翌朝、朴川専務が必死にニュースを探すも
『女子高生による銀座タワーマンション飛び降り自殺事件』はなかった。
マンションの敷地を散歩するも一切痕跡はなかった。
試しに学校へ保護者を装い電話を掛けるも元気に登校しているらしい。
組織の掟として「失敗」=「死」である。
あの高さから飛び降りて助かるはずはないのだった。
しかし、なぜか彼女は助かった。
初めての失敗であった。
依頼主からは前金として半額の500万円が振り込まれており、
社長へは『処理済』の報告をしている。
このままでは自らの命が危ないと感じた朴川の脳裏に浮かんだのは、
いつも自分の身体を舐めるようにじっと見てくる『ヘビ男』の顔だった。
朴川は急いで『ヘビ男:邪悪(ジャーク)』をマンションに呼んだ。
口止めも含めてヘビ男へそのすばらしい肉体を提供して女子高生の殺害を依頼した。
『ジャーク』は、この前の事務所襲撃のミスでこっぴどく叱られており、
今度のミスは『死』だと社長の華田から厳命されていた。
ジャークが、白川邸付近へ身を潜めている。
どうやら白川邸の寝静まるのを待つつもりのようだ。
白川邸は、今夜も父親は帰ってこないため女二人である。
朴川から『娘も母親も一緒に首吊りにてあの世へ送れ』との指示を貰っている。
ジャークのずっとニタニタした顔からは、
朴川専務の作られたすばらしい身体を堪能した余韻に浸っていることがわかった。
『殺すのだから母娘は好きにしていい』と言われているようだ。
やがて白川邸の部屋の灯りが消えた。
ジャークは身体をヘビに変体させて広い庭を横切っていく。
「おい、もう良い子は寝ている時間だぜ」
「?!」
「俺の顔はもう忘れたのか?」
「お前は、あの探偵。なぜここがわかった」
「お前の身体にはGPS付きの針が身体深くに打ち込まれているのさ」
「なに?くそっ、こうなれば今度こそお前を殺す。組織の敵め」
「出来るものならね。おいでヘ、ビ、お、と、こ、君」
「その言葉が、お前の遺言ね」
(つづく)