はっちゃんZのブログ小説

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36.オレオレ詐欺団を壊滅せよ 2

聞き耳タマゴからは事務所内の声が聞こえてくる。

「お疲れ様、佐藤、今日の金をここに出せ」

「はい、木村さん、今日は300万です」

「婆さん、どうだった?もう1回くらい引っ張れそうか?」

「はい、そうですね。まだまだ大丈夫でしょう。大きな屋敷だし」

「そうか、今度はその道の人の声で脅せば1000万くらいは大丈夫かもね」

「どうやら、婆さんは1人で住んでるみたいだし、

 土地も家も根こそぎ取れるかもしれませんよ」

「それはいい話だ。婆さんもあと少しの寿命だろうし、

 お金は我々が有意義に使ってやろうぜ」

「そうですね。それがお金を貯めた婆さんへの孝行ですね」

「おう、まだまだがんばれよ。

 おめえの借金はこんなものでは足りねえぜ」

典型的な『オレオレ詐欺』だった。

 

部屋の中からは、多くの若者の電話の声が響いてくる。

毎日のようにお年寄りが餌食になっていることがわかった。

確かに婆さんのようにお金がある人間の考え方で

『ほんの少しのお金で片がつくなら安いもの』

という意識が詐欺の温床となっている。

孫可愛さに孫の言う事を聞く事で

『年寄りの寂しさを紛らわせている』のかもしれない。

これは今の世の悲しき一面を現わす犯罪でもあった。

夜8時になるとグループ員は

『お疲れ様です。ではまた明日』と帰っている。

ボスらしき男木村と弁護士と名乗った男佐藤はまだ残っている。

 

「お前が本当に弁護士だから相手も騙される。

 お前を引っ張って良かったぜ」

「まあ本名は出さないからいいけど、

 ある程度集金したら開放してくださいよ」

「お前さ、誰の女に手を出したかわかってるのか?」

「わかっています。ただあれはあの女が勝手に来ただけで・・・」

「そんなことをあの人が信じればいいけどね。

 すごく愛しているぜ、あの女を」

「あんなスベタをねえ。自分からホテルへ引っ張っていって、

 自分で俺の上に乗って腰を振ってきて、

 レイプされたの・・・だってありえないでしょう!」

「でも、嬉しそうに下から腰を突き上げてたのもお前だよね」

「まあ、確かに」

「あの人達は、自分の面子を大事にするから、女を悪くできないだろ?

 お前はあの女の趣味にあったから運が悪かったのさ。

 でも気持ち良かっただろ?あの女は具合が良いって評判だぜ」

「それはすごく良かったけど・・・」

「なら我慢するこった。

 それにお前は自分のお金を出しているわけじゃないから」

「そうだな、しかし馬鹿な年寄りが多いよなあ。

 どんだけ金持ってんだか」

「そうそう、死んでもあの世にお金は持っていけないのになあ。

 まあ、われわれにはありがたいこった」

「それとここにいる若い奴も馬鹿だよなあ。

 警察にばれれば俺達は高飛びするから

 あいつらが捕まることになるのになあ」

「しょせん、勉強もしていない馬鹿は仕方ない。無知は罪なのさ」

「あんたもひでえなあ。

 まあお互いこのハリウッド並みの仮面をかぶっているから

 脱いで逃げれば誰もわからないだろうけどねえ」

「しっ、それは黙っておきな。

 お互い顔を知らない同士だからうまく行くのさ」

「しかし、僕は奴らに顔がばれてるから逃げられないよなあ」

「いつか顔を変えればいいさ。どうせ弁護士なんざ儲からないんだろ?」

「そうなんだ、あんなに必死で勉強して

 こんな生活なんて想像もできなかったよ」

「俺も奴らには顔を押さえられてるから同じだぜ」

「まあ、お互い早く足を洗えるように年寄りを騙そうよ。

 じゃあまた明日」

(つづく)