はっちゃんZのブログ小説

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47.百合、実家で相談する

翔との初めてのキスの後、百合は葉山の実家に戻り

頭首の妻である悠香へ翔との付き合いを相談した。

さすがに百合も自らの家柄は知っているので

付き合う相手が誰でもいい訳ではないことを理解している。

 

悠香へ彼との出会いから今までをキス以外は全て話した。

悠香はにこやかに百合の話をじっと聞いている。

「それでお前は、彼をどう思うんだい?

 でもお前が男性に興味を持つのは初めてのことだねえ」

「はい、初めて見た時から、なぜか懐かしく頼もしく感じました。

 彼といるだけでなぜか楽しく、でもそれ以上に心が落ち着くのです。

 そして笑うことって楽しいことと初めて知りました。

 でも彼は正義心が強く、

 困っている人をそのままにできない性格で彼の身が心配です」

「お前が、楽しく、心が落ち着く相手ならばそれ以上のことはありません。

 でもよく相談してくれたね。彼はお前を全力で守れる男性のようだね。

 実は、お前はこの館林家の姫であるから独りの生活は心配でした。

 だから、お前の身辺には警護の者を就かせていました」

「でもあの変な人たちに囲まれた時は・・・」

「はい、あの時はお前が怖がっていないので

 警護の者も大丈夫と思っていたようです。

 お前が感情を出すことが少し苦手だと私が伝えていなかったからです」

「そうですか、彼がその時来てくれて良かったです。とても怖かったです」

「そんな風に感情を出すことができれば警護の者もわかったのです。

 なるべくお前に悟られないようにと、きつく言いつけていましたから」

「感情が出ない?」

「そう、お前は小さい時から感情が出ない、と言うより全くありませんでしたよ」

「そうなのですか?でも・・・」

「そう、彼と一緒にいるようになって違うようになりましたね。

 私はお前が感情を出せるようになったことが嬉しいのです」

「ではお婆様、私は彼、翔さんとお付き合いしていいのですね」

「ああ、いいよ。

 お前のその可愛い笑顔を取り戻してくれた彼とお付き合いしなさい」

「ありがとうございます」

百合は笑顔いっぱいで昼食を食べて帰って行った。

 

「あなた、あの子ももう大きくなりましたね」

「そうだな、あの子のあの笑顔はもう15年近く見ていなかったのう」

「ええ、本当に可愛い笑顔です。しかしまた彼と出会ってしまうなんて」

「やはり絆は切れなかったということか」

「そうですね。あのあと色々な一族の男と合わせましたが

 誰ひとりとしてあの可愛い笑顔を引き出すことは出来ませんでしたものねえ。

 記憶は消えても『思い』は残るものなのですねえ」

「もう二度とあのような術を使いたくないのでこのままにしておこう」

「ええ、あの子ももう大人ですから仮に記憶が戻っても大丈夫でしょう」

(つづく)