はっちゃんZのブログ小説

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66.平岡公園梅まつり

北海道もやっと厳しい冬を越えて、待ち遠しい春がやってきた。
本州の梅は2月に咲くが、北海道は梅も桜も4月下旬から咲き乱れる。
5月の連休は、「平岡公園梅まつり」へ行った。
この公園は、札幌市清田区にあり札幌中心部から車で約30分の場所で住宅街の中にポツンとあって駐車場も広く行きやすい場所にあった。その平岡公園を代表するのが、6.5ヘクタールの敷地に約1200本植栽されている梅林だが、その他広場や遊具の公園があって、一日中子供を遊ばせるにはちょうど良かった。
特に梅まつりには近所も含めて札幌市内から多くの人が昼夜を分かたず訪れている。
マンションを午後に出発して平岡公園の東地区の遊具や広間で子供達と遊び、暗くなってからも観梅する事にしている。
静香が3時のおやつにと子供達の好きなドーナツと手巻きクレープを作っている。
昼ご飯を食べてマンションを出発した。
1番駐車場には既に多くの車が停められており、バス停から来ている人々も多かった。
先ずは「梅の香橋」を渡り、梅林を散策する。
白梅や紅梅が咲き乱れ、強い梅の香りに包まれた。
子供達も梅の花びらが咲き誇る綺麗な風景に目を奪われている。
遊歩道を道なりに歩いて行くと「花の広場」に着き「梅園橋」を渡ると東地区に入る。
遊具広場や多目的広場で子供達と遊ぶ。
静香は公園の片隅にピクニック用にシートを敷いて座っている。
遊具広場にある、高さ10mのロープ製遊具ネットクライミング
子供達だけでなく中学生にもとても人気で
見た途端、雄樹はすぐさま走り寄りそろそろとロープを登り始めた。
夏姫は慎一の手を引っ張り一緒にと誘ってくる。
足元は砂場なので落ちても心配はしていないが、
父親が近くにいると安心なのか、
少し高い場所に行くと雄樹が「見て見て」と言ってくる。
夏姫も徐々に慣れて来たのか雄樹の近くへと登り始めた。
そして二人で「見て見て」と笑っている。
他に大きな子供も昇って遊んでいるため、
結構揺れるみたいで二人ともそれほど高くには登れていないが
他の大きなお兄ちゃんやお姉ちゃんと同じように登れていることで楽しそうだった。
しばらくすると持ってきた「砂遊びセット」を使って砂場の隅で二人で夢中に遊び始めた。
そうなると父親は必要無くなるのでシートに戻ってコーヒーを飲んだ。
風に運ばれてくる梅の香りが心を清々しい気持ちにさせてくれる。
そろそろ夕方の雰囲気が出て来ている。
梅園の中に立つポールに灯が点き始めた。
4人はシートを片付けて梅園へと入って行くと幟が見えた。
「梅シュークリーム」
「梅ソフトクリーム」
子供達がじっと見ているので
どちらも二つずつ頼んで、シュークリームは家でのお土産にした。
道内産の濃い牛乳で作られたクリームへ、
良い|塩梅《あんばい》で梅のさわやかな甘酸っぱさが練り込まれたソフトクリームで初めての味だった。
抱っこされた子供達も口の周りをクリームだらけにして食べている。
あたりは多くの観光客が梅を見上げて歩いている。
すっかり暗くなるとスポットライトに白梅や紅梅が映し出され始めた。
昼間に見える多くの梅林の光景も素晴らしいが、
夜は昼間よりライトアップにより白色や紅色が強調され、
夜空に星が見え始めると梅の花の香りがより強くなっているように感じた。
梅園を一周すると駐車場へ向かった。
今日の晩御飯は石山通の南22条西11丁目にある『伊予製麺』の予定だった。
うどんと言えば、全国的に讃岐うどんが有名で強い腰のある麺である。
慎一は香川県に居た事もあってうどんと言えば讃岐うどんと思っていたが、
この店で初めて食べた時、讃岐うどんほど強い腰の固い麺ではなく、
少し柔らかめだが腰はある様な固さで子供も噛みやすいうどんだった。
それ以降、家族でうどんを食べる時にはここに来ている。
大人用に釜揚げうどんを二つと素うどんを一つ、
天婦羅は、かき揚げと竹輪の磯部揚げと子供用に鶏天二つにした。
セルフうどんは自分で好きなだけ葱や生姜や天かすを入れられるため気楽である。
子供には子供用のお椀に分けて食べさせる。
鶏天は手に握らせるとそのままかぶりついている。
その間に夫婦は出汁に葱と生姜と天かすを入れて釜揚げを食べる。
釜揚げうどんは、木製の桶に茹でたうどんを釜湯と共に直接器に移したうどんのことで、麺の表面の柔らかさと新鮮な麺の弾力を味わえる出来立てのうどんの美味しさが楽しめる最もシンプルなメニューである。
この釜揚げうどんによく似たもので、湯だめうどんというものがあるが、これは出来上がった時一度冷水で締める工程があるため、再度熱い湯に入れるため麺の表面が固くなり若干美味しさが落ちます。
慎一は香川県高松市で勤務した時に、屋島町の四国村にある『わら家』と言う茅葺き屋根の店へ『たらいうどん』を良く食べに行ったことを思い出す。わら家のうどんは大きな|盥《たらい》に入っていて、出汁の入った容器も時代劇に出て来る『貧乏徳利』のような大きなもので珍しかったことと、天婦羅の盛り合わせやしょうゆ豆が美味しかったことも思い出した。このしょうゆ豆は、香川県の郷土料理の一つで乾燥させた空豆を炒り、熱々のまま醤油やみりん、唐辛子などを合わせた調味たれに漬け込んだもので、煮豆とは違い、口の中に入れるとポロッとほぐれる食感が楽しめる。それにしょうゆ豆は皮ごと食べるので、皮には食物繊維が豊富に含まれており身体には優しいものである。今となっては良い思い出だった。