はっちゃんZのブログ小説

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85.遺族の恨みは晴れるのか11

翔は必死で彼女が落ちているベランダの真下部分へ急いだが間に合わない。

そして夜中なので彼女が見えない。

クモ助が腹部の光を強く発して場所を知らせた。

必死で目を凝らすと制服の白いスカーフを風にはためかせながら落ちている。

『あと少しなのに間に合わないのか』と心の声が脳裏へ響く。

脳裏に最近テレビ放送された飛び降り自殺の光景が浮かんだ。

真っ赤に染まった舗装された地面に横たわる蝋人形のような少女の瞳・・・

『何も罪のない彼女を殺させてはいけない。何とか近くへ行きたい』と叫んだ。

その時、『ふっ』と翔の視界がぼやける。

『この感触・・・どこかで・・・』と感じた瞬間、

翔の顔へ風が当たっている。

 

焦点が合うと

意識を無くして落ちていく彼女の横の空間へテレポーテーションしていた。

彼女をそっと抱きしめた。

とたんにRyokoから緊急連絡が入った。

「翔様、スパイダーネットでの救出が可能ですが、

 この加速度の衝撃を相殺できない可能性があります。ご注意ください」

『このままでは二人とも助からない。何とかしなければ・・・』

『こうなれば、もう一度試すのみ。一度あることは二度あるはず』

翔はバトルカーをじっと見つめた。

『ふっ』と視界がぼやける。

次の瞬間、翔はバトルカーの隣へ着地していた。

 

「うーん、・・・。えっ?あ、あなた、どなたですか?」

「はい、私はあなたのお母様から捜索を依頼された者です。良かったです。無事で」

「無事?・・・何の話ですか?」

「あなたが行方不明になったのは昨日の塾の時からですよ」

「えっ?そうなのですか?

 わたしは、今までどこにいたのでしょうか・・・

 塾の帰り道に女性に道を尋ねられ、その女性の光る目を見つめたとたん、

 知らないうちに知らないお部屋にいまして、身体が動きませんでした」

翔は、眉間の鈍痛と全身の筋肉が急に鉛に変わったかのような重みに耐えながら

心配している彼女の母親の元へ急いで送り届けた。

(つづく)