はっちゃんZのブログ小説

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11.捜査3(第2章:いつまでも美しい女)

家へ戻った遼真は美真野家の洋館について調べ始めた
現在の社長美真野涼子が生まれる前の話になるが、
あの洋館は美真野家の先代が、
ヨーロッパのある国に出張したおり、
当時洋館住んでいた貴族に食事会を招待され、
豪勢な料理に年代物の美味しいワインを頂き、
夜も遅いため勧められて宿泊をしたところ、
翌日朝に、突然なぜか
『この歴史のある素敵な洋館を是非とも買いたい』と強く感じたらしい。
試しに交渉をしてみるとトントン拍子に進み思ったより安く購入できた。
その洋館は中世以前から建っていた古い建物で、
中にある絵画も家具も含めてすべて元々付いていたものだった。
美真野家の先代は、地下室の部屋から元の洋館の姿の油絵を見つけ、
その全てを再現しようと元の土地と建物をきちんと測量し解体し船にて運んだ。
そして東京都の白金台の土地を購入し、
詳細な測量結果通りに油絵のデータを元に色など建設当時と同じ洋館を再現した。
ただなぜか洋館の地下室にあった北側の石の壁の一部は、
|一塊《ひとかたまり》でしか移動できなくて輸送が大変だったらしい。
現在もその壁は地下室の北側の壁として利用している。
特にこの洋館を購入してからは新しい事業も成功し、
美真野グループの企業規模もどんどん大きくなっていった。
後になって先代は『この洋館を是非とも買いたい』と感じたあの朝の直感を『神の啓示』と感じたと語っている。
その他、この家についての噂話も海外から集まって来ている。
「中世以前の歴史的建物ですばらしい。機会があれば是非とも住んでみたい」
「日本に古い中世時代を運んできた様な建物で住んでみたい」
「大金持ちの醜悪な趣味の発露。趣味が悪い。日本には日本家屋が一番」
「この建物は悪魔が棲んでいる雰囲気があって怖い」
「女の絵画に悪霊が入っており、この家の代々の所有者は憑り殺されているらしい」
「教会が除霊のため派遣された神父も反対に殺されたらしい」
「女の悪霊は中世の魔女で今も生きているらしい」
など、様々な噂が昔から囁かれているらしい。

翌日、宮尾警部へ連絡をして美真野家の内情を知らせ、
警部へ美真野家から外国へ養子として出された子供達の行方の確認をお願いした。
ryokoからのビデオレターの画像解析結果は、やはり『フェイク動画』と結論された。
二つのビデオレターに出てくる女の子の|虹彩《こうさい》は、
同じ人間の虹彩であり、
虹彩以外の顔や背景は全て差し替えられた画像であることが判明した。
その女の子とは全くの別人が話したり笑ったりしても
女の子本人が話して笑っているような画像に変換されていたのだった。
こういう科学的なデータは天丸の精密な目で十分なのだが、
霊的な情報となると当然の事ながら十分ではなくこれ以上は無理だった。

今回の相手はもしかしたら500年以上生きて来た悪霊かもしれず、
相手の正体もその力もわからないし、
十分に準備していないと逆にこちらが|殺《や》られる可能性があった。
この霊査に関しては、
いくら霊力のあるお使いのキインでも一匹だけでは荷が重いと感じた。
急いで京都の師匠とも相談し、注意して真美とクインも一緒に霊査することとした。
翌日の昼前には、一族の者を使い、
師匠から西洋の中世以前の悪霊に対抗するための除霊物一式が送られて来ている。
そして、遼真と真美のお使い管狐のキインとクインの母親のカイン(禍印)も来ている。
子供達は久しぶりに母親に会って嬉しそうに身体を擦り付け合っている。

宮尾警部は海外へ養子に送られた少女たちの行方を探りに入った。
遼真も桐生一族の情報網を使い少女たちの行方を追った。
警察の捜査の結果として、
最初日本から確かに少女たちは養子で送られていて、
その里親の家に一度は入っているが、
数か月すると本人の希望でその地の施設へ送られている。
そしてその施設からも数か月で本人の希望で別の施設へ送られており、
そういう事が何度も行われて、そのたびに名前も変わり、
今ではどこで生きているのかわからない状況で書類上でも追跡できなかった。
既に国籍が日本人では無くなっており、
警察としてもこれ以上の追跡調査は不可能だった。

桐生一族は、全世界に情報ネットワークがある。
一族の者が裏情報も駆使して調べた結果、
最初の里親へ美真野グループから資金が振り込まれ、
少女の移動に経由している施設へも同様に振り込まれている事が判明した。
その流れの中にいる人間を一族の隠れ家へ確保して、
最初は優しく聞いても知らない風だったが、
少し厳しい聞き取りをすると素直になって、
最後には息も絶え絶えに裏情報の全て吐いた。
その後、その重要な情報を漏らした人間は、
その組織から守るため整形をさせ名前を変えて秘密裏に海外へ逃避させた。

どうやら、少女達は秘密裏にあるグループへ送られていることがわかった。
そのグループは闇の権力者が支配している人身売買・臓器売買グループだった。
事前に少女たちの血液から内臓などのデータが送られ、
少女奴隷として、それに適さない場合は必要な臓器が取り出され、
世界の金持ちは昔と違って
現在は堂々と奴隷を持つ事が出来ない時代のため非常に需要が多く、
更に臓器売買ビジネスで大金が儲かる仕組みとなっている。
また少女又は少年奴隷の場合には、定期的な闇の儀式の犠牲者にもなっている。
いつの頃からか美真野家は日本におけるその組織の一員として働いていたようだ。

この事件はあまりに犯罪規模が大き過ぎるため、
新宿探偵事務所の翔兄さんにも手伝って貰う事にした。
当然、宮尾警部も同期の都倉警部へ連絡し連携を取る事となった。
過去のおいて東京での臓器売買は「倉持組」の資金源であったため、
翔が都倉警部と共にそのルートを潰した事でとりあえずは下火になっていたが、
いつの間にか日本における闇の世界にもう一つのルートが出来ているのだった。
現在、日本では年間8万人もの人間が行方不明となっており、
実際にこのような犯罪の毒牙に掛った人が何人いるかもわからなかった。
今回のこの美真野家の新ルートも偶然見つかったものである。

この事件の特殊性は
その背後に、一般人には理解し難い悪霊の存在もあるため、
仮にそれを知らずにいて何の準備もしていないで踏み込んだ場合、
踏み込んだ警察側もその被害に遭う可能性もあって迂闊には動けなかった。
そして、公正で確実な証拠で固めないと捜査令状の許可も下りず、
もしそこでモタモタした場合、
相手は闇の権力者の一員であり、
もし美真野グループと警察上層部に
何か関係があった場合は捜査中止命令が出る可能性もあった。
そうなれば美真野邸を捜査することが出来ない可能性があった。
警備は24時間体制で行われているようで正門隣に警備員室があり、
確認すると体格の良い警備員5人が常駐している。
その会社を調べるとクレオパトラグループ内の警備会社で自前だった。
彼らは組織の人間かもしれず人間同士の戦いの可能性も高かったし、
美真野邸の悪霊が一体とは限らないため、十分な霊的探査(霊査)が必要だった。