はっちゃんZのブログ小説

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19.御社の創建(第8章:占い死)

ある日、遼真は部屋で頭領と連絡を取り合って今後のことについて相談を始めた。
それは数時間に及んだ。
後片付けや宿題を終えた真美が部屋から出て来て居間に顔を出す。
遼真がテレビのニュースや番組を何気に見ながらコーヒーを飲んでいる。
「そうだ、真美、師匠から連絡があって、
 急な話だけど明日に桐生一族の各派の頭領がここへ来るからね」
「へえ、頭領が?すごく急ですね」
「あの後、頭領がシシトー神様と話し合った結果、
 今度この神社の神域の北側に御社を建てることになったんだって」
「御社ですか?・・・」
「シシトー神様の御社だよ。

 今度、我が一族の護り神の一柱として入って貰うことになった。
 シシトー神様も遠い過去に知り合いの神様も居られる様で乗り気みたいだよ」
「へえ、それはありがたいことですね。あれほどのお力の神様なら安心ですね」
遼真は心なしか少し元気のなくなっている真美に気がついた。
「真美、今日は疲れただろう?先にお風呂に入ったら?」
「いいえ、最初は遼真様にお願いします」
「わかったよ。ありがとう。じゃあ先に貰うね」
「遼真様こそ、お疲れでしょうから熱い湯でゆっくりと疲れを取って下さいね」
「うん、でも残念ながら昔から僕はカラスの行水だからね。ゆっくりとは無理だな」
「そういえば小さい時からそうでしたね」
「そうだな。あの頃真美に『私が数を数える終わるまで出たら駄目』と言われて
 しばらくしたらいつものぼせて目が回りそうになったのを思い出したよ。
 真美ったら数を途中で間違えるんだもの・・・」
「ははは、そうでしたね。
 遼真様、最後の方には急に静かになってましたものね
 実は数えるのわざと間違える時もあったんですよ。」
「えっ?そうなの?・・・でも何か懐かしいなあ」
「そうですね・・・
 遼真様はいつも早く出よう出ようとしていましたからね。
 今でもたまに熱いお風呂に入った時、その時の事を思い出すことあるんですよ」
「へえ、そうなんだ。
 ほんのちょっと前の様な気がするなあ。
 じゃあ、入ってくるね。たぶんいつもの様に早く出るよ」
遼真は少し表情が明るくなった真美に安心して立ち上がった。
遼真が居なくなって、部屋にはテレビの音が流れている。
ソファに座り見るともなくテレビを見ている真美の脳裏には
幼い頃から遼真の隣にずっと付き従ってきた自分の姿が浮かんでいる。
「遼真様とあの頃に戻れたらいいのに・・・」と真美が呟いた。

翌日は朝から桐生一族各派の頭領など多くの者が集まり、
神域の中心と北極星を結んだ線状に御社の候補地を見つけ清掃をして地鎮した。
シシトー神様の御神体が住まわれる場所は、
丹波篠山と同様に大きな岩を組み合わせて石の社を作り、
その前に鳥居を建ててお詣りできることとした。
御祭神の御名ついては、シシトー神様から
『我をこの世に再び目覚めさせた北星親王の名としたい、
この国の政を願った皇子の魂をこの国の政の中枢のこの都市で眠らせたい』と告げられ
その皇子の名前を取り”北星親王神社”と決めた。
それが決まってからは急ピッチで創建準備が始まり、創建の日が訪れた。
この日は、シシトー教団の幹部が集まり創建の儀式が行われ無事終わった。
その時からこの神社には、

国民の心を安らかにしたいと願う政治家や政治家志望の者がお詣りするようになり、徐々に政界・経済界の人間に知られるようになる。

『北星親王神社』創建後に、教団を含めて色々と変わった。
桐生一族と館林一族は、
日本国鎮護神の一柱として新しくシシトー神を祭神として組み入れ、
両一族が祀り上げることとなり、それに伴い教団や選挙への協力を約束した。
鈴女は今まで兄の鷹の力で行っていた占いを、
直接シシトー神より多くの神気をその身へ封入され本物の巫女となり、
心身共に新しく生まれ変わり、館を訪れる多くの人々の悩みを聞き指針を与えた。
そして人の運命へ非常に影響を与える『生死の未来』は一切見ないと宣言した。
鷲は教団や政党の事務局長を兼任しながら
前橋館林家の経営する文武学園のIT部門の教師として就職し、
桐生館林一族のコンピュータ部門の専門家としても所属することとなった。
多くの神気のおかげで不眠不休に近い状態でも教団政党の為に活動できていた鷹は、
その身へそれまで降りていた多くの神気を神社内の石室内へ移動させた。
ただ教団信者で心が傷ついた者へのシシトー神の神気の一粒は、
今まで通りそのまま彼彼女達の魂に溶け込み傷を癒しながら勇気を与えている。
兄の鷹は教団が安定したことに安心して教団代表を降りて、
次回選挙から若き国会議員として出馬する方向へ決まった。
それと共に令和獅子党党首の木村千種を妻とした。
シシトー神は大層喜び木村千種へある不思議なプレゼントを与えた。

その不思議なプレゼントは、
木村千種の身体を何も汚れていなかった昔の時代へと戻すことだった。
シシトー神は千種の心の奥に沈むいくら拭っても消えない痣を知っていた。
実はアイドル時代に
『自分を売るために、スポンサーに身体を売れ』とマネージャーに説得されていた。
ずっと断っていたが、ある日『撮影の仕事だ』と言われてホテルの部屋へ送られた。
その部屋の中に居たスポンサー会社の社長がニヤニヤと笑い近寄って来る。
必死で大声を上げても無駄で逃げようとしても逃げられず抵抗しても頬を張られ、
野獣の様に襲われて無残にも無理矢理処女を散らされたのだった。
それ以降、それを拒むと今度はヤクザが出て来て家族を傷つけると脅され、
仕方なく多くの男に抱かれて千種の心は傷つき血を流していったのだった。
シシトー神は千種の心のその消えない痛みをずっと癒していた。
しかしその心に刻み込まれた痛みと悲しみは消えることが無かった。
どんな時でも何かの拍子にその光景が浮かんでは千種の胸を痛くするのだった。
『私は汚れた女、多くの汚い男のはけ口になった女』と心が叫んでいた。
シシトー神は彼女の心を元の状態に戻すことを考え神様だけが出来ることを実践した。
それがこのたびの『不思議なプレゼント』だった。
それを知らされて千種も鷹もドキドキしながら挙式後初夜を迎えた。
新しく生まれ変わった身体は、
触れられた時に感じていた快感の度合いも今までと違っていた。
今まで触れられるとすぐにじわっと子宮辺りが熱くなってきていたが、
今は胸や肌を触れられるとゾクゾクと快感が背筋を這い上って来るのだった。
秘所は以前と違い若干濡れにくく、入口も硬く奥まで指も入らない位狭くなっている。
鷹がそっと指を奥へ進めるとそれ以上は進めない構造に触れることができた。
千種はその時に少し痛みを感じた様でつい怖くなったのか足を閉じてしまう。
頬を染め恥じらいながら口づけをじっと受けている。
千種はこの世で一番愛する鷹に初めての自分を与えることの出来る喜びに震えていた。
鷹は千種へ優しく丁寧に愛撫を加えながら初々しい反応に愛しさを感じた。
千種は初夜の破瓜の痛みに耐えながら深い喜びに涙を流し新妻となった。
千種の脳裏からは過去の薄汚い男に無理矢理犯された記憶は既に消えていた。

ある日、遼真と真美が並んで祈りを捧げているとシシトー神より声が掛かった。
「遼真、いつもいつも民草を守りご苦労である。
 汝の身に我の力の一部を揮える様にしたいのだが良いか?
 この力の一端は、先にあの霧派の紅凛と黒狼にも伝えた。
 彼らは彼らの身体の持つ特性で必要な形で発揮できると思う」
「それは大変ありがたいことでございますが、私でよろしいのですか?」
「毎日がんばっている汝に少しでも力になれればなと思っておった。
 汝は『霊糸』と言う母親の力がその身に宿っているのは知っているな?」
「はい、母が私の身に残した唯一の力でございます」
「その霊糸に我の力を加えようと考えているのだがどうだ?。
 もちろん今まで通り霊体に対して霊糸のまま使用も出来る。
 我の様に物質化した者には霊糸を鞭や鋼にも変えることが出来るのだがどうだ?」
「そんなことが可能なら是非ともお願いします。ありがとうございます。」
「だが、先に言っておくぞ。
 遼真、汝には我の様にまだその力を自由自在に揮うことはできないと思う。
 神の力は非常に強いため、人の身ではその力を長い時間使うことはできない。
 人たる身で長い時間その力を揮えば、汝の魂の器が壊れてしまうのだ。
 お前の魂の器が壊れてしまえばもうお前がお前で無くなってしまうからのう。
 しっかりと技と心を鍛える修行をして少しずつその力に慣れると良いぞ」
「はい、肝に銘じます。
 人を守るためこの力を揮える様に身体と心を強く鍛えます。ありがとうございます」
「わかった。ではその場で静かに待って居れよ」
遼真はその場で瞼を閉じて両手を胸の前で合わせた。
北星皇子神社の奥から白い光が遼真へと注がれる。
その白い光は遼真の身体へ滲み込むように入って行った。
遼真の眼は本来は切れ長で暗褐色の瞳の虹彩に金色の輪郭を持っているが、
その虹彩の金色の輪郭に銀色の輪が巻き付き金と銀の縞模様となったのだが
もちろん遼真にはわからなかった。
「シシトー神様、ありがとうございます」

「さて、真美、本当はお前にも我の力の一部を分けたいのだが・・・」
「私にも是非ともお願い致します。私は力をもっと強くしたいのです」
「そうだろうなとは思う。汝の願いは我も強く感じることができる。
 だがな・・・実は非常に言いにくいことなのだが、
 我の力を与えようとしても汝の身が受け入れないのじゃ」
「えっ?受け入れないのですか?」
「そうじゃ、どう言ったらいいかのう・・・
 汝の魂と言おうか身体と言おうか血脈と言おうか、
 その身体の中にある器にはすでに何らかの力が潜んでおってのう。
 だから我の力を入れようとしても弾かれてしまうのじゃ。
 真美は自ら修行してその力の覚醒を待つしかないと我は思う」
「そんな力が?・・・どうしたら私のその力は覚醒するのでしょうか?」
「それはわしと異なる世界の力であるが故に、我が教えてやることはできない」
「・・・私は今・・・今こそ欲しかったのに・・・
 いつも守られてばかりで・・・どこまで私は・・・駄目な・・・」
真美の手が白くなるほど強く握り絞められ俯いた両目に涙が溢れてくる。
遼真が慰める様に真美の肩に手を置いた。
「真美、慌てることはないよ。いつか覚醒するなら大丈夫だよ。
 僕は真美のことを信じてるし待っているから・・・」
「い、今すぐじゃないならそんな力は要りません」
と遼真の手を振り払って走って戻って行った。
「・・・真美・・・どうしたの・・・」
「ショックだった様だな。しかし我も嘘は言えぬからな。
 そうそう最後に言うつもりだったのだが、
 真美の覚醒をさせる方法は龍族が知っていると思うから聞いてみよ。
 どうやら真美はその関係の力を持っていると我には見える」
「龍族ですか?それなら心当たりがあります。
 シシトー神様ありがとうございます。早速真美に伝えますね」
「若い娘の涙は堪えるのう。その心根がわかるが故にのう。遼真、頼んだぞ」
「はい、わかりました。ありがとうございました」
遼真はシシトー神へお礼を言うと急いで家へと帰って行った。
「うまく竜神と話をするのじゃぞ真美。楽しみにしておるぞ」
とシシトー神が走って行く遼真の背中へ独り言を呟いた。

泣きながら部屋に戻った真美は布団に潜って声を上げて泣いた。
自分でも驚くくらいの涙が出て抱きしめている枕を濡らしていく。
シシトー神様から新しい力を授かった遼真様の笑顔を見るのは嬉しかった。
幼い頃から自分をいつも守ってくれた遼真様の隣に並びたいと思っていた。
しかしこのたびの戦いでも再び自らの力の弱さに打ちのめされた。
『神様相手であの遼真様であっても勝てなかったのだから仕方ない』

と周りから言われたが、
真美は遼真の隣にパートナーとして共に並び立つ姿を夢見ていた。
その力はこの身体の中にあっていつか覚醒すると言われても真美は今こそ欲しかった。
このたびは人間に優しい良い神様であったから助かっただけで、
もし魔神ならば遼真は簡単に殺されていたことを理解していた。
今後、いや、もしかしたら明日にも同じことが起こるかもしれないと思うと
己の未熟な力が恨めしく、それがために遼真を失うかもと考えるとその恐怖に震えた。
真美の脳裏に、自分が白猿に攫われた時の事がまざまざと浮かんでいる。
それは自分のために遼真が魔人になり一族に殺される可能性のあった事件だった。
(第5章:真美を救えを参照)

遼真は真美の落ち着くのを待って、部屋に籠る真美へテレパシーで話しかけた。
真美は泣くと遼真の前では少し幼くなるのは昔からの癖だった。
「クスンクスン、りょう・・・まさまー」
「真美、大丈夫かい?」
「グスン、遼真様、ごめんなさい。
 私、シシトー神様を怒らせちゃったかも・・・」
「ううん、心配ないよ。

 シシトー神様は優しいから真美のこと心配してたよ」
「そうなの?私、でも私ひどいこと言ったのよ」
「大丈夫だよ真美。実は良い話をシシトー神様から聞いたよ。
 真美の力の覚醒については竜神様が知ってるって言ってたよ」
竜神様・・・と言うとあの多摩湖の?」
「そうだよ。今度の休みの日、晴れみたいだから
 僕と一緒に久しぶりに竜神様に合いに行こうよ」
「うん、じゃあ今度も以前みたいに遼真様の後ろに乗っていいですか?
 そうそう、その日は真美が精一杯お弁当作りますからね。
 また竜神様と一緒にお昼ご飯を食べましょうね。楽しみだなあ」
「いいよ。竜神様も楽しみにしてると思うよ。
 真美は竜神様のお気に入りだからね。僕は美味しいお酒を準備しておくよ」
「はい、遼真様にもシシトー神様にもご心配かけましたがもう真美は大丈夫です」