「ねえ、あんた、まだなの?もう1ヶ月以上も掘ってるのよ」
「周りに気付かれないように掘り進んでいるから待て、あと少しのはずだ」
男は地図を広げて説明している。
地図には銀行の地下金庫への通路が描かれている。
「あんたが、地下道が崩れないようにセメントや板で補強しているからいいけど、
あまり気持ちの良いものじゃなかった。でも下水道へ繋がればもう心配ないね」
「そうだ、仮に警察が来てもこの通路に隠れていればわからないから安心だ」
「あんたは、天才だね」
「ああ、来週には地下金庫の壁に着くから、仕事終わったら高飛びだな」
「楽しみね、私はヨーロッパがいいわ」
「どこでも行きたい放題さ、地下金庫は電子錠だから銀行側は安心しているはず。
それに金曜日の夜に地下金庫に入って盗めば、
発覚するのは月曜日だからその時には俺達はもう日本にはいないのさ。
それにあいつらも来るから荒事も大丈夫だしな」
「でも、大丈夫?あいつら信用できるの?」
「まあ、いざという時のための保険だから、
それに仲間にしなかったら殺されてたし」
「そうだけど、あの組はこの前解散みたいなものってニュースにでてたよね?」
「残党はたくさんいるから仕方ない。早く終わらせて高飛びしようよ」
「そうね、こんな嫌な日本とはおさらばよ」
「でも、今回はお前の銀行の情報が正確だったから助かったよ」
「ああ、あの銀行、酷いところだから。特に支店長、最低」
「確か、セクハラというか強姦というか酷い話だよなあ。こんなに可愛いお前を」
「あんたって、天才ね。好き、もっと私を喜ばせて・・・」
前回のオレオレ詐欺事件の実行犯の川口組の残党が絡んでいると知って緊張した。
川口組はチャイニーズマフィアとも関係があり、武器も潤沢な暴力団だからだ。
この前の事件以来、縄張りを他の組に取られて肩身の狭い思いをしているので
残された子分達はここらで一発派手にやって
親分や幹部へ元気にやってる証を残したいと考えているのかもしれない。
翔はこの戦いには双方で死人が出るかもしれないと思い戦慄した。
(つづく)