翔は都倉警部へ急いでこのたびの事件を連絡した。
実は公安も内偵を進めていたようですぐに連携が取れた。
すぐに新宿のアジトに急行したが、もぬけの殻だったらしい。
富士の別荘の部下からの定時連絡がなかったので異変に感づいたのかもしれない。
急いで百合に『聞き耳タマゴ』の位置を探索させると
横浜港の船の中に理恵子さんがいることがわかった。
都倉警部にその情報を伝え、翔も現場へ急行することとした。
ヘルメットに『スーパーモード』と伝える。
後輪部分が後へ移動しサイドカーが組み込まれ4輪体勢になる。
シート部分が下がり、それに伴いフロントフォーク部分が延びハンドルが近づく。
カウル部分がライダーの後ろまで流線型に延びて固定される。
タンク部分にはコンピューターが組み込まれており、
コードが延びてきてヘルメットへ接続される。
これでヘルメットのフェイス面へ情報が映り指示も出来るようになる。
走行時はコンピューター制御となり車体の傾けから全て自動運転となる。
安全走行の最高速度は300キロと羽根をつければ跳びそうなバイクである。
ステルス装甲のバイクなので速度違反に引っかかることはない。
このスピードを追跡できる車両はスーパーカーだけなので安心して横浜港へ向かった。
30分で横浜港への標識が見えてきた。
スーパーモードを解除し港へ向かうと都倉警部が待っていた。
現在、富士の別荘は静岡県警に向かわせているとのことだった。
ここからは時間の勝負だが、人質の理恵子さんが心配だった。
趙は小型客船に武器らしきものを積んでいる気配があり
海上保安庁が趙の船を港から逃がさないように見張っているが反撃が心配だった。
翔は都倉警部と打ち合わせた。
敵の武器を沈黙させることと人質の救出を同時にする必要があると考え、
船腹まで翔が近づき舟の後ろ側にある部屋へ忍び込み人質の理恵子さんを救出する。
救出後、すぐさま兵器とエンジンを無力化することとした。
翔はそっと海に入りバトルヘルメットのボタンを押した。
ヘルメットとスーツの連結が開始され、ヘルメット内も気密構造となる。
ヘルメット内の酸素カプセルには1時間程度は活動が可能な量が埋蔵されている。
バトルブーツの裏側の底蓋が空きスクリュ-が回転する。
翔は音も立てずに船へ寄っていく。
敵もライトなどを照らして警戒しているが、
水中を来られては気づくはずがなかった。
やがて船尾へ到着し、
バトルハンドの手の平から黒のクモの糸状の物質が噴射され船尾の部品に絡みついた。
見つからない様にそっとよじ登っていく。
敵も気が付かなかったようで人質が幽閉されている客室へ向かった。
彼女は後ろ手にロープで縛られておりぐったりとしている。
翔は急いでロープを切断し、お子さんを無事助けたことを伝えた。
彼女の瞳に光が戻り始めた。
(つづく)