はっちゃんZのブログ小説

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129.学園を守れ5

新聞やテレビが東京都における犯罪集団の原因である「倉持組下部組織小銭組」「倉持組下部組織新宿小金組」壊滅を大仰おおげさに報道し、世論も警察の行動に拍手喝采であった。

校内においてもその報道と学園関係者の不適切な関係に対する噂などが拡がり始め、校長や事務長、そして教頭は、日に日に顔色が悪くなり、毎日落ち着かないようだった。

そんな折り、校長、教頭、事務長を理事長が一人ずつ理事長室へ呼んだ。

 

校長がオドオドと顔を出した。

理事長が校長をソファに座らせる。

「校長先生、私の用件はご存じですね?」

「は、はい、大変な事をしてしまい申し訳ありませんでした」

「何をされたのか、ご自身の口からお話頂けますか?」

校長は、生徒会副会長の黒木との出会いから肉体関係になった経緯、そして昨夏妊娠が発覚し事務長があるルートから闇医者の情報を入手し堕胎させた。ただそれを暴力団に知られ脅され、学園の経費を上納金として納めていた。現在も肉体関係は続いていることを話した。

「それであなたはどうしますか?」

「はい、ここまで来れば辞めるしかないと思っています。

 生徒達が動揺してもいけないので

 私の退職は卒業式が終わった頃でいかがでしょうか」

「あなたは何を言ってるのでしょうか?

 退職?卒業式?

 そんな教育者みたいな事を言っていますが、

 もうあなたは教育者でさえもないですよね?

 退職とか言ってますが、退職金が出ると思いますか?

 あなたを警察に叩き出さないのは私の恩情ですよ。

 あまりにいい気になり過ぎていませんか?

 学園としてはあなたに損害賠償を請求してもいいのですよ。

 あなたは今日、家庭の都合で突然退職します。

 もちろん退職金は出ません。こちらが欲しいくらいです。

 あなたの規定の退職金では全然足りないのですがこの際それは無しにします」

「今日?あまりに急ではないですか?」

「そうですか?あなたに選択する権利は無いです。

 現在、館林の弁護士があなたの奥様にお会いして、

 この経緯を書面にして渡しています。

 家に帰って奥様と今後の事でもご相談くださいね。

 では、これにサインして本日中にご自身の物を持って帰ってください」

「教職員の方々への挨拶は?」

「だから教育者でもないあなたが、教育者へ何を話すのですか?

 武士の情けでこのような方法を取っています。わかりましたね。では」

校長は項垂うなだれて、書類へサインするとその場から足早に出て行った。

 

次に事務長が呼ばれた。

事務長は去勢を張った感じで落ち着いた風にソファへ座った。

「事務長、あなたから何かお話はありますか?」

「理事長、校長に続いて私までお呼びになって何かございましたか?」

その白々しい態度に理事長は、学校運営資金の裏帳簿のコピーを見せた。

事務長は一瞬、目をみはり、呼吸が荒くなると

「これは校長に命令されて行ったもので私は脅されたのです」

「いえ、このコピーを見て下さい。

 痴漢事件の示談金500万円がこの月の経費で作られていますね」

「あれは私がヤクザに騙された結果です」

「それがどうしました?それが学園のお金を使う理由にはなりません」

「いえ、学園の事務長が痴漢と新聞沙汰になっては学園が困ると思い」

「もう言い訳は結構です。

 それにこの写真の女性、ご存じですね。

 あなたも一緒に映っていますから知らないとは言えないですね。

 現在、この女性にもだいぶん融通していますね。

 それに奨学生には減額になったと嘘を言っていますね」

「それは・・・」

「あなたの行為は背任罪です。警察にそのまま渡してもいいのですが」

「それは困ります。申し訳ありませんでした。何とかお慈悲を」

「最初から校長の様に素直に認めれば穏便な方法も考えたのですが

 あなたの盗人猛々しい態度には呆れました。本日をもって懲戒解雇とします。

 あなたは本日中に自分の物を持って帰ってください。

 今後、この学園の事を外部で口にするようだったら

 それが判明次第、背任罪として警察へ届けますからそのつもりで。

 ちなみにあなたの奥様には現在、

 うちの弁護士が面会し書面にて今回の経緯を知らせています」

事務長は、真っ青になりフラフラとした足取りで出て行った。

 

最後に教頭が顔を出した。

教頭は表情は一切変わらずに

「校長や事務長の顔色が真っ青になっていましたが何かございましたか?」

「ええ、校長と事務長は本日、学園を辞めていただきました」

「えっ?年度末の大変な時に、卒業式もあるのに困ったものですね。

 わかりました。私が校長代理でさせて頂きます。

 4月からはなるべく早く校長にして下さいね」

「いえ、それはありません」

「はい?学園として困ると思いますよ。生徒が不安になって」

「大丈夫です。それはそうとあなたはなぜ私に呼ばれたかわかりますか?」

「いえ、全くわかりません」

「あなたの生徒に対しての他校への斡旋についてです」

「何の話でしょうか?全く意味がわかりません」

「もう調査はついていますから認められては如何ですか?

 あなたの銀行口座も確認しました。

 今までのこれだけの斡旋金が振り込まれています」

「えっ?

 あ、くそー、バレたか・・・

 じゃあ、理事長、今から話し合いをしませんか?」

「何の話し合いですか?」

「これは学園の恥部だから週刊誌はすぐ食いついてきます」

「口止め料という訳ですか?」

「物分かりがいいですね。困るのは理事長ですよ。

 僕は今まで知った色々な事を記者にしゃべるだけですから」

「今度は脅しですか?」

「そう取られるのはあなたの考え方次第ですが、

 もっと大人の考え方をしましょうよ。

 あなただって、責任者として理事長職を罷免されたら困るでしょ?」

「ほう、あなたはまだこの学園にいるつもりなのですね」

「それもあなた次第。私の口を止めるのもあなた次第です」

「学園に大変な損害を与えた上に、まだ強請ゆすろうとしますか。

 もはやあなたには話す事は何もない。これを警察へ渡します」

机の上に、

「コカインを鼻から吸引して陶然となっている教頭の顔つき」の写真が置かれた。

教頭は、

一瞬息が詰まり真っ青になり、

次の瞬間

「この野郎、死ね」

と理事長へ掴みかかってきた。

理事長は、

「下郎、何をする。無礼者」

掴みかかってきた教頭を捕まえると強烈な背負い投げで床に叩きつけた。

『ドーン、ベタン』

と大きな音がして部屋の壁に掛けられた額が大きく揺れた。

教頭は大の字になって気絶している。

理事長は翔を電話で呼んだ。

翔は、大きなキャリーバッグを持ってきて、

教頭の口にガムテープを貼り、手足を縛り、

キャリーバッグに教頭を入れて理事長室を出て行った。

教頭の部屋の個人の物は、

翔が適当にまとめて段ボールに詰め込んで家へ届けた。

キャリーバッグに入った教頭は、

一族経営の精神病院の個室へバッグに入ったまま入院した。

現在教頭の奥様には、校長・事務長と同様に弁護士が面会している。

そして「生徒斡旋」と「コカイン乱用」についての説明をしている。

奥様も教頭を精神病院に入院させ「コカイン離脱療法」を行う事を承諾した。

相当な長期間に渡り、教頭は個室で地獄の様な離脱症状の苦しみを味わう。

今までの使用期間が非常に長いため、

そのまま記憶障害になって病院で一生を送ることになるかもしれなかった。