

藤原の身体がむくむく大きくなり、頭に牛の様な角が生えてきた。
大きな目が開かれ、口は耳まで裂けて、
太い舌が口の周りを舐めまわされてサメの様な歯が見えた。
悪魔モロクがついにその醜悪な姿を現わした。
目の前に『手に巨大な剣を持つ王冠を被った牛の顔を持つ魔神』が現れた。
その身長は3メートルほどだった。

その時、須田さんから声が聞こえて来た。
『天使長ラファエル様からの御加護で
 あなたの身体に能天使の力が宿ります。恐れずに受け入れて下さい』
能天使の力?・・・ありがとうございます」
翔の頭の上に大天使ラファエルの持つ皮の水袋が傾けられた。
突然、温かい何かが須田さんのいる胸から流れこみ全身へ広がっていく。
翔の身体が白く大きく輝き、
鎧もファイタータイプから聖戦士タイプの鎧と変化し、
その身体が高く大きくなり悪魔モロクと同じとなった。
「うぬ、能天使の力が顕現したか。
 待っていたぞ。
 今度こそお前を倒す。
 そして地獄で自慢してやるわ。
 フンフン?
 それにお前の身体からもう一人の嗅いだ事のある匂いがする。
 そうか、この匂いは・・・
 魔法陣の生贄にしようとした男がいたが
 その身体に神の匂いがあったから使えなくて、あの湖に捨てた男だったな。
 まだこの世に居たのか、再びあの湖へ捨ててやるわ」
力天使の力が宿った翔は、
手に金色の盾を持ち、
腰には金色に輝く鞘に入った剣を持っている。
翔はゆっくりとその剣を抜いた。
その剣の|刃《やいば》は、炎を纏っているのが見えた。
ただ天使の力の顕現が急だったため、
翔としては自分にどれほどの力が宿ったのかが全くわからなかったため一瞬戸惑った。

その瞬間を隙と見えたのかモロクが攻めてきた。
「破邪の剣か、その炎、今度こそお前の血で消してくれるわ。おりゃあ」
思わず『ガキン』と盾で防ぐ。
しかしすごい圧力で上から押さえてくる。
ここで力任せに上へ跳ね上げれば、その隙に腹部を狙われる恐れがある。
そこで押さえられる振りをしながら身体を下げていった。
「ふふふ、やはりお前達は力が弱いな。
 そらそら、潰れてしまえ」
モロクは技も何もない単なる力任せに剣を落としてくるだけだった。
確かにこれほどの力があれば技は必要なかったのかもしれないし、
仮に再生が可能ならばあまり傷つく事を気にする必要は無かった。

翔が充分に引き付けてから、スルリと盾の力を抜いた。
モロクの態勢がやや前のめりになってたたらを踏んだ。
「ととと、すばしっこい奴め」
それと同時にモロクの方へ転がりながら踏み込む左足を切り落とした。
『ギャアー、なんだ今の攻撃は、今まで神はそんな攻撃はしなかったぞ」
翔は新しい身体がとても軽く素早く強い力で動けること、
そして破邪の剣は軽く振るだけで簡単に相手を切断できることを確かめた。
モロクは切り落とされた足を再びくっつけようとしたが、
切り口から激しい炎が出て再生はできないようだった。
切られた足を翔に向かって左手で投げつけて来た。
翔はさっと投げられた足を避けながら、
すばやくモロクの傍に身を寄せると
膝を付いたモロクの剣を持つ右手の手首から先を切り離し、
すぐさま反対側へ周り、
太い左腕を根元からズバッと切り落とした。
そして最後に
後頭部から武士の介錯の要領でその太い首を切りとばした。
首の皮一枚を残そうと思ったが、
もしすぐにくっつけられても困るので皮は残さなかった。
首の無い巨大な身体が立っている。
肩や手首や首の断面から紫色の血液らしきものを大量に噴き上げながら倒れた。
須田さんから
『モロクの頭を剣で突き刺してください。復活されると厄介です』
翔は近くに転がっている大きな王冠のある牛の頭の天辺から剣を差し込んだ。
「ギャー、強い。お前は何者だ」
「ふん、これがお前の馬鹿にしてた人間だよ」と答えた。
破邪の剣で刺し貫かれたモロクの首はやっと沈黙した。
首以外の肉体は、そこら辺りに散らばっていたが、
剣の切り口から破邪の炎がでて燃えて消えていった。
「遼真、こちらは片付いたよ。
 今、須田さんの指示で首に剣を突き刺した」
「翔兄さん、大変でしたね。
 でも悪魔が死ぬ事はありませんので注意して下さい」
「そうなのか?」
「ええ、封印するか地獄へ送るかしか無いのです。
 地獄に送っても儀式で呼び出されるとまたこの世に出て来ます」
「えっ?じゃあ、こいつは消滅させられないならどうするんだ?」
「封印するしかないと思います。
 本体の頭を封印しなければならないので剣を離さないで下さいね。
 こちらは美真野姉弟に憑依した女性と神父の霊は送れました。
 女性は天国へ、神父は地獄へ送られたようです。
 ある程度は片付いたので地下室へ来てください」
「須田さん、ありがとうございました。おかげであの悪魔を倒せました」
『いえいえ、桐生さんが元々強かったからですよ」
「いえいえ、僕はまだまだです。じゃあ行きましょうか」
剣に頭を差し込んだまま肩に担ぎながら地下室へ向かう。
耳元ではモロクが
『今度会ったらお前を苦しませて絶対殺す』と気弱に叫んでいる。

地下室のドアを開けてへ翔と須田さんが入ると、
ドアの内側には新しい御札が貼られている。
遼真からすぐに連絡があった。
「兄さん、今、結界専用の御札をドアに貼っているので
 この地下室からは悪魔や悪霊は出ていく事ができません」
遼真達の場所へ着くと
元の魔法陣とは別の場所に新しい魔法陣が描かれている。
「兄さん、モロクの首を剣に刺したまま
 その新しく僕が描いた魔法陣の3時の部分へ置いて下さい。
 その魔法陣は封印専用の物ですからもうモロクはそこから出れません」
「わかった。ここでいいんだな。お前、もう出て来るなよ」
と剣を突き刺したモロクの首を魔法陣に入れた。
「遼真、さっき『ある程度は終わった』と言ってたけど、まだあるのか?」
「ええ、一番厄介な奴がまだ残っています。だからラファエル様もまだいます」
「そうなのか?壁は壊れてるし、あとは元の魔法陣と赤い油絵しかないけど」
「神に2番目に近い力天使でありながら堕天し悪魔となったベリアルよ。
 そっと隠れていれば気がつかないと思っているのか?
 お前がここに居ることは、最初からわかっていた。
 お前を再びこの『魔法王ソロモン王の瓶』へ封印する」
「ほう、俺様を知っていたのか?
 ここに隠れていたら終わったと思って安心して
 すぐにここから居なくなると思っていたが意外だったな。
 そばにラファエル様がいると思っていい気になるなよ。
 お前達、我のために戦うのだ。
 我らは軍団、そしてここには憑依できる人間がいる」