はっちゃんZのブログ小説

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110.妖?行方不明者を探せ8

「翔兄さん、待ってください」

現場に到着した遼真から声が掛けられた。

翔が攻撃を止めたその一瞬、

魔物は近くの木へと跳び梢へと移動すると

別の木へ跳んだのか見えなくなった。

 

その時、遼真と真美は夜目にも鮮やかな白衣と袴姿で現れた。

遼真の腰には大刀、

真美は小刀が差し込まれている。

「兄さん、あいつは普通の攻撃では効かないです。

 あいつが憑依している肉体は人間ですが、

 すでに魂を食われているので魄を変えています。

 姿形も能力も人間ではないのです」

「そうなのか。

道理で殴っても蹴っても効かないはずだ。

 でもどんな攻撃なら効くんだ?」

「兄さんの力なら気を拳に込めて撃てば効くはずです」

「気か・・・結構難しいんだな。

まあ何とか頑張ってみる。

遼真はどうする?」

「兄さんがあの魔物を足止めしてくれれば、

私はその時に魔物をあの身体から切り離す準備をします」

「切り離す?・・・まあ任せた。

とりあえず俺はあいつを足止めすればいいんだな?

わかった。じゃあ、一緒に行動しよう。

先ずはあいつの場所を教えてくれ。

赤外線が全く効かない」

「分かりました。真美、あいつの場所を探ってくれ」

「はい、わかりました。クインお願い」

銀色の体毛を持つ管狐のクインが、真美の肩から降りると

後ろ足で立ち上がり、クンクンと匂いを嗅ぐような動きをする。

ピクッと震えると『クーン』と叫び、明治神宮の方向へ走った。

 

飯塚警部から翔へ連絡があった。

真日本革命団メンバーの入院した病院から

彼らが突然目を覚まして逃げ出したらしい。

彼らの動きは、全員手も足も全く同じ動きで

まるで操られているようだったとの証言が聞かされた。

彼らは信号などで停まっている車を奪い、明治神宮方向へ向かっている。

魔物が彼らを呼んだのであろうと推測できた。

早く魔物を倒してしまいたいが、そうは簡単に行かなかった。

明治神宮に潜り込まれると隠れる場所が多過ぎて、

その上、戦いで神宮を破壊する事も出来ないので手が出せなかった。

 

そうこうしている内に

真日本革命団メンバー達の乗った車が代々木公園へ突っ込んできた。

バラバラと降りると暗くなった参道を神社方向へ走ってくる。

しかし彼らは大きな鳥居から中へ入る事が出来なかった。

鳥居内の神域には、この国を護る者の光に満ちておりそれ以上の侵入は無理だった。

深い闇の中で一際目立つ鳥居の手前の大きな樹の上に黒くうずくまる陰が見える。

真日本革命団メンバー達はその樹の根元を何重も取り囲み魔物を守っている。

そのうち若い男が数名、白い糸に吊り上げられていく。

しばらくすると、ドサッと地上に投げ落とされてくる。

その死体はカラカラに干乾びて、その顔は恐怖に引きつっている。

そのうち、一番の高齢者らしき男が吊り下げられて樹の上へ上っていく。

 

翔はこれ以上の被害は出さないようにと近づいていくが、

真日本革命団メンバー達は

カラカラの身体のままでゾンビのような動きで

手に色々な武器を持って翔へと向かってくる。

翔が何度倒しても彼らは起き上がってくる。

こうなればと思い、『閃光催眠弾』を放ち全員を眠らそうとした。

しかし眠った顔で武器を持って向かってくる。

気を真日本革命団メンバー全てへ撃ちこむにも体力の問題もあるし困っていた。

 

「兄さん、準備が終わりました。変わります」

遼真は腰に挿した日本刀を抜くと

ヒラリヒラリと次々と彼らの身体を切っていく。

真美も脇に挿した小刀で舞うように次々と切っていく。

しかし血は一切出ていない。

それに伴い、彼らは糸の切れた操り人形みたいにガクンと地面へ倒れていく。

それらの口からは闇夜よりももっと深い闇が瘴気となって立ち上っていく。

真美が地面に大きな五芒星を描くとその部分へ彼らを並べていく。

そして、遼真が各点を指で押さえながら呪文を唱えていく。

五つ目の点への呪文が終わった瞬間、その五芒星は淡く白く光った。

真日本革命団メンバー達は、

魂が抜けたように空ろな目を見開いたまま静かに横たわっている。

(つづく)