はっちゃんZのブログ小説

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24.突然の辞令

お盆休みの前に京都支店の同期から

『突然家業を継ぐことになった』との連絡があった。

親父さんがこのお盆前に突然脳卒中で亡くなり、銀行を辞めるしかなかったそうだ。

会社の都合で非常に変則だが、8月末をもって銀行を辞職することとなった。

そいつは慎一が目標とするくらい仕事の良くできる同期だった。

京都支店の新規開拓担当で京都支店は相当に困っているらしい。

 

お盆休みにゆっくりとして、出勤すると支店長へ呼ばれた。

同期の後釜として京都支店に行くように言われた。

突然のことに驚いていると、

この異動は得意先の要望でもあり特別なケースだと言われた。

 

以前神戸支店勤務の時、新規開拓で成功した大きな繊維会社が、

今度新しく京都へ出店するとのことで、

以前の担当で信頼できてすごく真面目だった日下さんをお願いしたいと要望された。

京都支店長は将来の頭取候補の最有力と言われている人なので、

山陰支店長も断るわけにはいかなかったようだ。

成功した暁には山陰支店の支店長代理として迎えたいとも言われ、

9月1日に特例の異動となった。

 

それからは、現状の業務の引き継ぎと通常業務をこなしながらの毎日となった。

静香さんにも『今度の23日土曜日に部屋で話したいことがある』と伝えている。

ほんの少し前、お盆前までは全てが順調で楽しい日々が続いていた。

それが急な異動で大きく環境が変わってしまった。

 

23日土曜日朝10時頃に静香さんが部屋へ来た。

慎一は何から切り出していいものかわからず、

いつものようにとりあえず『静香スペシャル』を作った。

二人でコーヒーを飲みながら、急な異動の話を伝えた。

静香さんは驚いたようだったが、

31日日曜日朝10時に米子駅から岡山へ行き、

新幹線で京都まで向かうことを確認し、

30日の夜は後藤家へ泊まるように依頼された。

そして『美波には静香が伝えるのであなたからは言わないように』とお願いされた。

慎一は静香が冷静なことを意外に感じた。

ただ彼女の顔にいつもの微笑みは一切なかった。

 

今夜は仕事が残っていること、日曜日も同様で家には行けないことを伝えた。

次の月曜日からは、晩ご飯は必ずさざなみで食べては銀行へ戻る生活が続く。

夜遅く家に帰れば引越の準備が待っている。

美波ちゃんは月曜日以降さざなみに顔を出さずにいるようだ。

(つづく)